- コーポレートカード導入はどれくらいメリットがあるのか知りたい
- コーポレートカード導入で経費管理の効率化やキャッシュフロー改善ができるか
- 導入時の注意点や進め方を知りたい
クレジットカードの中でも、主に法人向けに発行されるクレジットカードのことを法人カードと呼ぶ。
さらに、その中でも大企業向けに提供されているのが、コーポレートカードである。
全社員が使うことで、会社運営に必要な多くの機能が利用でき、業務の効率化や、福利厚生面でも役立つため、導入が進んでいる。
この記事では、コーポレートカードについての基本と、通常の法人カードとの違いを理解したうえで、メリット、デメリット、導入に際しての注意点を解説する。
自社へコーポレートカードを導入すべきかどうかの判断材料としてほしい。
法人カードとは?
ここでは、まず法人カードの基本知識とメリットの知識を身につけたうえで、大企業向けのコーポレートカードと中小企業向けのビジネスカードの違いを理解しよう。
法人カードの基本
法人や個人事業主が使うクレジットカードのことを法人カードという。
会社の物品の購入や出張の支払いはもちろん、お客様への接待費など、仕事上のさまざまな支払いに利用できる。
法人口座を引き落とし口座に設定すれば、法人カードでの支払いは全てその口座から引き落とされるため、経費管理がしやすくなる。
なお、法人カードは、厳密には「ビジネスカード」と「コーポレートカード」の2つに分類される。
ビジネスカードは中小企業・個人事業主向け、コーポレートカードは大企業向けと分類されることもあるが、カード自体に大きな機能の違いはない。
中小企業はビジネスカードでなければならないわけではないが、発行枚数が制限されている場合もある。
法人カードのメリット
では、法人カードにはどんなメリットがあるのだろうか。
ここでは、5つのメリットを紹介しよう。
- 効率的な経費管理
- ビジネス特化型サービスの提供
- 業務とプライベートの分離
- 追加カードの発行
- 年会費を経費計上可能
効率的な経費管理
事業上の経費支払いを法人カードに集約することで、会社の口座からまとめて自動で引き落とすことができ、毎月の経費精算を効率的に行うことが可能となる。
経理システムと連動して、カード明細の自動取り込みもできるため、経理処理も楽になるだろう。
従業員にとっても、利用分が会社の口座から引き落とされると、立て替え払いの必要がなく利便性も向上する。
法人カードの利用明細があれば、全ての取引を明確化できるため、経費の計上漏れを防止することができる。
ビジネス特化型サービスの提供
法人カードの利用者向けに、さまざまなサービスが提供されている。
出張の多い社員は、空港ラウンジ利用や出張中に起きたケガや盗難などのトラブルを補償する国内海外の損害保険があると安心だろう。
また、カード会社によっては、ホテルやレジャー施設の割引が受けられたり、フィットネスクラブを安く利用できたりと、福利厚生に利用できるサービスもある。
その他、ビジネスコンシェルジュの提供や、飛行機やホテルの予約を代行してくれるものなどもある。
業務とプライベートの分離
法人カードを導入することで業務とプライベートの支出を区別しやすくなり、経費管理が効率的に行える。
これにより、事業取引や経費を正確に把握することが可能になり、税務や会計の面でも健全性を保てるだろう。
公私の区別ができることで、取引の透明性と信頼性が向上する。
追加カードの発行
企業で法人カードを作成すると、従業員分の追加カードも複数枚発行することができる。
これらの複数のカードは、利用金額を一つの法人口座にまとめて請求することが可能となるため、従業員が経費として支払った金額を、一括管理できる。
ただ、法人カードごとに、何枚まで追加カードを発行できるか決まっているため、従業員の人数に対して追加カードの枚数が不足していないか、事前に確認しておく必要はあるだろう。
年会費を経費計上可能
法人カードの年会費が事業の必要経費として計上できることが、法人カードを使ううえでのメリットとなる。
この経費計上により、法人が支払った年会費分が所得から差し引かれ、課税対象が少なくなることになる。
企業にとっては、税金の削減や最適な経費管理が可能となるだろう。
ビジネスカードとコーポレートカードの違い
法人カードは、大きく分けて2つの種類がある。
1つは、個人事業主や中小企業が利用する「ビジネスカード」である。
利用限度額が相対的に低く、追加カードの発行枚数も少ないのが特徴だ。
起業したばかりの個人事業主や規模の小さな法人に向いている。
もう1つは、大企業が利用する「コーポレートカード」である。
ビジネスカードと比べて、利用限度額が高く、追加カードの発行枚数も多いのが特徴だ。
役員の会食や社員の出張が多い大企業に適している。
コーポレートカードの中には、企業の経費精算システムと連携できるものもあり、経費管理の効率化に役立つだろう。
法人カードは、会社の規模やニーズに合わせて選ぶことが重要となる。
大企業が利用する法人カード「コーポレートカード」導入時のメリット
コーポレートカードを導入することで、以下のような3点のメリットを得られる。
- 経費精算の効率化
- キャッシュフロー改善
- 利用特典の充実
経費精算の効率化
交通費や交際費を社員が立替払いしたり、事前に受け取った小口現金から支払ったりしていた経費などを、コーポレートカードでの決済に一元化できる。
従業員にとっては、経費精算書類の作成やその後の経費申請などが不要となるため、余計な間接業務を削減でき、本来の仕事に集中できる。
経理部門にとっても、申請書類の確認や領収書のチェックなどの作業を減らすことができ、経理業務の効率化が可能となるだろう。
また、コーポレートカードの明細データは経費のシステムへの自動連携も可能となるので、手作業による入力ミスの防止にもなるはずだ。
キャッシュフロー改善
コーポレートカードで経費を支払うことで、カード利用額の引き落とし日まで手元に現金を残しておくことができる。
支出を遅らせることで、キャッシュフローの改善が見込めるようになるはずだ。
また、さまざまな経費をコーポレートカードで決済しておけば、毎月の決まった日にまとめて引き落としとなるため、キャッシュフローが把握しやすくなるのも大きなメリットだ。
利用特典の充実
もともと法人カードは、ビジネスに特化したサービスを提供しているが、コーポレートカードを使うことで、大企業をサポートするさまざまな特典を受けることが出来る。
以下はその例だ。
- 国内外の空港ラウンジの無料利用
- 福利厚生サービス(スポーツクラブや人間ドックなど)を割引価格で提供
- 事務用品購入サイトの法人カード利用
- ETCカードの追加
- 海外出張の損害補償保険
大企業が利用する法人カード「コーポレートカード」導入時のデメリット
コーポレートカード導入によるデメリットとして、以下3点があげられる。
- 年会費の負担
- カード管理の煩雑さ
- 不正利用に気を付ける
年会費の負担
年会費はカードを持っている限り、毎年、コストとして発生することになる。
とくに、企業規模が大きくなると従業員も多くなるため、人数分の多大な年会費がかかってしまう。
必要経費として計上できるため税金面では有利だし、ステータス性が高いゴールドカードやプラチナカードを持つメリットもあるが、コスト高になってしまうのは事実だ。
カードの種類や付帯サービスによって異なるため、自社に必要なサービスや機能を見極めることが大切となる。
カード管理の煩雑さ
多くの従業員にコーポレートカードを発行する場合、適切に利用しているか管理に負担がかかる。
業務目的での利用に限定している場合は、私用の請求が含まれていないかチェックしなければならないし、プライベート用途での使用を認めている場合でも、経理処理が複雑になるのは間違いない。
適切な経費処理を行わないと、税務調査での指摘が入ることもあるため、厳密に管理することが求められる。
必要に応じて、カード管理システムの導入や外部業者へのアウトソーシングも検討しなければならないだろう。
不正利用に気を付ける
従業員の人数が増えるほど、不正利用のリスクが高まる。
不正利用とは、会社が定めた本来の目的以外での利用(プライベートな用途での利用)という場合もあれば、悪意ある第三者がハッキングやスキミング等でカード情報を盗み、気づかぬうちに不正に利用された、というケースもある。
定期的に利用状況を監視するのはもちろんだが、セキュリティ対策を考慮した、ナンバーレスカードやICEチップ搭載カードを選ぶことも大切だ。
不正使用の防止に関する教育・啓蒙を従業員に対しても徹底したうえで、カード紛失・盗難時の対応手順も明確にしておこう。
大企業が利用する法人カード「コーポレートカード」導入時の注意点
コーポレートカードは、経費精算の効率化やキャッシュフローの改善など、多くのメリットを企業にもたらしてくれる。
しかし、導入時には以下の点を意識する必要がある。
- 目的とメリットの明確化
- 費用対効果の分析
- 運用管理ルールの整備
- キャッシング未対応
目的とメリットの明確化
コーポレートカード導入の目的を明確にしておこう。
例)経費精算の効率化、従業員の福利厚生、資金繰りの改善など
そして、目的を達成すると同時に、企業と従業員双方にどのようなメリットが期待できるかを、具体的に洗い出しておく必要がある。
例)企業にとってのメリット
- 経費精算の自動化により、経理部門の負担を軽減し、コア業務に集中できる時間を増やすことができる
- 購買データ分析によるコスト削減や、支払いサイトの延長による支払利息の削減など、コスト削減効果が期待できる
- 経費の不正使用を防ぎ、損失を回避することができる
例)従業員にとってのメリット
- 紙の領収書の保管や手入力による精算作業から解放され、業務効率を向上させることができる
- 旅行保険やショッピング保険などの付帯サービスによって、安心感が高まる
費用対効果の分析
コーポレートカードは、年会費がかかることがほとんどだ。
発行したカード枚数分の年会費が費用として発生することを認識しておこう。
また、データ連携のためのシステム対応や追加のシステム導入費用など、関連費用も考慮する必要がある。
想定される費用に対して、どの程度の効果が得られるのか、具体的に挙げられると費用対効果の分析も行えるだろう。
運用管理ルールの整備
たとえば以下のような点を考慮して、コーポレートカードの運用管理ルールも整備しなければならない。
- 部門や役職別にコーポレートカードの利用目的と上限額を決める
- カード取得方法について、誰がどのような手続きで申請するのかを明確にする
- カードの紛失や不正使用を防ぐためのセキュリティ対策を徹底する
- カードの発行・回収・管理を行うカード管理専門の部署を設置する
- 各カードの利用内容と上限額のチェックを定期的に実施する
- カード管理の社内規程を整備し、従業員に十分周知する
キャッシング未対応
キャッシングには対応していないコーポレートカードが多い。
キャッシングとは、小口現金を一時的にカード会社から借りること。
これは、コーポレートカードの目的である経費節減や福利厚生の観点からはそぐわないこともあるため、キャッシング機能を設定していないコーポレートカードが多いのだ。
業務利用の場合は原則カード決済を行うことを前提としているが、事業によっては、どうしても現金が必要になることもあるだろう。
現金処理の必要性がある場合は、キャッシングに対応しているコーポレートカードを探すことも考慮したい。
大企業が利用する法人カード「コーポレートカード」の導入は慎重に行おう!
コーポレートカードの導入を検討する際には、慎重なアプローチが必要となる。
この記事では、法人カードの基本知識から、大企業向けコーポレートカードと通常の法人カードとの違い、それぞれのメリット・デメリット、導入時の注意点まで幅広く解説した。
コーポレートカード導入には、社内業務プロセスや体制の見直し、システム連携の改修なども検討する必要がでてくるかもしれない。
それでも、コーポレートカード導入の効果は高いはずだ。
企業の特性やニーズに合わせて十分に検討し、ぜひ最適なコーポレートカードを選んでほしい。
また下記記事では、おすすめの法人カードについて紹介しているのでぜひ参考にしてほしい。