- 退職金3,000万円の手取り額の計算方法が知りたい
- 退職金にかかる税金の仕組みと具体的な金額を知りたい
- 退職金を受け取る際の注意点と最適な管理方法が知りたい
退職金を受け取る際にかかる税金や手取り額については、多くの人が正確な情報を求めていることだろう。
そこで今回は、3,000万円の退職金を具体例に、かかる税金の計算方法や受け取り時の注意点、さらには退職金の活用法までを詳しく解説する。
退職金についての疑問を解消し、より良い将来の計画を立てるための参考としてほしい。
退職金を3,000万円受け取れるのはどんな人?
退職金はどのような方法で計算されるのだろうか。ここでは、勤続年数と退職金の関係や目安の金額を紹介し、実際に退職金で「3,000万円を得られるのはどのような人か」を解説していく。
勤続年数は退職金額に影響するのか
一般的に退職金は勤めた年数が金額に影響すると考えられており、会社オリジナルの「〇年以上働いた従業員が対象」などの条件にあてはまった人が退職金を得られる。
多くのケースでは、3年以上勤務した従業員が退職金をもらえる人が多い傾向だ。
また、働いた年数に比例して得られる金額が上がっていく企業が多く、人事考課・役職などにより金額が変わることもある。
他にも、退職理由が「自己都合」か「会社都合」かというポイントも退職金の金額を決める際に重要なポイントになるので覚えておこう。
勤続年数別:退職金額推定
実際に「何年働くと、退職金をいくら得られるのか」について、知りたい人も多いだろう。
ここでは、働いた年数別に得られる金額を紹介していくので、ぜひ参考にしてほしい。
退職理由:自己都合
勤続年数 | 大企業 | 中小企業 |
---|---|---|
3年 | 31万円 | 19万円 |
5年 | 52万円 | 36万円 |
10年 | 138万円 | 91万円 |
15年 | 289万円 | 171万円 |
20年 | 557万円 | 273万円 |
25年 | 863万円 | 397万円 |
30年 | 1,197万円 | 533万円 |
35年 | 1,546万円 | 673万円 |
42年 | 1,679万円 | 742万円 |
退職理由:会社都合
勤続年数 | 大企業 | 中小企業 |
---|---|---|
3年 | 52万円 | 27万円 |
5年 | 89万円 | 49万円 |
10年 | 214万円 | 122万円 |
15年 | 404万円 | 215万円 |
20年 | 665万円 | 328万円 |
25年 | 1,005万円 | 466万円 |
30年 | 1,368万円 | 605万円 |
35年 | 1,669万円 | 758万円 |
42年 | 1,925万円 | 849万円 |
以上のように、勤めている会社の規模によって退職金額は大きく異なるのだ。例えば、42年働いたケースで見てみよう。
勤続年数42年の退職金額
大企業 | 中小企業 | |
---|---|---|
自己都合 | 1,679万円 | 742万円 |
会社都合 | 1,925万円 | 849万円 |
このように、大企業の退職金は中小企業の約2倍の金額を得られるケースが多いのだ。
また、退職する理由で得られる金額が変わるので以下の表を確認してほしい。
大企業 | 中小企業 | |
---|---|---|
退職理由による退職金の差額 | 246万円 | 107万円 |
自己都合よりも、会社都合で退職するケースの方が多くの金額を得られるのが一般的である。
退職金2500万円〜4000万円を受け取っているのはどんな人?
定年退職をした際に「退職金2500万円〜4000万円代」を得られる可能性があるのは、どのような人なのだろうか。
上記で解説した勤続年数以外にも、退職金の金額は職業によっても異なるのだ。
ここでは、「2500万円~4000万円代の退職金」を得られる人の職業を紹介していく。
最終学歴:大学卒
対象:大企業
業種 | 退職金額 |
---|---|
建設 | 2,564万8,000円 |
新聞・放送 | 2,643万円 |
商事 | 2,852万2,000円 |
銀行・保険 | 4,529万4000円 |
以上が2500万円~4000万円代の退職金を得られる職業だ。
企業・役職・働いた年数によって金額は違うため、1つの目安として参考にしてほしい。
退職金3,000万円にかかる税金の計算
ここでは、退職金・所得税・控除額の計算方法や、「退職金を一時金で3,000万円受け取ったケースの手取り額」の計算方法を解説していくので、実際に計算していこう。
退職所得と計算方法
退職所得とは、10種類ある「所得」のうちの1つの種類を指し、企業から退職金を一時金で受け取った場合が該当する。
退職所得を求める計算式は、以下のとおりである。
退職金は、今までの頑張りが評価され、得られるお金でもあるため、毎月受け取る「給料」よりも優遇されている。
そのため、他の所得に比べると、課税対象になる金額が少ない傾向だ。
退職所得控除額の金額・所得税の計算方法を解説
次に、「退職所得控除の金額」と「所得税を求める方法」を解説していくので、現時点の自分の条件で実際に計算してみよう。
退職所得控除
上記で「退職所得を求める計算式」を紹介したが、式の中にある「退職所得控除」という言葉を見て「なんのことだろう?」と感じた人もいるだろう。
この「退職所得控除」とは、働いた年数によって求め方が違うため、以下の計算式を役立ててほしい。
勤務年数 | 計算式 |
---|---|
20年未満 | 40万円×勤続年数 |
20年以上 | 800万円+70万円×(勤続年数−20年) |
参考として、△△会社で15年働いたAさんと、25年働いたBさんの退職所得控除額を以下で求めていこう。
- Aさん:40万円×15年=600万円
→退職所得から600万円差し引ける
- Bさん:800万円+70万円×(25年-20年)=1150万円
→退職所得から1150万円差し引ける
実際に計算すると、このようになる。大きな金額を控除できるため、老後の生活などに備えられるのだ。
所得税
所得税を求める計算式は、以下の通りである。
また、通常は「復興特別所得税(復興税)」と「住民税」がプラスされるので計算すると手取り額も把握できるので紹介していく。
税金名 | 内容 | 税率 |
---|---|---|
復興特別所得税 | 東日本大震災の復興のための財源として、2037年まで加算される | 所得税×2.1% |
住民税 | 都道府県と市町村に支払う税金を、合わせて「住民税」と読んでいる | 課税対象金額×10% |
以上が計算式になるので、実際に退職金について計算するときはぜひ参考にしてほしい。
実践:退職金3,000万円の手取り額を計算
ここでは、計算の流れをイメージするためにも「退職金を3,000万円受け取った」と仮定して、具体的な数字を求めていくので流れを確認していこう。
対象者
Aさん | △△会社に35年勤務 |
退職金を一時金で受け取る |
Aさんの退職所得の控除額を求めていこう。
Aさんの勤続年数は35年のため、計算式は以下の通りである。
Aさんの退職所得の金額を求める計算式は、以下の通りである。
次に、所得税・復興税・住民税を求めていく。計算式は以下の通りになるので、参考にしてほしい。
税率と控除額は、以下の表から選んでいこう。今回の課税対象金額は「575万円」のため、「税率20%」「控除額42万7,500円」になる。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円~194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万円~329万9,000円 | 10% | 97万5,000円 |
330万円~694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
695万円~899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円~3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
4000万円~ | 45% | 479万6,000円 |
復興税 | 72万2500円×2.1%=1万5,172円 |
---|---|
住民税 | 575万円×10%=57万5,000円 |
所得税・復興税・住民税の合計 | 72万2500円+1万5,172円+57万5,000円=131万2,672円 |
③で求めた金額を退職金から引けば、退職金の手取り額を求められる。
以上のように、退職金を一時金で3,000万円受け取ったAさんの手取り額は【2,868万7,328円】になる。
年金形式で退職金を受け取った場合は「雑所得」になるため、計算方法は異なるので注意しよう。
退職金の金額別の税金について、より詳しく知りたい人は下記の記事を参考にするといいだろう。
退職金3,000万円を受けとる時の注意点
退職金を受け取る際に注意すべき点と対策について解説していくので、今後の参考にしてみてはいかがだろうか。
退職金の受け取り方法
退職金は、主に「一時金形式」「年金形式」「一時金と年金形式の併用」で受け取ることが可能だ。企業によっては受け取り方が異なるため、どの受け取り方ができるかは事前に確認しておくと選びやすいだろう。
ここでは、「一時金」「年金形式」のメリット・デメリットを解説していくので、今後のために学んでいこう。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
一時金形式 | 控除額が大きいなどの優遇がある | 退職金を使い込んでしまう可能性がある |
年金形式 | 運用されるため、受取総額が一時金形式よりも多い | 老後の収入が「公的年金+退職金の年金」になるため、社会保険料の金額が高くなりやすい |
以上のような特徴があり、その人の状況・ライフプラン・性格などによって適している方法が異なるので慎重に選ぼう。
- 他の方法で老後の資金を準備済み→一時金形式で受け取る
- 退職金を使い込んでしまう心配が大きい→年金形式で受け取る など
退職金受取時の注意点
退職金を受け取る際に、注意しなければならないポイントは以下の通りである。
注意点①:還付金を受け取れる可能性がある
通常は、「退職所得の受給に関する申告書」を企業に提出する。この書類は、支払うべき税金が計算され、納める税金を差し引いた金額を受け取れる。
もし、「退職所得の受給に関する申告書」を企業に提出していない場合は、税金を多く納めている可能性が高いので、確定申告をすると還付金を受け取れる可能性があるのだ。
そのため、実際に退職金を受け取った際に「退職所得の受給に関する申告書」を企業に提出しなかった人は確定申告をしてみるといいだろう。
注意点②:短期間の勤務の場合は計算が異なる
短期間勤務(5年以下)で退職金を受け取った場合は、以下のようになるので注意しよう。
※退職所得控除:40万円×勤続年数
- 役員として勤務(特定役員退職手当等)
- 退職金-退職所得控除=課税退職所得金額
- 従業員として勤務(短期退職手当等)
- 退職金が300万円以下:(退職金-退職所得控除)×2分の1
- 退職金が300万円超え:150万円+{退職金-(300万円+退職所得控除)}
退職金の税金対策
退職金を受け取る際におすすめしたい節税対策を紹介していくので、今後のために覚えておくといいだろう。
退職金は、「一時金形式」で受け取る方が退職所得控除を受けられるため、一般的に節税効果が高いと言われている。
※詳細は上記「退職金3,000万円にかかる税金の計算」にて解説
しかし、人によっては「年金形式」で受け取る方が税金対策になるケースもあるのだ。
どのようなケースかは、以下を確認してほしい。
- 退職金の金額が少ない
- 公的年金を繰り下げ受給しようと考えている など
ここで注意すべきポイントは、「すべての人におすすめの方法はない」ということだ。
例えば、個人年金保険などで老後の資金準備を行っている場合、年金形式で退職金を受け取ると[公的年金+私的年金+退職金での年金]が収入になる。
上記「退職金の受け取り方法」でも触れたが、社会保険料が高くなりやすい。
このように、その人の状況などによって節税につながる受け取り方は異なるので、慎重に考えていこう。
以下では、受け取り方以外の方法で節税可能な方法を解説していく。
①ふるさと納税を活用
ふるさと納税は、翌年分の住民税を年内に一部支払える制度のことだ。
ふるさと納税を利用すれば、寄付額から2,000円を差し引いた金額を「所得税・住民税の控除」を受けられる。
寄付した地域から「返礼品」を受け取れるため、自分へのご褒美や家族とのパーティー用の食事などを選べるため、人気の節税方法だ。
②他の所得と損益通算する
以下の所得であれば、赤字金額を退職所得から差し引くことが可能だ。
そのため、損益通算できる所得がある人は行うことがおすすめだ。
- 譲渡所得
- 事業所得
- 不動産所得
- 山林所得
このような方法を使えばさらに節税効果を発揮できるので、ぜひ試してみてはいかがだろうか。
退職金3,000万円はどのように管理するべき?
退職金3,000万円を受け取った際に、どのように管理していけばいいのだろうか。
ここでは、よりよい生活を作るための方法を解説していく。
高額な退職金の賢い活用例
まとまった金額を得たからこそ、よりよい生活を作るための資産運用を行うのが非常におすすめだ。
では、どのような方法がおすすめかを紹介するので、以下の表を確認してほしい。
投資信託 | プロが代理で運用を行うため、投資初心者でもチャレンジしやすい |
---|---|
株式投資 | 配当金・株主優待・株式の購入時と売却時の差益を得られる投資方法 |
個人向け国債 | 最低でも金利0.05%が保証されてるため、少しずつ確実に資産を増やせる |
不動産投資 | 家賃収入を得る不動産価格が上がれば不動産を売却可能 |
貯蓄型保険 | 貯蓄性の高い保険に加入し、満期保険金などを受け取る方法 |
定期預金(退職金向け) | 預入期間に応じて利息を受け取れる |
各方法にはリスクがあるため、ポジティブな部分だけではなくネガティブな部分も把握した上で決めていくとうまく活用できるだろう。
退職金を資産運用すべき理由
「今まで頑張ってきたから、自分にご褒美をしたい」などのように考え、旅行やアイテムの購入などを行う人も多いだろう。
前から予定していた家のリフォームに充てるなど、今後のためにお金を使う予定にしている人も少なくない。
だが、計画的に退職金を使うことで「未来の生活が豊かになる」可能性が高くなるので、今後のライフプランを一度考えてみてはいかがだろうか。
①人生100年時代と言われている今だからこそ、今後に備える
人生100年時代と言われているからこそ、「生きるリスク」に備える必要があるだろう。
平均寿命は伸びていくと考えられており、2065年時点では男性84.95歳・女性91.35歳になると言われている。
生活費や医療費などさまざまなお金が必要になるからこそ、金銭的に余裕のない生活ではなく、豊かな生活を目指して資産運用を行っておくと、将来は楽しく過ごせるだろう。
②インフレが続くとお金の価値が下がるため
インフレ(インフレーション)とは、物価が上がり続けている状態を指す。
例えば、「現在200円」で購入できているものが「将来220円」に値上がりしていると考えると、お金の価値が下がっていることが分かるだろう。
このように、インフレが続けば「現在の退職金3,000万円の価値」は、将来「退職金3,000万円以下の価値」になるリスクがあると言える。
しかし、資産運用の中には、株式投資や投資信託など「インフレに強い方法」があるので、インフレリスク対策を行えるのだ。
このようなポイントから考えても、退職金を資産運用することがおすすめだと言える。
IFAを退職金運用に活用するメリット
上記では退職金を運用することをおすすめしたが、「自分に最適な方法はどれか分からない…」と、方法を選べない人もいるだろう。
リスクを考えると、まとまった金額を運用することに躊躇する可能性がある。
そのような人におすすめの方法が、「IFAに相談する」ことだ。
IFAとは、資産運用のプロフェッショナルのことを指し、資産運用に関する知識を深く持ち合わせている。
そのため、その人が描く将来や条件などに近いプランを提案してもらえるのだ。
また、相続などの相談も可能なため、「お金のパートナー」として心強い存在になるだろう。
「資産運用ナビ」では、IFAを検索できるサービスを提供しているため、ぜひ活用してほしい。
退職金を3,000万円受け取ったら上手に活用しよう
退職金をうまく活用するためには、退職金にかかる税金の仕組みを正確に理解することが重要である。
退職金の受け取り方法には、主に「一時金形式」と「年金形式」の2種類あり、個人の状況によって最適な方法は異なる。
さらに、退職金を活用した効率的な資産運用は、将来よりよい生活を過ごせる土台になるだろう。
具体的には退職金を投資信託・個人向け国債・貯蓄性の高い保険などで運用することがおすすめだ。
IFA検索サービス「資産運用ナビ」を活用すれば、自分にぴったりのアドバイザーと出会えるので、ぜひ活用してほしい。