- 個人年金保険の加入条件を知りたい
- 支払期間と受取額の詳細を把握したい
- 加入前に確認するべき重要事項をおさえたい
個人年金保険は、公的年金とは別に老後の生活資金を用意できる貯蓄型保険のことである。
将来を見据え、特に30代以降から加入を検討する方が増えていく傾向にある。
そんな個人年金保険にはどのような条件を満たせば入れるのだろうか。
本記事では、個人年金保険の加入条件について解説していく。
加入を検討している人はぜひ参考にしてほしい。
個人年金保険の加入条件とは?
個人年金保険にはどのような加入条件があるのだろうか。
年齢制限や審査の有無、そして加入手続きの流れについて確認していこう。
個人年金保険の加入条件には年齢制限がある
個人年金保険に年齢制限はあるのだろうか。
生命保険文化センターの記事によれば、上限年齢は保険料の支払い方法によって変化する。
分割払いの場合は60〜70歳、一括払いの場合は80歳までを上限としている保険が多いようだ。
また、下限年齢についても商品により異なるが、0歳から取り扱える保険もあるとのことだ。
実際の商品でも確認してみよう。日本生命の「ニッセイ みらいのカタチ 年金保険」では申込可能年齢は7歳〜65歳までとなっている。
親が子どもの代わりに契約することも不可能ではないが、基本的には20歳以上の方が老後に備えて入るものであると考えるべきだ。
また、高齢で入った場合はその分保険料も高額になることが予想される。
自分が無理なく支払える金額になっているか、加入前にしっかりと検討しておこう。
個人年金保険の加入条件に健康状態の診査は無い
死亡保険や医療保険などの各種保険に加入する際は、基本的に審査を受ける必要がある。
なぜかというと、加入者間の公平性を担保しなければならないからだ。
死亡保険や医療保険は、契約者から保険料を集め、万が一の事態があった際に集めた資金から保険金が支払われる仕組みになっている。
健康状態が悪い人が、加入直後に死亡または入院などの事態となった場合、保険料をほとんど支払うことなく保険金だけ受け取るというリスクが出てくる。
これを防ぐため、診査で健康状態や既往症の有無を確認しているのである。
一方、個人年金保険では基本的に健康状態の診査を受ける必要がない。理由は以下の2つだ。
将来に向けて貯蓄することが目的であり、保障を受けるために入る保険ではないから
個人年金保険は、保険料を積み立てて特定の年齢になった際に受け取るという貯蓄機能に特化した保険である。
つまり、お金の流れが完全に個人で完結しており、契約者に何かあった場合でも他の加入者に迷惑がかかることはない。
そのため、持病や既往歴については重要視されないのである。
死亡時の給付額が他の保険と比較して少ないため
個人年金保険には、被保険者が死亡した際も死亡保険金を受け取ることができるタイプの商品がある。
死亡保険の場合、支払われる保険金の額は保険料よりも多くなり、他の契約者から集めた保険料も使われる。
一方、個人年金保険は自分が払った保険料が戻ってくるだけなので診査の必要性がないのだ。
これらの理由から、個人年金保険へ加入するハードルは他の保険と比べて低いと言える。
ただし、仕事に就いておらず収入がない場合、そもそもの保険料を支払えなくなる恐れから保険会社から加入を拒否されるケースもあるため注意したい。
なお、主婦(夫)や学生、年金生活者などは例外だ。
個人年金保険への加入手続き
個人年金保険へ加入する際に必要な手続きについて、実際の商品を確認しながら見ていこう。
太陽生命の「スマ保険」では、ネットで手続きを完結することができる。
- 氏名・生年月日・住所・電話番号を入力
- メールアドレスと申請を再開する際に必要なパスワードを入力
- 健康状態と職業を入力
- 死亡保険金受取人の氏名・生年月日・性別・被保険者との関係性を入力
- 申し込み内容に関する注意事項を確認する
- 本人確認を行う
- 保険料の支払方法(口座振替、クレジットカードの登録など)を設定して完了
上記のように、本人確認書類と支払い口座さえ用意できれば問題なく手続きが完了する。
ただ、入力事項に誤りがあると手続きに時間がかかってしまうので、正確に情報が入力できているか、確認はあ必ずしよう。
加入前に知っておきたい!個人年金保険の保険料の支払期間と受取額の目安
個人年金保険に加入する際、重要になるのが保険料の支払方法だ。
支払期間の長さによって、貯蓄できる保険金の額も変化する。
そこでここでは、各支払方法の特徴から、受け取れる年金額がどのように決まるのか、について詳しく解説していく。
個人年金保険の支払方法の種類と特徴
個人年金保険の保険料の支払う方法は、主に以下のような種類に分けられる。
分割払い | 保険期間中に決められたタイミング毎に保険料を支払っていく方法。 年払い・半年払い・月払いなどの種類がある。 |
---|---|
一時払い | 保険契約時に満期までの保険料を全額支払う方法。 一回に払う保険料は多くなるが、返戻率を高められる。 個人年金保険料控除は保険料を支払った年のみ利用できる。 |
全期前納払い | 契約時に満期までの保険料を全額保険会社に預け、年単位・月単位で充当してもらう方法。 支払う保険料の合計額は一時払い<全期前納払い<分割払いの順になる。 一時払いとの違いは、毎年保険料控除が利用可能。 |
支払期間によって、返戻率が変化したり個人年金保険料控除が適用できるかが変わってくる。
返戻率とは支払った保険料に対して受け取れる保険金の割合を示した数値のことだ。
また、個人年金保険料控除とは、年末調整や確定申告によって年間所得から保険料の一部もしくは全額を控除してもらえる制度を指す。
これらの特徴を理解し、自分が個人年金保険に求める保障内容に応じて支払方法を決める必要があるのだ。
なお、保険料控除の詳細については、後述するので記事を読み進めて確認してもらいたい。
個人年金保険の満期保険金はどのように決まるのか
個人年金保険の満期保険金は、以下のような要素で決まってくる。
定額型・変額型の違い
定額型とは、契約した段階で受け取れる保険金の額が確定するものを指す。
契約当初に決められた予定利率に基づいて運用されるため、決まった額を受け取れるという安心感がある。
一方変額型とは、支払った保険料を元に保険会社が運用を行い、実績次第で受け取れる金額が変化するものだ。
定額型と比較して大きく保険金を増やせる可能性もある一方で、保険料総額を下回る元本割れリスクも抱えている。
配当金の有無
保険料は3つの予定率をもとに算出しているが、実際には予定したとおりの死亡者数、運用利回り、事業費になるとは限らない。
予定と実際との差によって剰余金が生じた場合に、剰余金の還元として契約者に分配されるお金のことを配当金という。
配当金は、予定率にもとづいて計算された保険料の事後精算としての性格を持っている。
ただ、実績次第では支払われない場合もあり、配当金があると保険料が通常の年金保険より高くなることもある。
満期保険金の額を増やしたい場合は「配当金なし」のものを選ぶのがおすすめだ。
円建てか外貨建てか
個人年金保険の中には、外貨で保険料を支払い、外貨で運用するものがある。
これが外貨建て保険である。
為替の状況次第では損をする可能性もあるが、円建ての商品と比較して利率が高く、大きく保険金を増やしたい場合は加入を検討しても良いだろう。
また、円貨と外貨のどちらかを選択して保険金を受け取れる商品もある。
このように、主に3つの要因により、個人年金保険の保険金は変化するのだ。
個人年金保険の受け取り額をシミュレーション
実際にどれくらいの保険金を受け取れるのか、「ニッセイ みらいのカタチ 年金保険」でシミュレーションしてみよう。
20歳男性・30歳男性が、それぞれ2種類のプランに加入した場合の保険金額について以下にまとめた。
- 支払期間
- 〜65歳
- 支払方法
- 月払い
- 受取期間
- 65歳〜75歳
- 受取方法
- 10年確定年金(1年毎に定額が支払われる)
20歳 | 5,000円プラン | 1万円プラン |
---|---|---|
保険料総額 | 269.8万円 | 539.9万円 |
年金総額 | 290.8万円 | 581.7万円 |
返戻率 | 107.7% | 107.7% |
30歳 | 5,000円プラン | 1万円プラン |
---|---|---|
保険料総額 | 209.9万円 | 419.9万円 |
年金総額 | 221.1万円 | 442.2万円 |
返戻率 | 105.3% | 105.3% |
まず一つ目のポイントは、定額型の場合は保険料が変わっても返戻率に影響はないという点だ。
定額個人年金保険では保険料を変えても返戻率は変わらないため、無理して高い保険料にする必要はない。
一方、変額型の場合は運用途中で返戻率が変化するため、高いリターンを狙いたい場合は高額な保険料が必要になるケースもある。
状況の見極めが必要になるため、自信がない人は定額型をおすすめしたい。
また、二つ目のポイントは早期加入で返戻率を高めることができるという点だ。
支払う保険料が一定であれば、早期に加入し長期間にわたって保険料を積み立てることで返戻率を高めることが可能だ。
もし保険料を払う余力があれば、できる限り若いうちに加入しておくと良いだろう。
ただし、物価上昇でお金の価値が相対的に下がるインフレが進んだ場合、年金額は実質的に下がってしまう。
契約の途中で保険料を増やすことはできないため、その点には注意してほしい。
個人年金保険への加入を決めたら!確認するべき重要事項とは
加入する個人年金保険をある程度絞ったら、最後に以下のポイントをチェックしていこう。
- 解約返戻金の取り扱い
- 保険金にかかる税金と控除適用の方法
- iDeCoとの併用
この段落の内容を理解しておけば、個人年金保険をより有効活用できるはずだ。
個人年金保険を途中解約時した際の返戻金の取り扱い
一つ目のポイントは、解約返戻金の取り扱いだ。
個人年金保険では、保険期間中に解約した場合に解約返戻金を受け取ることができる。
ただ、途中解約には様々なリスクがあるため注意が必要だ。
解約時のデメリットや注意点については、以下のようにまとめられる。
①元本割れの可能性が高い | 個人年金保険は保険料を積み立てて老後資金とするものだ。 ただ、途中で解約した場合は支払った保険料がそのまま戻ってくるわけではない。 保険会社毎の手数料等が引かれ、元本割れになる可能性が非常に高いのだ。 契約前に解約返戻金の受取率について確認しておこう。 |
---|---|
②再度入り直す場合は条件が悪くなりやすい | 個人年金保険を含む各種保険では、年齢が上がってから加入しようとすると保険料が高くなる。 また、保険会社から契約を断られる場合もあり、再加入が二度とできない可能性もある。 本当に解約しても後悔がないか、慎重に検討する必要があるのだ。 |
③税金がかかる場合もある | 解約返戻金を受け取る場合、基本的に税金はかからない。 ただ、万が一支払保険料総額を超える返戻金を受け取った場合は一時所得扱いになり、所得税の対象となる。 |
①については特に注意したい。途中解約しても元本割れしないのならば、将来緊急で資金が必要になった際にも躊躇なく解約できるからだ。
個人年金保険は10年以上の長期利用が前提となる保険である。
どれだけ計画を立てたとしても、予期せぬトラブルで保険料を支払い続けることができなくなることもあるだろう。
そんな時に備えて、解約時にどれくらいの返戻金が受け取れるかは事前に確認しておきたい。
個人年金保険にかかる税金の仕組みと保険料控除の方法
個人年金保険には、所得税・相続税・贈与税の3種類の税金がかかる。
それぞれパターンが決まっているため、以下の図で確認していこう。
年金を受け取る場合
契約者 | 被保険者 | 受取人 | 税金の種類 |
---|---|---|---|
夫 | 夫(妻) | 夫 | 所得税 (定額型を一括受け取りする場合は一時所得、それ以外は雑所得扱いとなる) |
夫 | 夫(妻) | 妻 | 初年度:贈与税 2年目以降:所得税 |
また、それぞれの税金の計算式については以下のようになる。
また、あわせて理解しておきたいのが、個人年金保険料控除についてだ。
この制度を利用するためには、以下の条件を満たす必要がある。
- 受取人が契約者か配偶者であり、被保険者と同一人物である
- 保険料払込期間が10年以上であり、確定年金や有期年金の場合は受け取り開始年齢が60歳以降で、受け取り期間が10年以上である
- 個人年金保険料税制適格特約が付加されている
なお、これらの条件を満たしていない場合、個人年金保険の保険料は「一般生命保険料控除」で申告することになり、控除金額が減ってしまうので注意したい。
個人年金保険料控除を活用して控除されるのは、所得税と住民税の2種類だ。
それぞれの具体的な金額は以下の表の通りである。毎年申告すれば、かなりの額の税金を抑えることができる。確実に利用できるようにしておこう。
所得税
年間支払保険料 | 控除額 |
---|---|
〜2万円 | 全額 |
2万1円〜4万円 | 保険料の半額+1万円 |
4万1円〜8万円 | 保険料の4分の1+2万円 |
8万1円〜 | 4万円 |
住民税
年間支払保険料 | 控除額 |
---|---|
〜1万2,000円 | 全額 |
1万2,001円〜3万2,000円 | 保険料の半額+6,000円 |
3万2,001円〜5万6,000円 | 保険料の4分の1+1万4,000円 |
5万6,001円〜 | 2万8,000円 |
- 参考:国税庁「No.1610 保険契約者(保険料の負担者)である本人が支払を受ける個人年金」2024年3月調査
- 参考:国税庁「No.1615 遺族の方が支払を受ける個人年金」2024年3月調査
- 参考:生命保険文化センター『税金の負担が軽くなる「生命保険料控除」』2024年3月調査
個人年金保険とiDeCoの併用
個人年金保険と同様に、老後資金を用意できる手段の一つがiDeCoだ。
果たして両者の違いにはどんなものがあるのだろうか。以下に違いをまとめたので、確認してほしい。
個人年金保険 | iDeCo | |
---|---|---|
投資対象を選べるか | 基本的に不可 変額保険は可能 | 可能 |
途中解約できるか | 可能 | 基本的に不可(60歳まで引き出せない) |
保険料控除の対象 | 所得税は最大4万円 | 全額 |
最も重要なポイントは、iDeCoを運用して出た収益は全額控除されるという点にある。
毎月運用できる金額が1万2,000円〜6万8,000円という制限はあるものの、運用成績次第ではかなりの額の老後資金を準備することができるのだ。
ただ、個人年金保険は途中解約できるのに対し、iDeCoは一度始めると原則60歳までは解約できない。
柔軟性は低いため、デメリットが全くない制度というわけではない。
また、個人年金保険とiDeCoは併用することが可能である。そのため、両者を使ってより多くの資金を用意するのも、選択肢としては考えられるだろう。
過度な保険料が家計を圧迫することのないよう、運用計画を立ててから始めることを推奨する。
個人年金保険の加入条件を理解して自分に最適な保険を選ぼう
本記事では、個人年金保険の加入条件や有効活用のためのポイントについて解説を行った。
個人年金保険に審査はなく、年齢条件を満たせば加入することができる。
将来の年金額を増やすためには、保険料の支払方法や保障内容の確認が重要だ。
また、iDeCoと併用することで、さらに効率的に老後資金を貯めることができるだろう。
そして、もし保険選びに少しでも疑問や不安があれば、保険のプロに相談することをおすすめする。
専門的なアドバイスを受けることで自分に必要な保険を見つけることができるはずだ。
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