- 帝王切開の時に生命保険が適用されるか知りたい
- 出産方法によって生命保険の保険料にどの程度差が出るのか理解したい
- 保険選択時に考慮すべきポイントを把握したい
妊娠や出産は、女性の人生において一大イベントであると同時に、保険における保障範囲を考え直すべき大切なタイミングでもある。
その中で出産手段の一つである「帝王切開」は、年々割合が増えており、妊娠している人はいつ利用することになってもおかしくない。
帝王切開の費用に生命保険がどの程度活用できるのか、知っておくことで妊娠時の不安を抑える事ができる。
本記事では、帝王切開に生命保険が適用できるか、実際に適用された事例をあげて費用がどれくらい賄われるのかという点と妊娠に備えて加入するべき医療保険の特徴について解説する。
帝王切開を利用する可能性があるという方は、参考にしてもらいたい。
帝王切開の費用に生命保険は適用されるのか
まずは、帝王切開の基本事項や、発生する費用は生命保険で補えるのかについて解説する。
帝王切開の定義とは
帝王切開とは、普通分娩が困難な場合に行う開腹手術のことだ。帝王切開には2つの種類がある。
- 予定帝王切開
- 検診時に逆子や多胎妊娠、前置胎盤などが判明し、あらかじめ帝王切開が決まっているもの
- 緊急帝王切開
- 自然分娩の途中で、胎児の機能不全や出産が長引くなど母子の健康に危険が及んだため急遽実施されるもの
手術の処置時間は30分から60分で、脊椎麻酔、硬膜外麻酔、全身麻酔を使って行われる。
帝王切開の割合は増加傾向だ。厚生労働省の報告によると、令和2年の分娩件数のうち27.4%が帝王切開で出産している。出産する人のうち4人に1人は帝王切開を経験しているのだ。
帝王切開が増加している理由は、35歳以上の高齢初産の増加や、医療技術の進歩により正常分娩を試みていたケースでも、帝王切開の選択が多くなっていることが挙げられる。
近年の帝王切開は安全性が高まっているとはいえ、通常分娩と比べると、母体への負担が大きい。
術後の回復が必要なことから入院日数が長引き、医療費の支払いも大きくなることが懸念されている。
増える帝王切開に対して、費用の負担にどう備えればいいのか。次の章から順にみていこう。
帝王切開時に生命保険は利用できるか
生命保険は、一般的には死亡時の保障がメインだ。しかし、医療特約をつけることで、病気にも備えられる。
特約とは主とする保障にオプションとして上乗せするものだ。
医療特約を加えれば、帝王切開の手術やその期間の入院も保険支払いの対象となる。
昨今の医療保険特約は、入院の保障を手厚くしたものが多く、入院1日目でまとまった給付金が受け取れる商品、入院1日ごと給付金が受け取れる商品などがある。
女性特有の病気保障に特化した「女性疾病特約」、高額になる先進医療の自己負担分を受け取れる「先進医療特約」などもあり、保険会社や商品によって取り扱いの有無は異なる。
ただし、生命保険のメイン保障は死亡時に残された人の生活を支えるものなので、収入が少ない人や主婦の人は、過度に手厚い生命保険は必要ない場合もある。
帝王切開の手術や入院期間中の費用を準備したい場合、医療保険を選択する方法もある。
生命保険の医療特約か医療保険のどちらが最適かは、本人の収入や家計状況によって変わってくるため、個々の判断が必要だ。
帝王切開の保険適用範囲と事例
医療特約で支払われる主な保険金は、次のとおりだ。
- 手術給付金
- 手術をした際に支払われる。手術1回につき支払うタイプと、特定の疾病手術のみ〇倍支払うタイプがある
- 入院給付金
- 入院時に支払われる。入院1回あたりで支払う一時金タイプと、入院1日あたりで支払う日額タイプがある。両方を組み合わせることもできる。
帝王切開の場合は、公的保険によって自己負担は3割となる。
さらに高額療養費制度が利用でき、医療費が1ヵ月で限度額を超えた場合に手続きをすれば、超過分が支給される。帝王切開となっても、手厚い給付制度もあるため、大きな負担はないと捉えることもできる。
それでも、個室を利用した場合のベッド代や食費などは、公的保険では補えないため自己負担が発生する。
そのため、生命保険などで備えておけば経済的負担を抑えることができ安心だ。
帝王切開の費用に生命保険が適用されるケース
次に、帝王切開で必要な費用や公的保険や制度、民間保険でカバーできる範囲について説明する。
民間の生命保険の主な保障内容をもとに実際支払われる金額や内容も紹介し、その必要性についても解説する。
どれくらいの金額が保険適用されるのか
実際に帝王切開をした場合、どのような保険の保障項目が利用できるのか確認しよう。
例として、手術保険金50,000円、入院一時金10,000円、入院保険金日額5,000円の医療特約がついた生命保険に加入し、帝王切開で7日間入院したケースをみていく。
帝王切開は、異常分娩にあたり医療行為に分類される。
健康保険や国民健康保険といった公的医療保険が適用され、民間保険も支払い対象となる。
生命保険でも支払い保険金は次のとおりだ。
- 手術保険金 50,000円
- 入院一時金 100,000円
- 入院保険金 5,000円×7日
- 保険金総額 185,000円
これだけ大きな給付金を得ることができれば、経済的な不安も解消できるだろう。
なお、現在のところ無痛分娩は、母子の健康を優先する医療行為ではないとされているため、公的保険の対象外となっている。生命保険の特約や医療保険でも給付の対象外となっているため注意が必要だ。
自然出産と帝王切開で保険金はどのくらい違うのか
自然出産と帝王切開で、それぞれ支払われる保険について詳しくみていこう。
はじめに、どちらでも給付される公的制度について説明する。
まず、出産育児一時金はどんな出産であっても支払われる。
出産育児一時金とは一子につき50万円が支払われる給付金だ。支給額については、令和5年4月より、42万円から50万円に引き上げられた。
また、出産手当金も出産形態を問わず支払われる。
出産手当金は健康保険の被保険者が、出産のため会社を休み、報酬が受けられないときに給付されるものだ。自然出産と帝王切開で差が生まれるのは、公的保険の対象の違いだ。
自然出産は、公的保険の対象外となるため全額自己負担となる。一方、帝王切開は医療行為である手術と判断され、公的保険が適用される。
民間の保険の支払い基準は公的保険に準じているので、帝王切開だけが保障の対象となる。
自然出産は、医療保険に出産時手当金がついている場合であれば、支払いを受けられることもある。
このように保険で給付される金額は帝王切開の方が多くなり、金銭的な負担が少なくなる印象をもってしまう。
しかし、帝王切開による分娩は、自然出産よりも入院日数が長期化することが多い。
通常分娩の場合は5日から6日程度だが、帝王切開の場合は7日から10日、産後の回復状況によっては10日以上になることもある。
公的医療保険や制度から給付を受けたとしても、自己負担額は大きく膨らむ可能性が高い。帝王切開は希望せずとも、予定せずとも行われることがある。
自分でコントロールできず費用が発生することもあるため、万一の費用はあらかじめ備えておきたいものだ。
保険適用外になる帝王切開時の費用はどれくらいか
まず、帝王切開で保険適用となる部分を整理しよう。
帝王切開でかかる手術代、入院費、投薬費用は公的保険の対象となる。
令和4年度の自然分娩の出産費用の平均は48.2万円だ。
帝王切開では、この費用に手術代などが上乗せされる。帝王切開の手術費用は、どの病院でも統一されており、「産婦人科社会保険診療報酬点数早見表」によると報酬点数や費用は次のとおりだ。
- 緊急帝王切開:22,200点=22.2万円
- 選択帝王切開:20,140点=20.14万円
- (診療点数は1点10円として計算する)
したがって帝王切開では、総額68万円から70万円程度の費用が発生し、そのうちの3割が自己負担となる。
次に、全額自己負担となる項目を確認しよう。帝王切開で公的保険の適用外となるものは、次のとおりだ。
- 差額ベッド代
- 食事代
- 入院中の雑費
- 家事代行料やベビーシッター代
特に入院の差額ベッド代は、3人から4人部屋、2人部屋であっても請求される。
令和4年度の差額ベッド代の平均は6,620円で、10日間入院するだけで、6万円を超える負担になってしまう。
それでも、出産時は次の理由で個室を希望する人も多い。
- 長引く入院の不安を和らげたい
- 慣れない出産なのでリラックスして臨みたい
- 静かに体調回復に努めたい
- 家族との面会を充実させたい
出産は心身ともにセンシティブになりやすいため、万全の環境で過ごしたいという考えもあるだろう。
民間の生命保険や医療保険で備えておけば、費用を気にすることなく母子サポートが手厚い病院や個室を選択できる。出産後は生まれてきた赤ちゃんの世話なども行う必要もある。
心身ともに負担が少ない入院体制を前もって自分で整えておくことができると安心だ。
妊娠前や妊娠中に加入するべき生命保険の特徴
妊娠前や妊娠中は、家計や家族の備えを見直す良い機会だ。
この期間に保険を検討する時はどのようなことに気をつければ良いのだろうか。次の3つのポイントを解説する。
- 保険は基本妊娠前加入がお得
- 保険料と保障内容のバランスが適正な保険を選ぶ
- 保険の加入条件が緩い保険を検討する
保険は基本妊娠前に加入するとお得
保険の検討は、できれば妊娠前に考えてほしい。
なぜなら、妊娠中は加入できない保険もあり、商品の選択が狭まってしまうからだ
希望の保険に加入できたとしても、妊娠や出産にかかわる疾病や、子宮・卵巣などの部位は対象外とするなど、条件付きになることが多い。
保険料を高めに設定した上で入らなければならないこともある。
妊娠時の保険加入は、どうしても条件や金額面で不利になることが多い。
ただし、最初の妊娠中に条件付きで加入し、その出産が自然分娩だった場合、次回の妊娠では条件がはずれ、妊娠時の手術や入院が保障されることもある。
その一方で、帝王切開での出産経験がある人は、次に妊娠した場合も帝王切開での分娩となる可能性が高いため、帝王切開が給付金対象外のままになることもある。
保険を選ぶ際は、どのような保障形態なのか、妊娠時の取り扱いはどうするのかなどを確認し選んでほしい。
いずれにせよ、健康な状態のときに保険に入るのが、最もお得で希望通りの保険を選ぶことができる。
将来的に妊娠・出産を考えている人は、結婚後もしくは、妊活を意識する前から早めに保険の選定をはじめるのが良いだろう。
保険料と保障内容のバランスが適正な保険を選ぶ
保険選びのときは、保障の手厚さを基準に検討することも多い。
しかし、保障範囲をむやみに広げたり保険金の給付額を高く設定したりすると、保険料も高額化する。もしものために備える保険が、日常の家計を圧迫してはいけない。
今の自分に必要な保障内容を厳選し、適切な保険料で加入するべきだ。
いざというとき、どの程度手持ちの資金で対応するのか、もしくは保険に頼るのかをシミュレーションし吟味してほしい。
最適な商品の選定にあたっては、保険のプロに相談する方法がある。保険を専門に扱う担当者なら多数の保険商品知識を持ち、保険会社をまたいだ組み合わせで提案が可能だ。
一口に「帝王切開に対応した保険」といっても支払い範囲や支払い方法はさまざまだ。それらを一度に比較しながら検討できるのが、保険のプロを頼るメリットだ。
自分では気づかなかった最適なプランが見つかるだろう。
保険の加入条件が緩い保険を検討する
生命保険の中には、基本の保険とは別に「引受基準緩和型」といわれる加入条件がゆるやかな商品も用意されていることが多い。
保険申し込み時に病歴や持病を申告する内容が絞られており、加入要件が低めに設定されている。
病歴がある、病気のリスクが高い人に加えて、妊娠中の方でも契約できることが多い。ただし、加入がしやすい分、保険料が高めに設定されていることが多い。
負担する費用を増やしてまで入る必要があるのかを意識し、保障内容や給付額を確認した上で検討が必要だ。
また、引受基準緩和型のすべての保険が帝王切開を保障しているとは限らない。
支払いの基準についても各保険会社で基準が異なるため、それぞれの会社へ確認する必要がある。
ひとつひとつの保障内容を確認する手間を減らすには複数の保険会社の取り扱いがある保険のプロに相談するとよいだろう。
妊娠・出産時は妻の保険だけではなく、夫の保険も見直す良いタイミングだ。
夫婦揃って今後の備えについて検討する機会を作ってみてはいかがだろうか。
生命保険の医療特約や医療保険なら、帝王切開の手術費用も保障の対象になる
本記事では、帝王切開時に生命保険が適用されるかと実際に適用された事例を元に費用がどれくらい賄われるのかという点、妊娠前や妊娠中に加入するべき生命保険について解説した。
帝王切開は自然分娩と異なり、保険が適用される部分が大きい。その為、生命保険の内容を確認し、帝王切開時の費用を賄う事ができる保障内容の保険に加入することが重要になる。
また、実際に生命保険が適用された事例を確認することで、保険を選ぶ際の参考となるだろう。
ただ、保険商品を比較し最適な保険を選ぶには、専門的な知識と膨大な時間が必要になり、1人で全て行うのは大変である。そんな時は専門家である保険のプロに相談する事も解決策の1つとなる。
豊富な経験から第三者目線で、一人一人に合わせた的確なアドバイスをもらうことができるためだ。
しかし、生命保険のプロは数多く存在し、自分にとって最適な担当なのかを見極めることは難しい。
マッチングサイト「生命保険ナビ」を利用すれば、全国の保険のプロの中からあなたの条件や意向にあった担当者を選ぶことが可能となる。
出産を控え、保険の加入を検討しているという人は、是非活用してもらいたい。