現在の仕事を退職し、パートやアルバイトで自分の好きな仕事をして「労働収入」を得つつ、資産運用による「配当収入」で生活費をカバーするセミリタイアに憧れる方は多い。
ただ、セミリタイアを実現するために必要な資金額を明確に知っている方は少ないのではないだろうか。
そこで今回は3,000万円でセミリタイアできるかどうかについて、公的統計をもとにわかりやすく解説していく。
シミュレーションなどの具体的な数値を算出し、いつまで仕事を続けるべきかなど具体的に紹介している。
セミリタイアを検討している方、リタイア後の老後資金の心配がある方はぜひ最後までご覧いただきたい。
3,000万円でセミリタイアは可能か?

まずは、セミリタイアに必要な資産はどの程度なのかを考えてみよう。
3,000万円の資産でセミリタイアが可能かどうかを、年代別のシミュレーションを通して具体的に検証していく。
セミリタイアは資産3,000万円でできる?
結論からいえば、条件次第で3,000万円でのセミリタイアは可能である。ただし「誰でも無条件に可能」というわけではなく、①退職年齢、②生活費(世帯形態・住居費)、③年金見込額、④セミリタイア後の就労収入、⑤運用利回りとインフレの5つの要素によって大きく結果が変わる。
リタイアした後に資金繰りが厳しくなってしまっては良くないので、あらかじめ「本当にセミリタイアが可能かどうか」について具体的に計算しておくのが望ましい。
ここでいうセミリタイアは、早期リタイアという単語とは別だ。早期リタイアは完全に仕事をしないことを指す。
労働収入を絶った状態で、貯金や年金、資産運用から得た配当金などを使って暮らしていくイメージだ。
その一方でセミリタイアは、現在の仕事を退職した後で、好きな仕事や楽しい仕事などをパートやアルバイトもしながら労働収入を得て暮らすことを指す。
日本では1990年代に「セミリタイア」という言葉が広まったとされ、仕事以上に生活もプライベートも充実させたいというQOLを重視するような現代で徐々に使われるようになった。
資産3,000万円でセミリタイアした場合のシミュレーション
もし3,000万円でセミリタイアした場合のシミュレーションを、40代と50代に分けて紹介していく。
大まかな流れとしては、65歳の年金受給開始年齢までの生活費を算出し、3,000万円とどれぐらいの差があるかを算出していく。なお、本記事の40代・50代のシミュレーション(不足額の算出)においては、「労働(アルバイト等)は60歳で完全に終了し、60歳〜65歳までの5年間は貯金の取り崩しのみで生活する」という少し厳しめの前提で計算を行っている。
40代が資産3,000万円でセミリタイアした場合
まず40代でセミリタイアした場合を考えていこう。
40歳で退職し、65歳の年金受給開始まで生活費を月20万円で暮らした場合は、月20万円×12ヶ月×25年=6,000万円が必要になる。
保有額の3,000万円を引くと、残り3,000万円を労働収入で賄わなければならない。
セミリタイアをして40歳から60歳まで20年間働く場合は、3,000万円÷20年÷12ヶ月=12.5万円を稼がなければならない。
税金・社会保険料を差し引く前の額面で考えると、大体月15万円程度を稼げば、月20万円の生活水準でリタイアできる計算だ。
次に45歳でリタイアして65歳まで月20万円の生活を20年間続けた場合は、20万円×12ヶ月×20年=4,800万円が必要となる。
ここから手持ちの3,000万円を引くと不足額は1,800万円だ。
セミリタイアをして45歳から60歳まで15年間働いて稼ぐ場合の金額は、1,800万円÷15年÷12ヶ月=月10万円と算出される。
額面では月12万円程度となり、セミリタイア後にこれ以上稼げていれば暮らしていけるといえる。
50代が資産3,000万円でセミリタイアした場合
50代でセミリタイアした場合を計算していく。
50歳でセミリタイアして月20万円の生活を続けた場合は、年金受給開始まで20万円×12ヶ月×15年=3,600万円が必要だ。
もし月に30万円の生活を続けた場合は、30万円×12ヶ月×15年=5,400万円の生活費が必要となる。
これらの生活を賄うために3,000万円を使えば、月20万円の生活は600万円、月30万円の生活は2,400万円不足することが分かる。
それぞれを残り60歳まで働くとして賄う場合は、月20万円の生活は600万円÷10年÷12ヶ月=5万円で、月30万円の生活は2,400万円÷10年÷12ヶ月=20万円となる。
月20万円の生活であればアルバイトでも問題なく達成できる数字であるが、30万円の生活の場合はパートやアルバイト収入ではなかなか達成しづらい水準となっている。
つまりまとめると、3,000万円でセミリタイアした場合、以下のような条件付きで65歳までは暮らせるといえる。
- 40歳なら月12.5万円の手取り収入(額面で月15万円程度)
- 45歳なら月10万円の手取り収入(額面で月12万円程度)
- 50歳なら月5万円の手取り収入(額面で月6〜7万円程度)
※上記の「額面」は概算であり、実際の税負担・社会保険料負担は就労形態(パート・業務委託等)や他の所得の有無により異なる。
50代で3,000万円あれば余裕を持ってセミリタイア可能
前段では「60歳まで働く」前提で計算したが、もし50歳でリタイア後、あえて労働期間を延ばして「65歳まで」年間180万円(月15万円)をアルバイトや副業で稼いで貯めるとすると、15年で2,700万円のプラスとなる。
既に保有する3,000万円と合わせて5,700万円となり、以下のように月20万円の生活であれば年金支給前に2,100万円の余裕を持たせてリタイアできることがわかる。
15年分の生活費
- 月20万円で15年
- 3,600万円
- 月30万円で15年
- 5,400万円
資産3,000万円でセミリタイアしても老後資金は足りる?

前述したように50代で3,000万円でリタイアしても年金支給開始時点で、残りは2,100万円保有できており、年金開始前に生活は破綻しないことがわかった。
ただその後の年金開始後の生活はどうだろうか。ここでは公的統計を用いて、65歳以降の収支をシミュレーションしていこう。
セミリタイア後の老後生活をシミュレーション
まず年金額について確認する。厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」によると、2025年度(令和7年度)の年金額は前年度から1.9%の引上げとなり、国民年金(老齢基礎年金)の満額は1人あたり月額69,308円、厚生年金の標準的な年金額(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む)は月額232,784円となっている。
なお、上記の厚生年金「標準的な年金額」は「男性の平均的な収入(平均標準報酬:賞与含む月額換算45.5万円)で40年間就業し、妻がその全期間専業主婦であった世帯」がモデルである。会社員だった期間の長さや収入水準、自営業中心か会社員中心かによって実際の年金額は大きく異なるため、ご自身の年金見込額は「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認していただきたい。
次に老後の生活費について確認する。総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の実収入は月額252,818円(うち社会保障給付225,182円)、消費支出は月額256,521円、非消費支出(税・社会保険料等)は月額30,356円で、支出合計286,877円に対して毎月約34,058円の不足が生じている。
同じく総務省統計局の同調査によると、65歳以上の単身無職世帯の実収入は月額134,116円、支出合計は月額161,933円(消費支出149,286円+非消費支出12,647円)で、毎月約27,817円の不足が生じている。
※上記は家計調査の「平均」であり、住居費(持ち家か賃貸か)、医療・介護費、地域差などで大きく変わる。特に住居費は持ち家世帯が多い統計のため、賃貸の場合は不足額がさらに大きくなる点に注意が必要だ。
ここでは、上記の公的統計をふまえ、65歳以降の夫婦世帯の毎月の不足額を約3.4万円(年間約40.9万円)として、65歳時点の残資産2,100万円でどこまで持つかを試算していこう。
年間の不足額が約40.9万円であれば、2,100万円÷40.9万円≒約51年分に相当する。つまり家計調査の「平均的な支出」で暮らす夫婦世帯であれば、65歳時点に2,100万円の資産があれば、計算上は年金と合わせて100歳を超えても資金が持つことになる。
ただし、これはあくまで「平均的な支出」を前提とした場合であり、以下のリスクには注意が必要だ。
- 医療費・介護費の増大(特に要介護度が上がった場合)
- インフレによる物価上昇(年金の改定がインフレに追いつかない可能性)
- 住居の修繕費や住み替え費用
- 想定より長生きした場合の資金枯渇
一方、単身世帯の場合は毎月の不足が約2.8万円(年間約33.4万円)であり、2,100万円÷33.4万円≒約63年分となる。単身世帯であっても平均的な生活費の範囲であれば、65歳時点に2,100万円あれば相当な余裕がある計算だ。
ただし、ゆとりある生活や想定外の大きな出費に備えるなら、資産運用によるリターンの上乗せを検討することが望ましい。次のセクションでは、運用によって資産をどの程度伸ばせるかをシミュレーションしていく。
- 出典:厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 出典:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 出典:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要」
運用の開始時期とリターンの関係性
では資産運用する場合、どれぐらいのリターンを目指せばよいのかをシミュレーションしていこう。
前述のシミュレーションでは、65歳時点で2,100万円の余裕が出ることがわかっているので、ここでは机上のシミュレーションとして、将来余剰となる2,100万円を手元から切り離し、50歳から運用し始めると仮定する。(※実際には生活費の取り崩しなどが発生するため、全額を初期から一括運用できるわけではない点には注意してほしい)
仮に2,100万円を元本として複利で運用した場合、4,200万円(元本の2倍)に到達する年数の目安は以下の通りとなる。
- 利回り2%で運用したら約36年で達成
- 利回り3%で運用したら約24年で達成
- 利回り4%で運用したら約18年で達成
- 利回り5%で運用したら約14.5年で達成
上記の利回りを参考に、自分自身の年齢やリスク許容度と照らし合わせながら、長期的に目指す利回り水準を検討することが重要となる。たとえば50歳から年利4〜5%程度で運用できれば、65歳前後までに資産をおおむね倍増できる可能性がある。
もっとも、これはあくまで過去の市場実績に基づく目安であり、将来の運用成果を保証するものではない。元本割れの可能性も常にあるため、リスク許容度に応じた資産配分が不可欠だ。
もし年金受給開始前の65歳までに用意しておきたいなら、50歳から利回り4%〜5%程度を目指せばよい。
セミリタイアにおすすめの資産運用法
ここまでの主張に基づき、3,000万円の金融資産を持つ方がセミリタイアをする場合の資産運用法を検討する。
以下は、一般的なアドバイスであるため、実際に運用を行う際はご自身の状況やリスク許容度に合わせてアレンジしていただきたい。
基本的なアドバイス
セミリタイア後の資産運用では、安定性、効率性、流動性を優先することが重要だ。
すなわち、リスクとコスト(手数料や税金)を小さく抑え、コツコツと確実に資産を増やすことが大切である。
また、急な資金需要にも対応できるよう、現金化のしやすさも考慮すべきだろう。
これらの観点からセミリタイア後は、キャピタルゲインよりインカムゲイン重視の手法をおすすめする。
理由は以下の3つだ。
- 配当金や利子収入などで定期的なキャッシュフローを得ることで、資金を柔軟に活用できる
- インカムゲインで得た収入を再投資すれば、複利効果を期待できる
- インカムゲインを重視する投資は、キャピタルゲインを追求する投資と比べてリスクが低い傾向にある
投資の基本である「長期・分散・積立」でリスクをコントロールすることや、リスクを取りすぎないための「リバランス」も重要となる。
なお、年金受給開始後にパートや再雇用で働く場合は、「在職老齢年金」制度により、賃金と厚生年金の合計額が一定の基準額を超えると年金の一部が支給停止となる点に留意が必要だ。厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」によると、2025年度の支給停止基準額は月51万円だが、2026年4月からは月65万円に大幅に引き上げられることが決まっている。この改正により、賃金と年金の合計が月65万円に達するまでは年金が全額支給されるようになるため、セミリタイア後に働きながら年金を受給する方にとっては朗報といえる。
おすすめの金融商品
これらを踏まえ、以下の金融商品をおすすめする。
これらの商品を、目指すリターンやリスク許容度に応じて配分していく。年齢が上がるにつれ、リスク資産の割合を減らしていくことも忘れてはならない。
※投資信託・株式等にはいずれも元本割れのリスクがある。過去の利回り実績は将来の運用成果を保証するものではないため、分散投資と定期的な見直しを前提としたうえで商品を選択していただきたい。
資産3,000万円でセミリタイアするなら計画的な資産運用を
本稿のシミュレーションでは、「3,000万円でもセミリタイアは不可能ではない」ことがわかった。ただし試算は生活費ベースに限ったものであり、支出水準は独身・夫婦・子育て世帯など世帯構成によって大きく異なる。また、想定外の出費が発生すれば資金が追いつかない恐れもあるため、注意したい。
老後の収支については、公的年金だけでは毎月数万円の赤字が発生するケースが多いため、貯蓄の取り崩しは避けられない。一方で、2026年4月からの在職老齢年金制度の改正(支給停止基準額が月51万円→月65万円に大幅引上げ)により、働きながら年金をフルで受け取りやすくなるなど、セミリタイア層にとって追い風となる制度変化もある。
リタイア後に家計を破綻させないためには、リタイア前からの資産運用で資産を積み上げる、節約で支出を抑えるといった工夫が欠かせない。とくに毎月の固定費が高いと資金枯渇のリスクが増すため、固定費の見直しや必要に応じた地方移住も選択肢に入れるべきだろう。
まずは自分の生活費を具体的に試算し、必要額を把握したうえで運用を始めることをおすすめする。
どのような運用手法を選ぶべきか迷う場合は、資産運用アドバイザーへの相談が有効だ。専門家の視点で疑問を解消し、納得のいく形で資産運用を進めていこう。少しでも不安があるなら、まずは無料相談を試してみよう。
出典一覧
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」(2025年度の国民年金満額は月額69,308円、厚生年金の標準的な年金額(夫婦2人分)は月額232,784円)
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」(2026年度の国民年金満額は月額70,608円、厚生年金の標準的な年金額(夫婦2人分)は月額237,279円)
- 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要」(65歳以上夫婦のみ無職世帯の実収入は月額252,818円、支出合計は月額286,877円、毎月約34,058円の不足。65歳以上単身無職世帯の実収入は月額134,116円、支出合計は月額161,933円、毎月約27,817円の不足)
- 厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」(2026年4月から支給停止基準額を月51万円→月65万円に引上げ)

