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【9557】株式会社エアークローゼット代表取締役社長兼CEO 天沼聰氏「個人の時間価値を向上させるファッションビジネスを展開」

※本コラムは2022年11月29日に実施したIRインタビューをもとにしております。

ファッションレンタルのサブスクリプションサービス。これまで、ありそうで無かったビジネスを立ち上げ、株式を上場させた株式会社エアークローゼット。ファッション業界とは無縁だった人物がなぜファッション業界で起業したのか。その真意を代表取締役社長兼CEOの天沼聰氏に伺った。

目次

株式会社エアークローゼットを一言で言うと

次世代の消費をつくっていくファッションサービスです。今のところ、洋服というモノのサブスクリプション、シェアリングサービスで上場しているのは、私たちだけです。

これまでの消費行動は、今のトレンドを把握して、どこかの店舗に行き、そこで欲しいモノを探して選ぶという一連の流れがありました。このなかで移動コストや時間コストを負担して、かつ自分で選ばなければならなかったのが、ECの登場によって移動コストを負担せずに済む消費行動が生まれてきました。

そのなかで私たちは、お洋服を選ぶという行為を全部自分でやらなくても、一定数の消費につながっていくのではないか、という仮説を立て、それをビジネスモデルに落とし込んでいます。

これは、今までに無かった消費行動といっても良いでしょう。これまで消費は能動的な行動でしたが、次世代の消費動向の中には、こうした受動的な消費行動が一定率、含まれるようになると考えています。

創業の経緯

私と、他2人の共同創業者の3人で立ち上げた会社なのですが、事業領域を定めて決めて創業したのではありません。何をしようか、というところからのスタートでした。

ただ、こういうことをやりたいというイメージはありました。それはITを通じて、人々のライフスタイルの豊かさにつながるような、永続性のある事業をつくりたい、ということです。

じゃあ、ライフスタイルの豊かさを、どうやってつくるのかを考えた時、その答えはなかなか見つからなかったのですが、最終的に行き着いたところは「時間」でした。誰もが平等に持っているけれども、使い方や感じ方によって不平等になるものは、時間です。そして、面倒だな、億劫だなと思っている1時間と、ワクワクしている1時間とでは、後者の方が豊かなはずですから、人生において有限である時間の価値を高めることを事業化すれば、人々の豊かなライフスタイルにつながるだろうと考えました。それが事業をスタートさせたきっかけです。

そして、ワクワクした時間こそ最も時間価値が高い、と定義して、「“ワクワク”が空気のように当たり前になる世界へ」という会社のビジョンを考えました。

では、何をしている時が最も“ワクワク”して時間価値を高められるでしょうか。生活の三大要素は「衣食住」ですが、このなかで最も“ワクワク”に近いものは「衣」ではないかと考えました。人の心に一番近く、ずっと存在していて、かつテンションを高め続けられるのは、やはりファッションだと考えました。そして、誰の時間価値を高めれば良いのかを突き詰めた時、真っ先に浮かんだのが女性でした。

なぜなら、男性よりも女性の方がファッションに多大なコストを払っているからです。1日24時間は誰にでも平等ですが、毎日のお洋服選び時間が必要になっているイメージが女性の方が強くありました。

さらに、仕事や子育てなどライフスタイルの変化にあわせ、時間の使い方が変わり、ご自身のお洋服選びの時間が無くなり、それにストレスを感じている女性が多いとしたら、今の生活リズムを変えずに日々のお洋服選びも簡単にできるサービスを提供できれば、間違いなく女性の時間価値を向上できるはずだと考えました。

株式会社エアークローゼット 2023年6月期 第1四半期 決算説明資料 より引用

問題は、それをどうやって実現するかです。当初はデジタル上でファッションと出会えるバーチャル空間をつくろうと思ったのですが、結局のところファッションは、自分の手に取ってみないことには楽しめないものだということに気付き、リアルな体験が出来る方が良いと判断しました。

その場合、安価な服を大量に取り揃えて選んでもらうという手もありましたが、大きな流れとして、個人消費がサスティナビリティを重視する方向に進むとしたら、昔のような大量生産、大量消費、大量廃棄ではないビジネスモデルを考えなければなりません。買ってはみたものの、今ひとつ自分に合わないといった理由で廃棄されてしまうお洋服は結構ありますが、自分に合わなくても、他の人に合う可能性はあります。だからレンタルで、日本全国平等にサービスを提供するために、インターネットを活用することにしました。


株式会社エアークローゼット 2023年6月期 第1四半期 決算説明資料
 より引用

また、最初はたくさんのアイテムを並べて選んでもらおうとしたのですが、そもそも時間がない女性をターゲットにしているので、お客様に選んでもらうのでは話が違ってきてしまいます。だから最新のトレンドを把握していて、お客様のことを理解できるスタイリストが提案する形にすれば、お客様の時短や新しいファッションとの出会いにもつながります。

さらに、お客様がレンタルされたお洋服を返却した際のクリーニングをすべて私たちが負担することで、お客様には新しいお洋服との出会いに集中できるようなサービス形態にしました。そのコストとしてサブスクリプションにするのと同時に、もし気に入ったアイテムが出てきた時は、それをそのまま購入できる仕組みも付与しました。

こうしてサービスの形がつくられていったのですが、表向きはサブスクリプションやレンタルビジネスでも、その根底にあるのは、時間価値を向上させるためのビジネスなのです。

事業内容について

基本的には女性を対象にしたファッションレンタル事業です。月額制にしていて、月額会員になって下さった方には、ご自身のファッションの嗜好などの情報を登録していただきます。

すると、その登録情報をベースにして、スタイリストが個々人の嗜好に合うと思われるお洋服を3着から5着、ご自宅にお送りします。そして実際に着ていただいた際の感想などをフィードバックしていただければ、それをもとにカルテを作成し、その情報を基にして、スタイリストがまた新たなお洋服を選んでお届けする、という流れになります。


株式会社エアークローゼット 2023年6月期 第1四半期 決算説明資料
 より引用

プランは3通りあり、月1回、3着お届けするライトプラン、月1回、5着をお届けするライトプラスプラン、そして3着をお届けしたうえで、返却するとすぐに新しいお洋服をお届けする借り放題のレギュラープランがあり、そのなかで気に入ったお洋服があった際には、そのまま購入できます。

個人向けにサブスクリプション型のサービスを提供する会社がグロースするためには、広告などで認知度を高めて会員数を一気に増やす、といった施策が採られがちですが、私たちはいささかそこが異なります。認知度の向上は大事なのですが、向上しすぎるのもだめなのです。

私たちは、半年先の会員数を見越したうえで、半年前から新作のお洋服を仕入れていくのですが、ボトルネックになるのがスタイリストの人数とクリーニング、物流のキャパシティです。対応できる人数が決まっているので、マス媒体で積極的に告知をした結果、会員数が急増すると、対応し切れなくなるリスクがあります。ですから、キャップをかぶせた状態で徐々に会員数を増やしていかなければなりません。

つまり認知度を向上させる施策よりも、ターゲットにしているお客様にしっかりご入会いただけることの方が大事なのです。この点、ウェブ広告であれば、マス媒体のような爆発的な拡散はないものの、SNSなどに広告を打ち、反応率を見ながらどの程度、コンバージョンに寄与しているのかを計ることができます。

期待をはるかに超えるような成長というよりも、着実にお客様を増やして売上、利益につなげていく、安定成長型のビジネスモデルを重視しています。

株式会社エアークローゼット 2022年8月12日 事業計画及び成長可能性に関する事項  より引用

中長期の成長イメージとそのための施策

まずは今まで通りの成長を維持できるようにするのと同時に、ターゲットとなる年齢層や、ご提供するアイテムの価格帯を広げるとか、女性だけでなく男性向けのサービスを構築するといったことは検討しています。

加えてファッションブランドが自社でレンタルを始めようとしても、倉庫物流のオペレーションが複雑なので、実際にレンタル事業を始めようとした場合、多額の投資が必要になります。私たちはそのオペレーションができる倉庫物流の仕組みをすでに持っているので、ファッションブランドがレンタル事業を始める際に、プラットフォーマーになるといった事業戦略も考えています。

株式会社エアークローゼット 2023年6月期 第1四半期 決算説明資料 より引用

また海外戦略ですが、日本のファッションに対する関心の高い東南アジアを中心にして、事業展開をはかるのも、これからの課題です。

投資家の皆様へメッセージ

弊社は、ファッションアパレルという巨大産業において、パーソナルスタイリングを導入し、サブスクリプションサービスを展開した日本発の会社です。今、個人の消費行動は大きな変革期を迎えています。そのなかで、常にお客様に選んでもらえる組織になるべく会社を進化させていきます。

株式会社エアークローゼット

本社所在地:東京都港区南青山3-1-31 KD南青山ビル5F

設立:2014年7月15日

資本金:1,398,087千円(2022年9月30日時点)

上場市場:東証グロース(2022年7月29日上場)

証券コード:9557

※本コラムは情報提供を目的としたものであり、個別銘柄の推奨や、金融商品の紹介、周旋を行うものではございません。

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執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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