- 医療保険と高額療養費制度の違いについて理解したい
- 自分は医療保険や高額医療費制度を利用する必要があるのか知りたい
- 医療保険の加入や併用するメリットデメリットを把握したい
高額療養費医療保険制度は公的医療保険における制度の一つだ。ここで言う「高額」ではどの程度まで保障してくれるのだろうか。
また、この制度があれば医療保険への加入は必要ないのだろうか。
本記事では、医療保険と高額療養費制度の違いやそれぞれのメリットデメリット、さらには両者を上手く組み合わせて利用する方法について解説していく。
これから医療保険への加入を検討している方や既に加入していて保険を見直したいと考えている方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてほしい。
医療保険と高額療養費制度の違いとは?
医療費が高額になっても、医療費を保障してもらえる公的な制度があるという話を聞いたことはないだろうか。
この公的な制度を高額療養費制度という。
しかし、この制度と医療保険とで何が違うのかよく分からないという方も多いのではないだろうか。
また、この制度を利用すると医療費がどの程度、軽減されるのかも気になる所だろう。
- 高額療養費制度とはそもそもどのような制度なのか
- 民間の医療保険と高額療養費制度の関係
- 高額療養費制度で医療費の自己負担をどこまで軽減できるのか
この3点を詳しく解説する。
高額療養費制度とは?
高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った負担額が自己負担限度額を超えた際に、その超えた額が公的医療保険から支給される制度だ。
以下の公的医療保険に加入していれば利用できる。
- 国民健康保険
- 健康保険(協会けんぽ、組合管掌健康保険)
- 後期高齢者医療制度
公的医療保険に入っていれば、働き盛りの世代ならば医療費の自己負担は原則3割ですむ。
しかし、3割負担でも医療費が高額になってしまうこともあるだろう。
それでも、高額療養費制度があるため月初めから月の終わりまでの期間で自己負担限度額を超えた分の医療費が戻ってくる。
毎月の自己負担の上限額は所得・年齢に応じて変わる。基本的に所得が高いほど負担額は大きくなり、所得が低いと負担額は小さくなる仕組みだ。
収入に関わらず安心して治療を受けられるのは、高額療養費制度があるおかげと言えるだろう。
ただし、高額療養費制度は公的医療保険が適用される診療にのみ適用される。
そのため、自由診療の視力回復をするレーシックや審美歯科、美容医療などでは使えない。
また、公的医療保険の対象となる治療で入院したとしても食事代や個室や少人数の病室を選んだ場合にかかる費用などには使えない点にも注意したい。
民間の医療保険と高額療養費制度の関係
医療保険とは保険会社が販売している保険の一種で病気やケガに備えるために加入するものだ。
医療保険に加入しておけば、入院したりケガをしたり治療を受けたりすると契約に応じて、入院給付金や一時給付金を受け取れる。
一方、高額療養費制度は先に説明した通り公的医療保険における制度の一部で、医療保険とは直接、関係のある制度ではない。
そのため、高額療養費制度で民間の医療保険の保険料の負担が直接、減ったり、給付金が増えたりはしない。
公的医療保険の一部である高額療養費制度と医療保険は、それぞれ独立した関係だと考えると分かりやすいだろう。
ちなみに、高額療養費制度と民間の医療保険の併用は可能だ。
そもそも民間の医療保険は、公的医療保険、高額療養費制度による備えだけでは不十分なときに、さらなる備えとして自分の意思で加入するべきものだ。
日本は国民皆保険で公的医療保険に加入していれば原則、医療費は3割負担ですみ、高額療養費制度で自己負担額が大きくなっても、安心して医療を受けられる。
しかし、それでも差額ベッド代や食費、通院にかかる交通費などの費用や自己負担額が大きいこともあるだろう。
そのような備えに最適なのが医療保険だ。
高額療養費制度を使った場合の自己負担額
働き盛りの現役世代の場合、高額療養費制度を使うと自己負担額は以下の条件で求めることができる。
適用区分 | 適用区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) |
---|---|---|
ア | 年収約1,160万円~ 健保:標報83万円以上 国保:旧ただし書き所得901万円超 | 252,600円+(医療費-842,000)×1% |
イ | 年収約770~約1,160万円 健保:標報53万~79万円 国保:旧ただし書き所得600万~901万円 | 167,400円+(医療費-558,000)×1% |
ウ | 年収約370~約770万円 健保:標報28万~50万円 国保:旧ただし書き所得210万~600万円 | 80,100円+(医療費-267,000)×1% |
エ | ~年収約370万円 健保:標報26万円以下 国保:旧ただし書き所得210万円以下 | 57,600円 |
オ | 住民税非課税者 | 35,400円 |
引用:厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ
例えば1ヶ月あたりの収入が月35万円の人の場合を考えてみよう。
適用区分は「ウ」となる。仮に治療費が150万円だった場合、計算すると以下のようになる。
高額療養費制度を使えば実質92,430円が負担額の上限となる。
公的医療保険で3割負担とすると治療費150万円ならば約45万円となる。
このケースでは約35万円の、上限以上に負担した医療費が戻ってくる計算になる。
次に月収が22万円の新卒の社会人が、公的医療保険を適用できる150万円の治療を受けたとしよう。
この場合は区分エが適用され150万円の治療費がかかっても、実質57,600円の自己負担額ですむ。
収入が少ない若い人でも公的医療保険と高額療養費制度があれば、実質的な医療費をかなり抑えられることがわかるだろう。
ただし、年収が高い場合は負担しなければいけない自己負担額が大きくなる。
仮に年収が1500万円の大手企業のサラリーマンのケースを想定してみよう。
この場合、「ア」が適用区分となるため、以下の計算式で自己負担上限額を求められる。
年収が高くなるほど自己負担額は大きくなってしまうことが確認できるだろう。
それでも3割負担なら約30万円かかるはずの自己負担分の医療費を抑えられる。
ただ、大手企業ならば付加給付が出ることもあるため実質的な負担はさらに抑えられるかもしれない。
医療保険と高額療養費制度のメリットデメリット
医療保険と公的医療保険の一部である高額療養費制度は、それぞれ独立した存在だが対立する関係ではない。
それぞれのメリット・デメリットを理解してうまく活用することで病気・ケガに備えられる。
高額療養費制度があるから民間の医療保険は必要ないという意見もある。
確かに、高額療養費制度のおかげで実質的な医療費の自己負担はかなり抑えられる。
しかし実際に病気にかかると思わぬ出費がかさんでしまうことも多い。
医療保険を一律に不要と考えるべきではない。
- 高額療養費制度のメリット・デメリット
- 医療保険のメリット・デメリット
- 高額療養費制度を医療保険で補う方法
以上、3つを理解して病気・ケガに備えよう。
高額療養費制度のメリット・デメリット
高額療養費制度のメリットは、公的な医療保険が適用される医療費ならば、自己負担額を抑えられることだ。
所得が低くても少ない負担で医療機関に診てもらえるのは大きなメリットだ。
この制度を利用すれば自己負担の上限額を超えた分が払い戻しされる。
ただ、後から戻ってくるとはいえ一時的に大きな支払いがあると家計が厳しくなると心配する方もいるだろう。
しかし、事前に「限度額適用認定証」の交付を受ければ実質、保険適用される医療費の支払いを高額療養費制度の自己負担限度額までに抑えることもできる。
つまり、実際には一時的な大きな支払いも心配しなくて良い。
ただし、高額療養費制度にはデメリットもある。例えば、年収が高いとこの制度を活用しても、医療費の自己負担は高額になってしまう。
特に年収は高くても貯蓄が少ない人は、高額療養費制度があるからと医療保険に加入していないと、大きな病気にかかってしまうと医療費で家計が回らなくなる可能性があるため注意したい。
また、公的医療保険が適用されない先進医療などを受ける場合、適用対象外となるため注意が必要だ。
他にも通院にかかる交通費、入院の際の個室代など公的医療保険では対象外となる出費に関しては、高額療養費制度では賄えない。
そして、この制度では月初めから月の終わりまでの期間で医療費を計算するため、月をまたいでしまうと実質的な自己負担額が大きくなってしまう点にも気をつけたい。
高額療養費制度は頼りになる備えだが条件次第では物足りないこともある。
医療保険のメリット・デメリット
医療保険のメリットは公的医療保険の対象とならない出費にも備えられることだ。
実際に病気にかかると自己負担分の医療費だけでなく交通費、入院する際に必要な備品や食費、個室を選んだ際の部屋代やベッド代など思わぬ出費がかさむ。
しかし、医療保険で給付金が出れば、これらの思わぬ出費も賄える。
特に貯蓄が少ない場合は医療保険に加入しておけば、万一のことがあっても家計を守ることができるだろう。
また、公的医療保険の対象外となる先進医療でも、契約次第で厚く備えることができるのも医療保険の強みだ。
特に治療費が高くなったり、長引いたりする三大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)にも医療保険ならば手厚く備えることができるのもメリットだろう。
一方、医療保険のデメリットは保険料がかかることだ。
保障を手厚く、または広くすればするほど保険料の負担が重くなってしまう。
医療保険に加入し、病気・ケガがないことは喜ばしいことだが、保険料は払い損になってしまう。
そのため保険料と保障のバランスを考えて、家計の負担になりすぎないように気をつけたい。
高額療養費制度で足りない部分を医療保険で補おう
高額療養費制度と医療保険は独立した存在ではあるが、それぞれ病気、ケガの備えとして有効だ。
大切なのは、両者のメリット・デメリットを理解した上でうまく組み合わせて使うことだ。
足りない部分を補って病気・ケガに備えるのがおすすめだ。
例えば、高所得で貯蓄が少ない場合は、高額療養費制度があっても自己負担額は大きくなるため医療保険で備えておくと安心だ。
高額療養費制度の対象外となる先進医療を受ける可能性がある場合も、医療保険で備えておけば大きな備えとなるだろう。
また、医療保険は生命保険会社各社が豊富な商品、プラン、特約を用意している。
例えば女性特有の子宮筋腫、乳がん、子宮がんなども医療保険ならば手厚く備えられる。
保障期間も定期型、終身型と必要に応じて選べるため公的医療保険だけで足りない部分を柔軟に補おう。
自分に適した保険を選ぶためのポイント
公的医療保険と高額療養費制度があれば、医療保険は必要ないと考える人もいるだろう。
しかし、実際に病気にかかったり、ケガをしたりすると想定外の出費がかさんでしまうこともある。
医療保険に加入しておけば、万一のことがあっても安心だ。
大切なのは無理のない範囲で保険料を負担しつつ、本当に必要な保障で備えることだ。
ただ、民間の医療保険は各保険会社が、さまざまな保険を販売しており、プランや特約も豊富なため本当に自分に必要な医療保険を選ぶのが難しい。
そこで、医療保険を選ぶ際の3つのポイントを紹介する。
- ライフプランに合わせて加入する
- 加入目的を明確にする
- 家計に無理のない範囲の保険料にする
医療保険を選ぶ際には以上3つのポイントを意識してほしい。
ライフプランに合わせて加入
ライフステージに応じて保障を見直すことで本当に必要な保障に絞って保険に加入できる。
例えば、収入が少なく月々の保険料が家計の負担になる20代のうちは公的医療保険と高額療養費制度だけでも十分だろう。
不安ならば月々の保険料が安い定期保険でさらに備えるのがおすすめだ。
そして、30代の働き盛りで家族や子供を養わなければいけない場合は、医療保険で手厚く備えても良いだろう。
特に三大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)のリスクは年齢を重ねるごとに高まるため、心配ならば特約で備えるのも良い。
女性ならば女性特有の疾患に手厚く備えられる医療保険もおすすめだ。
また、保障が一生続く終身型の保険も30代ならば比較的、安く加入できるため定期型から終身型に乗り換えるのも手だ。
50代60代になると病気・ケガにかかるリスクは高くなる。
人口10万人当たりの入院者数を確認してみると年齢が上昇するほど、男女ともに増えていることが確認できる。
男性 | 女性 | |
25〜29歳 | 142 | 258 |
30〜34歳 | 165 | 331 |
35〜39歳 | 215 | 301 |
40〜44歳 | 278 | 267 |
45〜49歳 | 387 | 302 |
50〜54歳 | 551 | 404 |
55〜59歳 | 776 | 551 |
60〜64歳 | 1064 | 730 |
年を重ねるにつれ医療保険に入っている恩恵は大きくなるだろう。
ただし、医療保険は定期保険も終身保険も年齢が高くなるほど加入が難しくなり、月々の保険料の負担が重くなってしまう。
収入や貯蓄、家族構成、リスクへの考え方次第で生命保険にいつ、どのように加入するべきかが変わってくる。ご自身のライフプランに応じて
医療保険をどのように活用するべきか考えてみよう。
加入目的を明確にする
何も考えずに医療保険に加入してしまうと無駄な保障のために保険料を負担することになってしまう。
だからこそ、医療保険を選ぶ際には加入目的を明確にすることが大切だ。
例えば入院時の保障内容はどの程度、必要になるのか、短期間で再入院を繰り返してしまうことに対する備えなのか、特定の疾病の重点的に備えたいのか等、目的次第で加入するべき医療保険も特約も変わってくる。
加入目的を明確にした上で、目的に合った保障内容の医療保険を探してみよう。
近年、医療保険に対するニーズは多様化している。そのため、入院日数に応じて給付金が出るタイプだけでなく、まとまった給付金を受け取れる保険、特定の疾病に手厚く備えられる保険など様々な商品がある。
目移りしてしまいそうだが、加入目的を明確にすることで迷わず自分に適した保険を選びやすくなる。
家計に無理のない保険料
保険料は長い目で考えると家計にとって大きな負担になる。
特に収入が少ないのに、病気やケガのあらゆるリスクに対して医療保険で手厚く手広く備えようとすると保険料が家計を圧迫して経済的に苦しくなってしまう。
家計に無理のない範囲で本当に必要な保障に絞ることで、保険料をできる限り節約しよう。
ちなみに保険料は払い方次第で家計への負担を軽減できる。
例えば、終身医療保険の場合、保険料の払い込み期間を一生涯にすれば月々の保険料は抑えられる。
一方、貯蓄に余裕があれば払い込み期間を60歳や65歳などまでに限定することで月々の保険料は高くなるが長生きすれば、保険料の払い込み総額は抑えられる。
また、クレジットカードで保険料を支払うことができればポイント還元も期待できる。
そして医療保険料は控除の対象となる。例えば入院や通院などに関して支払われる保険は「介護医療保険料控除」に該当する。
例えば所得税ならば最大40,000円、住民税は最大28,000円まで控除される。
所得税
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円超 40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円超 80,000円以下 | 支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
参考:国税庁 生命保険料控除
参考:生命保険文化センター 税金の負担が軽くなる「生命保険料控除」
住民税
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
12,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
12,000円超 32,000円以下 | (払込保険料×1/2)+6,000円 |
32,000円超56,000円以下 | (払込保険料×1/4)+14,000円 |
56,000円超 | 一律28,000円 |
参考:国税庁 生命保険料控除
参考:生命保険文化センター 税金の負担が軽くなる「生命保険料控除」
会社員や公務員ならば年末調整、自営業ならば確定申告で控除の申請ができるため、忘れずに手続きをしておきたい。
まとめ
本記事では、医療保険と高額療養費制度の違いやそれぞれのメリットデメリット、自分に適した保険の選び方について解説した。
高額療養費制度は、月の医療費が高額になった時に保障してくれる公的医療保険制度である。
高額療養費制度の保障が手厚いため、医療保険の加入が必要なのか悩む方も多い。
しかし、対象外となるケースもあるため、医療保険と組み合わせて上手く活用することをおすすめする。
しかし、保険は保障内容や適用条件など商品性が複雑なことが多いため、ひとりで選ぶのは難しいだろう。
そんな時は、保険のプロに相談することをおすすめする。
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