株式投資の魅力の一つは、定期的に得られる配当金だろう。
銀行預金の金利が0.001%の時代に、企業によっては数%の配当金を得ることも可能だ。
しかし、これから株式投資を始める人や、投資初心者の中には、「配当金をもらったら確定申告しないといけないの?」と、気になる方もいるのではないだろうか。
本記事では、そんな配当金にかかる税金について、わかりやすく解説する。
配当金とは
まず、配当金とは何かを確認しておこう。
配当金とは、企業が得た利益の一部を、株式の保有割合に応じて株主に還元するものだ。
配当金は必ず支払われる訳ではなく、支払い時期や回数も企業によってさまざまだ。
配当金の受け取り方は4種類
配当金の受け取り方には次の4種類がある。
- 株式数比例配分方式
- 登録配当金受領口座方式
- 配当金受領証方式
- 個別銘柄方式
なにやら難しそうだが、どこで配当金を受け取るかの違いだ。
株式数比例配分方式
配当金を証券会社の口座で受け取る方式。
同一銘柄を複数の証券会社で保有している場合には、証券会社ごとの株数に応じて配当金が入金される。
登録配当金受領口座方式
配当金を指定した金融機関の口座でまとめて受領する方式。
複数の証券会社で同一銘柄を保有している場合でも、一つの金融機関に入金される。
配当金受領証方式
株式を発行する企業から株主へ配当金領収証が郵送され、銀行や郵便局で現金に引き換える方式。
銀行や郵便局の窓口ではなく振込で受領することもできる。
個別銘柄指定方式
銘柄ごとに配当金の受領口座を指定し、届出された銘柄のみ指定の金融機関で受領する方式。
同一銘柄を複数の証券会社で保有している場合には、別の金融機関を指定することはできない。
配当金にかかる税金
基礎知識を振り返ったところで、配当金にかかる税金の解説に入る。
ポイントは次の3つだ。
- 配当金の税金は源泉徴収される
- NISA口座なら配当金も非課税
- 特定口座(源泉徴収あり)なら損益通算できる
配当金の税金は源泉徴収される
配当金にかかる税金は、前述の4つの受け取り方式のいずれの場合でも、配当金を支払う企業が源泉徴収する。
つまり、税引き後の配当金が株主に支払われるということだ。
源泉徴収される税率は、上場株式か非上場株式か、大口株主かによって異なる。
所得税および復興特別所得税15.315% + 住民税5% = 20.315%
所得税および復興特別所得税20.42% 住民税は確定申告が必要(少額配当は除く)
NISA口座なら配当金も非課税
通常は支払い時に税金が源泉徴収される配当金だが、NISA口座で保有する株式の配当金は非課税だ。
ただし、配当金を「株式数比例配分方式」で受け取る必要がある点には注意しよう。
NISA口座では年間120万円まで株式を購入でき、5年間非課税となる。ぜひ有効に活用したい制度だ。
特定口座(源泉徴収あり)なら損益通算できる
配当金は、「特定口座(源泉徴収あり)」で受け取ることで、同一証券口座内で株式などの譲渡損と損益通算が可能だ。
こちらもNISA口座と同様に「株式数比例配分方式」での受け取りが条件になる。
例えば100万円の配当金の場合、20万3,150円が源泉徴収され、79万6,850円が支払われる。
ここでもし、株式の売買で50万円の損失が出ている場合、配当金の100万円と相殺し50万円分に税金がかかることになるため、10万1,575円が還付される。
確定申告で配当金の税金を取り戻せる場合も
以上のように、配当金は受け取り時に源泉徴収されているため、確定申告する必要はない。
しかし、場合によっては確定申告することで源泉徴収された税金を取り戻せるケースがある。
一つは「総合課税」で確定申告し配当控除を受けるケース、もう一つは「申告分離課税」で確定申告し、他の証券会社の損失と損益通算するケースだ。
配当金ごとにどちらか一方を選ぶ必要があり、配当控除と損益通算の両方を受けることはできない。
「総合課税」で配当控除を受ける
配当控除とは、法人税課税後の利益から支払われる配当金に所得税をかけることで生じる、二重課税を解消するための制度だ。
配当金を「総合課税」で確定申告することで、配当控除を受けられる。
総合課税とは、配当所得を給与など他の所得と合算して税金計算をすることだ。
総合課税は課税所得が多いほど税率が高くなる累進課税となっている。
課税所得ごとの税率は次のとおり。(復興税除く)
課税所得 | 所得税率 | 住民税率 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 10% |
195万円超 330万円以下 | 10% | 10% |
330万円超 695万円以下 | 20% | 10% |
695万円超 900万円以下 | 23% | 10% |
900万円超 1,800万円以下 | 33% | 10% |
1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 10% |
4,000万円超 | 45% | 10% |
「総合課税」で確定申告することで、源泉徴収の場合は一律20.315%だった税率が、上表のとおり課税所得に応じた税率になる。
さらに、配当控除によって、課税所得が1,000万円以下なら、配当金にかかる税金が総合課税の税率から所得税が10%、住民税が2.8%軽減される。
課税所得が1,000万円以上の場合の軽減率は半分の所得税5%、住民税1.4%だ。
上の表から配当控除を差し引いた税率が源泉徴収の20.315%より低ければ、確定申告した方がお得ということになる。
その境界は課税所得695万円だ。
つまり、課税所得が695万円以下の人は、「総合課税」で確定申告することで配当金の税率が源泉徴収よりも低くなり、差額が還付される。
なお、配当金を「総合課税」で確定申告することで、配当金が所得に合算され、所得控除や配偶者控除、社会保険料の料率などに影響する場合もあるため、確定申告する際は慎重に判断しよう。
所得税と住民税で申告有無を分けることも
さらに、所得税は確定申告し、住民税は申告不要とする選択も可能である。
「総合課税」を選んだ場合、住民税は配当控除の2.8%を差し引いたとしても7.2%で、源泉徴収の5%よりも不利だ。
これを、配当金の住民税は申告不要とすることで、源泉徴収の5%のままにできる。
この制度を活用すれば、「総合課税」で確定申告した方が有利になる課税所得の境界が900万円以下に上がる。
課税所得が900万円以下の人は、「総合課税」で確定申告し、住民税を申告不要とするのがお得な方法だ。
「申告分離課税」株式の譲渡損等と損益通算する
複数の証券会社で株式を売買している場合、配当金を「申告分離課税」で確定申告することで、株式の譲渡損などと損益通算が可能だ。
同一証券会社内の損益通算は特定口座(源泉徴収あり)で配当金を受け取るだけで損益通算が可能だが、証券会社を跨ぐ場合には確定申告が必要になる。
複数証券会社での株式の譲渡損益がトータルで損失となっている場合、「申告分離課税」で確定申告することで配当金と損益通算して、源泉徴収された配当金の税金を取り戻せる。
損益通算してもなおマイナスになる場合には、損失を3年間繰り越して翌年以降の利益と相殺することも可能だ。
上手く活用しよう
本記事では、配当金にかかる税金について解説した。
配当金の税金は支払い時に源泉徴収されるため、基本的には何もしなくても良い。
しかし、課税所得が一定額以下の人や株式などの売買で損失が出ている人は、確定申告することで源泉徴収された税金の還付が受けられる場合もあるため、うまく活用しよう。
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