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インフレ時代の投資戦略は株式投資?

長らくモノの値段が上がらないと言われてきた日本においても、継続的に値段が上がる「インフレ」を体感することになったのが2022年だった。

その要因は複数に渡り、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大、ロシアによるウクライナ侵攻による供給制約や、ロックダウンや緊急事態宣言に代表される行動制限が解除されたことで生じたペントアップ需要、そして各国による積極的な財政出動などが挙げられる。日本においてはそこに円安という物価高要因も生じた。

このようなインフレ時代において、投資家はどのような戦略をとればよいのだろうか。

目次

インフレ時代が到来?

 総務省が発表した10月分の消費者物価指数は総合指数が前年同月比+3.7%となったが、この上昇幅は消費増税の影響を除くと1991年1月に記録した同+4.0%以来、31年9カ月ぶりの伸びである。価格が変動しやすい生鮮食品とエネルギーを除いた総合指数は同+2.5%となっており、同じく増税の影響を除くと1992年6月の2.7%以来、30年4カ月ぶりの上昇率となった。

 すごく高い上昇率のように書いたが、これらの数字を見て、日常生活で体感している物価上昇率はもっと大きいと感じている方もいるだろう。おそらくその体感は正しい。消費者物価指数の内訳を細かくみていくと、1か月に1回程度購入する品目の物価上昇率は同+11.1%と2ケタ台の上昇率となっているからだ。

 このインフレ傾向は日本に限った話ではなく、世界的に確認されるものだ。むしろ、世界各国に比べれば日本のインフレは抑えられている方ともいえる。

米国の労働省が発表した消費者物価指数を見てみると、6月分は前年同月比+9.1%と1981年11月以来40年超ぶりの大幅な伸びを記録し、ドイツ連邦統計庁が発表した11月の消費者物価指数(速報値)は、欧州連合(EU)基準で同+11.3%と全体で2ケタ台の上昇率を記録した。

上がらない賃金と節約行為

 これだけ物価が上昇すると、企業は積極的に価格転嫁をしていかなければ利益率を維持できない。積極的な価格転嫁の結果が欧米における高い物価上昇率につながっているのだが、その観点からすれば、日本では企業がコストを飲んでいるため、他国に比べて低い物価上昇率となっているということになる。

しかし、原材料やエネルギー価格が上昇するなかで販売価格を低く抑えようとすれば、利益を出すためには人件費を削るか、広告や設備投資を控えるしかない。そうなれば、企業の成長は鈍化し、家計が受け取る賃金、つまり消費の原資が減ることになる。

 実際、厚生労働省が発表した10月の毎月勤労統計調査によれば、1人あたりの賃金は物価の変動を考慮した実質で前年同月比-2.6%と7か月連続でマイナスを記録している。モノの値段が上がる一方で賃金が上がらないのであれば、当然家計は節約行為に走り、同時に企業が前述の通り広告や設備投資を控えて成長が鈍化するということになれば、経済は縮小均衡を辿ることになる。

世界経済の減速懸念

 2023年はインフレを契機とする消費や投資の縮小に伴う世界的な景気減速に投資家は注意しなければならない。OECD(経済協力開発機構)は11月下旬に世界経済が「大幅な成長減速」に見舞われるとした。リセッション(景気後退)には陥らないとしているが、2022年の世界経済の成長率は3.1%と予測しているが、2023年は2.2%と減速を予測している。

 同じく世界的機関であるIMF(国際通貨基金)は10月に2023年の世界経済成長率の予測を7月時点の2.9%から2.7%に下方修正した。しかも、世界経済が予測よりも下振れし、成長率が2%を下回る確率は25%あると推定しており、マイナス成長に陥る確率も10%を上回っているとしている。

 それ以外にも世界経済のリセッションを暗示するデータもある。下図は米国の10年国債の利回りから2年国債の利回りを引き算した結果をグラフ化したものだ。一般的には償還期間が先になるほど金利は高くなるため、この引き算の結果はプラスになるのだが、時として計算結果がマイナスになることがある。1977年1月から見ると、過去に6回マイナスになっていることが分かる。

 上図では景気後退期を灰色に網掛けしているが、計算結果がマイナスになると、暫くして米国が景気後退に突入するという規則性を簡単に見出すことが出来る。今年はこの計算結果がマイナスになり始めており、しかもその谷の深さは過去40年で見ても大きいものとなっている。

 国際的な機関の見通しや、様々な経済指標やデータを考慮すれば、2023年における世界経済のリセッションは頭に入れておいた方がよいだろう。

株式は意思を持つ資産

 景気減速により不況となるものの、それでも物価は上昇し続けるという最悪な状態を「スタグフレーション」とも呼ぶが、このような「悪いインフレ」環境下ではどの資産に投資をすればよいのだろうか。

 一般的にインフレ下においてはモノの値段が上がる一方で、貨幣価値は下がるため、資産を現預金にしておくと資産価値が目減りすると言われており、そのため、金や不動産などの実物資産に投資をした方がよいと言われている。

そのこと自体は論理的に間違ってはいないが、金価格はコロナが始まった2020年1月はグラム当たり5,500円程度だったものが、直近では8,000円弱まで値上がりしており、不動産も都内だと割高感が否めず、いまからインフレ対策として投資をしづらい状況だ。

 そこで、もう1つ検討しておきたいのが株式だ。株価はその企業の業績や財務状況が値動きに大きく影響している。円安が進行しようと、スタグフレーションになろうと、企業の経営陣は与えられた環境下で利益を最大化しようとする意志を持つ。

つまり、株式は間接的に意思を持つ資産といえよう。一方で金や不動産といった実物資産は意思を持たない。外部環境が変化するたびに、投資家側が売ったり買ったりして、その結果需給が動いて値段が変化するに過ぎない。

 岸田政権が掲げる「新しい資本主義」構想の下、NISA(少額投資非課税制度)の拡充がなされることもあり、2023年以降は投資対象として株式、または株式に投資する投資信託を中心に資産運用を考えてもいいかもしれない。

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※本コラムは情報提供を目的としたものであり、個別銘柄の推奨や、金融商品の紹介、周旋を行うものではございません。

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執筆者

森永 康平のアバター 森永 康平 株式会社マネネCEO / 経済アナリスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。2018年6月に金融教育ベンチャーの株式会社マネネを設立。
現在は経済アナリストとして執筆や講演をしながら、国内外複数のベンチャー企業の経営にも参画。

著書は『スタグフレーションの時代』(宝島社新書)や父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など多数。

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