国家公務員は「退職金が安定している」というイメージを持たれやすい職業だ。
実際、国家公務員の退職手当は法律に基づいて計算されるため、民間企業のように会社ごとの退職金規程で大きく異なるわけではない。
ただし、受け取れる金額は退職理由、勤続年数、退職日の俸給月額、調整額などによって変わる。また、退職手当や年金制度、給与水準は制度改正や民間水準との均衡などを踏まえて見直されることがある。
そのため、退職金を「老後資金のすべて」と考えるのではなく、退職前から使い道や運用方針を整理しておくことが重要だ。
この記事では、国家公務員の退職金の平均額、退職手当の計算方法、今後の見直し可能性、退職金を活用した老後資金づくりの考え方を解説する。
退職金の受け取りが近い方だけでなく、現役のうちから老後資金を準備したい国家公務員の方も参考にしてほしい。
国家公務員の退職金はいくら?令和6年度は定年退職で平均約2,160万円

まず、国家公務員の退職金の平均額を確認しよう。
国家公務員の退職金は、正式には「退職手当」と呼ばれ、国家公務員退職手当法などに基づいて計算される。
一方、民間企業の退職金は法律で一律に定められているものではなく、各企業の就業規則や退職金規程によって扱いが異なる。退職金制度がない企業もある。
この記事では、内閣官房内閣人事局が公表している「退職手当の支給状況」をもとに、国家公務員退職手当法の適用を受ける常勤職員の平均額を紹介する。
令和6年度の国家公務員退職手当は定年平均21,601千円
内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況」によると、令和6年度中に退職した常勤職員の平均退職手当支給額は以下のとおりだ。
| 退職理由 | 受給者数 | 平均支給額 | 目安 |
|---|---|---|---|
| 全退職理由計 | 31,193人 | 10,943千円 | 約1,094万円 |
| 定年 | 11,073人 | 21,601千円 | 約2,160万円 |
| 応募認定 | 1,859人 | 24,703千円 | 約2,470万円 |
| 自己都合 | 9,951人 | 3,454千円 | 約345万円 |
| その他 | 8,310人 | 2,630千円 | 約263万円 |
定年退職者の平均支給額は約2,160万円だが、全退職理由計では約1,094万円となる。自己都合退職や勤続年数が短い退職者も含めると、平均額は大きく下がる。
また、行政職俸給表(一)適用者に限ると、定年退職者の平均支給額は21,488千円、全退職理由計は13,896千円である。職種や適用される俸給表によっても水準は異なる。
平均額はあくまで目安であり、個人ごとの退職手当額は退職理由、勤続年数、俸給月額、調整額によって変わる。自分の見込み額は、勤務先の人事担当部署や共済・退職手当関連の資料で確認しよう。
なお、地方公務員の退職手当は、自治体の条例や職種などによって異なる。この記事では国家公務員の退職手当に絞って解説する。
国家公務員の退職金の計算方法
国家公務員の退職手当は、基本的に以下の式で計算される。
退職理由別・勤続期間別支給割合は、自己都合、定年、応募認定などの退職理由や勤続年数によって異なる。
また、調整額は退職時までの役職や職務の区分などに応じて加算される。つまり、同じ勤続年数でも、退職時の俸給月額や官職によって支給額は変わる。
例えば、定年まで長く勤めた人は平均支給額が高くなりやすい。一方で、勤続年数が短い人や自己都合で退職した人は、平均より支給額が低くなる可能性がある。
退職金を老後資金の計画に組み込む場合は、「平均で約2,160万円もらえる」と考えるのではなく、自分の退職理由・勤続年数・俸給月額をもとに見込み額を確認することが大切だ。
国家公務員の退職金は今後減額される?

国家公務員の退職金が今後一律に減額されると決まっているわけではない。
ただし、国家公務員の給与や退職手当は、民間の給与・退職給付制度との均衡や制度改正などを踏まえて見直されることがある。
国家公務員の給与については、人事院が民間給与の調査結果などに基づいて勧告を行う仕組みがある。令和7年職種別民間給与実態調査では、企業規模50人以上かつ事業所規模50人以上の事業所約11,900所が調査対象とされた。
退職手当についても、民間企業の退職給付制度の実態などが制度検討の基礎資料になる。将来の制度がどう変わるかを正確に予測することはできないが、「退職金は必ず今の水準で受け取れる」と決めつけない方がよい。
また、公務員の年金制度も過去に大きく変わっている。平成27年10月1日から被用者年金制度が一元化され、公務員や私学教職員も厚生年金に加入することになった。共済年金の職域加算部分は廃止され、新たに年金払い退職給付が創設されている。
こうした制度変更を踏まえると、国家公務員であっても退職金や公的年金だけに頼り切らず、自分で老後資金の準備を進めておくことが重要だ。
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退職金を老後資金に活かす前に確認したい3つのこと

退職金はまとまった金額で受け取るため、使い道を決めないまま口座に置いたり、一度に投資したりすると、後から不安になる可能性がある。
退職金を受け取る前後では、以下の3つを確認しておこう。
1. 退職金にかかる税金を確認する
退職金は、税制上「退職所得」として扱われる。退職所得には退職所得控除があり、勤続年数に応じて控除額が決まる。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円×勤続年数 ※80万円に満たない場合は80万円 |
| 20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数−20年) |
例えば、勤続38年の場合の退職所得控除額は、800万円+70万円×18年=2,060万円となる。
退職手当の支給額や勤続年数、過去に退職金を受け取ったことがあるかなどによって税額は変わる。実際の税額は、勤務先の源泉徴収や税務署、税理士などに確認しよう。
2. すぐ使うお金と運用するお金を分ける
退職金を受け取ったら、まず資金を使う時期ごとに分けることが大切だ。
| 資金の種類 | 主な使い道 | 考え方 |
|---|---|---|
| すぐ使うお金 | 生活費、医療費、税金、住宅修繕費など | 普通預金や定期預金など、元本を守りやすく使いやすい形で管理する |
| 数年以内に使うお金 | 車の買い替え、家族の支援、介護費用など | 大きな値動きのある商品に回しすぎない |
| 長期で使わないお金 | 老後生活の上乗せ資金、相続対策の一部など | NISAや投資信託などを使い、分散しながら運用を検討する |
退職金を一度に大きく投資すると、購入直後に相場が下がった場合の心理的負担が大きくなる。運用する場合も、数回に分けて投資する、毎月積み立てる、預貯金と投資を組み合わせるなど、無理のない方法を選ぼう。
3. 退職前から少額で投資経験を積む
退職金を受け取ってから初めて投資を始めると、値動きに慣れていないまま大きな金額を運用することになりやすい。
現役のうちから少額で積立投資を始めておくと、投資信託や株式の値動き、口座管理、リスク許容度を事前に確認できる。
退職後にまとまった資金を運用する場合も、すでに自分の運用方針がある方が判断しやすい。退職金の受け取りが近い人ほど、早めに資産全体の棚卸しを行っておこう。
国家公務員が老後資金づくりに使えるiDeCoと新NISA
老後資金づくりに活用できる代表的な制度として、iDeCoと新NISAがある。
どちらも税制優遇のある制度だが、目的や使い勝手は異なる。退職金だけでなく、現役時代の資産形成にも活用できるため、違いを理解しておこう。
| 項目 | iDeCo | 新NISA |
|---|---|---|
| 主な目的 | 老後資金づくり | 中長期の資産形成 |
| 引き出し | 原則60歳まで不可 | 保有商品を売却して資金化できる |
| 主な税制優遇 | 掛金が全額所得控除、運用益非課税、受取時にも控除あり | 投資で得た配当等・分配金・譲渡益が非課税 |
| 注意点 | 受取時期に制限があり、運用商品によっては元本割れがある | 投資商品は元本保証ではなく、損失が出る可能性がある |
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは、自分で掛金を拠出し、自分で運用商品を選び、老後資金を準備する私的年金制度だ。
公務員もiDeCoに加入できる。令和6年12月からは、企業年金・共済等の他制度に加入している人のiDeCo掛金上限が、最大で月額2万円に引き上げられている。
ただし、iDeCoの掛金と企業年金等の掛金を合算して月額5.5万円を超えることはできないため、すべての人が月額2万円まで拠出できるとは限らない。
iDeCoの大きなメリットは、掛金が全額所得控除の対象になることだ。課税所得がある現役時代に利用すると、所得税・住民税の負担軽減につながる可能性がある。
一方で、iDeCoは原則として60歳まで資産を引き出せない。住宅購入、教育費、介護、病気などで近い将来使う可能性がある資金は、iDeCoに回しすぎないよう注意しよう。
新NISA制度
NISAは、一定の投資枠の範囲内で購入した上場株式や投資信託などから得られる配当等・分配金・譲渡益が非課税になる制度だ。
2024年から始まった新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠を併用できる。
| 項目 | つみたて投資枠 | 成長投資枠 |
|---|---|---|
| 年間投資上限額 | 120万円 | 240万円 |
| 非課税保有限度額 | 1,800万円 ※成長投資枠のみの上限は1,200万円 | |
| 非課税保有期間 | 無期限 | 無期限 |
| 主な投資対象 | 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託等 | 上場株式、投資信託等 ※一部対象外商品あり |
新NISAは、iDeCoと異なり、必要に応じて保有商品を売却して資金化できる点が特徴だ。
ただし、売却時の価格は市場環境によって変動する。退職直後に使う生活費や税金、医療費などをNISAで運用しすぎると、必要なときに値下がりしている可能性がある。
新NISAを活用する場合は、生活資金を預貯金で確保したうえで、長期で使わない資金を少しずつ運用に回す考え方が現実的だ。
退職金運用や資産形成に不安がある場合は相談先を確認する
退職金の使い道、iDeCoやNISAの活用、資産配分、相続を見据えた資金管理などを自分だけで判断するのは難しい場合がある。
そのようなときは、資産運用アドバイザーやFP、金融機関などに相談するのも選択肢だ。
ただし、相談先によって取扱商品、報酬体系、助言できる範囲は異なる。特に具体的な金融商品の提案や売買の媒介を受ける場合は、金融商品仲介業者などの登録状況や所属金融商品取引業者を確認しておきたい。
相談前には、以下の点を確認しよう。
- 登録番号や所属金融商品取引業者を確認できるか
- 相談料、販売手数料、継続報酬の仕組みが明確か
- 特定の商品だけを強くすすめていないか
- 退職金を一括投資する理由とリスクを説明してくれるか
- 生活費、税金、医療費、介護費などを踏まえた提案になっているか
- 運用開始後の見直しやフォロー体制があるか
専門家に相談すれば必ず損をしないわけではない。提案内容、手数料、リスク、代替案を確認し、納得したうえで判断することが大切だ。
セカンドライフに向けた国家公務員の退職金運用は早めに準備しよう
令和6年度の国家公務員の退職手当は、常勤職員の定年退職者で平均21,601千円、全退職理由計で平均10,943千円である。
ただし、退職手当は退職理由、勤続年数、退職日の俸給月額、調整額によって変わる。平均額だけを見て老後資金計画を立てるのではなく、自分の見込み額を確認することが重要だ。
また、退職金を受け取った後は、税金、生活費、近い将来使うお金、長期運用に回せるお金を分けて考える必要がある。
iDeCoや新NISAは老後資金づくりに活用できる制度だが、どちらもメリットだけでなく注意点がある。iDeCoは原則60歳まで引き出せず、新NISAで投資する商品は元本保証ではない。
退職金を受け取ってから慌てて運用を始めるのではなく、現役のうちから少額で投資経験を積み、自分に合った資金計画を整理しておこう。
退職金や資産運用に不安がある場合は、登録状況や報酬体系を確認したうえで、専門家への相談も検討するとよいだろう。
出典
内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況(令和6年度)」
人事院「退職手当の支給」
人事院「令和7年職種別民間給与実態調査の実施」(公開日:2025年4月18日)
厚生労働省「被用者年金の一元化について」
国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(令和7年4月1日現在法令等)
政府広報オンライン「iDeCoがより活用しやすく!2024年12月法改正のポイントをわかりやすく解説」(公開日:2024年12月6日)
国民年金基金連合会「iDeCoの特徴」
国税庁「No.1535 NISA制度」(令和7年4月1日現在法令等)
金融庁「NISAを知る:NISA特設ウェブサイト」
金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」

