- 就業不能になった場合の経済的な不安を解消したい
- 医療保険と就業不能保険の違いが分からない
- 自身に合った保険を選ぶ基準を知りたい
フリーターや個人事業主、そして会社員でも、一度は病気や怪我で働けなくなった時の経済的な不安を感じたことがあるのではないだろうか。
しかし、就業不能保険に入っていることで、そのような万が一に備えることができる。
ただ、医療保険にすでに加入している人もこのような保険が必要なのだろうか。
就業不能保険と医療保険はどのように違うのだろうか。
本記事では、就業不能保険と医療保険の違いと万が一起こり得るリスクへの対処法、自身に適した保険の選び方などについて詳しく解説している。
ぜひ参考にしてほしい。
就業不能保険とは何か?
就業不能保険とは、名前からもわかるように働けなくなったときのリスクに備える生命保険の一種だ。
就業不能保険が保障するのは、「長期間にわたって」収入が途絶えた際のリスクで、保障する期間・範囲の点において医療保険とは異なる。
ケガや病気で入院・退院したものの、自宅療養が続いて職場に復帰できない場合、医療保険に加入していても保険金が給付されることは基本的にない。
もちろん医療保険の保障内容次第ではあるが、長期の療養に伴う収入の減少に対しては医療保険でカバーするのは難しいため、就業不能保険の必要性が高まるのだ。
就業不能保険の保障内容
就業不能保険は働けなくなって給付金の支払い事由に該当したときに、毎月の給料のように給付金を受け取るのが一般的だ。
一口に就業不能保険といっても、以下の点で各商品が差別化されている。
- 働けない状態が何日続くことを条件とするか
- 年金形式または一時金形式で受け取る
- 給付額の大きさ
- 該当する傷病名
就業不能保険の保険期間は定期タイプが一般的で、10年程度ごとに見直すことになるだろう。
就業不能保険に加入するにあたって特に覚えておきたいのが、働けない状態が何日続くことを条件としているかだ。
何かケガをして1か月間働けなかったとしても、保険の適用条件が2か月間としていた場合は、給付金が支払われない。
就業不能保険は働けなくなったことによる収入減少分を埋めるのに効果的である一方、保障する条件にマッチしなければ保険として機能しない点は注意が必要である。
ただし、保障条件についてはあらゆる生命保険に共通するため、各保険商品の正しい理解が欠かせないのだ。
働けなくなるリスクはどの程度発生するのか
厚生労働省がまとめた「令和2年(2020)患者調査の概況」によると、令和2年9月1日から30日の間に退院した人の入院期間は以下の割合だった。
- 0〜14日:66.8%
- 15日〜30日:16.2%
- 1〜3か月:12.9%
- 3か月〜:4.1%
退院患者の約65%が2週間以内に退院しているものの、17%は1か月以上の長期入院をしていることがわかる。
近年は入院期間の短期化が進んでいる状況ではあるものの、1か月以上入院する可能性は十分あるのだ。
就業不能保険で生活費をカバー
就業不能保険の必要性に関して、入院期間とは別の角度で解説しよう。
厚生労働省がまとめた「2021(令和3)年 国民生活基礎調査の概況」によると、全世帯における1か月あたりの平均年収の中央値は440万円であった。つまり、平均月収は約366,000円である。
また、厚生労働省の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、障害年金の受給額は102,368円であることがわかる。
つまり、単純計算すると、働けなくなった場合の収支は約263,000円の赤字になる。
生命保険文化センターがまとめた「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査」によると、世帯主に万が一のことがあった場合の経済的備えとして、平均年間必要額は327万円と回答している。
つまり、最低でも月272,000円ほど必要と考えており、この額を公的保険と民間保険でカバーする必要があるのだ。
もちろん、貯蓄などでまとまった資産があれば、就業不能保険で不測の事態に備える必要はないかもしれない。
逆に、公的保険の適用がなく、民間保険でカバーするしかない場合には重要性がグッと高まるだろう。
- 出典:厚生労働省「2021(令和3)年 国民生活基礎調査の概況」
- 出典:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 出典:生命保険文化センター「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査」
医療保険に加入していれば就業不能保険は不要?
就業不能保険について、人によっては「医療保険に入っていれば不要なのでは」などと考えるかもしれない。
結論を先に言うと、半分正解で半分不正解だ。結局のところ人によって状況が異なり、リスク許容度や大きさによって、就業不能保険の必要性は高まる。
就業不能保険と医療保険との違い
就業不能保険が効果を発揮するのは、働けない状態が一定期間継続し、ケガや病気の治療が長期化した場合だ。
医療保険の場合、入院した際の一時金や、入院に対する日額給付金、通院時の日額給付金などが支払われる。
ただし、入院や通院時の日額給付には上限が設定されており、上限を超えた入院・通院に対しては給付金が支払われない。
一般的な医療保険の場合、給付金の支払い上限日数は60日とされていることが多く、61日目以降は給付金の支払い対象外だ。
このように、就業不能保険と医療保険では、給付金を支払う対象期間・守備範囲が異なる点で大きく異なる。
異なる保険商品として提供されている以上、それぞれに目的がある。
- 就業不能保険:働けない状態が一定期間継続した際のリスクに備える
- 医療保険:ケガや病気で短期間の入院や通院をした際のリスクに備える
病気によっては長期間の療養が必要な場合もあるため、その期間中における収入減少は医療保険ではカバーできないことから、就業不能保険が必要になるのだ。
働けなくなった際の公的保障制度
働けなくなった際の保障は、国の社会保険制度においても用意されている。
就業不能保険の加入を検討する際は、公的保障制度である「傷病手当金」「障害年金」についても正しく理解しておくことで、自身に必要な保険を判断できるようになるだろう。
傷病手当金とは、会社員や公務員など、各種健康保険組合や共済組合に加入している人が対象の手当だ。
傷病手当金は、ケガや病気で仕事を休まざるを得なくなった場合、最長1年6か月にわたって支給される。
傷病手当金の支給額は、ざっくりと給料の3分の2程度だ。つまり、長期間働けなくなったとしても健康保険に加入している場合は収入がゼロになるわけではないため、傷病手当金の額を考慮して就業不能保険を検討すると無駄のない保険加入を検討できる。
障害年金は、所定の障害状態が認定された場合に支給される年金のことだ。
公的年金に加入している人が支給対象となり、「障害基礎年金」「障害厚生年金」の2つで構成されている。
要するに、老後に支給される年金の仕組みと同じで、国民年金に加入する第一号被保険者の場合は、障害基礎年金のみ支給される。
会社員や公務員などの厚生年金に加入する人は、障害基礎年金と障害厚生年金が支給される仕組みだ。
このように、ケガや病気で長期間働けなくなったとしても、公的保障制度である程度の収入はカバーできる。
しかし、公的保障制度を十分に受けられない人もいるため、状況によっては就業不能保険で収入減少をカバーする必要があると言える。
医療保険と就業不能保険のセット加入がベスト
医療保険と就業不能保険は目的が異なるため、リスクが大きい人の場合はセットで加入するのがベストである。
医療保険は短期の入院・通院にかかる医療費を保障してくれる一方、就業不能保険は、長期間の収入減少を補うのが目的だ。
要するに、どちらかの保険に加入すればリスクに備えられるわけではないのである。
会社員や公務員として働いている人の場合、公的保障制度が比較的充実しているため、就業不能保険の必要性はどちらかと言うと低いかもしれない。
しかし、預金が十分にない場合は、医療保険の加入はもちろん、就業不能保険で最低限の保障を用意しておいたほうが安心だ。
自営業やフリーランスとして働いている人の場合、公的保障制度を十分に受けられないため、会社員に比べて就業不能保険の必要性が高い。
もちろん、まとまった医療費を支払える余裕があまりない場合は、医療保険の加入も検討すべきだろう。
このように、もしもの事態が起きた際にも安心して生活し続けられるようにするには、医療保険と就業不能保険はセットで加入するのがベストなのだ。
あなたに最適な保険選びのポイントと注意点
就業不能保険と医療保険の重要性や必要性について解説したが、結局どのような基準で保険を選べばよいかわからず悩んでしまう人も多いだろう。
ここでは、自身に最適な保険を選ぶ際のポイントや注意点をまとめた。以下の内容を自身の状況に当てはめ、どの保険が必要か検討しよう。
現時点で受けられる保障の範囲を漏れなく把握
最適な保険を検討するにあたって、まずは現時点で受けられる保障の範囲を漏れなく把握することから始めてほしい。
先ほど解説したように、会社員や公務員の場合は傷病手当金や障害基礎年金・障害厚生年金を受け取れるため、働けなくなった際の収入の減少額はある程度抑えられる。
既に医療保険に加入している場合は、給付金の日額や給付日数の上限、給付を受けられる回数や期間の縛りなども確認しよう。
当然であるが、現在の家計の収支も必ずチェックしてほしい。収入がいくらであるか、絶対に削れない固定費はいくらか、毎月いくら貯金しているかなど、家計の状態もクリアにしない限り、収入が減少した際の不足額は明らかにならない。
まずは現状を正しく把握することから始めよう。
働けなくなった場合の影響の範囲や大きさを検討
現状を把握できたうえで、時系列に沿って、いつ・どの程度の保障が必要なのかシミュレーションしてみよう。
会社員や公務員であれば、傷病手当金で給料の3分の2ほどの金額が支給される。つまり、収入は3分の1くらい減ることになる。
たとえば、月収30万円であれば傷病手当金として20万円程度支給されるのだが、毎月の固定費が20万円であれば、あえて就業不能保険に加入しなくてもよいだろう。
固定費が25万円だとすると、傷病手当金を受け取っても5万円不足する。
この不足額5万円に対して、就業不能保険でカバーするのか、貯金を切り崩して対応するかは自身の家計によって異なる。だからこそ、家計の収支を明確にしておく必要があるのだ。
自営業やフリーランスの場合、傷病手当金はもらえないため、毎月の固定費に相当する額だけは何らかの形でカバーしなければならない。
もちろん、ケガや病気で短期間の入院をした際も、自身が稼働しないことで収入を得られないのであれば、医療保険によって日額給付を受けとれるようにしておくべきだろう。
働けなくなった場合の影響の範囲や大きさは人によって異なるため、具体的な数字を計算してシミュレーションすることが大切である。
就業不能保険の加入が向いている人の特徴
就業不能保険の加入が向いている人の特徴は以下のとおりだ。
- 自営業やフリーランスとして働く人
- 長期療養によって収入が減少するリスクに対応できない人
- 長期療養期間においても生活水準を維持したい人
- 住宅ローンを返済している人
公的保障制度が限定的な自営業者とフリーランスの場合、働けなくなった際の影響は甚大だ。
自身が稼働することで収入を得ているケースが大半であり、長期間の療養によって働けなくなるのは、生活が立ち行かなくなる可能性を一気に引き上げるだろう。
会社員の場合においても、貯金があまりない人や固定費が高めな人の場合、収入減少に対するリスクに対応できない可能性がある。
生活水準を一定に保ちたい人も、収入減少に対する充実した備えが欠かせないだろう。
そして、住宅ローンの返済は待ってくれないため、長期間の収入減少に対しては備えておいたほうが安心だ。
団体信用生命保険が適用されるのは被保険者が亡くなった際であり、長期療養しているからと言って住宅ローンの支払いが免除されるわけではない。
上記に該当する人は、就業不能保険への加入を前向きに検討しよう。
就業不能保険に加入する際は条件を入念に確認
就業不能保険に加入する際は、適用される条件の確認が欠かせない。
- どのような状態を「長期間働けない」と認定するのか
- 給付金が支払われるまでの期間の長さ・働けない期間が何日継続しているか
- 精神疾患が支払いの対象に含まれるか
保険商品によっては、傷病名によって認定されるかどうかが異なったり、医師の指示による在宅療養が条件になったりする。
国民年金法に基づき、障害状態1級または2級を条件とする場合もある。
また、上記の状態が何日間続いているかが条件になっており、60日以上や180日以上など、保険商品によって異なる点にも注意が必要だ。
つまり、就業不能状態と認定されていても、45日で働けるようになれば給付金は支払われないのである。
最後に、精神疾患が支払いの対象に含まれているかも確認しておこう。
近年は精神疾患に罹患する人が増えており、治療は長期化するのが一般的だ。
「自分は精神的に病むことはないだろう」などと考えず、心の病気に対しても就業不能と認定されるかどうかもチェックしておいてほしい。
まとめ
この記事では、就業不能保険と医療保険の基本的な役割やその違い、選び方について詳しく説明した。
病気やケガで働けなくなることは珍しいことではない。
さらに、その間収入が下がり生活が苦しくなることも容易に想像できるだろう。
そんな時、就業不能保険は重要な役割を果たしてくれるだろう。
自身が安心して生活するためにも、不測の事態に備えて慎重に保険選びを進めてほしい。
しかし、医療保険は複雑で、自分に最適なものを選ぶのが難しいことも多い。
そんな時は保険のプロに頼ることをおすすめする。
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是非一度ご利用になり、最適な保険選びの一助にしてほしい。
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