- 養老保険を従業員の退職金準備にどう活用すべきか分からない
- 養老保険を福利厚生制度として選ぶメリットを知りたい
- 養老保険で退職金を準備する際の注意点を理解したい
近年、多くの企業が、従業員の福利厚生の一つとして「養老保険」を検討している。
養老保険を活用することで、従業員への退職金支払いに備えることができるためだ。
本記事では、そんな養老保険の役割と、福利厚生制度としての活用方法について具体的に解説していく。
記事の内容を参考に、福利厚生制度の一つとして、「養老保険」という選択をしてみてはいかがだろうか。
養老保険の仕組みと特徴
まずは、養老保険とはどのような保険なのか、基本的な仕組みや特徴について解説していく。
個人で契約するのではなく、会社として養老保険に加入する際の選び方や契約時にチェックすべきポイントについても確認しておこう。
養老保険の役割
養老保険とは、被保険者が保険期間中に死亡や高度障害となった場合は死亡保険金、保険期間の満了時には満期保険金を受け取れる保険のことだ。
死亡保険金と満期保険金の金額は同額となっており、万が一の事態に備えつつ、将来に向けた資産形成にも利用できる。
「保障」と「貯蓄」の両方の機能を併せ持つ分、シンプルな定期保険等と比べると保険料が高めに設定されやすいという特徴がある。
養老保険は、満期がくると満期保険金を受け取れるため、退職金の準備をするために利用する企業もある。
途中で養老保険を解約する場合も解約返戻金が戻ってくるため、中途退職者の退職金にも充てられる。
保険期間中は死亡や高度障害に備えることも可能なので、社員の福利厚生制度として活用できるのがメリットだ。
企業が養老保険に加入する場合、一定の要件を満たせば保険料の2分の1が経費として損金に算入できるため、税制面の効果を期待することも可能だ。
なお、法人以外が契約する場合など、様々なシーンでの養老保険の活用法については以下の記事でまとめたので、比較する際には参考にしてほしい。
退職金として養老保険を選ぶ際の基本的なポイント
養老保険を選ぶ際は、以下のポイントを確認する必要がある。
- 保険料
- 保険期間
- 保険金の金額
- 解約返戻率
- 特約
養老保険の保険料の2分の1を損金に算入する場合、社員および役員の全員が養老保険に加入しなくてはならない。
一人当たりの保険料はそれほど高くなくても、全員分の保険料を毎年支払うとなると企業にとっては大きな負担となる。
キャッシュフローは潤沢かどうか、毎月余裕を持って保険料を支払えるかどうかシミュレーションしてみるのが重要だ。
また、退職金の準備のために加入する場合、保険期間と保険金額もしっかりとチェックしよう。
保険期間は、「○年間」といった年満了または「○歳まで」といった歳満了のいずれかで設定する。
退職金の準備のために活用するなら、定年のタイミングと満期がほぼ同じとなるよう設定するのが良いだろう。
養老保険の場合は、保険期間を長くするほど保険料が安くなるため、保険料とのバランスも見ながら検討するのをおすすめする。
同様に、退職金のために養老保険を活用するなら満期保険金の金額も重要だ。退職金の金額を十分カバーできるだけの金額になるようにシミュレーションしてみよう。
退職時には保険を途中解約する必要もあるため、解約返戻率の推移もチェックしておくことが重要だ。
商品によっては、死亡保障を手厚くしたり医療保障をつけたりといったように特約を付加することができる。
ただし、特約をつけ過ぎると保険料が高くなり、毎年の支出を圧迫してしまう点には注意しよう。
退職金としての養老保険契約時にチェックすべき項目
退職金の準備を目的とするなら、福利厚生プランが適用されるかも合わせてチェックしたい。
福利厚生プランとは、企業が従業員のために福利厚生として養老保険を契約するための保険商品で、一定の要件を満たすと毎年の支払い保険料の2分の1を損金として計上できる。
保険料を経費としてみなすためには、死亡保険金を社員の遺族が受け取り、満期保険金を会社が受け取るように設定しておく必要がある。
また、福利厚生を目的として契約するため、原則として全社員を契約させることも必要だ。
さらに、福利厚生のために正しく保険が運用されているかを内外に明示しつつ、保険金を受け取る際のトラブルを防ぐために「福利厚生規程」や「退職金規程」も整備しておかなくてはいけない。
ただ保険に加入するだけでなく、会社の規程の整備や契約内容のチェックも重要だという点を認識しておこう。
退職金を養老保険で準備するメリット
多くの企業で、養老保険を退職金の準備に活用する福利厚生プランが利用されている。
その企業で働く社員にとってのメリットや、契約者となる企業にとってのメリットをそれぞれ確認していこう。
養老保険と退職金
企業が契約する養老保険では、保険期間中に従業員が亡くなった場合は死亡保険金を遺族が受け取り、満期を迎えた場合は満期保険金を企業が受け取るのが一般的とされている。
福利厚生として用いられるケースでは、企業が受け取った満期保険金は従業員の退職金に充当されることが多い。
企業が利用できる主な退職金制度の種類とメリット・デメリットを簡単にまとめた。
種類 | メリット | デメリット |
養老保険 (福利厚生プラン) | 保険料の1/2を損金算入できる 満期保険金と死亡保険金の両方を備えられる | 原則として社員全員が加入 早期解約すると元本割れしやすい |
企業型確定拠出年金 (企業型DC) | 掛金を全額損金に算入できる | 運用成果によって給付額が変動する 途中解約不可で給付は原則60歳以上 |
確定給付企業年金 (DB) | 掛金を全額損金に算入できる 給付額が確定している | 社会保障給付が減少する可能性がある 積立不足を企業が補填する可能性がある |
中小企業退職金共済 (中退共) | 掛金を全額損金に算入できる 少額から拠出できる | 原則として社員全員が加入 経営者や役員は加入不可 死亡退職金は積み立てた金額分 |
養老保険では、従業員がいつ死亡・高度障害となったかにかかわらず、万が一のことがあった際は死亡保険金が満額支払われる。
企業年金制度に比べると、従業員の死亡や高度障害のリスクにも備えやすいという点が養老保険のメリットと言えるだろう。
従業員にとってのメリット
福利厚生制度に養老保険を取り入れると、社員にとっては万が一の際に遺族にまとまったお金を残せるというメリットがある。
従業員が保険期間中に亡くなった場合、死亡保険金を死亡退職金として扱った上で遺族に支払える。
死亡保険金は相続税の対象となるものの、相続税の計算上「500万円×法定相続人の人数」までは非課税で受け取れるという点もメリットだ。
被保険者である社員がいつ亡くなったとしても死亡保険金の金額は一定なので、仮に養老保険の加入直後に亡くなった場合も、遺族は死亡保険金を満額受け取れる。
会社で手厚い保障を受けられる養老保険に入っていれば、自身で生命保険に入るコストを抑えやすいというのも嬉しいポイントだ。
社員を守るための制度が充実している会社であることをアピールできれば、社員の業務へのモチベーションアップや離職率の低下にも繋がりやすくなるだろう。
企業にとってのメリット
続いて、企業にとってのメリットや魅力を確認していこう。
まず、一定の条件を満たすと支払う保険料の2分の1が経費として損金に算入されるため、税制上の効果も期待できるという魅力がある。
ただ退職金の準備として利益を積み立てていくと課税負担が大きくなりやすいが、損金に算入しながらコツコツと将来の支払い準備ができるという点はメリットとなる。
満期のタイミングで退職金を支払うように規程で設定しておけば、給付される保険金によるプラスと退職金支給によるマイナスを通算できる。
課税負担を抑えつつ、同時に退職金支払い時の赤字リスクもカバーできる点もメリットだ。
また、万が一従業員が亡くなった際は死亡保険金が給付されるため、弔慰金・死亡退職金の準備も同時に行える。
退職金や弔慰金などの将来に必要になる資金をコツコツと積み立てていきたい企業には、養老保険が適しているだろう。
さらに、保険に加入していれば、解約返戻金の一定範囲で契約者貸付を利用できる。
急な災害や取引先の破綻など予期せぬ事態でキャッシュが必要になった際も、契約者貸付を利用して現金を確保できるというのはリスクヘッジにつながるだろう。
養老保険で退職金を準備する際の注意点
退職金の準備のために保険金を使う際は、いくつか注意したいポイントがある。
せっかく退職金の確保のために保険を契約したとしても、要件を満たしていないとメリットを最大限享受できない場合もあるため気をつけたい。
なお、経費処理の方法や詳細な要件は各企業によって異なりやすいため、税務についての詳しい相談は、税理士や所管の税務署に確認するのをおすすめする。
退職金としての養老保険の加入条件の確認
契約内容が会社の状況に適しているかや、会社が加入条件を満たしているかも重要だ。
会社が保険料の2分の1を損金に算入するなら、契約者と満期保険金の受け取り人が会社で、死亡保険金の受け取り人が社員の遺族でないといけない。
ただし、福利厚生制度に加える場合、原則として社員の全員が加入できる状況を整える必要があるため、年間の保険料支払い金額が大きくなる。
毎年のキャッシュフローに余裕があるかや、退職金規程・福利厚生規程がきちんと整っているかを確認した上で、加入を検討しよう。
また、養老保険は早く解約してしまうほど、解約返戻金の金額が小さくなる。
従業員が転職などで早期に退職してしまうと、解約返戻率が100%を下回りやすいため注意が必要だ。
若い企業で社員の出入りが激しい場合などは、適していないケースもあるかもしれない。
さらに、社員の全員または大部分が同族の関係者である場合は、全員が契約していたとしても、保険料の2分の1を損金に算入できず、給与扱いとなるため注意しよう。
養老保険は従業員ごとにあった契約を
保険金額は全社員一律である必要はなく、勤続年数や職種など合理的な基準に基づいて保険金額を調整することは可能だ。
ただし、基準については曖昧にせず、客観的に合理的だと判断できるように退職金規程などで明文化しておこう。
なお、役職や性別によって加入条件を設定するのは合理的とは言えず、認められない。
加えて、病気等で生命保険に加入できない従業員や、自分の意思で養老保険に加入したくないと考えている従業員を加入させないことも可能だ。
あくまでも全社員が加入できる環境を整えておくことが必要だと考えられる。
養老保険の保険金受け取り時の注意点
保険金受け取り時は、満期保険金を受け取るか死亡保険金を受け取るかによって、経費処理が変わってくる。
以下の例で養老保険に加入していたケースについて確認していこう。
- 契約者:法人
- 被保険者:役員・従業員
- 死亡保険金の支払い先:被保険者の遺族
- 満期保険金の支払い先:法人
- 年間支払い保険料:5,000,000円
- 満期保険金:10,000,000円
- 死亡保険金:10,000,000円
このとき、契約者および満期保険金の支払い先は企業であり、死亡保険金の支払い先は社員の遺族であることが、損金算入の条件となる。
保険料の支払い時は、保険料金額の2分の1を保険積立金として資産に計上して、残りの2分の1を福利厚生費として損金に算入する。
借方 | 貸方 |
保険積立金 2,500,000円 福利厚生費 2,500,000円 | 現金または預金 5,000,000円 |
保険期間中に被保険者である社員が亡くなった場合、死亡保険金が遺族に支払われる。
積立金の資産計上額を、雑損失として損金に算入する経費処理を行う。
借方 | 貸方 |
雑損失 2,500,000円 | 保険積立金 2,500,000円 |
満期が到来して法人に満期保険金が支払われたら、積立金の資産に計上されている金額と満期保険金との差額を雑収入で計上する。
借方 | 貸方 |
現金または預金 10,000,000円 | 保険積立金 7,000,000円 雑収入 3,000,000円 |
満期保険金が給付されたタイミングで何もしないと、満期保険金から保険積立金を除いた金額が益金に算入されるため、税金負担が重くなりやすい。
そのため、福利厚生プランを採用している企業の多くは、満期保険金の受け取りに合わせて退職金を支払うように設定している。
満期保険金を受け取るのと同じ事業年度に退職金を支払えば、法人の税負担が軽減されやすいためだ。
上記のように、税制上のメリットを享受するためには、要件がいくつかある。
詳しい経費処理の方法や、個別の企業に適した保険の種類などはぜひ専門家に確認してみてほしい。
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退職金に養老保険の活用を検討しよう
本記事では、養老保険の基本的な役割から、福利厚生制度としての活用法までを詳しく解説した。
従業員の退職後の生活のために養老保険を上手く活用し、安心した老後生活を送ってもらうため、企業にとって養老保険という選択を取ることも検討すべきではないだろうか。
しかし、養老保険で退職金を準備する際には本記事で解説したようないくつかの注意点があるので、より良い選択をするためには、専門家の意見やアドバイスが必要となることもある。
また、相談先はプロであれば誰でも良いというわけではなく、相談したい内容に特に高い専門性をもつ最適なプロを見つけることが重要である。
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