- 公的医療保険の仕組みや必要性について理解したい
- 公的医療保険を利用するメリットが知りたい
- 公的医療保険の課題点や解決策に関する情報が知りたい
公的医療保険は、国民全体の健康を守る必要不可欠な制度である。
ただ、その仕組みや特徴について理解できている人は少ないのではないか。
理解が不十分だと、必要な時に活用できないだけでなく、満足のいく医療を受けられない恐れもある。
本記事では、公的医療保険の基本的な仕組みやメリット、そして課題と解決策について解説する。
公的医療保険の制度について学びたい、という方はぜひ参考にしてほしい。
公的医療保険制度の基本的な仕組み
公的医療保険は、国民全体の健康を守るために必要な制度だ。
しかし、仕組みや特徴を正しく理解できている方は少ないのではないだろうか。
自分自身の健康のためにも、基本的な仕組みに対する理解を深めておくことが重要だ。
ここでは、公的医療保険制度の仕組みについて分かりやすく解説していく。
公的医療保険制度の概要
公的医療保険は、すべての国民が保険料を出し合うことで、治療にかかる経済的な負担を軽減する制度のことだ。
日本にあるどの医療機関で治療を受けた場合でも、保障が受けられる点が大きな特徴となっている。
日本の公的医療保険では、診察・治療にかかった費用の一部を負担するだけで済み、残りは公的医療保険によって賄われる。
少ない自己負担で医療を安心して受けられることが制度の特徴だ。
なお、公的医療保険にはいくつかの種類があり、職業や年齢によって加入する保険が異なる。
自分がどの種類の保険に加入していて、どのような場合に公的医療保険が適用されるのかを把握し、特徴を理解しておくことが大切だ。
具体的な種類
具体的な公的医療保険の種類としては主に以下の4つが挙げられる。
- 国民健康保険
- 健康保険
- 共済組合
- 後期高齢者医療制度
国民健康保険は、都道府県・市区町村が運営している制度だ。
自営業者や専業主婦(夫)、無職、74歳以下の高齢者など、企業に所属していない方が加入する。
健康保険は、企業に所属する従業員やその扶養家族が加入する制度だ。
大企業を対象とした「健康保険組合」や、中小企業を対象とした「協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険」などがある。
共済組合は、公務員や私立学校の教職員とその扶養家族が加入する制度だ。
基本的な仕組みは健康保険と大きく変わらない。
後期高齢者医療制度は、75歳以上の高齢者が加入する制度である。
年金からの天引きまたは納付書等で保険料を納める仕組みとなっており、少ない医療費負担でサービスを受けられる点が特徴として挙げられる。
加入している保険制度によって保険料の納付方法や医療費の自己負担割合などが異なるため、仕組みを正しく理解しておこう。
制度の仕組み
公的医療保険は、すべての国民に加入義務があり、保険料を負担している。
国民健康保険の加入者は納付書による納付、健康保険・共済組合の加入者は給与天引き、後期高齢者医療制度の加入者は年金からの天引きまたは納付書による納付を行う仕組みだ。
また、健康保険・共済組合の加入者であれば配偶者・子どもが扶養に該当する場合、一緒に保険に加入させることができる。
人数に関係なく健康保険料を支払う必要がないため、保険料の負担を抑えられる点も特徴のひとつだ。
そして公的医療保険による給付は、現金ではなく医療サービスそのものが支給される仕組みとなっている。
治療・診察にかかった費用は年齢に応じて以下のような自己負担割合となる。
年齢 | 自己負担割合 |
義務教育就学前 | 2割 |
義務教育就学〜69歳まで | 3割 |
70歳〜74歳 | 2割(現役並み所得者は3割) |
75歳以降 | 1割(一定以上所得がある方は2割、現役並み所得者は3割) |
ケガや病気にかかるリスクが高く、治療の頻度が高くなりがちな高齢者の負担が軽減される仕組みが設けられている。
すべての世代が安心して医療を受けられる点が制度の特徴だ。
公的医療保険制度を利用するメリットとは
公的医療保険は以下のようなメリットを持つ魅力的な制度だ。
- 国民全員が利用可能
- 全国どこでも利用可能
- 治療費負担の軽減
上記3つのポイントを理解しておくと、より効果的に制度を活用できるだろう。
それぞれについて解説していくので、ぜひ参考にしてほしい。
国民全員が利用可能
日本では「国民皆保険制度」という仕組みが導入されており、すべての国民が医療保険に加入している。
国民全員が制度を利用できるというのは、諸外国と比べて大きなメリットと言える。
例えばアメリカの場合、公的な医療保険制度は「メディケア」「メディケイド」のみとなっている。
高齢者や障害者、低所得者を対象とした保険制度となっており、現役世代の多くは公的制度を利用できないのが現実だ。
また、アメリカで公的保険に加入できない人々は民間の医療保険を利用するしかないが、民間の保険商品の保険料が高い点も課題となっている。
公的保険もなく、民間の医療保険にも加入できずに満足の行く医療を受けられない人がいる点がアメリカで社会的な問題となっているのだ。
日本の場合は所得や年齢に関係なく、すべての国民が公的保険を利用できる。
必要に応じて民間の保険商品を利用するケースはあるものの、最低限の保障は国民全員が受けられる。
すべての国民が安心して医療を受けられる点は、アメリカなどの外国と比べて大きな魅力と言えるだろう。
全国どこでも利用可能
日本の医療保険制度の強みとして、全国どこの医療機関でも治療を受けられる点が挙げられる。
どの地域のどの医療機関でも医療サービスが受けられる仕組みが採られており、希望の医療行為を受けられる点が大きなメリットだ。
例えば、イギリスでは患者ごとに決められたかかりつけ医を登録しなければならない。
登録された診療所以外の診察を自由に選べない仕組みとなっているのだ。
緊急性が高くないと判断された場合、治療を受けるまでに2〜3週間ほど待たされるケースもあると言われている。
日本では、最初に治療・診察をしてもらう医療機関を自由に選ぶことが可能だ。
大病院・診療所などの病院の規模や、内科・外科などの診療科を問わず、受診したい医療機関を選べる点が魅力となっている。
例えば、自宅から通える距離にある最寄りの病院を選んでも良い。
また、隣町に信頼できる先生がいる場合はそちらに行っても問題はない。
何も制限を受けず、自由に医療機関・病院を選択できる点も日本の保険制度のメリットと言えるだろう。
治療費負担の軽減
治療費負担の軽減ができる点も制度の大きな魅力だ。患者は原則として医療費の1〜3割を支払うだけで、質の高い医療サービスを受けることができる。
経済的な負担を軽減しながら安心して医療を受けられる点もメリットと言えるだろう。
日本医師会の公式サイトによると、主要都市の盲腸(虫垂炎)の治療費は以下の表のようになっている。
都市 | 治療費 |
ニューヨーク(アメリカ) | 152.2〜440.9万円 |
パリ(フランス) | 22.1〜97.3万円 |
マドリッド(スペイン) | 48.6〜91.8万円 |
ロンドン(イギリス) | 74.1万円 |
ローマ(イタリア) | 69.2〜73.1万円 |
ジュネーブ(スイス) | 27.8〜70.5万円 |
バンクーバー(カナダ) | 66.7万円 |
シンガポール(シンガポール) | 34.9〜43.6万円 |
デュッセルドルフ(ドイツ) | 35.7万円 |
日本 | 30.0万円 |
上記の通り、日本は諸外国と比べても医療費そのものが安い。
その上で公的医療保険による自己負担軽減もできるため、かなり経済的な負担を抑えることが可能だ。
また、治療費が一定額を超えた場合に超えた部分を払い戻す「高額療養費制度」も設けられている。
1ヶ月の医療費が所得に応じた一定額を超えた場合に適用されるため、長期入院や手術をしても医療費の負担が過度に大きくなる心配はない。
医療費の自己負担を軽減できる仕組みが充実している点も、日本における公的医療保険の大きなメリットと言えるだろう。
公的医療保険制度の課題と解決策
さまざまな魅力を持つ日本の保険制度だが、一方で課題も存在している。
場合によっては十分な医療を受けられない可能性もあるため、問題点を把握しておくことが重要だ。
ここでは、公的医療保険の課題とその解決策として個人ができる対処法を解説していく。
内容を正しく理解し、安心して医療行為を受けられる準備をしておこう。
利用できない職業もある
すべての国民が加入できる日本の保険制度だが、加入する保険制度によっては一部のサービスを受けられない場合がある。
職業・働き方によって受けられる保障内容に違いがある点は注意が必要だ。
例えば、健康保険組合や協会けんぽに加入している従業員は「出産手当金」の支給を受けることができる。
過去12ヶ月分の給料をもとにした日給の3分の2に相当する金額が1日あたりで支給されるため、出産前後の休業による収入の減少を補うことができる。
しかし、自営業者やフリーランスなどが加入する国民健康保険には「出産手当金」に相当する制度が設けられていない。
出産前後の期間に働けなくなると、収入が大幅に減少してしまうリスクが想定される。
また、「傷病手当金」についても加入する保険制度によって取り扱いが異なる。
会社員が加入する健康保険では業務外のケガや病気で4日以上休業した場合、過去12ヶ月分の給料をもとにした日給の3分の2相当額が1日あたりで支給される。
一方で国民健康保険には「傷病手当金」に相当するような制度も設けられていないため、ケガや病気で長期休業を余儀なくされた場合、経済的に大きなダメージを受けてしまう。
このように、職業・働き方によって利用できるサービスに違いがある点は頭に入れておく必要がある。
こうした課題を踏まえた上で、不足する保障をどのように補っていくべきかを検討していこう。
適用外の治療・薬の問題
公的医療保険では、すべての治療が保障の対象となるわけではない。
厚生労働省による承認を受けていない薬を使ったり、治療を行ったりする場合は保険対象外となるため注意が必要だ。
健康保険が適用されない治療のことを「自由診療」と呼ぶ。
自由診療に該当する場合、医師の診察や検査、投薬などのすべての医療行為にかかる費用を自己負担しなければならない。
また、現在の保険制度では適用対象外となる「先進医療」についても考えておく必要がある。
先進医療とは厚生労働大臣の承認を受けた高度な医療技術のことで、先進医療にかかる技術料は全額自己負担となる。
ただし先進医療は自由診療と違い、通常の診察や検査、投薬、入院費用などは健康保険の対象となる。自己負担が必要となるのは先進医療の技術料のみだ。
先進医療の技術料は治療の内容によってさまざまだが、数十万円から数百万円の負担となる場合がある。
これらを全額自己負担するとなると、貯蓄だけでは準備が難しいと言えるだろう。
上記の通り、厚生労働省による承認を受けていない自由診療や、先進医療を受ける必要がある場合、高額な医療費を負担しなければならなくなる。
公的保険適用外の治療や薬の経済的負担についても大きな課題となっているのだ。
民間の医療保険を併用する
「職業・働き方によって保障内容が異なる」「適用外の治療・薬を利用すると高額な医療費が発生する」という問題の解決策として、民間の医療保険を併用するという方法がある。
公的保険制度とは違い、任意で加入する民間の保険商品だ。
民間の医療保険は、公的制度で足りない分をカバーする役割を担っている。
入院日数に応じて支給される「入院給付金」や手術の際に支給される「手術給付金」など、ケガや病気による入院・手術のリスクをしっかりとカバーできることが特徴だ。
前述の通り、フリーランスや自営業者などの国民健康保険加入者は「傷病手当金」などの制度がないため、万が一長期入院をすることになった場合は経済的な負担が大きい。
しかし民間の医療保険に加入していれば、入院給付金等の支給によって収入減少などをカバーできる。
また、民間の医療保険に任意で上乗せできる「先進医療保険特約」を活用すると、先進医療にかかる技術料が保障される。
通算で1,000万円〜2,000万円まで保障されるケースが多く、高額な費用が発生する先進医療もしっかりと保障可能だ。
このように、公的医療保険の課題を個人で解決するためには民間の医療保険との併用がポイントとなる。
公的制度による不足分を感じる方は、ぜひ自分に合った民間の医療保険を探して契約してみてはいかがだろうか。
また、自分に合った保険選びを実現したいのであれば、保険のプロに相談することをおすすめする。
必要な保障内容や具体的な保険プラン、現在加入中の商品の見直しなど、寄り添ったサポートを受けられる。
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サービスは無料で利用できるので、ぜひこの機会に活用してみよう。
まとめ
本記事では、公的医療保険の基本的な仕組みとメリット、そして課題と解決策について解説した。
公的医療保険は全国どこでも利用可能で、治療費負担の軽減効果がある。一方で入院時の差額ベッド代や食事代が自己負担になったり、適用外の治療・薬も存在する。
自己負担となる部分を保障する、または適用外の治療の費用を特約で保障してくれる民間の保険を利用することで、問題の解決に繋がる。
ただ、民間の医療保険は保険会社毎に提供する内容が違うため、本記事を読んだだけでは自分に最適な医療保険が選べないという人もいるだろう。
そんな時は保険のプロに相談することも検討しよう。一人一人に合ったアドバイスをもらうことで、あなたに必要な医療保険を的確に選択することができるはずだ。
また、保険のプロは数多く存在し、その中から自分にとって最適な担当を見つけることは難しいだろう。
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