- FX取引におけるスワップポイントとは何かを理解したい
- スワップポイントがいつ付与されるのか知りたい
- スワップポイントに関する注意点が知りたい
FXのスワップポイントとは、「金利差調整分」とも呼ばれ、通貨ペアを取引する際の「金利差」によって得られる収益のことだ。
特に、金利水準の高い新興国通貨は得られる収益も大きく、安定的なインカムゲインを得たい投資家からも人気が高い。
今回の記事では、FXにおけるスワップポイントとは何か、メリットや注意点、どのタイミングで付与されるかなどについて詳しく解説する。
FXの仕組みやスワップポイントについて詳しく知りたい方や、インカムゲイン狙いで取引をしたいと考えている方は、ぜひ参考にしてほしい。
FXのスワップポイントとは何か?
まずは、FX取引で生じるスワップポイントとはどのようなものか確認していこう。
スワップポイントとは
FXにおけるスワップポイントとは、特定の2つの国の通貨の金利差によって生じる収益のことだ。
本来、通貨を購入するとその通貨に応じた金利がもらえる。
そのため、FX取引を行う場合は、買う通貨の金利を受け取り、売る通貨の金利を支払う必要がある。
つまり、低金利通貨を売却して高金利通貨を購入すれば、金利差分を収益として受け取れるのだ。
例えば、米ドル/円の通貨ペアを買い建てする場合、金利の低い日本円を売って金利の高い米ドルを買うことになる。
この時、米ドルの金利と円金利の差額分をスワップとして受け取れる。
スワップポイントは日々生じるものであるため、建玉を保有している間はずっと受け取ることが可能だ。
金利水準は通貨によって異なるため、どの通貨ペアを購入するかによって得られる金額が異なる。
また、同じ通貨ペアであっても、取引する業者によってどのくらい受け取れるかが変わってくる。
スワップポイントが生じる具体例
スワップが生じる仕組みについて、具体的なケースを元に確認していく。
仮に、円金利が0.1%で米ドル金利が3%だとする。
投資家が米ドル/円の通貨ペアの買いポジションを持つと、米ドルを買って円を売ることとなる。
この場合、米ドルの金利分の3%を受け取り、日本円金利の0.1%を支払うことになるため、この差額である3%-0.1%=2.9%に相当する金額を獲得できる。
一方、米ドル/円の通貨ペアの売りポジションを建てる場合、上記とは逆に米ドルを売って円を買うということとなる。
そのため、金利差分に相当する2.9%を逆に支払う必要がある。
実際の通貨ペアごとのスワップポイントは、FX業者のスワップカレンダーなどでチェックできる。
例えば、外為どっとコムでは、以下のように買い・売りそれぞれの付与金額が表示されている。
6月25日(火)のスワップポイントカレンダー
通貨ペア | 買い | 売り |
---|---|---|
USD/JPY | 230 | -260 |
EUR/JPY | 220 | -240 |
EUR/USD | -71 | 47 |
出典:外為どっとコム スワップポイントカレンダー
上記の数字は、1万通貨を取引した際に受け取るまたは支払う金額だ。
つまり、USD/JPYの通貨ペアを1万通貨保有していると、1日あたり230円を受け取れる。
ただし、金利は日々変動するため、手元に入ってくる金額も日々変動する。
スワップポイントのメリット
ここまで解説した通り、スワップポイントの魅力は、建玉を持っている限りは収益を毎日継続的に得られることだ。
FXの為替差益や株式や投資信託の値上がり益などは、購入時から値上がりした時点で売却しないと得られない。
また、株式の配当や投資信託の分配金、定期預金の金利などは、数ヶ月に一度や1年に一度といった頻度でしか受け取れない。
しかし、FXのスワップは売買を行わなくても継続的に口座に支払われるため、コツコツと利益を積み重ねていきたいという人にとって大きなメリットだ。
また、FXは外貨預金などとちがってレバレッジをかけられるという特徴がある。
高いレバレッジをかけて取引すれば、少ない証拠金でも大きな金額での取引ができるため効率的に資産を増やしやすいという点も魅力的だ。
FXのスワップポイントはいつ受け取れる?
FXのスワップポイントはいつ受け取れるのだろうか。
付与されるタイミングや仕組みについて具体的に解説していく。
一般的なスワップポイントの付与タイミング
スワップポイントは、持っている建玉を翌日以降に繰越す際に生じるものだ。
日を跨いでポジションを持ち続けることを「ロールオーバー」と呼ぶ。
そのため、ポジションを建てたその日のうちに反対売買によって決済してしまうと、ロールオーバーが行われずにスワップが生まれない。
ロールオーバーは、通常ニューヨーク市場のクローズ時点の前後のタイミングを基準として行われる。
取引日が切り替わると、建玉がロールオーバーされることでスワップを獲得できる。
変則的なスワップポイントの付与タイミング
FX取引は基本的に2営業日を決済日として行う取引であるため、ロールオーバーが実施される曜日によっては付与金額が変わってくる。
水曜日にポジションを建てて、木曜日にロールオーバーした場合は、決済日が2営業日後の月曜日となる。
そのため、土日を含む3日分については前もって付与されるのが一般的だ。
ただし、付与されるタイミングは取引業者によって異なるため、取引説明書等などであらかじめ確認しておくのをおすすめする。
スワップポイントを確認する方法
過去に支払われたスワップは、取引業者のWEBサイト等から確認できるのが一般的だ。
具体的に、いくつかのFX業者での確認方法をチェックしていこう。
まず、SBI FXトレードでは、WEB版の上部メニュー「投資情報」から「スワップポイント履歴」を選択すると、過去の付与履歴が確認できる。
また、みんなのFXでは取引画面内のページから最新の付与金額を確認できる。
パソコン版の取引ツールを使っている場合は「プライスボード」から確認できて、スマホアプリ版を使用している場合は「スワップポイント一覧表」で各通貨ペアにおける付与金額を確認できる。
また、業者によっては「約定照会」「建玉照会」といったページから、自分に付与される金額を確認できる場合もある。
FX取引でスワップポイントが高い通貨とは
インカムゲインを期待する投資家は、なるべくたくさんの収益を狙える通貨ペアを知りたいと考えるだろう。
どのような通貨が適しているのか確認していこう。
スワップポイントが高い通貨の例
低い金利の通貨を売却して高い金利の通貨を購入すると、高いスワップを受け取りやすい。
高金利通貨とは、政策金利の高い通貨とも言い換えられるため、高金利通貨ペアの取引をしたい際は、各国の政策金利を確認するようにしよう。
政策金利は、各国の中央銀行が定める目標金利だ。
政策金利は、景気が加熱した場合に引き上げられやすく、景気が鈍化する場面で引き下げられやすいという特徴がある。
政策金利が動くと、スワップも大きく変動する可能性がある。
そのため、インカムゲインを期待してFX取引を行うのであれば、政策金利の動向をしっかりとチェックするようにしよう。
主にFXで取引される通貨の政策金利は、下記の通りだ。
日本 | 0.10% |
---|---|
米国 | 5.50% |
欧州 | 4.50% |
英国 | 5.25% |
カナダ | 5.00% |
オーストラリア | 4.35% |
ニュージーランド | 5.50% |
南アフリカ | 8.25% |
トルコ | 50.00% |
メキシコ | 11.00% |
ロシア | 16.00% |
上記の表から分かる通り、また、世界の中でも日本は特に飛び抜けて金利が低いため、「日本円を売って他の国の通貨を買う」という取引であれば、基本的に一定の金利差が見込みやすい。
また、新興国と呼ばれる国の通貨の方が先進国の通貨に比べて金利が高い傾向がある。
インカムゲイン狙いのトレーダーには、南アフリカ・ランドやトルコ・リラ、メキシコ・ペソなどの通貨が人気だ。
スワップポイントが高い通貨ペアの例
高金利通貨としてよく挙げられるのが、南アフリカ・ランドやトルコ・リラ、メキシコ・ペソなどだ。
実際に、どのくらいの金額をもらえるのか確認していこう。
まず、「南アフリカランド/円」「トルコリラ/円」「メキシコペソ/円」の買いスワップの水準は下記の通りだ。
通貨ペア | 買いスワップ |
---|---|
南アフリカランド/円 | 180円 |
トルコリラ/円 | 372円 |
メキシコペソ/円 | 261円 |
※2024年6月27日時点
出典:みんなのFX スワップカレンダー
この中でも、高い利回りが獲得できる通貨ペアとしてトレーダーに広く取引されている「メキシコペソ/円」について、具体的にどのくらいの収益が得られるかシミュレーションしていく。
なお、下記の前提条件に基づいてシミュレーションを行う。
- 通貨ペア
- MXN/JPY
- レート
- 8.715
- 1日あたりのスワップポイント(10Lotあたり)
- 261円
- 証拠金
- 100万円
- 取引数量
- 10万通貨
運用期間 | 1ヶ月 | 1年 | 5年 | 10年 | 35年 |
---|---|---|---|---|---|
スワップ合計金額 | 7,830円 | 95,265円 | 476,325円 | 952,650円 | 3,334,275円 |
利回り | 0.8% | 9.5% | 47.6% | 95.3% | 333.4% |
実効レバレッジ | 0.9倍 | 0.8倍 | 0.6倍 | 0.4倍 | 0.2倍 |
上記の表から分かる通り、「メキシコペソ/円」で1年間運用を継続した場合の利回りは9.5%となっている。
非常に高い利回りが見込めるため、長期間運用を継続した際の収益はどんどん大きくなる。
レバレッジをかけてさらに大きな金額で取引すると、受け取れる収益も増えるため、さらに利回りが高まる。
スワップポイントが高い通貨を扱う注意点
ここまで高金利通貨を取引する魅力について確認してきたが、高金利通貨は特有のリスクを抱えている点に注意が必要だ。
政策金利が高いということは、深刻なインフレが続いていたり、財政的に不安があったりするなどの事情があることが多い。
国によっては「高い金利を設定しないと海外から投資マネーが入ってこない」と言い換えられる場合もある。
そのため、金融危機などで世界的にリスクオフの局面が訪れたり、政策金利の引き下げが行われたりすると、一気に通貨が売られて通貨価値が急落するというリスクもある。
インカムゲイン目的で投資をしていたのに、気付いたらロスカットラインに引っかかって強制決済をせざるを得なくなった、などとならないように、定期的に相場の動きをチェックするようにしよう。
FXのスワップポイントに関する注意点
ここからは、スワップを目的として取引する場合に、特に注意したい点を解説していく。
スワップポイントは利益として課税対象となる
金融商品の取引によって得られた利益については課税対象となり、スワップポイントにも当然税金がかかる。
個人の場合は、先物取引に係る雑所得等として申告分離課税で20.315%の税率が課される。
通常、年間の収入が2,000万円以下の給与所得者の場合は、年末調整によって手続きを終えられるが、FXなど給与所得や退職所得以外の所得が年間20万円を超えた場合、確定申告を行う必要が生じるため注意しよう。
法人名義の口座で売買する場合、ロールオーバーされたタイミングで課税の対象となるが、個人口座の場合は、受け取ったタイミングで課税の対象となる。
そのため、スワップを再投資して元本に組み込んでいけば、その年の課税対象とはならない。
ただし、再投資設定ができるかどうかは、業者によって異なるため注意しよう。
スワップポイントがマイナスになることもある
プラスだけでなくマイナスのスワップが生じるケースもある点にも注意が必要だ。
「高金利通貨を売却して低金利通貨を購入する」という場合は、金利差分を投資家が支払わなくてはいけない。
先ほど紹介した「メキシコペソ/円」や「南アフリカランド/円」、「トルコリラ/円」などの高金利通貨ペアを売り建てすると、買い建てとは逆に負担すべき金額が大きくなる。
また、世界の金利水準は日々変動し、それに伴って通貨間の金利差も変わる。
そのため、ポジションを建てている間に政策金利などが変更された場合も、マイナススワップが生まれるリスクがある。
スワップポイントはFX業者によって異なる
日々のスワップの水準は通貨ペアやFX業者によって異なる。
そのため、自分が取引を検討している通貨ペアについては、あらかじめ何社かを比べた上で取引業者を決めるのをおすすめする。
特に、長期間の運用を検討している場合は、少額の違いが損益に大きな影響を与えやすい。
スプレッドの安さだけに注目して取引業者を選ぶ人も多いが、中長期の運用を前提とするのであれば、スワップポイントの水準もしっかりとチェックする必要があるだろう。
FXのスワップポイントを活用して安定的に利益を狙おう
FXのスワップポイントとは、特定の2つの通貨間の金利の違いによって生じる利益のことだ。
ポジションを建てているだけで毎日付与されるため、コツコツと貯めていくことでインカムゲインを狙えるというメリットがある。
本記事では、高いスワップを狙いやすい通貨ペアの例や、具体的なシミュレーション結果を紹介した。
ただし、金利差によっては逆に支払う必要が生じることや、高金利通貨は政策の変更によって為替レートが大きく変動する可能性があることには注意しよう。
メリットだけでなく、デメリットや注意点をしっかりと確認して、自分にあった取引方法を検討するのをおすすめする。