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法人で資産運用を始めるには?効果的な戦略の立て方やおすすめの運用法も解説

この記事で解決できるお悩み
  • 法人で資産運用を始めたい
  • 効果的な運用戦略の立て方が知りたい
  • 法人におすすめの運用法が知りたい

法人にとって、余剰資金を有効活用し、資産効率を高めることは重要な経営課題である。

資産運用を通じて法人の基礎体力を高め、経営体制をさらに安定化させることが可能になるからだ。

ただし、持続可能な運用戦略を立て、事業とのバランスを取りながら適切にリスク管理するのは、容易なことではない。

そこで本記事では、資産運用の基本的項目から戦略立案、そしておすすめの運用方法までを網羅的に解説する。

法人オーナーや財務担当者に資産運用のヒントになれば幸いである。

目次

法人で資産運用を始めるには

法人が資産運用を始めるには、その意義を十分に理解し、必要な準備を整えてから着手することが重要だ。

法人で資産運用を行うメリット・デメリット

本記事でいう「法人の資産運用」は、法人が本業とは別に収益獲得や財務基盤強化を目的として行う運用を指す。

投資対象として、以下を想定している。

  • 預金・貯金
  • 株式・債券・投資信託(国内・海外)
  • 不動産
  • 金融派生商品(先物・オプション等)

法人が資産を運用することで期待できるメリットとデメリットは以下のとおりだ。

スクロールできます
メリットデメリット
利息、配当、資本利得という形で追加の収入源を生み出し、収益性が向上する
営業外収益を生み出すことにより、現在および将来の経営体制を強化する
税務上の優遇(損失繰越や損益通算など)により、法人の税負担を軽減できる可能性がある
資産を多様な投資先に分散させることでリスクが低減できる
資産運用は市場の変動に左右されるため、投資額を回収できないこともある
運用管理の負担が大きい
運用コストの発生による収益低下のおそれがある
一部の投資は流動性が低く、資金が必要な際にすぐに換金できないこともある

法人の資産運用における節税効果について、より詳しく知りたい人は下記の記事を参考にするといいだろう。

法人の資産運用における節税効果について、分かりやすく解説されている。

資産運用を始める前に準備すべきこと

法人が資産運用を行う際は、事前の徹底した準備が不可欠だ。

もっとも重要なのは、資産運用を行う意義と目的を明確に定義することである。

財務状態の評価

企業の流動性、現金流、および緊急時の資金需要を考慮して、資産運用に充当できる余剰資金を把握する。

本業にかかる資金、運転資金、および固定資産の償却を計算し、今後の事業計画を考慮して余剰資金を特定しよう。

余剰資金は、運転資金の10%から20%ほどで設定するのが一般的だ。

余剰資金活用法の決定

余剰資金の投資先は、金融市場のみではない。本業を発展させるためにどこに投資するかは、広い視点から検討するべきだ。

以下は、投資先の選択肢である。組み合わせて実施しても良い。

  • 事業への再投資や新規事業の立ち上げ
  • 資本構成の再編成(債務の繰上返済、自社株買いなど)
  • 配当金の支払い
  • 法人口座での資産運用

この決定にあたっては、その選択が自社にとって最適な理由をじっくり考えて欲しい。

たとえば「企業価値やROEの改善のために、現預金での保有資産を収益性の高いものに振り向ける必要がある」と考えるなら、これが資産運用を行う意義であり目的となる。

目的・目標の明確化とリスクの評価

「資産運用」が自社にとって最適解だと判断できたら、資産運用の目的と目標を定め、リスクを評価する。

  • 資産運用の目的を明確化する
    • 企業戦略に沿った資産運用の目標を立てる
  • 資産運用の目標を定める
    • 期間と目標リターン、および達成したい成果(例: 短期的な資金増加、長期的な資本成長)を定める
  • リスクを評価する
    • 企業の財務状況や事業や管理の状況を勘案し、リスクプロファイルをつくる

法務・税務に関する準備

投資活動に関連する法律や規制を確認する。税効果を最大化するための戦略を立て、適切な税務申告準備を行う。

社内体制の整備

社内に資産運用と管理の体制を構築する。これは、リスク管理の面からも非常に重要である。

  • 運用体制の整備: 運用方針に基づく意思決定プロセスの確立、運用実務を担当する人材の確保・育成、外部の運用機関や専門家との連携体制の構築
  • 監督体制の整備と定期的な監査・評価
  • 資金管理体制の整備(運用資産と事業資産の分別管理)
  • 必要な社内規程・ガイドラインの整備
  • 投資活動に関する情報開示体制の整備

資産運用の始め方

資産運用を開始するための準備が整ったら、実際に運用をスタートするプロセスに進む。

STEP
投資プラットフォームや資産運用パートナーの選定

手数料の構造、提供されるサービスの種類、プラットフォームの使いやすさを考慮して決定する。

STEP
投資ポートフォリオの初期構築

前のセクションで行った運用の目標や企業のリスクプロファイルに基づき資産配分を定め、適切な商品を選定する。

STEP
運用の監視と調整

運用開始と同時に、定期的なモニタリングを開始する。投資のパフォーマンスや市場の動向を注視し、必要に応じて運用計画の見直し、リバランス、追加投資、撤退などを行う。

STEP
コンプライアンスとリポーティング

運用を行う過程では法的要件を遵守し、必要な場合には監督当局への報告を行う。また、定期的な報告体制を整え、ステークホルダーへの情報提供を行う。

法人が運用をする際の効果的な運用戦略の立て方

法人が資産運用のメリットを最大限享受するためには、適切な運用戦略の立案が不可欠だ。

以下では、効果的な運用戦略を立てるための3つのポイントを解説する。

資産運用の目的と期間の明確化

繰り返しになるが、法人の資産運用戦略の策定において大切なのは、資産運用の目的を明らかにすることだ。

資産配分や投資商品の選定は、目的を出発点として行うからである。

たとえば自社が、戦略目標として「企業価値やROEの改善」を掲げており、これを実現する手段として資産運用を選択したと仮定しよう。

この場合、資産運用の目的を「中長期的な安定収益の確保」とするなら戦略目標に合致するが、「短期的な高リターンの追求」は合致しない。

資産運用の目的を「企業価値やROEの改善に繋げるための、中長期的な安定収益の確保」と決めたら、これを目標として具体化(数値化)する。

たとえば目標リターンは、目指すROEや企業の資本コスト、および市場の平均リターンなどを勘案して設定すると良い。

資産配分は、企業のリスクプロファイルに応じて調整し、最終的な商品選択を行う。

リスクプロファイルの考慮

法人が資産運用を行う場合は、リスク許容度だけでなく、企業のリスクに対する全体的な姿勢や特性を指す広範な概念である「リスクプロファイル」を考慮すべきだ。

リスク許容度は重要な要素だが、より広い範囲でリスクを捉えて考慮することが必要だからである。

リスクプロファイルの要素には、以下のものがある。

  • リスク許容度
    • 企業が受け入れられるリスクの程度。これに基づき資産配分を決める。
  • リスクキャパシティ
    • 企業が負担できるリスクの程度
    • 企業の財務的な余裕度や資本構造に依存するもので、キャパシティが高いと許容度も高くなる
    • これに基づき投資額を設定することで、資産運用が企業経営を圧迫しないようにする
  • リスクアペタイト
    • 企業が積極的に取ろうとするリスクの程度
    • 投資商品選択の際の基準となる
  • リスク管理の能力
    • リスクを識別し、評価し、管理する能力
    • この能力が低い場合は、シンプルで理解しやすい投資商品を選択すべきである

定期的なモニタリングと運用方針の見直し

運用開始後も定期的にパフォーマンスをモニタリングし、必要に応じて運用方針を見直すことが重要だ。

市場環境は常に変化しており、当初立てた運用戦略が必ずしも最適とは限らないからである。

定期的なモニタリングを通じ、運用資産のパフォーマンスを適切に評価し、問題がある場合は速やかに改善策を講じる。

もちろん、自社を取り巻く環境の変化に応じて、運用方針自体を見直すことも重要だ。

たとえば、事業環境の変化によって自社のリスクプロファイルが変化した場合は、それに合わせて資産配分を調整しよう。

また、運用目的や期間が変更された場合も、運用戦略の再構築が必要となる。

法人向けおすすめの資産運用法を紹介

法人におすすめの運用法は、企業の状況や業種によって異なる。

自社の特性を理解したうえで、適切な運用法を選択して欲しい。

資産運用の経験が浅い企業向け

資産運用の経験が浅い企業は、まず基本的なリスク管理と分散投資を実践し、投資信託や定額投資を活用することでリスクを抑えつつ安定したリターンを目指す方法がおすすめだ。

この時、専門家の助言を受けることも有効である。

助言を得ることで、適切な投資戦略を構築し、リスクの管理ができる。

以下は、資産クラスごとの特徴と、法人が投資する際の注意点をまとめたものだ。参考にして欲しい。

資産クラス特徴および注意点
株式長期的な成長による資本利得や、定期的な配当による収入源となる可能性がある
自社の事業とは異なる業界や、補完的な事業を行う企業への投資を検討することで、リスクの分散を図ることが重要
比較的リスクが高いので、投資割合の調整が重要となる
債券債券は借入証券であり、定期的な利息支払い(クーポン)と元本の返済を約束されているため、リスクは比較的低い
債券投資の割合を調整することで、全体のリスクバランスを取れることが可能
不動産賃貸収入という安定したキャッシュフローを生み出せる運用法
不動産の資産価値の向上により、長期的なキャピタルゲインも期待できる
自社で不動産投資を手がける場合は、専門的な知識とノウハウが必要となるため、適切な体制の構築が重要
不動産は流動性が低い
売却には時間がかかり、資金繰りに影響することもある
投資信託すでに分散投資された、リスクが管理されている投資商品商品によって手数料が異なる
同じタイプの商品なら低い手数料を選択すべき
さまざまな投資対象や運用戦略の投資信託があり、選択肢が多い

資金管理で追加収益を獲得したい企業向け

本業を重視しつつ、余剰資金を効率的に管理して追加収益を得たい企業には、以下の運用方法をおすすめする。

  • MMF(マネー・マネージメント・ファンド)
    • MMFは、短期の公社債などに投資するファンドで、流動性と安全性が高く、預金よりも高い収益を得られる
  • 国内外の債券ファンドへの投資
    • 債券ファンドは、安定した利子収入を提供する
    • 国内外の債券に分散投資することで、リスクを抑えた収益確保を目指す

とはいえ、資金管理の主目的が「事業活動に必要な資金を適切に管理する」点は忘れてはならない。

目的のためには、資金の安全性と流動性を確保することが重要であり、過度なリスクテイクは避けるべきである。

本業の収益変動リスクを軽減したい企業向け

本業の収益が不安定な企業や、景気変動の影響を受けやすい業種の企業は、資産運用の目的を「本業リスクをカバーする目的で安定的な収益の確保」に置くことが考えられる。

この場合は、単に元本を保全するだけでは不十分で、本業の収益に匹敵する、または少なくともこれを補完するだけの収益を上げる必要がある。

このような目的を持つ企業におすすめの運用法は以下の通りだ。

  • 高配当株式への投資
    • 安定的な配当収入を目指す
  • 不動産投資
    • 長期に安定的な賃料収入を目指す
  • 高利回り債券への投資
    • 比較的高い利子収入を目指す
  • バランス型ファンドへの投資
    • リスクを抑えつつ、ある程度の収益性を追求する

法人オーナーは資産運用の相談を誰にすればいい?

法人の資産運用は個人のそれとは異なり、複雑だ。本業の影響や税務などにも配慮する必要がある。

安易に行うと、運用からのマイナスを受けるだけでなく、本業に悪影響を及ぼしたり、税金やコストを過度に負担することにもなりかねない。

法人の資産運用を専門家へ相談する重要性

法人が資産運用を行う際は、余剰資金の割り出しから適切な投資対象の選定、法令順守など、考慮すべき事項が多岐にわたる。

しかし、本業に注力しながら、同時に運用戦略を練るのは容易ではない。

最適な運用方法を選択するには、税制、法規制、市場の変動など、常に変化する環境の中で適切な意思決定を行うための知識と経験が求められる。

専門家の力を借りつつ、一つひとつの課題を克服していくことが望ましい。

法人の資産運用におけるIFAの役割とメリット

法人が資産運用を行う場合は、検討の段階から専門家の参画が不可欠である。

とくに、法人の資産運用に経験が豊富なIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)は、会社の状況に合わせた最適な支援を提供できる。

長期的な視点に立った運用戦略を提案してくれるため、法人オーナーは、安心して意思決定ができるだろう。

検索サービス「資産運用ナビ」の活用法

IFAを探す際は、「資産運用ナビ」がおすすめだ。希望条件を入力するだけで、最適なアドバイザーを自動診断し、複数のアドバイザーが提案される。

各アドバイザーのプロフィールを詳しく公開しているため、経歴や専門分野、得意とする運用戦略などを吟味できる。

複数のアドバイザーとの面談を通じ、自社との相性を確認できる点も魅力である。

無料で何度でも相談できるので、アドバイザーの提案内容を比較検討することも可能だ。

資産運用を活用して法人の財務基盤を強化しよう

本記事では、法人で資産運用の具体的な始め方について、詳しく解説した。

自社の経営にメリットのある資産運用を目指すなら、ぜひIFAの活用を検討して欲しい。

IFAは、特定の金融機関に依存しない。だから、中立的な立場から最適なアドバイスを提供できるし、長期的に信頼できるパートナーとなり得る。

IFAを選ぶなら、「資産運用ナビ」の活用がおすすめだ。

候補者の絞り込みが非常に効率的に行えるうえ、面談を通じて候補者の比較も簡単だ。

最適なアドバイザーと巡り会える可能性を、大きく広げられる。

「資産運用ナビ」を活用し、信頼できるIFAを見つけるところから資産運用をスタートしてはいかがだろうか。

法人の資産運用に関するQ&A

法人が資産運用する一番のメリットは何ですか?

企業が資産運用から得られるメリットは、企業の状況により異なる。

急成長中のベンチャー企業なら、資産運用によって得た収益を事業拡大のための投資に回すことが一番のメリットだろう。

一方、事業が安定期に入った企業にとっては、運用収益による財務基盤の強化やさまざまな対象への投資によるリスク分散も、メリットとなるだろう。

大企業や多国籍企業の場合、税制の違いを活用して企業全体の税務効率を高めることや、海外事業に伴う外貨建ての資産・負債を運用でヘッジすることが一番のメリットとなり得る。

法人で資産運用を始めるのに適切な金額はどれくらいですか?

法人が資産運用を始める際の適切な金額は、各社の規模や財務状況、リスク許容度などによって異なる。一律の基準を設けることは難しいため、具体的な金額については、各社の状況に応じて専門家と相談しながら慎重に決定すべきだ。

以下に、ひとつの考え方を紹介しておく。

  • 運転資金の確保
    • 資産運用に充てる資金は、事業活動に必要な運転資金を十分に確保したうえでの余剰資金であるべきだ
    • 運転資金は、売上高の1〜3か月分程度が目安とされている
  • 初期投資額の設定
    • 余剰資金の10%〜20%を初期投資額として設定するという考え方がある
    • この割合は、企業のリスク許容度や財務状況に応じて調整できる
  • 財務健全性とリスクプロファイルの確認
    • 設定した初期投資額が、企業の財務健全性を損なわず、リスクプロファイルに合致しているかを確認する
    • 過度なリスクテイクは避ける必要がある

資産運用の経験が浅い企業は、いきなり大きな金額を投入するのではなく、段階的に資金を増やしていく方法が賢明だ。

法人が資産運用する時はどういった税務処理が必要ですか?

法人が資産運用を行う際には、個人で運用する場合と異なる税務処理が必要である。

法人が資産運用から得た利益は、本業の収益と同様に法人税の課税対象となる。

株式の売買益や配当金、債券の利子などは、すべて益金として計上する必要がある。

一方、運用で発生した損失は、損金として計上できる。

法人の場合、資産運用による損益は、本業の損益と通算できる(損益通算)

また、法人税の計算上で欠損金が生じた場合は、その欠損金を翌年以降の事業年度に繰り越せる。

さらに、法人が他の法人から受け取る配当金については、一定の要件を満たす場合、益金不算入の制度を適用できることもある。

これらの税務処理は、ここの法人の状況によって異なるため、詳細については専門家に相談して欲しい。

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。資産運用の相談サイト「資産運用マッチング」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

・本サイト「資産運用ナビ」はアドバイザーナビ株式会社が運営しております。
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・本コラムは情報提供を目的としたものであり、個別銘柄の推奨や、金融商品の紹介、周旋を行うものではございません。

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