- 個人年金保険の税制適格特約の概要がわからない
- 税制適格特約のメリットや利用時の注意点がわからない
- 税制適格特約を効果的に活用する方法が知りたい
税制適格特約、という言葉に聞き馴染みはあるだろうか。
個人年金保険に加入した際に付加できる特約の一種である。
おそらくどんな物なのかあまり想像がついていない方も多いだろう。
本記事では、税制適格特約の概要やメリットと利用時の注意点、税制適格特約の効果的な活用方法について解説する。
個人年金保険をお得に利用したいと考えている方は、是非参考にしてほしい。
個人年金保険の税制適格特約とは
個人年金保険に加入する場合には、税制適格特約について理解しておかなければならない。
死亡保険や医療保険とは違い、保険料控除を適用するために付帯しなければならない特約であるためだ。
ここでは個人年金保険の税制適格特約についてまとめる。
税制適格特約とは
税制適格特約とは諸条件を満たす個人年金保険に付帯できる特約だが、医療保障特約や三大疾病保障特約のような「保障」を追加できる特約ではない。
特約保険料は発生せず、条件を満たした場合にのみ付帯できる特約である。
また税制適格特約を付帯できれば、個人年金保険料控除を適用できる。
個人年金保険料控除は所得税・住民税を軽減できる控除であるため、できれば税制適格特約を付帯したい。
なお、個人年金保険の税金の仕組みについては以下の記事でまとめているので、改めておさらいしておきたいという方はチェックしていただきたい。
個人年金保険の税制適格特約を利用できる条件とは
税制適格特約はすべての個人年金保険に付帯できるわけではなく、次の4つの条件をすべて満たす必要がある。
- 年金受取人が契約者かその配偶者であること
- 年金受取人が被保険者と同一人であること
- 保険料の払込期間が10年以上で、定期的に支払う契約であること
- 年金受取開始が満60歳以降で、受取期間が10年以上であること
パンフレットなどを見ると、個人年金保険の商品には「税制適格特約の対象」である旨が明記されているため、上記の条件を満たしているか確認して契約を締結するとよい。
個人年金保険の税制適格特約を利用するための手続き
税制適格特約は、契約時に主契約に付帯する。前述の4つの条件を満たしていれば付帯できる。
個人年金保険料控除を利用したい人は、契約前と契約時に必ず確認しよう。
また税制適格特約を付帯していれば、毎年10月ごろに送付される保険料控除証明書の個人年金保険料控除の欄に金額が記載される。
控除証明書の金額をもとに年末調整や確定申告をすればよい。
個人年金保険の税制適格特約のメリットと注意点
税制適格特約にはメリットや注意点がある。
一般生命保険料控除や介護医療保険料控除と比べると、少し複雑であるため、ここで理解しておきたい。
個人年金保険の税制適格特約のメリット
個人年金保険に税制適格特約を付帯すれば、個人年金保険料控除を活用できる。
所得税・住民税が発生していれば、税金が還付される制度である。
支払った保険料の全額が戻ってくることはないが、所得税は最大で4万円、住民税は2.8万円が還付されるため、メリットとしておさえておこう。
個人年金保険の税制適格特約にはいくつかの制限が発生する
税制適格特約が付帯された個人年金保険の契約内容を変更する場合、前述の4つの条件を満たさない変更はできない。
たとえば、年金受取人を配偶者から子どもにすることはできない。
また税制適格特約だけを契約途中で外すこともできない。
契約途中で年金額を減額し、返戻金がある場合、通常減額時に支払われるが、税制適格特約を付帯していると、増額年金の買い増しに充当される。
個人年金保険料控除には上限がある
生命保険料控除には、新制度(一般生命保険料控除と介護医療保険料控除、個人年金保険料控除)と旧制度(一般生命保険料控除と個人年金保険料控除)がある。
控除の仕組みについては次章で詳しく解説するが、個人年金保険料控除の控除額は最大4万円(住民税は2.8万円)であるため、税制適格特約を付帯しても税金が軽減されないこともある。
また一般生命保険料控除の枠に空きがあるなら、逆に税制適格特約を付帯せず、一般生命保険料控除の適用を受けたほうが税軽減につながることもある。
次章で解説する生命保険料控除について理解を深めておこう。
個人年金保険の税制適格特約の効果的な活用法
個人年金保険に税制適格特約を付帯しても、控除を受けられないこともある。
生命保険料控除の仕組みや控除額について理解していなければ、十分なメリットを得られない可能性もある。
ここでは税制適格特約の効果的な活用法について解説する。
生命保険料控除の仕組みを理解する
前述のとおり、生命保険料控除には新制度と旧制度があり、それぞれ控除額や上限が異なる。
新制度を例にすると、3つの控除それぞれの上限が4万円で、最大12万円まで控除できる。控除額や計算式は、次のとおりである。
新契約(平成24年1月1日以降)
所得税 | 住民税 | ||
---|---|---|---|
1年間に支払った保険料の額 | 控除額・控除額の計算式 | 1年間に支払った保険料の額 | 控除額・控除額の計算式 |
~20,000円 | 1年間に支払った保険料の全額 | ~12,000円 | 1年間に支払った保険料の全額 |
20,001円~40,000円 | (保険料の額×1/2)+10,000円 | 12,001円~32,000円 | (保険料の額×1/2)+6,000円 |
40,001円~80,000円 | (保険料の額×1/4)+20,000円 | 32,001円~56,000円 | (保険料の額×1/4)+14,000円 |
80,001円~ | 40,000円 | 56,001円~ | 28,000円 |
旧契約(平成23年12月31日以前)
所得税 | 住民税 | ||
---|---|---|---|
1年間に支払った保険料の額 | 控除額・控除額の計算式 | 1年間に支払った保険料の額 | 控除額・控除額の計算式 |
~25,000円 | 1年間に支払った保険料の全額 | ~15,000円 | 1年間に支払った保険料の全額 |
25001円~50,000円 | (保険料の額×1/2)+12,500円 | 15,001円~40,000円 | (保険料の額×1/2)+7,500円 |
50,001円~100,000円 | (保険料の額×1/4)+25,000円 | 40,001円~70,000円 | (保険料の額×1/4)+17,500円 |
100,001円~ | 50,000円 | 70,001円~ | 35,000円 |
各控除の枠を最大限活かせるよう工夫する必要がある。
契約済みの保険が該当する控除枠を確認する
上記の控除枠を最大限に活かすために、既契約の控除枠について確認しなければならない。
特に個人年金保険料控除の枠が残っているかどうか、チェックしよう。
年間の保険料が、所得税で8万円超、住民税で5.6万円超であれば、控除の枠は残っていない。
個人年金保険料控除の枠がなく、一般生命保険料控除の枠があれば、税制適格特約を付帯しないほうがよい。
税制適格特約を付帯しない個人年金保険は一般の生命保険料控除と見なされる。
納税額の高い人がまとめて保険料を払うようにする
生命保険料控除の恩恵は、所得税や住民税を支払っていなければ受けられない。
所得税の非課税の範囲で収入を得ている場合は、もともと税金ゼロなので、控除の効果はない。
そのため、生命保険料控除の上限とともに、所得税額や住民税額も確認しておこう。
個人年金保険の税制適格特約のメリットや注意点を理解して効果的に利用しよう
本記事では、税制適格特約の概要やメリットと利用時の注意点、税制適格特約の効果的な活用法について解説した。
保険に付帯できる特約には様々な種類があるが、税制適格特約はその中でも保険料控除に特化した物である。
適用条件を確認しておくことで、お得に個人年金保険が利用できるため、是非特約の付与を検討してみてほしい。
しかし、控除の特約を正しく活用するためには、加入している保険の控除枠の確認や保険料支払い者の設定など、専門的な知識が必要になる。
そのため、判断にまよった際には、保険のプロに相談することも検討してみよう。
一人一人に合ったアドバイスをもらうことで、的確な判断をすることができるはずだ。
また、全国の保険のプロから自分に合った担当者を探す際には「生命保険ナビ」の活用をおすすめする。
「生命保険ナビ」は、自身の条件に合った保険のプロを簡単に見つけることができるマッチングサービスである。
気になった担当者とは無料相談もできるので、是非活用してほしい。