- がん保険の入院給付金の仕組みを理解したい
- 給付金と治療費のバランスが取れた保険選びをしたい
- 入院給付金の受け取り方やその際の注意点が知りたい
本記事では、がん保険の入院給付金の仕組み、最適な給付金額を見つけるためのポイント、さらに受け取る際の注意点を解説する。
保険業界における「入院給付金」とは、病気やケガで入院した際に、入院日数に応じて給付金を受け取れる保障のことだ。
特にがんの場合は、転移や再発のリスクが高く、入退院を繰り返すことで家計への負担が大きくなることがある。
このため、がん保険を選ぶうえでは、入院給付金の仕組みやその適正額を考えておく必要があるのだ。
がん保険の加入を検討している方や、既に加入している保険の見直しをお考えの方は、ぜひ参考にしてほしい。
がん保険の入院給付金とは何か
がん保険は、がん治療のための入院や手術、抗がん剤治療などを行ったときに給付金が受け取れる医療保険だ。
がんは日本人の死因第1位で、亡くなった方の24.6%、つまり4人に1人がこの病気で亡くなっている。
また日本人が一生のうちに、がんと診断される確率は、男性65.5%・女性51.2%との調査結果もある。
つまり一生のうちに2人に1人以上が診断されている、がんに対する備えは、誰もがもっておく必要があるだろう。
ここでは、がん保険の概要や種類、そして医療保険ではなく「がん保険」が必要であることを解説する。
- 出典:厚生労働省「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況」P10 図5「主な死因の構成割合(令和4年(2022))」より引用
- 出典:国立研究開発法人国立がん研究センター「最新がん統計」
がん保険とは?
がん保険は医療保険の一種だが、がんに特化した治療に対する手厚い保障が特徴で、がん以外の病気への保障は受けられない。
このため、国民病とも呼ばれるがんに備えて、がん保険に加入する人は少なくない。
①がん保険・がん特約の加入率 | ②特定疾病保障保険・特定疾病保障特約の加入率※ |
---|---|
39.1% | 30.9% |
出典:公益財団法人生命保険文化センター「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」
P77 「<図表 II-35> ガン保険・ガン特約の加入率」全生保データより引用
P78 「<図表 II-37> 特定疾病保障保険・特定疾病保障特約の加入率 」全生保データより引用
上記①②を重複して加入している人もいるかもしれないため単純には合算できないが、2人に1人は、がん保障のある保険に加入していると思われる。
がん保険の種類
がん保険には複数の種類があるため、自分のライフスタイルに合ったタイプのがん保険を選ぶべきだ。
ここでは、さまざまなタイプのがん保険を、それぞれ説明する。
- 従来タイプ
- 「がん診断給付金」と「入院・手術給付金」を主契約とするタイプ。がん診断給付金は、がんと診断された後も、1年または2年毎に再度がんと診断されたら、改めて給付金が受け取れる。
- がん診断給付金タイプ
- 医師から、がんと診断されたときに、受け取れる給付金(がん診断給付金)のみを、主契約とするタイプ。
- 入院給付金タイプ
- がん治療のために、入院した場合に受け取れる入院日数分の給付金(手術給付金)のみを、主契約とするタイプ。
- 通院タイプ
- がん治療のために、通院治療したときに受け取れる給付金(通院給付金)のみを、主契約とするタイプ。
- 手術給付金タイプ
- がん治療のために、手術を行った場合に受け取れる給付金(手術給付金)のみを、主契約とするタイプ。
- 実費給付タイプ
- 実際にがん治療にかかった費用を、かかった分だけ給付するタイプ。
がん保険は、いずれかのタイプの保険をベースに加えたい保障内容を特約として付け加え、加入する場合が多い。
代表的な特約としては、抗がん剤治療特約・放射線治療特約・がん先進医療特約などが挙げられる。
なかには、がん治療にともなう脱毛のために用いる医療用ウィッグの費用を保障する、外見ケア特約などもある。
なお、がん保険の保障内容についてはこちらでも説明している。さらに詳しく知りたいという方はチェックしてほしい。
がん保険の必要性
がんも病気の一種であるため、一般的な医療保険でも医療費を保障してくれる。
一般的な医療保険の入院給付金では、入院1回当たりの給付日数や通算給付日数に上限があるが、がん保険にはこの上限がない。
がんという病気は再発や転移の可能性が高く、他の病気以上に入院日数や入退院の回数が多くなる傾向があるためだ。
がん治療には、抗がん剤や放射線など通院しながら行う治療も多いが、一般的な医療保険では通院での医療費は保障しない。
がん保険は通院での医療費を保障するものも多く、医療保険とは別に、加入を検討すべき保険といえる。
がん保険の入院給付金はいくら必要?受け取る際の注意点も解説
がん保険を検討するうえで、入院給付金をどのくらいの金額に設定すればよいか、悩まれている方も多いのではないだろうか。
給付金の金額を高くすればするほど安心感は高まるが、保険料も上がってしまう。
ここでは、入院給付金を最適な金額に設定するための考え方を解説する。
さらに入院給付金の受け取り方や、注意点についても説明する。
がんの治療にかかる費用
がんの治療にかかる1日当たりの入院費用を参考に、必要とする入院給付金の金額を考えてみる。
国内最大規模の健康保険事業者である全国健康保険協会のデータによれば、平均入院費用は78,525円/日だ。
実際には公的医療保険(健康保険)の利用により、3割の自己負担になるので、がんの入院治療での負担額は23,557円/日となる。
ただし、この値は平均値であり、年齢やステージ(がんの進行度)により医療費も高額になる。
またがんが発症した部位によっても、治療や手術の難易度が変わってくるため、金額も変わる。
- 出典:独立行政法人統計センター「令和3年度医療給付実態調査」「表6 疾病分類(再掲,主要疾病)別,医療制度別,1日当たり診療費(入院、入院外)」のうち「 (0201-0210)悪性新生物<腫瘍>」の協会(一般)データを引用
- (注意)上記リンク先のファイルはダウンロードされる。
がん保険の入院給付金額を設定する際に考えるべきこと
医療費の自己負担額は、高額療養費制度を使えば、さらに費用負担は抑えられる。
しかし入院時の費用のなかには、健康保険では負担してくれないものも多くある。
- 先進医療や自由診療での治療費
- 入院中の諸費用
- 入院中の食費、差額ベッド代、診断書などの文書料、入院中に使う日用品、家族の交通費・宿泊費、お見舞いのお返し、など
- 通院・入院時の交通費
- 生活費
- 収入が途絶えてしまう入院中の生活保障(個人事業主など)
これらの費用を補ってくれるものが、がん保険だ。
これらの費用にどのくらいの金額が必要かを見積もり、がん保険での適正な入院給付金額を考えよう。
がん保険の入院給付金の受け取り方
がん保険の入院給付金は、以下のプロセスを通じて、受け取れる。
- 証券番号(生命保険証券などに記載)
- 被保険者の氏名
- 入院日
- 手術予定日
- 退院予定日
- 病名
- 手術名
※1:ステップ1(生命保険の連絡の段階)では、上記④〜⑦は必須な情報ではない。しかし保険会社から確認が入る場合もあるため、事前に把握し、可能な限り伝えるようにすべきだ。
※2:書類の記入には、以下のものが必要になる場合がある。
- 給付金の振込口座の番号と名義人(原則、受取人本人の口座)
- 捺印
※3:生命保険会社へ書類を発送する際には、保険会社所定の診断書(病院側で記載)の同封が求められる場合がある。
※4:保険会社から病院に問い合わせをする場合もあるので、担当医師に保険会社から連絡があるかもしれないことを伝えておく。
上記の手続きが、インターネットを通じて行える保険会社も多い。
保険支払い事由の発生(がん告知など)から3年以内に保険金・給付金の請求がなければ、保険法の定めにより、時効が成立する。
時効が成立すると請求権がなくなり、入院給付金をはじめ、ほかの保険金・給付金も受け取れなくなるので注意が必要だ。
なお保険会社から給付される入院給付金は非課税になるため、納税の手続きは不要となる。
がん保険の入院給付金に関する注意点
先述した「入院給付金を受け取るまでのプロセス」のうち、保険会社の審査結果によっては、入院給付金が受け取れないこともある。
以下のようなことに該当すると、保険会社の審査が通過せず、入院給付金も受け取れないので注意してほしい。
- 免責事項
多くのがん保険には免責期間がある。この期間中(契約開始日から90日間)に、がんと診断されても入院給付金は受け取れない。さらに加入した保険の契約は無効となる。 - 告知義務違反
生命保険の手続きをする際に、「告知書」と呼ばれる保険会社からの質問書の提出が求められる。記載内容に虚偽があれば、告知義務違反とみなされ、過失・故意に関係なく入院給付金は受け取れない。さらに保険契約も解除される。 - がん検査のための入院
がん検査のために入院し、その結果が良性であった場合は、入院給付金は給付されない。ただし検査の結果、がんと診断されれば、検査期間中の入院も含めて入院給付金の給付対象になる。 - がん治療の前段階として、がん以外の病気治療を目的とした入院
複数の病気を患っている患者には、がん治療の効果や副作用の影響を考え、他の病気の治療を先行実施することもある。このとき他の病気の治療に関する費用は、がん保険の給付対象にならない。 - 日帰り入院
日帰り入院は「通院」として扱い、入院給付金が給付されない場合がある。
保険会社の判断や保険商品の内容によっても扱いが異なるので、詳細は保険会社や保険代理店に確認してほしい。
入院給付金以外でのがん保険選びのポイント
これまで、がん保険の入院給付金について説明してきたが、がん保険には他にさまざまな保障内容がある。
ここでは、入院給付金以外の保障内容を紹介したうえで、がん保険を選ぶうえでのポイントを解説する。
入院給付金以外の主な給付金
がん保険の保障のうち、入院給付金以外の主な給付金を以下に説明する。
- がん診断給付金
- がんと診断されたらもらえる一時金。治療前でも診断されたら受け取れる。
- 通院給付金
- 通院治療の際に受け取れる給付金。入院前後や入院しない場合など、給付にはさまざまなタイプがある。
- 抗がん剤治療給付金
- 所定の抗がん剤治療を受けた場合に受け取れる給付金。
- 放射線治療給付金
- がんの放射線治療を受けた場合に受け取れる給付金。
- がん先進医療給付金
- 最新の医療機器や薬を使った治療方法で、技術料が公的医療保険の対象外になっている治療を受けた場合に受け取れる給付金。
- がん手術給付金
- がんの手術をした場合に受け取れる給付金。
これらの給付金のなかには、特約として主契約に加えることで、保障として加わる給付金もある。
がん保険の加入目的を考える
がん保険を選ぶうえで、保険に加入する目的を考えなければならない。
快適な入院生活を送りたいならば、先述した「がん保険の種類」のなかの「従来タイプ」か「入院給付金タイプ」を選択すべきだ。
貯蓄も少なく保険料を抑えたい人は、がんと診断されたときにまとまったお金が給付される「がん診断給付金タイプ」がおすすめだ。
がん保険のタイプ以外に、定期型・終身型のいずれにするのかも検討しなければならない。
発症リスクは高齢になれば高まるため終身型が安心だが、医療技術や制度の変化に応じて保障を見直したい人は定期型がよいだろう。
近年のがん治療の傾向も踏まえて考える
近年がん治療のための入院日数は減少し、その一方で通院しながら治療を受けている人が増えている。
通院治療でも、抗がん剤治療や放射線治療を行う場合が多い。
このため「通院タイプ」に抗がん剤治療特約や放射線治療特約、さらにはがん先進医療特約を付けた保険に加入する人も多い。
このように、がん保険を選ぶうえでは、最近のがん治療の傾向も考慮すべきだ。
- 出典:厚生労働省「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」P23 <図4 在院日数の推移> および<図5 入院患者・外来患者数の推移>より引用
がん保険の入院給付金は長期入院にも対応可能
本記事では、がん保険の入院給付金や最適な給付金額を見つけるポイント、さらには受け取る際の注意点を解説した。
入院給付金などの保障が手厚くなれば保険料も高くなるため、保険の目的を考え、保障内容を判断すべきだ。
そのためにがん保険の特徴、自分のライフスタイルや経済状況なども考慮し、保険選びをする必要がある。
保険のプロに相談すれば適切なアドバイスがもらえ、加入すべき保険や入院給付金額への疑問が解決し、不安も解消するだろう。
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