- 公的医療保険制度の仕組みについて理解したい
- 公的医療保険制度が抱える問題点を知りたい
- 公的医療保険制度の不足を上手に補う民間保険の活用法がわからない
国民皆保険制度が導入されている日本では、すべての国民に公的医療保険への加入が義務付けられている。
この公的医療保険への加入者は「被保険者」と呼ばれるが、複数ある医療保険制度のうちどれに加入するかは、被保険者の職業や年齢によって決まる。
本記事で公的医療保険の仕組みについて説明するので、正しく理解してほしい。
一方、保障範囲が限定的であるなどの理由から、公的な制度に加え民間保険への加入も必要であると言われてる。
そこで、公的医療保険制度の抱える問題点を整理した上で、民間保険の上手な活用法についても解説する。
医療保険への理解を深め、もしもの時に備えておきたいという方は、ぜひ参考にしてほしい。
公的医療保険制度の仕組み
日本国民は加入が義務付けられている公的医療だが、詳しい仕組みを理解していない人も多いだろう。
しかし、仕組みを把握しないまま生活していると、制度をうまく活用できずに損をしてしまうかもしれない。
ここでは、公的医療保険の種類や保険診療を利用する流れについて解説する。
公的医療保険とは
公的医療保険とは、病気やケガによる医療費の一部を公的機関によって負担してもらえる制度だ。
日本は国民皆保険制度が導入されているため、国民全員が病院を受診しやすい体制が整えられている。
なお、年齢や所得によって負担してもらえる割合は異なる。
年齢や所得による医療費の自己負担割合は以下のとおりだ。
区分 | 自己負担割合 |
小学校入学前 | 2割 |
小学校入学後~70歳未満 | 3割 |
70歳以上75歳未満 | 一般所得者は2割現役並み所得者は3割 |
75歳以上 | 一般所得者は1割現役並み所得者は2割 |
公的医療保険には、医療費の軽減のほかにもさまざまな制度がある。
- 高額療養費制度
- 出産育児一時金
- 出産手当金
- 傷病手当金
- 埋葬料
それぞれの制度については後の章で詳しく解説しよう。
公的医療保険制度の種類
公的医療保険制度には、「健康保険(健保)」「国民健康保険(国保)」「後期高齢者医療制度」の3種類がある。
健康保険は、特定の企業に属する従業員や配偶者や子どもなどの扶養家族が入る公的医療保険だ。
4月から6月の給与の平均額(標準報酬月額)をもとに保険料が算出され、半額は事業主が負担してくれる。
扶養家族の保険料は支払う必要がないため、自分の収入で養っている家族がいる場合は保険料の節約が可能だ。
国民健康保険は、都道府県および市区町村が運営している公的医療保険だ。
自営業やフリーランス、専業主婦、年金生活者などが加入対象だ。
基本的に社会保険に加入しておらず、生活保護受給者でない場合は国民健康保険に加入することになる。
また、国民健康保険は健康保険と違って扶養という考え方がないため、全員が被保険者となる。
そのため、配偶者や子どもの保険料も支払う必要があるのだ。
そして、健康保険のように半分を負担してくれる企業に所属していないため、保険料は高額になりやすい。
後期高齢者医療制度は75歳以上の方が加入する制度で、医療費負担の軽減を目的に整備された。
後期高齢者医療制度に加入すると、医療費負担が1割で済むようになる。
ただ、所得によっては2割や3割の負担となる。所得ごとの窓口の負担割合は以下のとおりだ。
窓口負担割合 | 区分 | 判定基準 |
1割 | 一般の所得者 | 下記の2割、3割に該当しない場合 |
2割 | 一定以上の所得があるかた | (1)(2)の両方に該当する場合 (1)同じ世帯の被保険者の中に課税所得が28万円以上のかたがいる。(2)同じ世帯の被保険者の「年金収入」+「その他の合計所得金額」の合計額が以下に該当する。 ・1人の場合は200万円以上 ・2人以上の場合は合計320万円以上 |
3割 | 現役並み所得者 | 同じ世帯の被保険者の中に課税所得が145万円以上のかたがいる場合 ※一定の基準・要件を満たす場合、窓口負担割合が1割または2割になるケースがあります。 |
保険料は原則として年金から天引きされる。後期高齢者医療制度にも扶養の概念がないため、夫婦ともに加入する必要がある。
保険診療を利用する流れ
保険診療を受ける際、保険証の提示が必須だ。保険証が提示できない場合は、医療費を10割負担しなければならない。
もし、保険証を忘れてしまった場合は、一度医療費を全額負担することになる。
そして、後日保険証を受診した医療機関に提示すると、支払った医療費を精算できる。
ただ、医療機関によっては後日精算に対応していないケースもある。
そのような場合は、健康保険や国民健康保険への申請が必要だ。
領収書や診療明細書などの必要書類を提出して申請が完了すると、自己負担分を除いた金額が療養費として支給される。
公的医療保険制度の抱える問題点とは
国民を支えている公的医療保険制度だが、問題点を抱えているのも事実だ。
ここでは、公的医療保険制度の保障範囲や問題点について解説しよう。
公的医療保険制度の保障範囲
医療費負担のほかにも、公的医療保険制度がカバーしている保障範囲は以下のとおりだ。
- 高額療養費制度
- 出産育児一時金
- 出産手当金
- 傷病手当金
- 埋葬料
高額療養費制度とは病院や薬局で支払った金額(入院時の食事代や差額ベッド代は含まない)が1ヵ月で上限を超えた場合に、上回った金額分を支給してもらえる制度だ。
1ヵ月あたりの医療費の上限額は、年齢や所得によって違う。
69歳以下の場合は、以下の表で上限額を確認できる。
適用区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) |
年収約1,160万円~ | 252,600円+(医療費-842,000)×1% |
年収約770~約1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000)×1% |
年収約370~約770万円 | 80,100円+(医療費-267,000)×1% |
~年収約370万円 | 57,600円 |
住民税非課税者 | 35,400円 |
70歳以上の場合は以下の計算方法だ。
適用区分 | 外来(個人ごと) | ひと月の上限額(世帯ごと) | |
現役並み | 年収約1,160万円~ | 252,600円+(医療費-842,000)×1% | |
年収約770万円~約1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000)×1% | ||
年収約370万円~約770万円 | 80,100円+(医療費-267,000)×1% | ||
一般 | 年収156万~約370万円 | 18,000円 | 57,600円 |
住民税非課税等 | Ⅱ 住民税非課税世帯 | 8,000円 | 24,600円 |
Ⅰ 住民税非課税世帯 (年金収入80万円以下など) | 15,000円 |
子育てサポートの一環として、出産育児一時金や出産手当金も支給されている。
出産育児一時金は出産した場合に、法定給付額を受け取れる制度だ。金額は以下のとおりである。
令和5年4月1日以降の出産の場合 | |
産科医療補償制度に加入の医療機関等で妊娠週数22週以降に出産した場合 | 1児につき50万円 |
産科医療補償制度に未加入の医療機関等で出産した場合 | 1児につき48.8万円 |
産科医療補償制度に加入の医療機関等で妊娠週数22週未満で出産した場合 |
出産手当金は出産のために会社を休んで収入がなくなった場合、出産の日以前42日から出産の翌日以後56日目までの範囲内で、手当金が支給される制度だ。
出産が予定日より遅れると、遅れた期間も出産手当金の支給対象となる。
傷病手当金は、病気やケガで連続して3日以上休んで収入がない場合に最大1年半にわたって給料の約2/3が支給される制度だ。
また、被保険者が亡くなった場合、埋葬を実施した者には埋葬料として5万円が支給される。
少子高齢化による税収の減少と医療費用の増大
世界と比較しても充実した公的医療保険制度を誇る日本だが、少子高齢化による税収の減少と医療費用の増大の問題が顕在化している。
厚生労働省の「令和4年度医療費の動向」によると医療費は46兆円だった。
2008年の医療費は34.1兆円だったため、15年で10兆円以上も医療費が膨れ上がっていることがわかる。
医療費が大きくなると、公的医療保険制度を維持するためにこれまで以上の財源が必要になるのだ。
しかし、少子高齢化が進行すると働き手が少なくなるため、医療費の財源である税収は少なくなってしまうだろう。
現在は税収をキープするためにさまざまな増税がおこなわれたり、社会保険料が高くなったりしている。
給料からの天引き額が大きくなって、影響を実感している方も多いだろう。
少子高齢化による税収の減少と医療費用の増大によって、公的医療保険制度の維持は難しくなってきているのだ。
民間医療保険の必要性を解説
厚生労働省によると、2070年には日本の総人口は8,700万人になると予想されている。
高齢化率は2020年から10%以上高い38.7%になり、15〜64歳人口も7,509万人から4,535万人にまで減少する予測だ。
高齢化率は高くなる一方で現役世代が減少することが見込まれており、今以上に公的医療保険制度の維持が難しくなるだろう。
現在は充実した公的医療保険制度だが、財源の確保が難しくなって破綻する恐れもある。
万が一の場合に備えられるのが民間の医療保険だ。病気やケガによる長期入院で収入が減るリスクに対応できたり、がんと診断された場合に給付金を受け取れたりとメリットは多い。
民間医療保険の上手な活用法
民間医療保険は活用方法が非常に重要である。保障内容や保険料などを踏まえて検討しないと、いざという時に役立たない可能性があるからだ。
しかし、正しい活用方法がわからない人も多いだろう。ここでは民間医療保険の上手な活用方法を紹介する。
公的保険でまかなえない部分を考えて加入する
民間保険は 公的保険でまかなえない部分を考えて加入しよう。
高額な医療費がかかるがんに羅患した場合、高額療養費制度で負担額は軽減される。
ただ、上限額までは治療が終わるまで毎月必要となる計算だ。
たとえば、50歳年収700万円のサラリーマンが、100万円の医療費が必要ながんになったケースを想定してみよう。
80,100円+(医療費-267,000)×1%の計算式を適用することになる。(医療費=負担額ではない)
80,100円+(1,000,000-267,000)×1%=87,430円が上限だ。
公的医療保険制度に加入しているだけだと毎月8万円以上を負担することになるため、民間の医療保険でも備えておきたい。
がんと診断された時点での給付金、入院や通院日数分の給付金を受け取れる保険に加入しておくと、万が一の場合にも安心だ。
月々の保険料を無理ない範囲で設定する
保険に加入する際、保障内容を手厚くすると毎月の保険料負担が重くのしかかってしまう。
しかし、月々の保険料負担が重すぎると、途中で解約する必要が出てくるかもしれない。
万が一の場合に備える保険のせいで家計が苦しくなっていたら、元も子もないだろう。
継続して保険に加入できるように、月々の保険料は無理のない範囲で設定しておくべきだ。
年齢やライフスタイルに応じて必要な保険を選ぶ
年齢やライフスタイルに応じて必要な保険を選ぼう。
自分に合った保険でなければ、万が一の場合に役立たない可能性があるからだ。
そのためには、保険選びを始める前には、加入目的やライフプランを整理しておく必要がある。
目的や今後の生活が明確になっていると、条件を満たす商品を限定できるため、保険選びがスムーズになるだろう。
まとめ
本記事では、公的医療保険制度の仕組みと問題点、さらに民間医療保険の上手な活用法について解説した。
公的医療保険とはすべての国民に加入が義務付けられている医療制度のことで、活用すると自己負担額を抑えて治療を受けることができる。
加入者のことを被保険者とよび、職業や年齢によって対象となる保険制度の種類が異なる。
一方、高齢化による医療費の増大と少子化による税収の減少で、公的医療保険制度は存続の危機にある。
また、保障の適用範囲も限定的であることから、民間医療保険に加入する必要性は一層高まってきている。
年齢やライフスタイルに応じて、無理のない保険料の範囲で必要な保険を選んで欲しい。
もし、自分に合っている保険はどれなのかと判断に迷ったら、保険のプロに相談することも積極的に検討しよう。
一人一人に合ったアドバイスをもらうことで、あなたに必要な医療保険を選ぶことができるはずだ。
また、保険のプロは数多く存在し、その中から自分にとって最適な担当を見つけるのは難しいだろう。
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