- ポートフォリオの分散効果について理解したい
- ポートフォリオの理想的な割合が知りたい
- 投資先の選択基準が知りたい
資産運用において「投資の基本は分散投資」と言われるが、具体的にどのように実現するのか、理解に自信のない方も少なくない。
本記事では、分散投資について、ポートフォリオの作り方やアセットアロケーションとの関係から、具体的な実現方法までを詳しく解説する。
ポートフォリオ例も紹介し、理解を深められる内容にしている。ぜひ最後までお読みいただき、参考にして欲しい。
分散投資とポートフォリオの関係性
ここでは、分散投資に関する知識を整理する。
ポートフォリオおよびアセットアロケーションとの関係や、特徴や実践方法、そしてポートフォリオ構築の手順を解説している。
分散投資、アセットアロケーション、ポートフォリオ
分散投資とは、リスクを低減し、安定したリターンを追求するための投資の基本原則である。
そして、この原則を具体的な方法や計画に落とし込むと「投資戦略」や「投資手法」としても機能する。
分散投資の概念は、以下のプロセスを通じて実践される。
投資戦略の策定
分散投資の考え方に基づきアセットアロケーションを行い、資産配分を決定する。
これは、ポートフォリオ全体のリスクとリターンのバランスを取るための大枠の計画となる。
具体的な投資手法の実行
決定された資産配分に従い、具体的な商品(個別の株式、債券、投資信託など)や投資のタイミングを決め、ポートフォリオを組み立てる。
「株式60%、債券30%、不動産10%」という配分を決めたとする。
これがアセットアロケーションだ。
この配分で所有する「A株式、B債券、債券インデックス、REIT」がポートフォリオとなる。
二つは別の概念だが、同じように使われることがある。
たとえば、「ポートフォリオを見直しましょう」と言うとき、実際には「アセットアロケーションを見直しましょう」という意図で使われるケースだ。
用語にあまりこだわらず、文脈から解釈して欲しい。
分散投資の特徴と実践の方法
ここでは、分散投資が投資の世界において重要視される理由と、その実践方法について考察する。
分散投資のメリット・デメリット
分散投資の最大の意義は、「リスクを低減すること」にある。
特定の投資が不調でも、他の投資がその損失を補うことで、全体のポートフォリオが安定したパフォーマンスを維持できる可能性があるのだ。
多くの投資家が、市場の不確実性や変動に対する耐性を高め、安定した投資リターンを追求するため、分散投資を実践している。
一方で、分散投資には欠点もある。保有銘柄が多ければ多いほど、ポートフォリオの管理に手間がかかるし、多くの銘柄を売買すると取引手数料やブローカー手数料がかさむ。
分散投資による効果は「リスクだけでなくリターンにも作用する」という点を弱点と考える人もいるだろう。
A株(30%上昇)とB株(10%下落)に分散投資を行った場合、損失は免れるものの、A株のみを購入した場合に比べると獲得利益は小さくなる。
分散投資でも低減できるリスクと取り除けないリスク
分散投資を理解するうえで、「低減できるリスク」と「取り除けないリスク」があることは重要なポイントだ。
低減できるのは、特定の投資や保有銘柄に固有のリスクである。これを「非システマティック・リスク」や「個別リスク」と言う。
たとえば、特定の企業に関連するリスク(財務、経営)、特定の産業の不振、特定地域での政情不安などが該当する。
一方、取り除くことができないリスクは、市場全体に影響を与える要因によって生じるリスクのことである。
「システマティック・リスク」または「市場リスク」と呼ばれる。これには、景気・金利・為替の変動や、全世界的な出来事(戦争、テロ、市場活動の大きな停滞)がある。
分散投資を実現する方法
投資家は、投資先を分散させることで個別リスクの低減を目指す。具体的には以下の方法がある。
- 資産クラス
- 株式、債券、不動産、コモディティなどを
- 地域
- 国内と海外
- 業種
- 特定の業種特有のリスクを分散させる
- 企業のライフサイクル
- 成長株、バリュー株など
とはいえ、時間と予算の制約により、個人が十分に分散されたポートフォリオを構築することは困難だ。
十分に分散されたポートフォリオを実現するには、個別の株式や債券ではなく、投資信託やETF(上場投資信託)への投資が良い選択となる。
最適な分散投資を維持する方法
また、最適な資産配分の維持には、定期的なリバランスが必要なことを忘れてはならない。
たとえば株式市場が好調になると、ポートフォリオの株式比率が投資家のリスク許容度を超えて大きくなることがある。
これを是正するために、定期的に資産の割合を調整(リバランス)することで、望ましい分散投資の状態を維持するのである。
ポートフォリオを作る手順
ポートフォリオは一般的に、以下のステップで構築する。
- 長期的な資産の成長を目指すのか、定期的な収入の確保が目的なのか、あるいはリタイアメント資金の準備が目的なのかを明確にする
- 投資目標は、投資家それぞれがライフステージや個人的な事情に合わせて策定する
- 短期、中期、長期のどの期間を対象にするかを考える
- 投資期間によって、リスクとリターンのバランスが異なる点を理解しておく
- 投資家自身がどの程度のリスクを受け入れられるかを評価する
- 投資目標、投資期間、リスク許容度を考慮して、資産クラス(株式、債券、不動産、コモディティなど)を選定する
- 選定した資産クラスに対して、適切な配分割合を決定する
- 決定した資産配分に基づいて、具体的な銘柄や商品(株式、債券、投資信託、ETFなど)を選ぶ
構築したポートフォリオは、投資環境の変化や投資家の状況の変化に応じて見直す。
必要があればリバランスを行い、リスクを適切な状態に保つことが肝要である。
ポートフォリオ構築のための投資先の選び方
ここからは、ポートフォリオ構築の最終段階である「個別銘柄や商品を選ぶ」方法を解説する。
以下のように、「リスク評価→リターン評価→コスト比較」というステップを踏むことで、リスク許容度を超える投資を排除し、過度に楽観的な思考を避けられる。
投資商品のリスクを評価する
ここでは、株式投資を例に評価方法を解説していく。他の資産クラスにおいても、ここで説明した考え方を応用してご自身なりに評価して欲しい。
個別銘柄か投資信託か
まずは、個別銘柄に投資するか、あるいは株式投資信託を購入するかを検討しよう。
個別銘柄への投資は、特定の企業のリスク(業績の変動、経営問題など)がダイレクトに影響するため、すでに分散投資が行われている株式投資信託に比べるとリスクが高い。
個別銘柄のリスク評価
個別銘柄選定は、「株式の性質による分類」により、リスクの程度が絞り込める。
たとえば、リスク許容度の低い「安定運用を重視する投資家」なら、大型株に属する株式が適しているだろう。
代表的な分類 | 特徴とリスク |
---|---|
成長株 | 企業の売上や利益が高い成長率を示している株式ボラティリティが高く、株価急落のリスクがあり収益は不確実 |
大型株 | 時価総額が大きく、業界を代表する企業の株式業績が安定し発行株式数も多いため、株価の変動が比較的小さく、投資リスクは低め |
バリュー株 | 一般的に株価が割安に評価されている銘柄。倒産リスクは相対的に低い市場の認識が改善されない限り、株価上昇しないリスクがある割安に評価されている背景を正しく分析することは難しい |
景気循環株 | 景気変動の影響を受けやすい銘柄景気後退局面では業績悪化と株価下落のリスクがある |
ディフェンシブ株 | 景気変動の影響を受けにくい銘柄事業の安定性が高く、業績の変動が小さく、倒産リスクは相対的に低い |
株式投資信託の投資手法によるリスク評価
株式投資信託なら、運用方針や投資手法で絞り込みをかけると良い。
分類 | 特徴とリスク |
---|---|
アクティブ型 | ファンドマネージャーが独自の調査・分析に基づいて銘柄選択を行う運用手法マネージャーの運用能力によって、運用成績が市場平均を下回るリスクがある |
パッシブ型 | 特定の株価指数に連動する運用手法株式市場全体が下落した場合には、基準価額も同様に下落するリスクがある |
セクター特化型 | 特定の産業セクター(例:テクノロジー、ヘルスケア、金融など)に集中投資する運用手法セクター全体が不調になると、信託の価値も大きく下がるリスクがある |
グローバル型 | 世界中の株式に分散投資する運用手法為替リスクがあり、各国の政治や経済の変動が投資先企業の業績に影響を与えるリスクもある |
投資商品のリターンを評価する
自身のリスク許容度に合わないものを排除できたら、期待リターンにより候補を絞り込もう。
- 過去のパフォーマンスを確認する
- 個別銘柄では「過去数年の株価の変動や成長率」を、投資信託では「過去のリターンや基準価額の変動」を確認する
- リスク調整後のリターン
- 投資信託では、シャープレシオなどのリスク調整後のリターンを確認する
- 将来の成長見通しを評価する
- 配当・分配金の利回りを評価する
- 配当利回りや分配金利回り、成長率などを評価する
投資にかかるコストを比較する
最後に、コストの比較も忘れないように実施しよう。
個別銘柄の取引で必要になるのは、証券会社が設定する売買手数料のみなので、銘柄の選定には直接影響しないだろう。
一方で、投資信託やETFなどは、売買手数料に加えて運用管理費用(信託報酬)などがかかる。
これは商品ごとに設定されるものなので、必ず比較して、できるだけ安いものを選ぶことが肝要だ。
たとえば、同じリターンを上げる二つの投資信託がある場合、運用管理費用の低い方が最終的な手元に残る利益が多くなるため、リターンも高くなる。
分散投資に最適なポートフォリオ例を紹介
ポートフォリオ構築に必要な変数は、年齢、収入、純資産、消費傾向、リスク許容度、子供の数など、限りがない。
したがって、誰にとっても最適な普遍的ポートフォリオバランスは存在しない。
しかし、投資意思決定の参考になる基準はある。ここではそれらを紹介していく。
ポートフォリオ構築の基本となる考え方
ポートフォリオ構築の一般的な考え方は、「年を取るにつれてリスクを徐々に減らしていく」という基本原則に基づく。
株式の配分については「100マイナス年齢」というルールがある。たとえば30代なら70%を、株式に投資するという方法だ。
ただし、このルールが誕生したときの平均寿命は70歳だったため、現代版では「110〜120マイナス年齢」とする修正を加えるべきかもしれない。
「20-30代なら80-90%、40代なら70-80%、50代なら60-70%、60代なら50-60%を株式に振り向ける」という基準を、一つのベースラインとして拠り所にして欲しい。
ターゲット・デート・ファンドを参考にする
年齢に合わせた、バランス型ポートフォリオの例として、「ターゲット・デート・ファンド」を紹介する。
ターゲット・デート・ファンドとは、投資家の退職予定年(ターゲットデート)に合わせて、資産配分を自動的に調整するファンドのことだ。
2035年、2040年、2045年など、5年間隔で満期を迎える設計が一般的だ。
資産配分は、ターゲット・デートにリスクを最小化するよう、徐々により保守的な配分にシフトする。
以下は、米国の大手運用会社の『Vanguard Target Retirement』の資産クラスである。
2035 Fund (VTTHX) | 2040 Fund (VFORX) | 2045 Fund (VTIVX) | 2055 Fund (VFFVX) | |
---|---|---|---|---|
運用期間 | 約10年 | 約15年 | 約20年 | 約30年 |
株式 | 67.95% | 75.33% | 82.47% | 88.27% |
債券 | 29.21% | 22.00% | 14.91% | 9.43% |
現金等価物 | 2.79% | 2.61% | 2.57% | 2.24% |
自分に適したポートフォリオを作る
年齢による基準を確認できたところで、実際に自分に合わせたポートフォリオへ調整していこう。
一つは、資産クラスを自分の状況に合わせて調整する方法だ。
REITや商品インデックスなど、オルタナティブ投資を加えるという選択肢もある。この調整は、シミュレーションサービスなどを使うほか、専門家に相談しながら独自に決めていく方法により行える。
もう一つは、個別商品や銘柄の組み合わせで、リスクやリターンを調整する方法だ。
たとえば、より高いリターンを目指すなら、株式の中でも新興国インデックスを加えることが考えられる。
逆にリスクを抑制したいなら、日経225連動などの比較的安定した商品を組み入れる形で調整する。
ポートフォリオに関する相談先はどこが良い?
資産運用においてポートフォリオの管理は専門的な知識と継続的な注意が必要であり、一人で行うのは難しい点がある。
ポートフォリオを作って投資を始めるのは個人の力でも十分可能だが、その後も引き続きモニタリングやリバランスが必要となる。
ポートフォリオを活用した資産運用を専門家へ相談する重要性
ポートフォリオによる資産運用では、市場の変動、経済の状況、個人のライフステージや財政状況の変化に応じて、定期的なモニタリング、分析、そしてリバランスが必要だ。
たとえば、結婚や子どもの誕生、退職など、ライフイベントは投資戦略の見直しが必要になる。
これらの要素を適切に管理し、長期的な目標に沿った資産成長を目指すなら、専門家への相談が大きな力となる。
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分散投資を実現する適切なポートフォリオを構築しよう
本記事では、分散投資を実現するポートフォリオの組成について、その意義から具体的な方法まで詳しく解説した。
明確なイメージを持っていただけるよう具体的な例も挙げたが、あくまでも一般的な内容だという点はご留意いただきたい。
誰にでも最適なポートフォリオは存在しないことを理解し、投資家一人ひとりが最適解を追求する必要がある。
資産運用で、リスクを抑えて目標達成を目指すなら、専門家との伴走が不可欠だ。
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