- 生命保険の積立金を引き出さずにお金を借りる制度がないか知りたい
- 契約者貸付制度を利用するメリットやデメリットが知りたい
- 契約者貸付制度を利用する際の注意点が知りたい
生命保険はいざという時に、自分や家族の暮らしを保障してくれる大切なものであることから、日本では多くの人が加入している。
まとまった資金が必要になったときにも、保険契約を解約すれば解約返戻金を受け取れるが、同時に保障もなくなる。
お金は必要だが、保障がなくなることは避けたいと思っている方は、契約者貸付制度を検討してみてはどうだろうか。
これは、銀行やクレジットカード会社よりも低金利で、保険会社から資金を借り入れできる制度だ。
しかし、いくつかの注意すべき点もあるため、利用時にはこれらを理解しておく必要があるだろう。
本記事では、この制度の概要とメリット・デメリット、そして利用時の注意点について解説する。
現在契約中の保険を解約せずに、お金を用意したいという方は、ぜひ参考にしてほしい。
契約者貸付制度とは
急にお金が必要になったとき、あなたならどうするだろうか。
例えば、自宅の雨漏りを見つけ、その修理代を見積もったら30万円ほどかかることが分かったとする。
修理業者がクレジットカードに対応できない場合、急いで現金を用意しなければならない。
キャッシングという手段があるが、これには利息が年利15〜18%もかかるので、できることならキャッシングはしたくない。
このとき、終身保険などの生命保険に加入していたならば活用できる「契約者貸付制度」について詳細を説明する。
契約者貸付制度の概要
契約者貸付制度とは、保険会社が保険契約者に、お金を低金利で貸してくれる制度だ。
生命保険には、終身保険や養老保険などの「貯蓄型保険」と、定期保険や医療保険などの「掛け捨て型保険」に大別される。
前者では、保険契約が満期になると保険金受取人に支払う保険金を用意するため、保険会社が保険料の一部を貯蓄している。
貯蓄している資金は、保険契約が解約されたときに、解約返戻金として保険契約者に支払われる。
つまりこの制度は、解約返戻金を担保に、保険会社が保険契約者に貸し付けてくれる制度だ。
利用条件
上記の通り、この制度を用いるには、解約返戻金がある貯蓄型保険に加入していることが前提になる。
このため、返戻金がない定期保険や医療保険などの掛け捨て型保険では、この制度は利用できない。
またこの制度は、その名のとおり、保険料を支払っている保険契約者のみが利用できる制度だ。
例えば以下のような場合、この制度が使えるのは、保険契約者である夫だけだ。
- 保険契約者:夫
- 保険対象者(被保険者):妻
- 保険金受取人:子
この制度を用いるには、以上のような利用条件があることに留意しなければならない。
利息について
この制度を使って借り入れを行うと、ローンやキャッシングと比べ、借入れにともなう利息が少なくすむ。
この制度と同じく、借入時の保証人が不要なクレジットカードのキャッシングと比べると、金利が非常に低い。
生命保険主要5社の契約者貸付制度での金利と、クレジット会社のキャッシング金利を、以下の表で比較した。
保険会社 | 金利 | 備考 | |
契約者貸付制度 | 日本生命 | 2.00% | 2022年4月2日以降の契約 |
明治安田生命 | 2.15% | 2013年4月2日以降の契約 | |
かんぽ生命 | 2.00% | 2017年4月2日以降の契約(一時払い年金以外) | |
住友生命 | 1.55% | 2017年4月2日以降の契約 | |
第一生命 | 3.00% | 1999年4月2日以降の契約 | |
キャッシング | JCB | 15.00~18.00% | JCBキャッシングリボ払い利用の場合 |
三井住友カード | 18.00% | 一般カード(5万円~90万円利用)の場合 | |
三菱UFJニコス | 14.94%~17.94% |
なお、地震や台風などの災害で被災した場合には、特別金利で貸付を行ってくれる企業もある(かんぽ生命の場合は年利0.5%に減額(2017年4月2日以降の契約:一時払い年金以外))。
以上のことから、急にお金が必要になった場合に、保険会社から借りることは有効な手段といえる。
契約者貸付制度を利用するメリットとデメリット
どのようなものにも、長所と短所を併せもっている。
長所ばかりに目がいってしまい、短所に目が届かないと、思わぬ失敗をすることがある。
逆に短所ばかりを重視してしまうと、どんな有効な手段も活用する機を逃してしまう。
長所と短所の両方を正確に理解したうえで、この制度を利用しなければ、この制度を有効に活用することはできないだろう。
ここでは契約者貸付制度の長所と短所を整理する。
契約者貸付制度を利用するメリット
この制度がもつメリットを以下に列記する。
- 保険の解約が必要ないため、借り入れをしても、保障は残り続ける。
- 他の借入れ手段と比べ、利用目的の制限がなく、低金利で借り入れができる。
- 借入時の審査、収入証明書類の提出や保証人も不要。
- 解約返戻金の7〜9割までの資金が借り入れできる。長期間契約を続けている場合は、保険会社が貯蓄している返戻金も多額になっているため、大金を借りられる場合もある。
- 返済期限はなく、返済催促もない。
- WEBでも申し込みができる会社もある。
- 保険会社の中には、保険契約者からの申込みを受け付けた当日中に、自分の口座に貸付金を振り込んでくれる会社もある。
- 契約者貸付は信用情報に影響しないため、法的債務整理など金融事故があっても借り入れできる。またこの制度を使った借り入れがあっても、住宅ローンなど各種ローンの審査への影響を受けない。
上記④の記載とは逆に、保険に加入した直後だと解約返戻金もごくわずかなため、この制度が使えない場合もある。
上記⑤で「返済期限はなく、返済催促もない」ことは、場合によっては注意すべき点にもなる。
返済催促がないため、返済の先送りや返済を忘れていると、気づかぬうちに利息が膨れ上がるので注意しなければならない。
契約者貸付制度を利用するデメリット
この制度は解約返戻金を担保にした貸付制度であるため、返戻金の金額以上の借り入れはできない。
また保険会社によっては、貯蓄型保険の中には、契約者貸付制度の対象外としている保険商品もある。
さらには保険会社のなかには、この制度自体がない会社もある。
この制度を使う際には、自分が契約している保険会社に、以下の問合せをすることをおすすめする。
- 契約している保険会社には、契約者貸付制度があるのか?
- 自分が契約している保険商品で、契約者貸付制度が利用できるのか?
- 自分はどのくらいの金額まで借り入れできるのか?
契約者貸付制度を利用すべき人とは
この制度は、連帯保証人も不要なうえ、低金利で借り入れできるため経済的な急場をしのぐ有効な方法だ。
このため以下の内容に該当していれば、急に資金が必要になった場合に、この制度を検討すべきだろう。
- 契約者貸付制度が利用可能な保険に加入している
- 長期間の契約を続けているため、多額な解約返戻金が貯まっている
- 現在契約中の保険を解約したくない
一方で保障内容の見直しを考えている人は、この制度を使わず、契約中の保険を解約することをおすすめする。
借金を作ることなく、解約返戻金が手元に入り、最適な保障内容にした保険を新たに契約すればよい。
契約者貸付制度を利用する際の注意点とは
この制度を利用するにあたっては、いくつか注意すべき点がある。
この注意点を知らずに利用していると、最悪の場合、保険会社から保険を解約されてしまうこともある。
保険契約者の過失で、保険が解約されるようなことがあれば、その後に同じ保険会社と保険の契約をすることも難しくなる。
他の保険会社と契約しようとしても、被保険者の年齢が上がっているため、同じ保障内容でも保険料が上がってしまう。
そのようなことにならないように、ここでは注意点を述べていくので、気をつけてほしい。
返済しないと保険が失効する可能性がある
返済の先送りや返済を忘れていると、その間にも利息が付き続け、知らないうちに利息が膨れ上がってしまうことがある。
元利金(借入金と利息の合計額)が解約返戻金の金額を超えると、保険会社から保険を解約される場合がある。
この制度の利息では、元利金に利息が付く「複利」である場合が多く、利息に対しても利息が付くので金額が膨らみやすい。
返済催促もないため、気づくと返済困難なほど返済金額が膨れあがってしまう場合もあるので、注意が必要だ。
借入時に上限額近くまで借り入れると、上限額を超え、保険が解約されるリスクが高くなるので、気をつけよう。
利用中に保険金が発生した場合は返済に充てられる事がある
貸付を受けている間に、満期保険金や死亡保険金が支給される場合には、保険金から未返済の元利金が差し引かれる。
下記の例のように、1,000万円の死亡保険金の受け取りを見込んでいたが、実際には642万円しか受け取れないこともある。
- 契約上の死亡保険金:1,000万円
- 借入金:200万円
- 金利:6.00%(複利)
- 10年間未納時の利息:158万円(千円以下四捨五入)
- 元利金:358万円
- 支払われる死亡保険金:642万円
このケースでは、将来得られるべき保険金の一部を前借りする結果となり、残された遺族に迷惑をかけることになる。
このようなことにならないように、借り入れたお金は、計画的に返済するように心がけよう。
昔の保険の場合は金利が高くなる可能性がある
上述した例を見て「契約者貸付制度の金利としては、6%は高いのではないか?」と思われた方もいるだろう。
昨今の低金利時代では、そのような金利にならないが、以前の保険契約では保険金の金利も高く借入金の金利も高かった。
保険会社 | 場合の金利 | 現在保険加入した過去の契約で最も高い金利 | |
日本生命 | 2.00% | 5.75% | 1994年4月1日以前の契約 |
明治安田生命 | 2.15% | 5.75% | 1994年4月1日以前の契約 |
かんぽ生命 | 2.00% | 6.00% | 1994年3月3 日以前の契約(一時払い年金以外) |
住友生命 | 1.55% | 5.75% | 1994年4月1日以前の契約 |
第一生命 | 3.00% | 5.75% | 1994年4月1日以前の契約 |
複数の貯蓄型保険に加入したら、それぞれの貸付金利と貸付可能枠を比較して、最も低金利で貸付可能枠が大きい保険を活用しよう。
貸付金利は保険契約をした時期によって変わるが、今後も市中金利の動向によって。現在発表されている金利から変化するだろう。
この制度をはじめ企業から借り入れを行う場合には、必ず貸付金利の確認をしよう。
生命保険の契約者貸付制度を知って賢く利用しよう
本記事では、契約者貸付制度の概要とメリット・デメリット、そして利用時の注意点を解説した。
この制度では、保険の解約をすることなく解約返戻金を担保に低金利で借りられるが、返済を忘れると保険が解約される恐れもある。
このため利用するうえでは、利用枠や金利、利用目的や返済計画を明確にしておく必要がある。
この制度を活用できるか不安を感じる人は保険のプロに相談すれば、自分に合った助言がもらえ、的確な判断ができるはずだ。
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