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【5254】株式会社Arent 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年4月4日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社Arent(以下、Arent)はコンサルティングから事業創出に至る一連のプロセスをワンストップで提供し、建設業界のDXを推進しています。

代表取締役社長の鴨林広軌氏から、事業戦略の変遷や今後の成長方針についてお話を伺いました。

目次

株式会社Arentを一言で言うと

建設業界のDXプラットフォーマーです。 

Arentの沿革

株式会社Arent代表取締役社長 鴨林広軌氏

創業経緯

Arentは、私が代表を務めていたコンサルティングとシステム開発を行う株式会社 ASTROTECH SOFTWARE DESIGN STUDIOS(以下、アストロテック)と、京都大学の同級生である佐海が創業した3D技術に強みをもつシステム開発の株式会社CFlatが合併し、設立されました。

私はウォーレン・バフェット氏の「投資と企業経営は一体である」との言葉に影響を受け、大学卒業後にMU投資顧問に入社し、ファンドマネージャーとして経験を積んだ後、グリーでITエンジニアとして経験を積み、独立しました。

アストロテック代表として、プラントエンジニアリング大手の千代田化工建設株式会社(以下、千代田化工建設)の空間自動設計プロジェクトに携わる中で、3D技術に強みを持つ佐海の会社との協力により素晴らしいプロダクトが創出できると確信し、事業拡大とIPOを目指して2019年に両社を合併しました。

これが現在のArentのビジネスの始まりです。

株式会社Arent 2024年6月期第3四半期決算説明資料 より引用

DXを実現するプロダクトの開発とリリース

2020年には千代田化工建設とのジョイントベンチャー、株式会社PlantStream(以下、PlantStream)を設立しました。

このJVで、プラントエンジニアリング向けの空間自動設計機能(配管、土木・建築、電気・計装設計の自動ルーティングを含む)を備えた3D CADソフトウェア『PlantStream®️』を開発し、国内外でリリースしました。

従来、プラントの設計には多くの制約が伴い、1,000本の設計に2年を要していましたが、PlantStream®️を用いることでこれを1分で設計できるようになりました。

このリリースは建設業界に大きな反響を呼び、当社が業務プロセスのデジタルトランスフォーメーションを推進する独自の能力を持つ企業であるとして注目されました。

この成功を基に、当社は建設DXの新たな方向性を打ち出し、業界全体のデジタル化を推進しています。

2024年3月には、空調工事の国内最大手である高砂熱学工業株式会社(以下、高砂熱学工業)と共同で、建設業務プロセスを変革させるBIMを中心としたSaaSプラットフォーム「PLANETS」(開発コードネーム)を開発し、運用を開始しました。

このSaaS群により、設計、施工、運用管理まで、従来は独立して行われていた建設業務プロセスをBIMデータを通じて一元化し、常に最新のデータを基に業務を進めることが可能になりました。

さらに、ベテラン技術者に依存していたノウハウをシステム化することで、技術継承も実現しました。

この世界でも類を見ないSaaS群のリリースにより、大手ゼネコン、サブコンなどから多くの共創開発プロジェクトの問合せが寄せられております。

PLANETS共同開発の記者会見にて
左から高砂熱学工業横手常務(当時)、小島社長、Arent鴨林社長
※株式会社Arent より提供

Arentの事業概要と特徴

概要

当社のビジネスモデルは、「プロダクト共創開発」、「共創プロダクト販売」、「自社プロダクト」の3つの柱から成り立っています。

株式会社Arent 2024年6月期第3四半期決算説明資料 より引用

特に注力しているのは「プロダクト共創開発」です。この分野では、建設業界に特化したDXコンサルティングからシステム開発、さらに事業開発に至るまでの一連のプロセスを包括的に提供しています。

私たちは単なる受託開発に留まらず、アジャイル開発を活用して建設業界特有の暗黙知やノウハウをクライアント企業と共に掘り起こし、プロダクト化し、その事業化を実現することが特徴です。

株式会社Arent 2024年6月期第3四半期決算説明資料 より引用

「共創プロダクト販売」では、千代田化工建設と共同で開発した空間自動設計システム「PlantStream®」をプラントエンジニアリング業界に特化した業界特化型SaaSとして国内外に提供しています。現在は海外での販売がメインです。

株式会社Arent 2024年6月期第3四半期決算説明資料 より引用

また、「自社プロダクト」では、「Lightning BIM シリーズ」を開発・販売しています。

このシリーズは、ニッチ業界に特化し、Autodeskが提供するBIMソフトであるRevitをより便利に使えるように設計されたSaaS製品を提供しており、ユーザーにとっての利便性を高めています。

株式会社Arent 2024年6月期第3四半期決算説明資料 より引用

事業における優位性

技術力

当社は特に3D技術に強みを持っており、建設業界で広く活用されています。

過去20年にわたり解決されてこなかったプラント業界の配管設計の課題を克服した高速自動ルーティング技術を始め、ブロックパターンや配管の干渉回避など関連技術においても多数の特許を取得しています。

株式会社Arent 2024年6月期第3四半期決算説明資料 より引用

当社のエンジニアチームは、高度な数学力と3D技術を背景に持ち、理系卒の割合が80%超という特徴を有しています(2023年4月時点)。

市場には類似の技術を持つ企業も存在しますが、ここまで高度な人材が集まるのは非常に珍しいと自負しています。

株式会社Arent 2024年6月期第3四半期決算説明資料 より引用

ナレッジ

当社のプロダクト共創開発では、アジャイル開発を活用してクライアントの業務知識を深め、詳細なナレッジを蓄積し、それをプロダクト開発に反映しています。

多くの企業がウォーターフォール型の開発方法を採用している中、当社はアジャイル開発の体制を整備しており、これが大きな強みとなっています。

株式会社Arent 2024年6月期第3四半期決算説明資料 より引用

実績に基づくこの深い業務知識は、市場に新規参入する競合他社では真似できない重要な利点です。

株式会社Arent 2024年6月期第3四半期決算説明資料 より引用

事業創出力

当社はコンサルティング、システム開発、事業立ち上げ、事業運営までをワンストップで提供できることが強みです。

初期のコンサルティング段階から事業化を見越したアプローチを行うことで、コンサルティングで売上を稼ぐということではなく、実用的でユーザーが本当に求めるプロダクトの開発が可能になります。

また、PlantStream設立の事例で言えば、DXプロジェクトのメンバーであった千代田化工建設の一社員がPlantStreamの代表に就任しました。

このようにJVを設立することで、従業員から経営者を選出し、未来の経営陣や新たなDX人材を育成できるプラットフォームを構築することが可能になります。

株式会社Arent 2024年6月期第3四半期決算説明資料 より引用

AIの活用

当社はプロダクト開発においてAIを積極的に活用しています。

AIと三次元データベースであるBIMとのシナジーは非常に高く、両者を組み合わせることで機能の拡充が実現しています。

例えば、進化するAIの画像認識技術を利用して、BIMからの情報を取り込み、設計変更の必要性や施工上の問題を事前に特定し、適切な解決策を提案することができます。

このようにAIを活用することで、プロジェクトの効率化はもちろん、より高度な設計や工程管理を実現し、建設業界全体の生産性向上に貢献します。

Arentの成長戦略

建設業界におけるIT投資の拡大

2023年4月から国交省直轄の業務や工事においてBIMの原則適用が開始され、2024年4月から施行された残業規制に対する対策として業務効率化が強調されています。

このような状況は、我々が主力として取り組んでいるBIMの市場拡大に有利な追い風となっています。

建設業界におけるIT投資の割合は今後さらに増加すると見込まれており、この市場環境の変化を捉え、効率化と技術革新を推進することで、建設業界全体の生産性向上に貢献していく方針です。

株式会社Arent 2024年6月期第3四半期決算説明資料 より引用

短期(〜FY2025):共創開発事業を基軸にした、建設DXカンパニーとしての非連続成長

短期的には「共創プロダクト開発」の拡大に注力しています。

PoC(Proof of Concept)を3か月から半年で完了し、その成果をもとに本開発フェーズに進みます。

本開発のゴールは、利用可能な最小限の機能を備えたMVP(Minimum Viable Product)のリリースです。

この初期版の開発期間は約24ヶ月をかけ、開発の初期段階から機能の拡充を通じて、開発規模と売上の増大を図ります。

プロダクトが市場にリリースされるか、クライアント社内での使用が始まると、それに続く継続開発のフェーズに移行し、SaaSプロダクトとしての追加機能開発を行います。

この継続開発は、プロダクトが市場に存在し続ける限り、またはユーザーが利用を続けている限り、終了することはありません。

このビジネスモデルにより、安定した規模での売上を確保し、新たな本開発を増やすことで非連続的な成長を促進しています。

2024年3月には高砂熱学工業と開発した9つのSaaS群の運用開始を発表しました。

これらの事例を積極的にPRし、認知を広げることで、スーパーゼネコンや大手ハウスメーカーなどの新規案件の獲得を目指しています。

株式会社Arent 2024年6月期第3四半期決算説明資料 より引用

中期(〜FY2030):共創プロダクト群による継続的成長

当社はキーエンスのビジネスモデルに学び、「高付加価値エンタープライズモデル営業」を目指しています。

業界に特化したニッチプロダクトを高利益率で販売し、市場における独自の地位を確立することを目標にしています。

限定されたニッチなターゲット市場に深く根ざした製品を提供し、競合よりも優れた顧客価値を創出します。

この戦略を推進するために、元キーエンスで営業戦略に精通した三木を最高収益責任者(CRO)として迎え入れました。

三木の豊富な経験と実績を活かし、当社は高付加価値を提供する新しい営業体制を構築しています。

この新体制により、製品の特性を最大限に活かしたマーケティングと営業戦略を展開し、さらなる市場の拡大と顧客満足の向上を目指しています。

株式会社Arent 2024年6月期第3四半期決算説明資料 より引用

長期(FY2030~):建設業界のDXプラットフォーム構想

当社はDXプラットフォーマーとしての地位を確立するという長期構想の実現に向けて、M&Aを積極的に前倒しで進める方針です。

建設業界のさまざまなニッチ領域で優れたプロダクトを持つ企業を買収し、これらのプロダクトに対して当社の開発力を活かし、BIM化を含む機能向上を図ります。

さらに、キーエンス流の営業手法やマーケティング戦略を採用することで、これらのプロダクトの市場価値を大幅に高めることを目指します。

例えば、買収するプロダクトが1,000社のコアユーザーを持つ施工管理ツールであっても、スマートフォンに未対応で利便性が低い場合があります。

このような状況を改善するためには、当社の技術とリソースを活用して営業力を強化し、生産性を向上させ、UI・UXを大幅に改善することが求められます。

これにより、プロダクトの市場適応性を高め、売上と企業価値を飛躍的に向上させることが可能です。

実際に、三木が主導した営業戦略により、PlantStream®の海外市場での売上が3倍に増加しました。

この成功を基に、今後は建設業界のDXプラットフォームとしての地位をさらに強化するため、自社プロダクトの拡充、買収した企業のプロダクトの改善・拡販、共創プロダクトのさらなる開発を同時進行で進めていくことで、さらなる成長を目指します。

株式会社Arent 2024年6月期第3四半期決算説明資料 より引用

注目していただきたいポイント

当社の、建設業界でのユニークなポジションと事業の成長性に注目していただきたいと思います。

当社は、経営陣をはじめとして優秀で実績のあるメンバーから構成されており、いわゆる”大人ベンチャー”としての特徴を持ち合わせています。

当社のM&A戦略は、得意とする建設業界での強固なポジショニングを築き、ノウハウを蓄積していくことで、自社の製品ラインを拡張し、クライアントとの関係を強化していくことが目的です。

参画するグループ企業が増えるほど生産性も向上し、建設業界全体に対して高い影響力を持てると見ています。

株式会社Arent 2024年6月期第3四半期決算説明資料 より引用

投資家の皆様へメッセージ

現在、当社は高砂熱学工業の事例をはじめとして、他社には真似できない、高度な建設DXを行っています。

これからも様々なプロダクトや、積極的なM&Aによる事業拡大によって、当社の魅力を積極的に発信していきたいと考えています。

当社のビジョンや目指す姿については戦略を立ててしっかりと考えておりますので、ぜひ当社へのご支援をお願いいたします。

株式会社Arent

本社所在地:〒104-0032 東京都中央区八丁堀2-10-7 日本瓦斯八丁堀ビル8F

設立:2012年7月2日

資本金:544,989,000円(2024年4月時点)

上場市場:東証グロース市場 (2023年3月28日上場)

証券コード:5254

※本コラムは情報提供を目的としたものであり、個別銘柄の推奨や、金融商品の紹介、周旋を行うものではございません。

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執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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