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役員退職金を生命保険で準備することは可能なのか?メリットデメリットを踏まえて解説

この記事で解決できるお悩み
  • 役員退職金を生命保険で準備することは可能なのか知りたい
  • 役員退職金を生命保険で準備するメリット・デメリットが知りたい
  • 経営者として税金を抑える方法を知りたい

役員退職金を生命保険で準備するにはどうしたらいいのだろうか。

役員退職金の準備方法には複数の方法があり、生命保険を使う方法がある。

そして、この方法を使うと節税ができるなどメリットがある一方、デメリットも存在する。

本記事では、役員退職金に生命保険で備える方法およびメリット・デメリットなどについて解説していく。

いままで会社に貢献してくれた従業員に十分な退職金を支払うためにも、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてほしい。

目次

生命保険で準備できる?役員退職金とは

そもそも役員退職金って何 生命保険ナビ

まずは、そもそも役員退職金とはどのような退職金かについて確認していく。

役員退職金とは

役員退職金とは、取締役または監査役などの役員および経営者が会社を退職する際に支払われる退職金のことだ。

「役員退職慰労金」とも言われ、在任中の職務に対する対価として支払われる。

一般的な退職金は、通常、就業規則内の「退職金規定」に基づいて支給される。

勤続年数や勤務実績に応じて均等の対価として支払われる点は同じだが、役員退職金は一般的な退職金に則って支給されるわけではない。

退職金の支給については、定款に金額や時期などを明記していたり、株式総会において決議を取ったりするのが一般的だ。

支払われる金額が不当に大きくなるのを防いだり、役員とのトラブルを防止したりするために、あらかじめ役員退職金規定を作成しておく会社も存在する。

役員退職金は、法人にとって全額損金に算入できるため、節税効果があるのも特徴だ。

ただし、以下の場合は、退職金として取り扱われないため注意しよう。

  • 支給した退職金のうち、明らかに給与と判断される部分の金額
  • 遺族に対して支給した葬祭料または弔慰金のうち適切な金額

役員退職金の種類

役員退職金には、「勇退退職金(退職慰労金)」と「死亡退職金」の2種類がある。

勇退退職金は、役員が退任する際に支払われるもので、勤続年数や在職中の実績などに応じて金額が決められる。

死亡退職金は、役員が死亡した際に支払われる退職金で、残される遺族の生活を守るための資金として準備される。

勇退退職金は、一般的な退職所得と同様に扱われ、退職所得控除額を控除した1/2の金額が課税退職として計算される。

退職所得は他の所得と分離課税されて、所得税・住民税の対象となる。

具体的な計算方法は下記の通りだ。

退職所得の金額=(勇退退職金などの収入金額-退職所得控除額)×1/2

退職所得控除額は、勤続年数が20年以下か20年超かによって変わってくる。

勤続年数が20年以下の場合、退職所得控除額は「40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)」、勤続年数が20年超の場合は、「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」で計算する。

また、勤続年数が5年以下の役員等が支払いを受ける退職金については、2分の1課税が適用されない点に注意しよう。

これに対して、死亡退職金は、他の相続財産と合わせて相続税の対象となる。

法定相続人1人につき500万円までは非課税財産としてみなされる。

役員退職金の適切な金額

役員退職金は、損金に算入できるため、法人にとって税制上のメリットが大きい。

ただし、損金として取り扱うためには、同業他社の支給水準や在任年数などに照らして妥当な水準だと認められる必要がある。

適切な金額を計算するための方法には、「功績倍率法」と「1年当たり平均法」の2種類がある。

功績倍率法

まず、功績倍率法によると、役員退職金は以下のように算出できる。

役員退職金=最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率(+功労加算金)

最終報酬月額とは、退職または死亡する直前に支払われた報酬を指す。

また、個人事業主から法人化した場合、個人事業主として働いた期間は役員在任年数にカウントされず、法人を設立以後の取締役位以上の役職在任期間をカウントする。

功績倍率とは、役員が会社にどのくらい貢献したかを示した倍率で、一般的に1〜3倍程度で設定される。

例えば、最終月額報酬が100万円、役員在任年数7年の役員に、功績倍率2.0倍で退職金を支給する場合の適正な金額は下記のように計算できる。

役員退職金=100万円×7年間×2.0=1,400万円

功績倍率が不当に高い場合や、最終月額報酬が適正でないと判断される場合は、損金として認められないケースもある。

1年あたり平均法

1年あたり平均法による、役員退職金の計算法は次のとおりだ。

役員退職金=1年あたり退職金×勤続年数

1年あたり退職金は、同業種・同規模法人の役員退職金の支給平均額から算出する。

ただし、1年あたり平均法は功績倍率法に比べて使われるケースは少なく、企業会計よりも裁判などの紛争において用いられる計算法だ。

役員退職金を生命保険で準備することは可能なのか?

役員退職金を生命保険で準備することは可能なの? 生命保険ナビ

退職金を支払うためには、まとまった金額が必要となる。

会社の資産として積み立てていくのも一つの手だが、法人向けの保険を使って退職金の財源を確保することも可能だ。

具体的な方法や、メリット・デメリットを確認していこう。

役員退職金を生命保険で準備することは可能

大きな金額となりやすい役員退職金を支払うためには、前もって準備しておくことが重要だ。

法人のお金から支払うため、準備していなければ本業の資金繰りに影響を与える可能性もある。

預金などでコツコツ貯める、有価証券に投資をして増やす、といった方法があるが、法人向けの生命保険を利用して準備する企業も増えている。

法人向け保険を退職金の原資確保に用いる場合、法人を契約者として契約し、被保険者は経営者や役員、保険金を受け取るのは法人と設定する。

解約返戻金を勇退退職金に充てることで財源を一定額確保しつつ、万が一のことがあった際は保険会社から給付される死亡保険金をそのまま死亡退職金として遺族に支払うことができる。

預金を積み立てる場合と違って、会社の資金からまとめて支払う必要がないため、長い時間をかけてコツコツと積み立てつつ、大きな赤字が生じにくいという特徴がある。

退職金を生命保険で準備するメリット

法人向けの保険を役員退職金の確保に利用するメリットとしては、以下の点が挙げられる。

退職金を生命保険で準備するメリット
  • コツコツと退職慰労金や死亡退職金を準備できる
  • 保険料の一部を経費として損金に計上できる場合がある
  • 緊急時に契約者貸付制度を利用できる

毎月、毎年といったように定期的に保険料を支払うことで、会社の財務に負担をかけずにコツコツ退職金の準備が可能だ。

退職金の財源を全く確保していない法人の場合、高額の退職金支払いが発生すると一気に大きな赤字が出てしまう可能性がある。

法人向けの保険を利用する場合、毎年の利益の中から保険料を支払い、将来の勇退時に解約返戻金を受け取ることで、返戻金から退職金を賄える。

加えて、保険の種類によっては、支払い保険料の全部または一部を損金に計上して利益を圧縮することで、節税対策に利用することも可能だ。

会社の利益を圧縮すると自社の株式評価を下げることにもつながるため、非上場会社が事業承継を行う際や、相続発生時に相続税対策にも活用できる。

さらに、法人向けの生命保険を契約していると「契約者貸付制度」という制度を利用できる。

この制度を利用すれば、解約返戻金の90%を限度として無担保で保険会社からお金を借りられるため、急な資金不足にも対応できる。

退職金を生命保険で準備するデメリット 

一方、退職金を保険で準備する際は、以下のデメリットに注意しよう。

退職金を生命保険で準備するデメリット 
  • 途中解約する時期によっては元本割れするリスクがある
  • 高額な保険料は会社のキャッシュフローを悪化させる
  • 退職金の金額が適切でないと判断されると損金算入できない

退職金を保険で確保する場合、途中解約して返戻金を利用することになる。

契約後すぐに解約すると、支払った保険料よりもかなり小さい金額の解約返戻金しか受け取れないことがほとんどであるため、注意しよう。

また、保険料の支払い金額が大きすぎると、会社のキャッシュフローに悪影響が出る場合がある。

資金繰りが悪化しないように、余裕をもった保険料設定にするのをおすすめする。

加えて、退職金の金額が不当に大きいとみなされた場合は、損金参入が認められないケースがある。

役員退職金の支給額は会社がある程度自由に決められるとはいえ、功績倍率法や同業他社の支給水準に鑑みて妥当な範囲で設定するように気をつけよう。

役員退職金を生命保険で準備するときのポイント

役員退職金を生命保険で準備するときのポイント 生命保険ナビ

法人向けの生命保険で退職金に備える際は、気をつけたいポイントがいくつかある。

退職金準備に利用できる保険の種類と合わせてチェックしていこう。

退職金を準備する時の生命保険の種類

役員退職金の準備に利用できる保険には、下記のようなものが挙げられる。

  • 終身保険
  • 逓増定期保険
  • 長期平準定期保険

それぞれの特徴を簡単に確認していこう。

終身保険

終身保険は、一生涯保障が続く保険で、保険料の支払いは70歳満了など一定の時期となっているのが一般的だ。

経営者や役員に万が一のことがあった際には死亡退職金として保険金を受け取れるため、保障機能をしっかりと確保できる。

経過した年月に応じて解約返戻金が増えていくため、退職時期に合わせて保険を解約し、解約返戻金を役員退職金に充当すれば、無理なく勇退に備えられる。

解約返戻金は法人が受け取るが、すべてを退職金として使わなければいけないわけではなく、事業資金や設備投資などに使う部分があっても構わない。

役員退職金を受け取る際は、保険を解約する代わりに、契約者を法人から経営者個人に名義変更することもできる。

その場合は、退職金として保険を現物支給するという形になり、会社を退職した後も万が一の死亡保障を継続することが可能だ。

逓増定期保険

逓増定期保険は、時間の経過とともに保険金額が増えるタイプの定期保険だ。

基準金額から徐々に保険金が増加するため、会社の成長に合わせて保障を大きくできるというメリットがある。

万が一の際の死亡退職金・弔慰金の原資となるお金を確保しつつ、退職慰労金の資金も合わせて準備できる。

逓増定期保険は、解約返戻率がピークに達した後は一気に返戻率が低下するという特徴があるため、資産形成効果が限定的である点に注意が必要だ。

長期平準定期保険

長期平準定期保険は、一般的な平準定期保険よりも保険期間が長めに設定されている保険だ。

終身保険は一生涯保障が続くが、長期平準定期保険は「100歳まで」のように保障期間を決めて契約する。

他の法人向け保険と同様に、死亡退職金・退職慰労金の両方に備えられるという特徴がある。

解約返戻率は、時間の経過とともに徐々に増えていき、ピークに達した後もゆっくりと少なくなっていくため、退職時期があまり定まっていない企業でも活用しやすい。

このように、保険の種類はいくつかあるが、どの保険が向いているかは会社の規模や役員の年齢・人数などによっても変わってくる。

商品によって特徴もさまざまなので、保険を検討する際は複数の商品を比較しながら自社に合わせた保険に加入するのが大事だ。

保険選びに迷ったらプロに相談するのをおすすめする。

「生命保険ナビ」では全国の保険のプロフェッショナルの中から、条件・ニーズにあった専門家を検索できるサービスを提供しているため、ぜひこの機会に利用してみてほしい。

「役員退職金慰労金規定」の作成が必要

役員退職金の準備を目的として保険に加入する場合は、「役員退職慰労金規定」を作成しておく必要がある。

役員退職慰労金規定とは、退職金の支払い基準や支払い根拠を規定するものだ。

勇退時の支払い手続きや支払い基準を明確にすることで、過大な退職金として損金算入を否定されるリスクを減らせる。

また、役員の遺族にも死亡退職金の支払い根拠を示すことで、トラブルを防止しやすくなる。

役員退職慰労金規定がない場合は、勇退時に株主総会での決議が必要となるが、明確な基準を設けておくことで、取締役会の決定によって退職金の支給を実施することも可能となるケースがある。

なお、規定で定めている場合や株主総会で決議が取れた場合は、役員退職金を分割支給したり退職年金を支給したりすることも可能だ。

ただし、退職年金として受け取る場合、退職所得ではなく雑所得として取り扱われるなど、課税関係には注意が必要だ。

役員退職金を生命保険で準備する時の注意点

役員退職金の支払いに保険で備える場合、途中で解約することが前提となる。

法人向けに販売されている逓増定期保険や長期平準定期保険は、一定の時期に解約返戻金の額がピークになるが、その時期を逃すとどんどん解約返戻率が下がってしまう。保険契約後すぐに解約してしまった場合も同様だ。

そのため、解約返戻金を退職金の財源として利用するのであれば、あらかじめ何年後に退職を予定しているかを考え、退職時期と解約返戻金のピーク時期を合わせるように保険を設計するのが大事だ。

保険の設計方法や選び方に悩む場合は、「生命保険ナビ」を利用して自分に合った保険のプロを検索してみてはいかがだろうか。

役員退職金を生命保険で準備するメリットはさまざま!会社に最適な保険を選ぼう

まとめ 生命保険ナビ

本記事では、役員退職金を生命保険で準備する方法、メリット・デメリットについて解説した。

また、実際に役員退職金を生命保険で準備するには、そんな種類があるのかもご紹介した。

役員退職金には複数の準備方法が存在するので、生命保険で準備するかどうか悩んでいる人はぜひ参考にしてほしい。

しかし、この方法には、適切な掛け金の設定が必要であったり、元本割れのリスクがあるなど、注意点も多い。

また、保険に加入する際には複数の商品を比較検討する必要があるが、保険には膨大な数の商品が存在する。全て自分で調べて比較検討することは困難だろう。

そこで、保険選びに困ったらプロに相談することをおすすめする。

「生命保険ナビ」では、全国の保険のプロの中から自身の条件や意向にあったものが選べるサービスを提供している。

まずは、自分に合った保険のプロに相談し、自分にぴったりの保険商品を見つけよう。以下のボタンから申し込んでみてほしい。

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執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。お客様と保険のプロを結ぶマッチングサイト「生命保険ナビ」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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