老後資金が足りなくなるといわれ「将来自分の生活費が足りなくなるのではないか」と不安に感じてしまう方も少なくはない。老後生活を支える資金の主な代表例としては以下の3つが挙げられる。
- 国民年金や厚生年金などの「公的年金」
- ご自身でそれまでに貯めた「金融資産」
- 企業などから退職した際に支払われる「退職金」
この中でも退職金はある程度まとまった金額を受け取れるので、これだけで老後資金がカバーできるかもしれないと考える方も多いのではないだろうか。結論としては、退職金だけで老後暮らしていけなくはないが、足りなくなる可能性の方が高いといえる。
そこで本記事では退職金で老後どのくらい過ごせるのか、というシミュレーションを具体的に行って検証していく。退職金の有効な活用先を知りたい方、退職金の相場などを知りたい方などもぜひ最後までご覧いただきたい。
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退職金の平均額
まずは退職金の平均額を知って「いくらもらえるのか」をある程度確認しておこう。基本的に退職金は勤めている企業の規模と勤続年数によって上下する。そのため今回は平均額のみに限定して紹介していく。正確なご自身の退職金額を知りたい方は、勤務先へ確認しておくようにしよう。
まずはいくつかの平均データを紹介していく。厚生労働省が発表した「平成25年 就労条件総合調査」の退職給付一時金制度の支給実態によれば、勤続年数20年以上かつ45歳以上の定年退職者の退職金平均額は以下のように発表されている。
- 大卒で1,941万円
- 高卒の管理事務技術職で1673万円
- 高卒の現業職で1128万円
- 出典:厚生労働省「平成25年就労条件総合調査結果の概況」
また中小企業東京都産業労働局による「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年度版)」によれば、定年時も支給金額はモデルケースで大卒が1,118万円、高卒が1,031万円となっている。さらに一般社団法人日本経済団体連合会による2021年9月度「退職金・年金に関する実態調査結果」によれば、上場している大手企業などは勤続年数38年で大学卒は2,243万円、高卒は勤続年数42年で1953万円となっている。
これら3つの調査結果を踏まえると、中小企業であれば約1,000万円、大企業では約2,000万円の退職金がもらえると想定できるだろう。ただし、これは勤続年数が20年や30年以上ある程度まとまった年数勤務した場合の数値だ。そのため20年よりも短くなれば、当然退職金も少なくなるので注意していただきたい。
- 引用:一般社団法人 日本経済団体連合会「退職金・年金に関する実態調査結果」
- 引用:東京都産業労働局調査:「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」
老後資金のシミュレーション
実際に老後資金のシミュレーションをして、退職金で老後が賄えるのかどうかについて確認をしていこう。
結論として、退職金で老後の生活費がカバーできるかは生活レベルによるところが大きい。質素な生活であれば退職金の額にもよるが貯蓄次第では可能で、ゆとりある生活の場合は退職金のみでは難しいだろう。
今回は、それぞれ最低限の質素な生活とゆとりのある生活に分けてシミュレーションで確認していく。老後の生活費は生命保険文化センター「平成28年度生活保障に関する調査」の調査結果を参考に設定している。
最低限の質素な生活
まず最低限、老後を暮らしていける生活費で計算していく。
生命保険文化センターの調査によると、最低限の質素な生活を行うためには老後生活は1ヵ月当たり26万3,315円の支出が必要になる。25年間で60歳で退職して85歳の平均寿命まで暮らす場合の生活費は、26万3,315円× 12ヶ月× 25年 = 7,899万4,500円必要となる。
年金の平均受給額は、厚生労働省が発表した「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和2年度で国民年金受給者の平均受取額は5万6,368円、厚生年金は14万6,145円となっている。後者を65歳から20年間もらう場合、3,507万4,800円が受け取れる。
この不足分は7,899万4,500円 – 3,507万4,800円 = 4,391万9,700円不足する。前述した平均退職金額を引くと、中小企業であれば約3,400万円、大企業であれば2,400万円が不足する計算だ。
もし退職前に資産をこれ以上保有していれば、運用なども行わず、貯金・退職金・年金で老後資金はカバーできる。
- 出典:生命保険文化センター「平成28年度 生活保障に関する調査」
- 出典:厚生労働省年金局「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
ゆとりのある生活
最低限生活するだけでなく、ゆとりを持って暮らしたいと考える方向けにも計算していく。
生活資金以外にも、温泉旅行や趣味、子供や孫へのプレゼントなど使える金額を多く確保して様々なことを行いたいケースも多いだろう。この場合、生命保険文化センターのデータによると必要支出額の目安は、1ヵ月あたり34万9,000円となる。
25年間続ける場合の必要支出額は、1億470万円だ。年金は前述したように平均の14万6,145円を受け取り、65歳から85歳まで20年間もらうとすると約3,507万4,800円ほど受け取れる。それぞれの退職金を引いても、中小企業であれば約6,000万円、大企業であれば約5,000万円が不足する。
現実的な水準か?
これら2種類のシミュレーション結果をまとめると、以下の通りだ。
中小企業 | 大企業 | |
---|---|---|
退職金のみで暮らせるか(最低限) | 資産3,400万円以上なら可 | 資産2,400万円以上なら可 |
退職金のみで暮らせるか(ゆとりあり) | 資産6,000万円以上なら可 | 資産5,000万円以上なら可 |
日本人の平均貯蓄額は総務省の家計調査報告によれば1,880万円となっている。
最低限の生活であれば可能かもしれないが、ゆとりある生活を送りたい場合、貯金で用意するのは少々難しい水準とわかる。
- 出典:総務省「家計調査報告」
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退職金以外に資産を準備する方法
紹介してきたように、最低限の生活であれば貯金額によっては退職金と年金、貯蓄の3つでカバーできる可能性が高い。しかしゆとりある生活を送りたい場合は確実に不足する。そのため退職金以外に資産を準備する必要が出てくるのだ。
退職金以外の老後資金準備方法として主に以下の4つが挙げられる。
- なるべく長く働く
- 私的年金制度を活用する
- 支出を減らす
- 資産運用する
それぞれ紹介していく。
なるべく長く働く
60歳の定年退職後も、なるべく長く働くことで収入を増やすという方法がある。
貯蓄額を増やせるだけでなく、年金へ任意加入して長く保険料を支払うことで最終的に受け取る年金額を増やせる。最も確実で簡単な方法といえるだろう。
私的年金制度を活用する
日本の年金制度には国民年金、会社員などが加入する厚生年金が存在する。それ以外にも加入は任意である私的年金制度が準備されている。公的年金制度以外に、国民年金基金、厚生年金基金、iDeCo (個人型確定拠出年金)などへ追加で加入しておくことで、将来もらえる年金額を増やせるのだ。
他にも国民年金の未納分を追納し、最終的な年金額を増やすなどの方法も有効である。
支出を減らす
支出を減らし、その分貯金に回す方法もおすすめだ。
家計管理などをして固定費など支出を減らすことに慣れておけば、老後の生活水準も下げられる。貯金額もアップし、準備金額も少なくできて一石二鳥の方法といえるだろう。
資産運用する
保有している金融資産を使って資産運用を行い資産を増やす方法も有効だ。投資を活用して、配当収入で生活費をカバーすることで貯金スピードも速くなる。
さらに自分が働けなくなった時でも収入源がある状態を実現できるので、精神的にも心強いだろう。資産運用は退職金の活用先にも最適で、元手が多ければまとまった配当収入が得られる。
20年運用した場合の資金は以下の通りだ。
1% | 3% | 5% | |
---|---|---|---|
1,000万円 | 1,220 | 1,806 | 2,653 |
2,000万円 | 2,440 | 3,612 | 5,306 |
以下のような商品を分散して組み合わせつつ、準備を進めていただきたい。
- リターン重視:株式、不動産
- 安定性重視:債券、投資信託(インデックス型)
老後に備え、早めの対応をしよう
職業別に異なる退職金は貯金次第では老後の生活費をカバーできるが、それでも一定額以上は不足してしまうことがわかった。また本記事では介護費用や医療費などを省いて計算しているので、もっと多くの資金が必要となる可能性が高い。
そこで資産運用を視野に入れつつ、まずは労働期間を長くしたり、年金制度の活用や支出の削減を行ったりして自分ができることから始め、老後資金の準備を進めてみてはいかがだろうか。
更に、「退職金ナビ」を活用して、資産運用アドバイザーに相談をしてみるのも良いだろう。プロの視点から資産運用の疑問を解決し、納得した上で資産運用を行おう。
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