定年が近づくと、退職金の使い道が気になり始めるだろう。寿命が延びる一方で退職金の額は減少傾向にあり、老後のための退職金運用は必須だ。
しかし、実際のところは「どうやって始めればいいのか分からない」と悩む方も多い。
この記事では、退職金運用の基礎知識や注意すべきリスクを踏まえ、初心者にもおすすめの運用方法を解説する。
退職金はなぜ運用すべき?資産運用が必要な理由とは

まず大前提として、退職金の使い道としては資産運用がおすすめだ。
退職金をただ貯金して切り崩すだけではなく、運用することで資産の目減りを防ぎ、老後資金を少しでも長持ちさせることが重要になる。
資産運用をすすめる主な理由は以下のとおりだ。
理由1:老後が「長く」なったから
現代は、「人生100年時代」という言葉が示すように、老後の時間が長くなった。
実際、日本人の平均寿命は延び続けており、厚生労働省の調査※によれば男性81.09歳、女性87.14歳である。65歳で退職した後も、30年以上にわたって人生が続くことは珍しくない。
この長期化する老後において、退職金を預貯金として保有し、切り崩すだけでは資産が枯渇するリスクは高い。
さらに、以下の表が示す通り、退職金の支給額自体も減少傾向にある。
退職金額の平均と推移
調査年 | 大学(大学院)卒 | 高校卒 |
---|---|---|
2008年(平成20年) | 2,280万円 | 1,970万円 |
2013年(平成25年) | 1,941万円 | 1,673万円 |
2018年(平成30年) | 1,983万円 | 1,618万円 |
2023年(令和5年) | 1,896万円 | 1,682万円 |
厚生労働省「就労条件総合調査」を基に作成
老後が長くなる一方で、その元手となる退職金は減少しているのが現実である。したがって、資産運用によって老後資金を増やし、長期的な生活に備える必要性は極めて高いと言える。
- 参考:厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」
理由2:インフレ対策が必要だから
最近、食料品や生活用品の値上げを実感している人も多いだろう。国は消費者物価を前年比2%上昇させることを目標としており、今後もインフレが続く可能性が高い。
この状況が継続した場合、現在の1,000万円という貨幣価値は、20年後には実質的に700万円程度まで目減りする計算となる。
時間の経過 | 預金額 | 実質的価値 (インフレ率2%) |
現在 | 1,000万円 | 1,000万円 |
10年後 | 1,000万円 | 約820万円 |
20年後 | 1,000万円 | 約673万円 |
銀行預金の金利がほぼ0%である現在、退職金を預金として放置すれば、資産の実質的な価値はインフレによって継続的に目減りしていく。
インフレ率を上回るリターンを目指せる資産運用は、資産価値を維持・防衛するための有効な手段である。
理由3:公的年金だけでは毎月赤字だから
公的年金は、老後の生活基盤を支える制度的支柱である。しかし、少子高齢化の進展を背景に、将来的な給付水準が引き下げられる可能性も指摘されている。
生命保険文化センターの調査(2022年度)によれば、夫婦2人がゆとりある老後生活を送るために必要とされる生活費は、月額で平均約37.9万円※1であった。一方で年金収入の平均は月20万円程度※2にとどまり、毎月約18万円の不足が生じる計算になる。
この不足分を貯蓄の取り崩しのみで賄い続ければ、資産が想定より早く尽きてしまうリスクは高い。したがって、資産運用によって資産そのものに収益を生み出させ、目減りを抑制しつつ資産寿命を延ばすという視点が、極めて重要となるのだ。
- 生命保険文化センター「生活保障に関する調査(令和4年版)」
- 厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
おすすめはこの6つ!退職金の運用方法

退職金の運用で検討したい投資方法を解説する。
おすすめは、以下の6つの資産による運用である。
リスク | リターン | 流動性 | 運用期間 | |
---|---|---|---|---|
定期預金 | 低い | 小さい | 高い | 1年が多い |
個人向け国債 | 低い | 小さい | 普通 | 3年・5年・10年の選択が可能 |
投資信託 | 低い~高い | 小さい~大きい | 普通 | 長期 |
ETF | 低い~高い | 小さい~大きい | 普通 | 長期 |
株式投資 | やや高い | やや大きい | 普通 | 中期から長期 |
不動産投資 | やや高い | やや大きい | 低い | 長期 |
なお、最適な投資方法は人それぞれの状況によって異なるため、精査が必要だ。
各資産の特徴や向いている人を詳しくみていこう。
定期預金
メリット | 元本割れリスクがなく破綻時も一定額の保障がある |
---|---|
デメリット | 低金利が続いていることから大きな収益は見込めない |
定期預金は、元本が保証され、預金保険制度(1,000万円とその利息まで)によって保護されるため、安全性が極めて高い金融商品である。金融機関によっては退職金向けの金利優遇プランも用意されており、大切な資産の預け先として長年、中心的な役割を担ってきた。
しかし、その一方で、現在の歴史的な低金利環境下では得られるリターンはごくわずかだ。物価が上昇していくインフレ局面では、預金の金利が物価上昇率を下回り、資産の価値が実質的に目減りしてしまうリスクもある。
定期預金は退職金の元本を守る「守りの器」としては非常に有効だが、インフレに備え、ゆとりある老後資金を準備していくための「増やす運用」としては、少し力不足である。
向いている人
- 元本割れのリスクを極力避けたい人
- 資金をいつでも引き出せる流動性を重視する人
個人向け国債
メリット | 安全性が高く元本割れのリスクがほとんどない |
---|---|
デメリット | 中途換金ができない制約がありリターンが控えめ |
個人向け国債は、日本国が発行元となるため、デフォルト(債務不履行)のリスクが極めて低く、非常に安全性の高い金融商品である。「固定3年」「固定5年」「変動10年」と期間を選べる多様性もあり、退職金の安定的な運用先として中心的な選択肢の一つと見なされてきた。
しかし、その一方で、最大の注意点は資金の流動性の低さにある。購入してから1年間は原則として換金できず、その後も中途換金する場合にはペナルティが課される。これにより、予期せぬ出費など、急な資金ニーズに対応することは難しくなる。
結論として、個人向け国債は資産を「着実に守る」ための堅実な手段ではあるが、資金が長期間固定されるため「機動的に活用する」運用には向いていない。退職金の中でも、当面使う予定のない部分を長期的な視点で運用するのにおすすめだ。
向いている人
- 安全性を重視し、長期での資産形成を目指す人
- 定期的な利息収入を得たい人
投資信託
メリット | 1つの商品で複数の資産に分散投資ができる |
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デメリット | 購入手数料や信託報酬手数料などがかかる |
投資信託は、専門家が投資家から集めた資金を運用する金融商品である。
最大の魅力は、一つの商品で国内外の株式や債券など複数の資産に手軽に分散投資できる点にあり、リスクを抑えながら資産の成長を狙える。少額から始められる手軽さや、豊富な選択肢から自分の投資方針に合う商品を選べるため人気の商品だ。
しかし、その一方で、プロが運用を代行する分、相応のコスト(手数料)が発生する点には注意が必要である。購入時の手数料や、保有期間中に継続的にかかる信託報酬などを支払う必要がある点には注意が必要だ。
投資信託は資産を「積極的に育てる」ための有力な手段であるが、その効果を最大化するには「手数料というコストを意識する」視点が不可欠となる。例えば、指数との連動を目指すインデックスファンドなど、低コストの商品を選ぶと良い。
向いている人
- 投資の銘柄選定や管理をプロに任せたい人
- リスクを抑えた分散投資を目指す人
ETF(上場投資信託)
メリット | リアルタイムで取引ができる |
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デメリット | 分配金を自動で再投資する仕組みがない |
ETF(上場投資信託)は、株式市場に上場している投資信託の一種である。
日経平均株価などの株価指数に連動して値動きする商品が多く、安定的な運用が可能だ。
投資信託と同様に、様々な銘柄で構成されているため、個別企業の株式投資よりもリスクを抑えられる点が魅力だ。
一方、通常の投資信託との違いは、株式と同じように取引所で売買できる点にある。投資信託が1日1回の基準価額でしか取引できないのに対し、ETFは市場の動きを見ながらリアルタイムで売買ができる。指値注文や成行注文など、価格を指定した注文も可能で、タイミングを狙って売買することが可能だ。
ただし、ETFは証券会社でしか購入できず、銀行や郵便局などでは取り扱っていないため注意が必要だ。
向いている人
- 市場の値動きを見ながら機動的な売買をしたい人
- 指数に連動した効率的な分散投資を目指す人
株式投資
メリット | 銘柄が豊富で最適なものを選べる |
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デメリット | 価格下落時の心理的ストレスや情報収集の手間がある |
株式投資は、企業が発行する株式を売買し、主に株価の値上がりによる利益(キャピタルゲイン)を追求する投資手法である。株価上昇益のほか、企業の利益の一部が還元される「配当金」や、自社サービスなどを受けられる「株主優待」も大きな魅力と言える。
投資対象は、高い成長が期待される新興企業から、安定した配当を出す大手企業まで多岐にわたる。そのため、自身の投資戦略に基づき、銘柄を自由に選定できるのが特徴だ。
しかしその一方で、株価は景気や企業業績、市場心理といった多様な要因で常に大きく変動する。投資先が倒産すれば、資産価値がゼロになる元本割れ以上のリスクも内包している。
この高いリターンとリスクを内包する特性から、株式投資で成果を上げるには、財務分析や経済動-向の読解といった専門知識と、継続的な情報収集が不可欠となる。
向いている人
- 積極的な資産運用で高いリターンを目指す人
- 企業分析や市場分析に意欲的な人
不動産投資
メリット | インフレの影響を受けづらく安定した収益を得られる |
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デメリット | 大きな資金が必要かつ空室リスクや災害リスクがある |
不動産投資は、マンション等の物件を購入して貸し出し、継続的な家賃収入(インカムゲイン)を得る投資手法である。
株式などと比べて価格変動が緩やかで、毎月の収益見通しが立てやすいため、退職金などを元手に「私的年金」のようなキャッシュフローを構築する手段として注目されている。
将来、物件価値が上昇すれば売却益(キャピタルゲイン)を得られる可能性もある。
しかしその一方で、不動産投資には特有のリスクが伴う。
最大の注意点は、入居者がいなければ収入がゼロになる「空室リスク」だ。この他にも、経年劣化に伴う修繕費や固定資産税といった継続的な維持コストが発生するほか、災害による建物損壊のリスクも考慮しなくてはならない。
そのため、安定した収益を確保するには、購入時の慎重な物件選びはもちろん、長期的な視点に立った計画的な管理運営が不可欠となる。
向いている人
- 長期的な視点で安定収入を目指す人
- 物件管理に積極的に関わる意欲のある人
退職金は分散投資で「減らさない運用」を目指すべき!

時間をかけて資産運用をしていく際に重要なのが「分散」という考え方だ。特徴の異なる複数の資産へ分散をすることでリターンは小さくなるかもしれない。
しかし退職金の運用は、資産寿命を長くするという考え方が重要だ。ここでは「減らさない運用」をするための分散投資の方法について詳しく解説する。
異なる資産クラスへの分散
投資対象は、株式、債券、投資信託、不動産など多様に存在する。
退職金の運用時は、これらの資産に分散投資することが重要な戦略の1つだ。
特定の資産に集中するのではなく、値動きやリスクの特徴が異なる複数の資産を組み合わせることが推奨される。
例えば、株式のみに投資している場合、株価が大幅に下落すると大きな損失が生じてしまう。
そこで、株式とは異なる値動きをする債券にも投資することで、ポートフォリオ全体としての損失を抑制する効果が期待できる。
同じ資産クラス内でも、特徴の異なる投資対象を組み合わせることで分散効果を得られる。
株式投資を例にとると、大企業の株式とベンチャー企業の株式の組み合わせが考えられる。
取引量が多く株価が比較的安定している大企業と、成長期待が高いベンチャー企業の両銘柄を保有することで、より効果的な運用成果を目指すことが可能だ。
異なる特性を持つ資産を適切に組み合わせることで、リスクを分散しながら安定的なリターンを追求してほしい。
異なる国・地域への分散
投資先の国や地域を分散させることも、効果的なリスク管理の手法だ。
日本・米国・欧州といったエリアごとの分散や、「先進国」と「新興国」という経済発展度による分散、さらには流通通貨の特性による分散などが挙げられる。
1つの地域にのみ投資をしてしまうと、その地域で自然災害や紛争、政治的混乱などが発生した場合、金融市場が大きく変動し、深刻な損失を被るリスクが高まる。
一方で、世界を見渡せば、ある地域で情勢不安が続いていても、別の地域では急速に経済発展を遂げ、高い成長率を維持している国も存在する。
発展著しい国や地域に資産の一部を振り分けることで、経済成長の恩恵を享受できる可能性があるのだ。
ただし、投資先の選定には、各地域特有のリスクとリターンを慎重に見極め、バランスの取れた組み合わせを検討することが重要である。
異なるセクターへの分散
セクターとは、業種や業界のことを指し、特に株式市場において上場企業を業種別に分類した銘柄群のことを意味する。
例えば日本株式の場合、TOPIXの構成銘柄を33の業種に分類した「東証業種別株価指数」や、これを17業種に集約した「TOPIX-17シリーズ」などが代表的な分類となっている。
投資では、異なるセクターへの分散が欠かせない。
セクターごとに景気変動への感応度が大きく異なるためである。
例えば、電気機器や輸送用機器などは「景気敏感セクター」とされ、景気上昇時にはスマートフォンや自動車などへの購買意欲が高まることで株価が上昇しやすい特徴がある。
一方、食料品や医薬品などは「ディフェンシブセクター」と呼ばれ、生活必需品を扱うことから景気後退期でも株価が比較的安定している。
このような特性の異なるセクターを戦略的に組み合わせることで、ポートフォリオ全体のリスクを軽減しながら、安定的なリターンを目指せる。
退職金運用の資産配分はどうする?リスク許容度に応じたプランを紹介

低リスク安全重視プラン
運用ニーズ | 投資は不安なので少しずつ始めたい |
---|---|
リスクとリターン | ★★☆☆☆ |
資産配分 | 定期預金:50% 国債:20% 投資信託:30% |
リスクを極力避けたい方に適した投資配分とした。
「定期預金」と「国債」を主軸とし、元本の安全性を確保しつつ、低リスクの「投資信託」を30%組み入れることで、少しでも資産を成長させる狙いがある。
運用戦略としては、国債は長期国債よりも中短期国債を中心に、投資信託は債券型やインデックス型を選び、安定的な利回りを目指す。
市場変動リスクを抑えつつ、控えめなリターンを得る保守的な運用が叶う。
ミドルリスク安定プラン
運用ニーズ | 老後資金をしっかり確保したい |
---|---|
リスクとリターン | ★★★☆☆ |
資産配分 | 定期預金:20% 投資信託:30% 株式:30% ETF:20% |
安定性と収益性をバランスよく追求するプランである。
「定期預金」で安定資産を確保しつつ、「投資信託」や「ETF」を活用して分散投資を図った。
株式は市場変動リスクがあるが、中長期的な成長を狙って適度に組み入れる。
ETFは低コストで分散投資が可能なため、特に株式や債券型のインデックスETFを選ぶと良い。
安定性を維持しながら、資産の成長を目指す戦略だ。
ややハイリスク積極運用プラン
運用ニーズ | 趣味やレジャーなどゆとりある生活の資金にしたい |
---|---|
リスクとリターン | ★★★★☆ |
資産配分 | 投資信託:30% 株式:30% ETF:20% 不動産:20% |
高いリターンを追求する積極的な配分にしている。
「投資信託」と「株式」を合わせて60%とし、長期的な資産成長を狙う。
ETFも組み入れ、特に発展が著しい市場やテーマ型ETFなど成長が期待できるものを活用する。
「不動産」は収益物件を中心に、家賃による定期収入と価格上昇による売却利益の両方を狙う。
なお、このプランは市場変動リスクが高いため、資産価値の変動を許容できる方や、長期運用が可能な方に適している。
賢く退職金運用を続けるためのポイント

退職金の運用を成功させ、長期で続けるためのコツを紹介する。順番にみていこう。
老後に合わせた資金計画を立てる
退職金の運用で意識するべき目的は、リタイア後の資産寿命を延ばしながら充実した生活を送ることだ。
そのため、資産の目減りを可能な限り抑える安定的な運用計画が求められる。
急激な資産増加を目指すのではなく、着実に収益を積み上げていく方針が望ましい。
退職後は、現役時代とは異なる収入支出の変化が予想される。具体的な資金計画を立てる際は、以下の3点を明確にすることが重要だ。
- 退職後も副業などで収入を得る可能性があるのか
- 退職金の取り崩し時期をいつにするか
- 年金の受給開始時期をどう設定するのか
これらの要素を踏まえ、年齢ごとの収入と支出を詳しく算出することで、必要な資金額が見えてくる。
長期的な視点で資金計画を立てることで、安定した老後生活の実現が可能となる。
退職金の運用額は余剰資金の範囲内にする
退職金を臨時収入と捉えて、全額を投資に回すのは賢明な判断とは言えない。
手元に大きな資金があるからといって、全額を運用するのは避けるべきだ。
退職後は生活スタイルが大きく変化し、それに伴う新たな支出が発生する。
例えば、自宅で過ごす時間の増加による光熱費の上昇、通勤手当のない移動費用の負担、住居の改装、趣味や余暇活動の増加などが考えられる。
思わぬ出費がかさみ、早い段階で運用中の資産を取り崩すことのないよう注意してほしい。
投資商品によっては流動性が低く、必要な時にすぐ現金化できない可能性もある。
そのため、運用する金額は余剰資金の範囲内に抑え、万が一の場合に備えた緊急資金も確保しておくことが重要だ。
将来的な住宅のリフォーム費用や医療費、充実したセカンドライフのための資金も考慮に入れておこう。
長期目線で運用する
退職金の運用で、短期的な資産増加を狙うことはかえってリスクを高める結果となりかねない。
一方で、長期投資であれば時間をかけながら着実に資産を成長させることが期待できる。
一般的に運用期間が長期化するほど、リターンは平準化し、より安定した収益を得られる可能性が高まっていく。
「もう退職だから投資をする時間がない」と焦る必要はない。退職金の運用期間はまだ10年、20年という長い時間が残されている。
そのため、短期的なリターンを追い求める必要はなく、時間分散を意識しながら投資を進めてほしい。
長期投資は、運用時の心理的なダメージが少なくなるというメリットもある。
一時的な価格変動が発生しても、「回復するまで待てばよい」という余裕を持つことで、精神的な負担を大きく軽減することができる
新NISAを活用して積立投資する
投資において気になるのが、各種コストの存在だ。
売買時の手数料や運用中の管理手数料に加え、分配金や売買益に対しては20.315%の税金が課せられる。
運用成果に大きな影響を及ぼすため、税制優遇制度であるNISAの活用を積極的に取り入れ、資産形成の効率を高めることが望ましい。
NISAは、投資による利益が非課税となる制度だ。なかでもつみたてNISAは、毎月一定額を自動投資できるため、着実に資産形成ができる。
2024年の制度改定では非課税投資枠が拡大され、より効率的な資産運用が可能となった。
新しいNISA制度の仕組みを十分理解し活用することで、従来以上の運用効果が期待できる。
ハイリスク商品への集中投資を避ける
高リスク商品への投資が必ずしも否定されるわけではない。
運用ニーズや資産状況によっては、積極的な運用戦略が適している場合もある。
しかし退職金の投資は、あくまでも個々のリスク許容度の範囲内で検討されるべきものだ。
インターネットや口コミで見かける成功体験を鵜呑みにして、自身の状況を十分に考慮せずにハイリスク商品に手を出してはならない。
特定の情報だけを信じ込んで、全額投資や特定の商品への集中投資を行うことは、大きな失敗を招く可能性がある。
大きなリターンを追い求めすぎると、市場の動きに一喜一憂し、短期的な売買を繰り返してしまいがちだ。
退職金運用の本来の目的から外れてしまいかねないため、注意してほしい。
退職金の運用成果は定期的に見直しする
退職金の運用は、投資を始めてからが本番だ。運用計画を立て、投資を開始した後の管理も重要である。
特に、相場変動によって変化した資産配分を、当初の計画に沿って調整する「リバランス」が欠かせない。
例えば、当初の運用計画で株式への投資比率を30%と設定していても、相場が好調に推移すれば、保有比率が30%を超えてしまうことがある。
この場合、株式の一部を売却し、他の投資商品を買い増すことで、資産全体のバランスを整えられる。
自身のリスク許容度に見合った投資を継続するためにも、このような定期的な見直しを心がけたい。
さらに、投資目的やリスク許容度の変化に応じて、資産配分自体を見直すリアロケーションも大切だ。
特にライフステージが大きく変化する際には、改めて配分の見直しを検討する必要がある。
このように退職金の運用では、緻密計画や厳格な管理が必要となるため、独自に実施するのは容易ではない。
そのため、銀行や証券会社といった信頼できる金融アドバイザーに相談することも選択肢の1つである。
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この章では、退職金運用を専門家に相談するメリットや、信頼できるアドバイザーの探し方について解説する。
退職金運用の難しさ
これまで見てきたように、退職金の運用では、まず老後に合わせた綿密な資金計画を立て、余剰資金の範囲内で運用額を決定する必要がある。
長期目線での運用を心がけ、NISAなどの税制優遇制度を活用しながら、ハイリスク商品への集中投資は避けなければならない。
また、定期的な運用成果の見直しとリバランスを行うことも重要だ。
しかし、退職金の運用には独特の難しさがある。
投資経験者であっても、何千万という大金を運用しながら取り崩すという経験は初めてであり、これまでの投資ノウハウをそのまま活用することはできない。
知識不足のまま独断で投資判断を行えば、想定していた資産管理が困難になるリスクがある。
また、退職後は年金以外の大きな収入源がないため、ひとたびマイナスを出すと収入で補てんすることが難しい。
運用での損失は、直接生活に影響を及ぼす可能性がある。
退職金運用を専門家に相談するメリット
退職金運用の難しさを考えると、専門家のサポートを受けながら、個々の状況に適した運用プランを策定し実行することが賢明だ。
専門のアドバイザーに相談すれば、投資や運用に関する専門的な知識を活用でき、安心して退職金運用を進められる。
アドバイザーによっては資産運用だけでなく、保険や不動産、相続などに関しても、的確な助言ができる。
当初は退職金運用の相談だけのつもりでも、ライフステージの変化に応じて不動産売買や相続など、新たな相談ごとが生じることもある。
そうした際にも、専門的な支援を受けられるのは心強い。
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退職金運用では、大きな金額を扱うことに長けたアドバイザーを選ぶことで、個別のニーズやリスク許容度を考慮した最適な運用戦略の策定ができる。
そんなアドバイザー探しに効果的なのが「退職金ナビ」だ。
「退職金ナビ」は、退職金運用に強みを持つ専門家を検索できるサービスで、地域や相談内容に応じて最適な担当者を探せる。
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気になる担当者がいれば、そのまま直接相談依頼が可能だ。
面談は無料で行えるため、複数のアドバイザーと話をしたうえで、最も相性の良い人物を選ぶのも良いだろう。
理想の運用パートナー探しのために、利用してみてはいかがだろうか。
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本記事では、退職金運用の効果的な投資方法とそのコツを解説した。
退職金を効果的に運用することは、老後の資産寿命を延ばすために欠かせない。
現代では退職金の減少、平均寿命の伸長、年金受給額の低下など、老後資金に関する課題が多い。
そのため、退職金を適切に運用し、資産寿命を延ばす必要がある。
おすすめの運用法は、定期預金、個人向け国債、投資信託、ETF、株式、不動産の6つを紹介した。
退職金運用を始める際は、これらの資産を目的やリスク許容度に合わせて適切に組み合わせていこう。
一方で、どの資産に投資すべきか迷ったり、運用に不安を抱えたりした場合は専門家の助けを借りることが重要だ。
退職金運用に強いアドバイザーと計画を立てることで、リスクを抑えながら効率的な運用が期待できる。
特に投資の初期段階では、プロの助言を受けて運用プランをしっかり構築することがその後の成果に大きく影響する。
ぜひ「退職金ナビ」を活用し、あなたに合った心強い専門家と出会ってほしい。
そしてアドバイザーとともに最適な運用戦略を検討し、退職後の安定した生活を実現させよう。