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【4193】株式会社ファブリカコミュニケーションズ代表取締役社長 谷口政人氏「国内SMS市場の拡大とデジタル化の進展を捉えた業容拡大を目指す」

※本コラムは2023年5月29日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ファブリカコミュニケーションズは主力のSMS事業で国内法人向け配信数シェアNo. 1を誇っています。

代表取締役社長の谷口政人氏へ、インターネットの普及を起点としたビジネスモデルの変革の歴史や事業の強み、これからの成長戦略を伺いました。

目次

株式会社ファブリカコミュニケーションズを一言で言うと

“テクノロジーで社会の課題を解決する”ことをミッションとする会社です。

ITを活用して、デジタルの恩恵を受けていない事業者・ユーザーに対するサービス展開に注力しています。

創業の経緯

当社は1992年、私と現副社長である近藤氏の2人で自動車の修理サービス事業からスタートしました。

時代はまだインターネットが普及していない頃で、現代におけるIT業界も存在していませんでした。そのような中、自動車市場がアフターサービスを含めて拡大する可能性に将来性を感じ、起業を決めました。

私自身、組織の中で働くよりも、自ら何かを創り出す方が向いていると感じておりましたし、中学・高校時代からの友人であった近藤氏とも元々会社を興そうと話しており、機が熟したタイミングでもありました。

インターネットが普及し始め、Windows95が登場した1995年は、会社の歴史における大きな転機となりました。

それから3年後の1998年には、インターネットが急速に広がり、さらにブロードバンド回線が出現するなど、情報通信インフラが大きく進化しました。この進化の波に乗って、当社は自動車ビジネスから一歩踏み出し、インターネットによる新たなビジネスチャンスを探り始めたのです。

この時期に自社内でウェブサイトを作成し、インターネットを活用したビジネスを始めた結果、”これこそが避けて通れない未来を担うものだ”と感じ、本格的にインターネット事業へと舵を切りました。

その発想の起源は、創業当初からの自動車アフターサービス事業でした。

2002年、自動車の修理業からスタートした我々は、新たなビジネスモデルとして「ファブリカ」という自動車修理のオークションシステムを開発し、インターネットを活用した新たなサービスを提供しました。その結果、会社の成長に大きなブーストをもたらしたのです。

当社は2021年に上場しましたが、実は上場準備は2回目でした。

先ほどのオークションシステムの事業が非常にうまくいきましたし、外部資本も入れており元々上場するという予定だったのです。

2006年の証券審査まで進めたものの、主たる事業が頭打ちになり、そのビジネスモデルに問題があると認識したため、一旦断念しました。しかし、その経験が無駄になることはありませんでした。

その後、2013年にもう一度挑戦しようと決断し、再度上場準備を始めたのです。

その間は、徹底したリストラクチャリングでしっかりと自社基盤を固めることが重要であるとの考えから、焦ることはせず準備期間も十分に設けました。その結果、2021年4月に上場を果たすことができました。

事業内容について

当社は4つのセグメントで事業を展開しています。

一つ目は、SMSソリューション事業で、これはショートメッセージサービスを企業が自社の顧客に配信するためのサービスです。

二つ目の事業は、中古車販売店向けの販売管理システムや中古車の広告プラットフォームなど、中古車販売店に対するDX(デジタルトランスフォーメーション)のソリューションを提供するU-CARソリューション事業です。

三つ目は、業界特化型の集客支援やメディア運営など、様々なウェブ系のサービスを展開しているインターネットサービス事業で、最後にオートサービス事業として、自動車の修理や車検など、リアル店舗での自動車のアフターサービスを提供しています。

株式会社ファブリカコミュニケーションズ 2023年3月期 通期決算説明資料 より引用

当社のSMSソリューション事業は高付加価値化が差別化ポイントとなっています。

現在、当業界は我々を含めた4社で8割以上を占め、配信数シェアを分け合っている状況なのですが、事業を開始した2011年以来、主に大企業向けにサービス提供が進んでおり、その実績こそ市場を寡占化する一因となっています。

この業界の新規参入障壁としては、配信数が増えれば増えるほど、キャリアからの仕入れコストにボリュームディスカウントがかかるという点があります。

つまり、配信数が少ない新規参入者は仕入れコストが高くなってしまい配信単価で戦うのが難しくなるため、既存の4社から仕入れるケースも多くあります。

さらに、この4社の中での優位性として、まず配信品質の高さが挙げられます。

例えば、メッセージの不達や遅延がほとんどない点がクライアントに評価されています。次に、配信後の到達結果を即時に出せるという点も重要な差別化要因です。

また、長文化対応も我々の強みで、基本的に70文字までのSMSを600文字以上送れるようにする高度な技術力があります。

これらの要素により、構成比において本人認証の割合が他社よりも低く、業務連絡や督促といった付加価値の高い用途で活用され、単価維持にもつながっているというわけです。

株式会社ファブリカコミュニケーションズ 2023年3月期 通期決算説明資料 より引用

また、U-CARソリューション事業では競争環境の激しい販売管理システムやメディアといった領域で他社を凌駕するため、まずは市場のシェアを獲得することを優先させています。

当社のシステムを中古車販売店が必ず通るような状況をつくることが先決であり、これを確立すれば価格や新たなサービスの展開においても優位な立場で業界をリードできるだろうと考えています。

具体的には、現段階では約3,700社の取引先がありますが、1万社程度までは価格を抑えつつ、シェアを獲得するスピードを優先する方針です。

シェアとしても10%程度なので、まだまだ伸ばせる余地がありますし、ここに投資をしてより多くの顧客を獲得するとともに、継続率を上げていくことを重視しています。

すでに付帯サービスも増えていますが、基本的に価格は据え置きで提供していますので、継続率で当社サービスへの評価と事業成長をご判断いただければと思います。

株式会社ファブリカコミュニケーションズ 2023年3月期 通期決算説明資料 より引用

中長期の成長イメージとそのための施策

まずは主力事業の成長を加速させるため、コアビジネスのプロダクトと提供価値の向上に焦点を当てていきます。

SMSソリューション事業の市場環境として、海外に比べて日本市場は10年ほどの遅れがあります。これはキャリアメールが主流であったことに起因するものですが、つまりは成熟までにここから10年ほどかかるといえるのです。

実際に年平均成長率(CAGR)は約42%とされており、その市場成長を捉えシェアを獲得していくことで、自社成長に繋げていけると見ています。

株式会社ファブリカコミュニケーションズ 2023年3月期 通期決算説明資料 より引用

技術力による競争優位性を維持する一方で、各業界の課題解決策をSMSを活用して提案することで、差別化を図る計画もあります。

また、既に業界での成功例があれば、これが同業界内での新規顧客の信頼を勝ち取る一因となると考えています。

具体的な戦略としては、顧客数と顧客一人当たりの売上の両方を増やすことが重要です。ただし、配信量が増えれば単価が下がるという性質から、乗り越えるべき障壁は一通あたりの単価維持にあります。

我々としては、新規顧客を獲得することで単価を維持し、同時に配信ボリュームを増やす、このバランスを取ることに注力してまいります。

新規顧客獲得は将来の競争力強化にも繋がるため、単価下落に対抗する唯一の方法として、新規顧客獲得に焦点を当てることが重要だと考えています。

加えて、B to BのSaaS型ビジネスを展開し、企業のDXに貢献していきたいと考えています。

当社の支援内容としては、マーケティングやシステム改善、これによるチャーンレート(解約率)の低減という領域であり、これは業界共通のサービスであります。一方、業界特有のナレッジが求められる部分もあります。

そのため、我々が基本として大切にしているのはB to B市場への進出、および業界特化のノウハウを持つ企業に対する積極的な投資やM&Aです。

特にIT化・デジタル化の恩恵をまだ享受できていない事業者に対して、特定の業界に固執することなくサービスを提供していきたいと思っています。

株式会社ファブリカコミュニケーションズ 2023年3月期 通期決算説明資料 より引用

今年の3月にはアクションリンクというCRM事業を買収しましたが、新規顧客の獲得と事業の黒字化が既に見えてきています。M&Aの戦略としては、現段階では規模の大きいものを買うことは避けており、成長過程にある適正規模の企業との連携を通じて実績とノウハウを積み上げることで、将来的には大型案件に取り組むことも検討しています。

また、AIやブロックチェーンの研究開発への先行投資も推進していく方針で、6月1日付で当社100%出資の子会社としてSparkleAI株式会社を設立いたしました。

現在のAI業界は1995年から1998年にかけてのインターネットの黎明期に似ており、これから爆発的に伸びていくポイントを迎えたように感じており、このタイミングで投資を行うことが重要だと考えました。

勿論競争は激しいですが、早い段階で世の中を変えるようなインパクトを出せれば、これは大きなチャンスになると思っています。

株式会社ファブリカコミュニケーションズ 2023年3月期 通期決算説明資料 より引用

投資家の皆様には、まずは利益率の高さにご注目いただきたいと思います。

これは、我々が従前から意識してきた「一人当たりの収益を上げる」ことに直結しています。高収益を追求し、またビジネスモデルを仕組み化することは我々の得意領域でもあります。

人材獲得が難しいと言われる現在、成長企業たるポイントとして、事業戦略と合わせてご認識いただければと思います。

投資家の皆様へメッセージ

特にSMS市場はまだまだ成熟しておらず大きな成長余地があります。

その中で我々は、他社との差別化を図り、また新規事業を立ち上げることで、マーケットの機を捉えていくことができると考えています。

ぜひ当社に成長の期待感を感じていただき、ご支援いただけますと幸いです。

株式会社ファブリカコミュニケーションズ

本社所在地:愛知県名古屋市中区錦3-5-30 三晃錦ビル8F

設立:1994年11月

資本金:645,106,200円(2023年3月末時点)

上場市場:東証スタンダード(2021年4月7日上場)

証券コード:4193

※本コラムは情報提供を目的としたものであり、個別銘柄の推奨や、金融商品の紹介、周旋を行うものではございません。

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執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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