働き方の選択肢が増えつつある昨今では、ライフステージやキャリアに合わせて転職するのが当たり前になってきた。
証券・金融業界においては、独立系ファイナンシャルアドバイザーであるIFAに注目が集まっており、転職先として検討している人もいるだろう。
ただし、現時点で顧客がいない場合は転職後に苦労するのではないかと不安視する人がいるのは無理もないだろう。
この記事では、顧客無しの状態でIFAに転職できるのか、転職した際の注意点をまとめた。IFAになる方法とおすすめの相談先も紹介しているので、ぜひ参考にしてほしい。
顧客なしでもIFAになれるのか?
そもそも、IFAは金融商品仲介業者として登録を受けているIFA法人に所属しており、提携している金融機関・証券会社が扱う金融商品を顧客に提案して仲介する役割を担う。
結論として、顧客なしでもIFAになること自体は可能だが、活躍し続けられるかどうかは本人の努力次第である。
IFAになるにはIFA法人への転職が通常の流れであるが、転職先の企業と締結する雇用形態によって働き方が大きく異なる点には注意が必要だ。
- IFA法人と雇用契約を締結する正社員型のIFA
- IFA法人と業務委託契約を締結する業務委託型のIFA
前者の正社員型IFAであれば、一般的な転職活動と全く同じイメージで問題ないだろう。一方、後者の業務委託型の場合、個人事業主として活動することになるため、会社員時代の働き方とはガラッと異なる点は覚えておこう。
正社員型IFAであれば柔軟性は高い
顧客なしの状態で正社員型のIFAになるのであれば、所属する企業のサポートを受けられるため、比較的スムーズに活動していけるだろう。
IFA法人によって異なるが、転職して間もない頃は自社が抱える既存ないし新規顧客を割り当てられるケースもあるため、顧客がいない状態を早期に脱せられる可能性が高い。もちろん、サポートを受けられるのは初期だけであるため、IFAとして活動を継続するためには顧客の開拓が欠かせないのは言うまでもない。
IFAに限らず、あらゆる業界の営業において最も苦労するのが「ゼロイチ」の達成ではないだろうか。初めての顧客を獲得するまでは試行錯誤が続き、自分なりの営業トークも構築できていないため、もどかしい日々を過ごすことも多いだろう。
この点、最初の顧客を所属先から紹介されることで、精神的な余裕度は大きく異なる。もちろん、顧客獲得までの試行錯誤は必要だが、契約後の業務を実践しながら理解できるのは自信につながるだろう。
実際、業務の進め方や顧客の紹介を受けられるかどうかはIFA法人によって異なるため、各社の募集要項は詳細に確認する必要があるのは言うまでもない。
業務委託型型IFAの場合は注意が必要
顧客なしの状態で業務委託型のIFAになった場合は、収入がゼロになるため注意が必要である。
IFA法人と業務委託契約を締結する場合、報酬に関しては完全成果型になる。つまり、契約した金額・手数料に応じて収入が増えるため、顧客がいなければ収入は入らないのだ。
言い換えると、顧客のいない状態を抜け出して軌道に乗れば、年収1,000万円以上を狙うことも十分可能である。むしろ年収は青天井と言っても過言ではないため、収入の振れ幅は正社員型とは比べものにならないだろう。
業務委託型IFAの場合、企業側としてもコストがかからないため、正社員型に比べて採用されやすいのが特徴である。
つまり、顧客がいないとしてもIFAになること自体は特段難しくない一方で、転職した後をどうするかが特に問われることを覚えておこう。
また、どのような人がIFAになっているのか、詳しく知りたい方は下記の記事を参考にして欲しい。
顧客なしでIFAになる際の課題は?
顧客なしの状態でIFAになること自体は可能で、むしろ、転職者の多くが最初は顧客がいない状態からのスタートである。
現職で証券会社や保険会社に勤めており、在職期間中に関係性を構築した顧客がいるとしても、これらの顧客に対して転職後にアプローチできるわけではない。
現職の退職時に注意喚起がなかったとしても、後々のトラブルを避けるためには顧客を引き継がないのが賢明だ。
このような背景を含めて、顧客なしの状態でIFAになる際の課題について、3つの観点から解説していこう。
- 駆け出し期でつまずく可能性が高い
- 収入が減少しやすい
- 倫理観を欠く行動を取りかねない
順番に解説していくので、自分ならどのようなアプローチをとれるか考えながら読み進めてみてほしい。
駆け出し期でつまずく可能性が高い
IFAとして活動するにあたって最も懸念すべきなのが、駆け出し期における顧客基盤の醸成である。
IFAとして活動する人の多くが前職で証券業界や保険業界に勤めており、転職前後で業務の本質は変わらないこともあり、業務を滞りなく進められるだろう。
しかし、IFAに転職すると企業名という後ろ盾もなく、顧客との信頼関係を構築する際に苦労するケースが多い。世間一般におけるIFAの知名度は高くなく、不審がられる場合もあるだろう。
また、契約における手数料がIFAの報酬の源泉となっていることもあり、顧客に対してより多くの付加価値を提供して、IFAに資産の運用・管理を任せることに価値を感じてもらう必要がある。
顧客としても、IFAに託す価値を見出せなければ自らネットの証券会社で手数料を抑えて資産運用することもできるため、いかにして差別化できるかが鍵を握るだろう。
IFAとして「ゼロイチ」を早くクリアできるほど次につながりやすく、顧客基盤の醸成もしやすくなるはずだ。
収入が減少しやすい
顧客がいない状態でIFAに転職した場合、収入減少は覚悟しておいたほうがよいだろう。
もちろん、正社員型のIFAであれば基本給が支払われるため、前職より待遇のよいIFA法人に転職できれば収入が下がることはないはずだ。
もちろん、転職先との条件交渉次第で収入が下がる可能性も十分あり、固定給が低い代わりにインセンティブ報酬を高く設定しているケースもあるため、一概には言えない点も覚えておこう。
業務委託型のIFAの場合、そもそも基本給という概念すらないため、転職して間もない頃の収入減少は避けられないだろう。
一般的に、業務委託型のIFAの場合における手数料率は50〜70%に設定されている。現職の月収が40万円であれば、IFAで同額の月収を得るためには、月間の契約に伴う手数料が60〜80万円ほど必要になる計算だ。
収入減少を避けるためにも手数料率が高い法人と契約を締結し、収入を維持しやすい環境を構築しておこう。
倫理観を欠く行動を取りかねない
顧客がいないなかでIFAとして活動するにあたり、最も注意しなければならないのがコンプライアンスの順守である。
IFAのビジネスモデルは契約に対する手数料報酬となっており、真に必要な金融商品ではなく、目先の利益を追求した手数料の高い商品を提案するIFAもいるようだ。
ほかにも、回転売買する傾向の営業手法がまかり通っていることもあったり、高額な金融商品の提案が横行し、偏重された仕組債の提案姿勢が見られたりなど、規範意識を欠く例がいくつか報告されている。
確かに、顧客がいない状態で収入を是が非でも確保するため、自己に有利な商品の提案をしたくなる気持ちは理解できる。しかし、このような形で契約を取れたとしても、その顧客とは長期的な関係性を構築できないだろう。
顧客から新たな顧客を紹介される関係性を構築できると、IFAとして長期的に活動していく強固な基盤になる。目先の利益を追求する動きは、長期的に見てマイナスにしかならないため、コンプライアンスの順守が欠かせないのだ。
IFAになるには
ここでは、IFAになるための方法を4つのステップで解説しよう。
- IFA法人との契約形態を決める
- IFAに必要な資格を取得する
- IFAに必要な知識を深める
- 転職エージェントを活用する
IFAへの転職に関して、正社員型であれば一般的な転職活動と特段変わらないことは先述したとおりだが、業界の特殊性もあるため、いくつか注意すべき点がある。
IFAになる方法を以下で順番に解説するので、転職を検討している人は順番に検討・実践してみてほしい。
IFA法人との契約形態を決める
IFAへの転職を目指す際は、最初に法人との契約形態を決めておくことをおすすめしたい。
転職先を決める際の判断材料・検索条件として、雇用契約・業務委託契約のどちらにするかは、IFA業界において極めて重要だ。IFAとして活動するにあたり、契約形態によって働き方や福利厚生が異なるのはもちろん、法人によって募集している形態も異なる。
理想的な待遇・条件のIFA法人が見つかったとしても、契約形態がマッチしていなければそもそも応募できない。
ただし、業務委託契約しか募集していないIFA法人だとしても、問い合わせると正社員採用も受け付けている場合がある。その逆もまた然りだ。
条件がマッチしなかった場合は一度問い合わせるべきだが、手間を省くためにも、希望する契約形態は最初に決めたうえで転職先を探したほうがよいだろう。
IFAに必要な資格を取得する
IFAへの転職を目指す際は、証券外務員資格を事前に取得しておく必要がある。
現職が証券会社の人で既に外務員として営業しているのであれば、取得済みの人は多いだろう。顧客に対して個別具体的な金融商品を提案・紹介するには、証券外務員資格が必要だ。
業務上必須になるため、まだ取得していない人は転職活動と並行して資格の勉強を進めよう。
なお、証券外務員資格には一種と二種があり、一種資格のほうが取り扱える金融商品の幅が広い。IFAとして活動をするのであれば、一種資格の取得を目指して学習を進めるのがおすすめだ。
ほかにも、IFAとして金融商品だけでなく保険商品も提案したいのであれば、生命保険募集人資格も必要である。こちらも証券外務員資格と同様、具体的な保険商品の提案には専門の資格が欠かせない。
保険業界で活動している人は取得済みかもしれないが、現職が証券会社で生命保険に関しても提案できるようになりたいのであれば、生命保険募集人資格を取得しておこう。
IFAに必要な知識を深める
IFAに限った話ではないが、その業界で活躍していくには、専門的な知識を深める必要があるのは言うまでもない。
IFA業界であれば、金融に関してはもちろん、相続や事業承継、保険、ライフプランのシミュレーションなど、さまざまな話題に触れる可能性がある。もちろん、提携する証券会社が扱う金融商品に関する最新情報やそれぞれの特徴に対する理解も欠かせない。
日々の経済ニュースをウォッチしておくのも必須で、顧客と長期的かつ良好な関係性を構築するためにも、あらゆる話題に対応できて損することはないだろう。
転職エージェントを活用する
IFAへの転職をスムーズに進めたいのであれば、転職エージェントは必ず利用しよう。
IFA業界は誕生して20年ほどであり、市場はまだ未成熟と言っても過言ではない。転職に関する情報量も多くないうえ、IFA法人が積極的に情報発信していないこともあり、情報のキャッチアップには工夫が必要だ。
本メディアではIFAへの転職に関する網羅的な情報を発信しているが、このようなメディアも限定的である。そのため、IFA法人への転職を本気で実現させたい人は、業界に特化した転職エージェントを利用して効率よく情報収集しよう。
おすすめしたい転職エージェントは次の見出しで具体的に解説しているので、ぜひ参考にしてほしい。
IFAになる際の相談先
最後に、IFAになる際のおすすめな相談先・転職エージェントを紹介しよう。
- 金融転職
- ビズリーチ
- IFA転職
いずれも無料で利用できるため、すべてを利用してもよいだろう。それぞれの概要や特徴について解説するので、IFA法人への転職を成功させたい人は以下の転職エージェントをうまく活用してほしい。
金融転職
「金融転職」は、金融業界に特化した転職エージェントである。業界に精通したキャリアコンサルタントとの個別ヒアリングを踏まえ、おすすめの求人紹介はもちろん、面接日の調整や転職先との条件交渉もサポートしている。
IFA業界は広義の金融業界に属するため、金融転職を利用すればさまざまなIFA法人の紹介を受けられるのが大きなメリットだ。
金融転職は無料で利用できるため、まずはコンサルタントに話を聞いてみることから始めてみるとよいだろう。
ビズリーチ
「ビズリーチ」は、スカウト型の転職エージェントとして利用をおすすめしたい。
ビズリーチであれば、登録時に経歴を入力すると、プロフィールを見た採用担当者から直接連絡を受けられる。一度登録しておき、条件次第では先方からスカウトが届くため、現職で多忙なビジネスパーソンこそ積極的に利用するとよいだろう。
ビズリーチはハイクラス・高年収な求人を多数扱っており、年収アップを実現している人も多い。IFAへの転職を希望している場合も、ビズリーチであれば高年収を期待できるだろう。
しかし、ビズリーチは総合型の転職エージェントであり、IFA業界の求人数は限定的という側面もある。そのため、IFA法人への転職を実現させたい人は、次に紹介するIFA転職の利用がおすすめだ。
IFA転職
「IFA転職」は、IFAへの転職に特化した転職エージェントである。キャリアコンサルタントはIFAを経験しているため、転職前後の悩みや疑問点はその都度解消できるだろう。
個別のカウンセリングを踏まえた求人紹介はもちろん、志望先企業との連絡調整や条件交渉も対応している。さらに、IFA転職は転職後の業務に関するサポートも提供しているため、駆け出し期も安心して業務に臨めるだろう。
IFA業界に特化した転職エージェントはまだ珍しく、利用者の口コミ評価も高いため、IFAへの転職をスムーズかつ確実に進めたい人はぜひ利用してみてほしい。
まとめ
顧客なしの状態でIFAに転職すること自体は難しくないが、「ゼロイチ」をいかに早く実現できるかが活動の鍵を握るだろう。
IFAの場合、契約形態が雇用契約と業務委託契約から選べるため、転職後の業務の始めやすさ・サポート体制も異なる。IFAへの転職を目指す際は、最初に希望する契約形態を決めたうえで、手数料率を中心に比較検討するとよいだろう。
IFAへの転職を成功させたいなら、転職エージェントは積極的に利用すべきだ。
なかでも「IFA転職」なら、キャリアコンサルタントから転職前後にわたって幅広いサポートを無料で受けられる。IFAを経験していることもあり、些細な相談・質問にも答えてくれるのは安心できるだろう。
顧客なしの状態でIFAへの転職を検討している人は、まずは「IFA転職」に相談することから始めてみてほしい。