- 分散投資の基本原則と効果を理解したい
- 資産運用におけるリスク管理の方法を学びたい
- 分散投資の具体例が知りたい
資産運用において、分散投資はリスクを分散し、安定した収益を目指す重要な戦略である。
では、具体的にはどのように実践できるのだろうか。また、これにより得られる効果はどれほどあるのだろうか。
この記事では、分散投資の基本原則、効果、そしてリスク管理に関する具体的なアドバイスを提供し、資産運用における分散投資の重要性とその実践方法を解説する。
また、実際に資産運用を行う上で適切にリスク分散をするためには、資産運用の手法について知る必要がある。
どのような資産運用手法があるのか知りたい方はこちらを参考にしてほしい。
加えて、資産運用の基本知識や他のリスクの低減方法についてより詳しく知りたい方はこちらを参考にしてほしい。
資産運用における分散投資の基本とその効果
まずは、分散投資の定義や方法について確認していく。
分散投資の定義と基本原則
分散投資は、投資資金を異なる種類の資産に分散して投資したり、投資するタイミングをずらして投資したりする投資方法のことだ。
分散投資の対象は、主に以下の3つに分類できる。
- 資産(銘柄)の分散
- 地域の分散
- 時間(タイミング)の分散
最も一般的な分散投資の手法が「資産(銘柄)の分散」だ。
例えば、株式だけに投資を行っていると、株式市場が急落した際に大きな損失が発生してしまうが、株式とは異なる値動きを行う債券などにも投資をしていると、資産全体の損失を抑える効果が期待できる。
2つ目の分散投資の手法が「地域の分散」だ。
投資先の地域を分散することで、災害や紛争、政治的要因などによるその国の金融市場の変動によるリスクを抑えやすくなる。
資産の種類を分散させるだけでなく、投資する国や地域の分散も意識することが重要だ。
3つ目の分散投資の手法は「時間の分散」だ。
時間の分散とは、一度にまとめて全ての資金を投資するのではなく、複数のタイミングに分けて投資を行うことを指す。
時間を分散して投資すると、さまざまな価格でバランスよく投資ができるため、高値掴みを回避するために有効な投資手法だ。
リスク分散による収益の安定化
さまざまな地域や資産に分散して投資するのは、収益を安定化する意味でも非常に重要だ。
仮に、「今年はこの国のこの資産が最も上昇する」と前もって分かれば、誰でも簡単に資産運用で利益が得られる。
しかし、現実の投資においては値上がりする投資先を当て続けるのは困難だ。
下記は、主要な投資資産の2016年〜2020年の年間パフォーマンスを表にしたものだ。
2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | |
---|---|---|---|---|---|
先進国株式 | 9.0% | 18.5% | -7.4% | 27.3% | 13.5% |
新興国株式 | 9.7% | 30.6% | -10.1% | 18.0% | 19.1% |
世界リート | 7.7% | 5.8% | -3.2% | 24.1% | -9.5% |
世界ハイイールド債券 | 15.9% | 7.6% | -2.4% | 14.0% | 6.3% |
世界投資適格社債 | 5.7% | 5.2% | -1.7% | 11.5% | 7.7% |
世界国債 | 3.0% | 1.2% | 1.0% | 5.4% | 4.9% |
コモディティ | 9.3% | 0.7% | -12.4% | 9.4% | -9.7% |
表からもわかる通り、運用パフォーマンスの最も良い資産は年によって異なる。
例えば、2016年に最もパフォーマンスの良い資産は「世界ハイイールド債券」であるが、翌年の2017年では「新興国株式」の値上がり率が最も高い。
値動きの異なる複数の資産に投資することで、一つの資産の価格下落による損失を回避しながら、バランスよくリターンを狙うことも可能になるのだ。
金融市場の変動に対する耐性強化
資産運用の格言に「卵を一つのかごに盛るな(Don’t put all eggs in one basket)」ということわざがある。
卵を一つのカゴに盛っておくと、カゴがテーブルから落ちてしまうと全ての卵が割れてしまう。
しかし、複数のカゴに分散して卵を盛っておくことで、一つのカゴに何かあった場合も他のカゴの卵を守ることができるという考え方から、資産を複数の資産に分散して投資することの重要性を表すことわざだ。
ここで重要なのが「値動きの異なる資産」に分けて投資するということだ。
例えば、おでんを作っている会社の株式とアイスクリームを作っている会社の株式に投資したとする。
暑い年にはアイスクリームの会社の株価が上がり、おでんの会社の株価は下がりやすくなる。
逆に、寒い年はおでんの会社の株価が上がり、アイスクリームの会社の株価は下がりやすくなる。
どちらか一方に投資していると、その年の気候によってリターンが変動しやすくなるが、アイスクリームとおでんの会社に分けて投資することで、リターンを安定させやすくなる。
一方、アイスクリームの会社ではなく、おでんの会社とストーブの会社の株式に半分ずつ投資した場合はどうだろうか。
この場合、二つの会社の株価は寒い年に上がり、暑い年に下がりやすくなるという似た動きをする。
複数の投資先に資産を分散したとしても、同じような動きをする資産を組み合わせてしまうと、あまり意味がなくなる点に注意しよう。
資産運用におけるリスク管理
資産運用においてはリスク管理が重要だ。
そもそも資産運用におけるリスクとはどのようなものかや、リスクに対応する方法を確認していこう。
投資リスクの種類と特徴
そもそも投資におけるリスクとは、値動きの変動幅のことを指す。
ハイリスクとは、値動きの変動幅が広いことを意味し、運用がうまくいけば大きな収益をえられる可能性があるものの、運用が失敗すれば大きな損失が発生する可能性もあるということを表す。
一方、ローリスクは値動きの変動幅が狭いことを意味するため、大きな収益は期待できないものの、大きな損失が発生する可能性も低いと予想されることを表す。
投資においては、主に以下の5つのリスクが重要だ。
株価変動リスク | 株式の価格が上下する可能性のこと 会社の業績や国の景気や経済動向、政治情勢などさまざまな要因によって発生する |
---|---|
信用リスク (デフォルトリスク) | 株式や債券などを発行している国や企業が、財務状況の悪化などを理由に投資元本や利息の一部または全部を返済できなくなる可能性のこと。 |
流動性リスク | 市場で金融商品を売りたい時に売れなかったり、希望する価格で売却できなかったりする可能性のこと。 |
金利変動リスク | 金利の変動によって価格が変動する可能性のこと 一般的に、金利が上昇すると債券価格は下落し、金利が低下すると債券価格は上昇する |
為替変動リスク | 為替相場の動きによって、外貨建て金融商品の価格が円換算したときに変動するリスクのこと 例えば、為替相場が円高・ドル安に動くと、日本円で見た時の外貨建て債券や外国株式の価値が減少することになる |
金融商品によってこれらのリスクの有無や大きさが異なるため、投資する際はあらかじめどんなリスクがあるのかを確認するのが大事だ。
効果的なリスク管理戦略
リスクを管理して効果的に運用を行う方法の一つに「ドルコスト平均法」という投資方法がある。
長期にわたって定期的に一定金額で同じ金融商品に投資を行うことによって、価格が高い時には少なく、価格が安いときには多く購入することができる。
例えば、価格が変動する投資信託を毎月10,000円ずつ購入したとする。
基準価額が変動すると、購入口数も下記の表のように変わる。
基準価格 | 10,000円 | 11,000円 | 12,000円 | 7,000円 | 8,000円 |
---|---|---|---|---|---|
購入口数 | 10,000口 | 9,091口 | 8,333口 | 54,210口 | 14,286口 |
購入金額 | 10,000円 | 10,000円 | 10,000円 | 10,000円 | 10,000円 |
ドルコスト平均法を用いて毎月10,000円投資した場合の平均購入単価は、50,000円÷54,210口=9,223円(1万口)となる。
一方、毎月同じ口数を投資した場合、平均購入単価は9,600円(1万口あたり)だ。
上記の数字はあくまでも仮定であり、実際の運用とは異なるものの「安い時に多く買い、高い時に少なく買う」ことで、平均購入単価を抑えやすくなる効果が期待できる。
投資信託やETFの積立投資ではこのドルコスト平均法による価格のブレの軽減効果を活かしやすい。
短期的な市場の変動への対応策
株式市場や債券市場は日々変動している。
常に変動する市場においてリスクを抑えながら安定したリターンを求めるためには、しっかりとポートフォリオを組んで運用することと、定期的にリバランスを行うことが大事だ。
ポートフォリオとは、金融資産の組み合わせのことで、どんな資産にどのくらい投資するかということを表す。
自分の想定するリスク・リターンの範囲にしたがってポートフォリオを組んだ上で、実際に運用を始めよう。
ただし、市場の変動とともに、徐々に当初組んだポートフォリオから資産配分が崩れていく場合がある。
そのため、定期的にリバランスを行い、資産配分を調整することで、効果的に資産運用を続けられるだろう。
資産運用における分散投資の具体的な実践法
分散投資を行う具体的な方法について、実際の例に沿って確認していこう。
異なる資産クラスの組み合わせ
分散投資を実践する際は、まずは異なる資産クラスを組み合わせることを意識しよう。
例えば、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)では、下記のようなポートフォリオで運用を行っている。
- 国内株式
- 25%
- 外国株式
- 25%
- 国内債券
- 25%
- 外国債券
- 25%
国内外の株式や債券にバランスよく投資を行うことで、リスクを軽減しながら安定的なリターンを目指すポートフォリオとなっている。
実際に、運用が始まった2001年度から2023年度第2四半期の運用状況は、収益率+3.91%、収益額では+126兆6,826億円となっている。
どんなポートフォリオを組めば良いかわからない人は、GPIFの運用を参考にするのも良いだろう。
個別株式と投資信託の利用
個別株式に投資を行いたい場合は、値動きの異なる銘柄に複数投資するのがおすすめだ。
国内と海外の株式に投資をしたり、異なる業種の銘柄に投資をしたりすることで、分散投資ができる。
ただし、個別株のみに投資をしていると、株式市場全体が下落した際に、資産全体がダメージを受けてしまう危険性がある。
そこでおすすめなのが、投資信託を活用した分散投資だ。
特に、自分でポートフォリオを組むのが面倒、自動でリバランスを行ってほしい、と考える方にはバランス型ファンドが適している。
バランス型ファンドは、国内外の株式や債券、リート(不動産)、コモディティに分散投資を行い、安定した運用パフォーマンスを目指す投資信託だ。
バランス型ファンド1本に投資すれば、自動的に地域や資産の分散投資ができるというメリットがある。
ただし、ファンドによって株式や債券などの組入比率が異なるため、自分の許容できるリスクや求めるリターンに応じて投資するファンドを選ぼう。
長期的な投資視点の重要性
分散投資を行い、安定的なリターンを目指す上では「長期投資」の考え方も大事だ。
株式や債券の運用によって得られる収益は、短い期間でみるとプラスやマイナスに大きく動く可能性がある。
しかし、長期的にみると世界経済の成長に従って、右肩上がりに資産を増やせる可能性が高い。
GPIFによる年金運用でも、株式や債券などの資産を長期にわたって持ち続ける長期投資を行うことで、安定的な収益を得ることを目指している。
加えて、長く投資を続けることは、効率よく資産を増やす点でも有効だ。
運用で得られた利益を元本に加えて再投資することで、投資の利益がさらに利益を生む「複利効果」が期待できる。
短期の値動きに焦らず、じっくりと保有する長期投資を意識することで、将来に向けて資産を増やしやすくなるだろう。
資産運用で分散投資を実践するなら誰に相談するべき?
これから資産運用を始めるなら、専門家にアドバイスをもらうことをおすすめする。
中でも、中立的な立場で投資に関する助言を行うIFAがおすすめだ。
専門家によるアドバイスの重要性
効率よく資産運用を行うためには、リスク管理が非常に重要だ。
分散投資を意識したポートフォリオを組み、定期的にリバランスを行うことで、初心者でも投資に取り組みやすいだろう。
ただし、自分に適したポートフォリオやリスク許容度は人によって異なる。
自分に適した運用戦略を知りたいなら、資産運用の専門家を頼ることが重要だ。
知識と経験が豊富な専門家からアドバイスを受けることで、自分に合った資産運用方法を知り、効果的な運用戦略で資産運用を行えるだろう。
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分散投資は資産運用に効果的
この記事では、資産運用における分散投資の原則や重要性、具体的な実践方法について解説した。
資産運用のリスクを効果的に管理し、より安定した収益を目指すためには、適切な分散投資戦略が不可欠である。
ただし、資産運用の最適解は人によって異なる。そのため、資産運用に関する疑問や不安があれば、専門家からアドバイスを受けることをおすすめする。
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