70歳からの資産運用はどう始める?年金を補う安定的な運用プランを解説

70代になると、「今から資産運用を始めても遅いのでは」「預金のままで物価上昇に対応できるだろうか」と迷うことがあります。

結論から言うと、70代からの資産運用は遅すぎるとは限りません。ただし、目標は「できるだけ増やすこと」ではなく、今の暮らしを守りながら、必要なときに使える状態を保つことです。

判断の順番は、商品選びから始まりません。70代の本人と家族が確認するのは、次の5つです。

  1. 家計の不足額を把握する
  2. 生活費、医療・介護費、予定支出を運用対象から外す
  3. 耐えられる損失額から、値動きのある資産の上限を決める
  4. お金を使う時期に合わせて、預金・個人向け国債・投資信託などを使い分ける
  5. 取り崩し、口座管理、家族への引き継ぎまで先に決める
先に結論

数年以内に使う可能性があるお金や、医療・介護の予備費は、値動きのある商品へ回さないのが基本です。これらを分けて余裕資金が残らなければ、運用しない選択が適切です。10年以上使う予定がなく、値下がりしても売らずに持ち続けられる資金がある場合に限り、その一部で運用を検討します。

※この記事は2026年7月24日時点の制度と公表資料を基にした一般的な情報です。税金、社会保険、医療・介護、相続の扱いは、所得や加入制度、家族構成などで変わります。特に高額療養費制度は2026年8月1日から上限額などが改定される予定です。個別の金額は、加入している保険者や自治体、専門家へ確認してください。

目次

70代の資産運用は「平均余命」と「物価上昇」の両方から考える

70代の資金管理では、守りたいものが2つあり、対策の向きが逆になります。

ひとつは、これから使う生活費や医療・介護費を減らさないこと。もうひとつは、長い老後や物価上昇に備えて、お金の購買力を保つことです。

2024年の簡易生命表では、70歳の平均余命は男性15.60年、女性19.97年です。75歳でも男性12.08年、女性15.75年あります。ただし、これは集団の平均であり、個人の寿命や資金計画の期限ではありません。平均より長く生きる場合も見込んでおく必要があります。

一方で、すべてを預金にしておけば安心、とも言い切れません。その理由は、物価が上がると、同じ金額で買える物やサービスの量が減るためです。

たとえば、利息と税金を考えず、物価が毎年2%上がると仮定します。今100円で買える食料品は、10年後には約122円になります。同じものを買うために、今より多くのお金が必要になるイメージです。

この条件では、口座にある1,000万円という数字が減らなくても、そのお金で買える量は、10年後には現在の約820万円分に相当します。

ただし、2%は物価上昇の影響を理解するための仮定であり、将来予測ではありません。実際の物価は上下します。預金は価格変動が小さい一方、物価上昇で購買力が下がる可能性があります。投資は購買力の低下に備える手段になり得ますが、売却時の金額が投じた元金を下回る「元本割れ」も起こり得ます。

そのため、70代では「全額を預金」か「できるだけ運用」かの二択にしません。使う時期に応じて、お金の置き場所を分けます。

順序が大切です。物価上昇への備えは必要でも、それを理由に近く使うお金まで投資へ回すことはできません。

70代が資産運用を始めない方がよい8つのケース

次のいずれかに当てはまる場合は、商品の検討をいったん止め、家計や管理体制の整備を優先してください。

  • 生活費、税金、社会保険料を払うと毎月赤字になり、当面の不足額を確保できていない
  • 数年以内の住み替え、住宅修繕、車の買い替え、家族援助などの金額が決まっていない
  • 医療・介護の予備費を分けていない
  • リボ払いやカードローンなど、金利の高い債務の返済を優先すべき状況にある
  • 元本割れすると、生活費や介護費が足りなくなる
  • いくら損する可能性があるか、費用はいくらか、いつ現金に戻せるかを自分の言葉で説明できない
  • 口座や商品の管理を本人だけで続けることが難しく、支援体制も決まっていない
  • 電話やSNSで契約を急かされている

この段階で「運用しない」と決めても、失敗ではありません。近く使うお金を守り、口座を整理することも、資産管理の一部です。

70代の運用額は、同年代の平均貯蓄額では決められない

同年代がどれくらいの資産を持つか気になっても、平均額から自分に必要な金額は判断できません。

総務省の2025年家計調査では、65歳以上の無職世帯の平均は次のとおりです。

スクロールできます
世帯手取り収入(可処分所得)生活費など(消費支出)1か月の差額
夫婦のみ22万1,544円26万3,979円4万2,434円の不足
単身11万8,465円14万8,445円2万9,980円の不足

夫婦世帯の不足額は原表の「黒字」欄を転記しています。元資料では表示前の金額をそれぞれ丸めているため、表示された手取り収入と生活費などの単純な引き算とは1円ずれます。

また、2025年の貯蓄・負債編では、世帯主が70歳以上の二人以上世帯の貯蓄現在高は平均2,471万円でした。しかし、この数字は単身世帯を含まず、不動産を含む純資産でもありません。平均は一部の高額保有世帯に引き上げられやすいため、「70代には2,471万円必要」という意味でもありません。

いずれも住まい、健康状態、地域などが異なる世帯の平均です。運用額を平均額に合わせるのではなく、自分の収支と使い道から決める必要があります。

実際の運用額は、通帳、年金振込通知書、クレジットカード明細などを使い、直近12か月の自分の数字から計算します。

12か月分を月ごとに分け、手取り収入、生活費、年払いの支出を書きます。カードの利用額を支出に入れた場合、同じ代金の口座引き落としは重ねて入れません。自分名義の口座間の移動や、預金から投資へ振り替えた金額も、収入・支出には数えません。

金融資産も、同じ基準日で一覧にします。預金は残高、株式や投資信託はその日の評価額、保険はその日に解約した場合の受取額を使います。自宅など、すぐに生活費へ充てられない資産は、この簡易計算の金融資産へ入れません。

平均額は、自分の位置を知る参考にはなります。ただし運用額の答えは、平均ではなく、自分の収支と使う時期からしか出てきません。

70代が投資に回せる金額の上限を4ステップで計算する

まずは大まかに確認

難しい計算を始める前に、金融資産から次のお金を順に引いてみましょう。

  1. 近く使うお金:日常の決済資金と、当面の生活費の不足分
  2. 予定があるお金:住み替え、住宅修繕、車の買い替えなど、10年以内に見込む支出
  3. もしもに備えるお金:緊急時や医療・介護のために残す予備費
  4. そのほか先に確保するお金:優先して返す債務や、配偶者の生活・承継のために残す資金

残りが0円以下なら、ここで計算を止めてかまいません。値動きのある資産へ回さない、という結論です。プラスなら、残った全額を投資するのではなく、次の4ステップで上限をさらに絞ります。同じ支出を2つ以上の項目へ重ねて入れないことも大切です。

STEP
年金収入と支出を比べ、1年間の不足額を出す

直近12か月の手取り収入と支出を比べます。

STEP
生活費・予定支出・医療・介護費を運用対象から外す

当面の生活費、予定支出、医療・介護の予備費などを先に外します。

STEP
10年分の収支表で、10年以上使わない金額を確かめる

10年分の収支を年ごとに置き、近く使わない金額を確認します。

STEP
耐えられる損失額と想定下落率で購入上限を絞る

下落テストを行い、3つの参考額のうち最も小さい金額を出して、現在の保有額を差し引きます。

ステップ1 年金収入と支出を比べ、1年間の不足額を出す

まず、税金や社会保険料を含む年間支出と、手取りの定期収入を比べます。

年間不足額 = 年間支出 − 手取りの年金・給与・家賃収入など

計算結果が0円以下なら年間黒字です。次のステップでは、年間不足額を0円として扱います。まだ実際に貯まっていない将来の黒字分を、現在の運用候補額へ加えてはいけません。

固定資産税、旅行、冠婚葬祭など、毎月ではない支出も忘れずに集計します。住宅修繕や介護などの大型支出は、日常の生活費と分けて書き出すと重複を防げます。

ステップ2 生活費・予定支出・医療・介護費を運用対象から外す

次に、値動きのある商品へ回さないお金を計算します。

ここでいう「日常の決済資金」は、毎月の引き落としや急な支払いに使う普通預金などです。「当面資金年数」は、年金などで足りない生活費を何年分手元に置くかを表します。

運用対象外資金 = 日常の決済資金 + 年間不足額×当面資金年数 + 予定している大型支出 + 緊急・医療・介護の予備費 + 優先返済する債務

当面資金を何年分持つかに、全員共通の正解はありません。収入の安定性、家族の支援、住まい、健康状態で変わります。2年・3年・5年分をすべて計算し、選んだ年数と理由を書きます。

以下の空欄表は、紙やノート、表計算ソフトへ写して使ってください。Webページの表へ直接入力することはできません。

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比較する案年間不足額×年数運用対象外資金採用する案
2年分   万円   万円
3年分   万円   万円
5年分   万円   万円

高額療養費や介護保険には負担を抑える制度がありますが、保険外診療、差額ベッド代、入院時の食費、介護施設の居住費・食費など、対象外になる費用もあります。「制度があるから予備費は不要」とは判断できません。

医療・介護費や大型支出は、手元の資料、見積もり、保険者・自治体への確認を基に仮の金額を置きます。金額を確認できない項目がある間は、購入額を決めません。

ステップ3 10年分の収支表で、10年以上使わない金額を確かめる

まず、当面の支出を外した金額を確認します。

当面の運用候補額 = 金融資産 − 運用対象外資金 − 配偶者の生活や家族に残すためのお金(承継資金)

配偶者の生活や家族に残すためのお金は、使い道を決めて確保する場合に入れます。計算結果が0円以下なら、ここで計算を終え、値動きのある資産へは回しません。

次に、今後10年分の収支を年ごとの表にし、各年の手取り収入、生活費、医療・介護費、住宅修繕費などを書き出します。

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手取り収入年間支出(時期・金額が見込める医療・介護・予定支出を含む)その年の不足額
1年目   万円   万円   万円
2年目   万円   万円   万円
3年目   万円   万円   万円
4年目   万円   万円   万円
5年目   万円   万円   万円
6年目   万円   万円   万円
7年目   万円   万円   万円
8年目   万円   万円   万円
9年目   万円   万円   万円
10年目   万円   万円   万円
合計   万円

各年の不足額は、年間支出から手取り収入を引いて求めます。黒字の年は0円です。10年分の不足額を足したものが「今後10年間の累計不足額」になります。年表には、発生する時期と金額を見込める支出を入れます。緊急・医療・介護の予備費は、年表へ入れていない不測の支出のための別枠です。同じ金額を両方へ入れてはいけません。

年表に入れた支出は、次の式で再度引きません。年表に入れていない予定支出だけを「10年以内の予定支出」として別に引きます。

10年以上使わずに済む金額 = 金融資産 − 日常の決済資金 − 今後10年間の累計不足額 − 10年以内の予定支出 − 緊急・医療・介護の予備費 − 優先返済する債務 − 最低限残したい配偶者・承継資金

物価や収支が毎年変わる場合は、単純な掛け算ではなく、年ごとに金額を置いて合計します。結果が0円以下なら、ここで計算を終え、値動きのある資産へは回しません。

当面の運用候補額が残っても、その全額を投資できるわけではありません。残るのは、下落したときに売らずにいられるかという条件です。

ステップ4 耐えられる損失額と想定下落率で購入上限を絞る

「株式を何%持つか」より先に、「一時的に何万円減っても暮らしを変えず、売らずに待てるか」を決めます。

購入を止める条件

耐えられる一時的損失額を決められない場合は0円として扱い、値動きのある資産の購入を止めます。

商品を決める前の簡易計算は、次のとおりです。

下落テストから見た参考額 = 耐えられる一時的損失額 ÷ 仮の下落率

たとえば、一時的な損失を200万円までに抑えたい場合は、次のようになります。

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仮の下落率下落テストから見た参考額
30%約667万円
40%500万円
50%400万円

30〜50%は計算方法を理解するための例であり、将来の予測でも、損失の最大値でもありません。30%は「30」ではなく「0.30」として計算します。商品を決める前は3通りをすべて計算し、判断できない場合は最も小さくなる参考額を使います。投資できる金額を増やすために、都合のよい下落率を選んではいけません。

商品を選んだ後は、すでに保有している値動きのある資産と、新たに買う予定の資産を合計し、資産ごとの値動きの違いを反映します。

下落テストでの想定損失額 =「各資産の購入後の予定保有額 × その資産に設定した仮の下落率」の合計

たとえば、購入後に200万円保有する資産へ30%、100万円保有する資産へ20%の仮の下落率を置くと、想定損失額は60万円と20万円の合計80万円です。商品の説明書である目論見書などでリスクを確かめ、下落テストでの想定損失額が耐えられる損失額を超えないようにします。

初心者が仮の下落率を決められない商品は、この計算だけで購入額を決めず、購入を止めて説明を求めてください。個別株や一部の複雑な商品など、50%を超える損失や投資額を超える損失があり得る場合は、さらに厳しい条件が必要です。

仮の下落率は、その商品の損失上限ではありません。採用した条件と根拠を、次の表に残します。過去の下落率も、将来の最大損失を保証しません。根拠を書面で確認できない商品は、自分だけで購入を決めないでください。

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商品・資産購入後の予定保有額仮の下落率根拠資料・該当箇所・確認日
候補1   万円   %        
候補2   万円   %        
候補3   万円   %        

次の参考上限は、新しく購入できる金額ではありません。すでに保有している分と新たに購入する分を合わせた、値動きのある資産の総額です。

値動きのある資産の参考上限 =「当面の運用候補額」「10年以上使わずに済む金額」「下落テストから見た参考額」の最小値

追加購入の参考上限 = 値動きのある資産の参考上限 − 現在保有する値動きのある資産の評価額(0円未満なら0円)

この金額も、安全が保証される上限ではありません。現在の保有額が参考上限以上なら追加購入は0円です。ただし、上限超過だけを理由に直ちに売るのではなく、商品のリスク、生活資金、税金、手数料、換金条件を確認して見直します。

「値動きのある資産を合計いくらまで持つか」「あといくら追加できるか」という答えは、ここで初めて分かれます。資産額から先に割合を掛けるのではなく、必要資金と損失の両側から絞り込むのがポイントです。

4ステップの計算結果を1枚にまとめる確認表

最初に、自分で確認する金額を書きます。同じ日付の残高と、同じ期間の収支を使ってください。

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先に書く項目自分の金額・条件
同じ基準日の金融資産合計(換金可能額)    万円
同じ基準日の値動きのある資産の評価額    万円
日常の決済資金(予備費に含めた場合は0円)    万円
税・社会保険料を含む年間支出    万円
手取りの年金・給与など    万円
当面資金として確保する年数    年
選んだ年数の理由        
10年以内の予定支出(10年表に含めた分は除く)    万円
緊急・医療・介護の予備費    万円
優先返済する債務    万円
配偶者・承継用に残す資金    万円
耐えられる一時的損失額(決められなければ0円)    万円

次に、式で求めた結果を書きます。途中で0円以下になった場合は、その時点で値動きのある資産の計算を終えます。

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計算で出す項目計算結果
年間不足額(黒字なら0円)    万円
今後10年間の累計不足額    万円
運用対象外資金(配偶者・承継資金を除く)    万円
当面の運用候補額    万円
10年以上使わずに済む金額    万円
30%下落時の参考額    万円
40%下落時の参考額    万円
50%下落時の参考額    万円
値動きのある資産の参考上限(保有中+追加分)    万円
追加購入の参考上限    万円

3つの参考額と現在の保有額を確認し、追加購入の参考上限まで計算できたら、一次計算は完了です。必要な項目に空欄がある場合は、金額を埋めるまで購入を止めます。

72歳夫婦と78歳単身の計算例で、投資できる金額を確かめる

以下は、考え方を示すための架空の計算例です。特定の人への推奨額ではありません。

例1 金融資産3,000万円の72歳夫婦は上限400万円

  • 税・社会保険料を含む年間支出:384万円
  • 手取りの年金など:300万円
  • 年間不足額:84万円
  • 5年以内の予定支出:200万円
  • 日常決済分を含む緊急・医療・介護の予備費:300万円
  • 当面資金年数:3年
  • 最低限残したい承継資金:今回は設定なし
  • 現在保有する値動きのある資産:今回は0円と仮定

運用対象外資金 = 84万円×3年+200万円+300万円 = 752万円

当面の運用候補額 = 3,000万円−752万円 = 2,248万円

さらに、年間不足額が10年間変わらないと仮定し、予定支出200万円と予備費300万円を別枠で残します。

10年以上使わずに済む金額 = 3,000万円−84万円×10年−200万円−300万円 = 1,660万円

一時的に耐えられる損失を200万円とすると、下落テストから見た参考額は、30%で約667万円、40%で500万円、50%で400万円です。商品を決める前なので、この例では最も小さい400万円を暫定的な参考上限にします。

値動きのある資産の参考上限 = 2,248万円、1,660万円、400万円のうち最も小さい400万円

追加購入の参考上限 = 400万円−0円 = 400万円

金融資産3,000万円に対し、値動きのある資産の参考上限は400万円です。この例では現在の保有額を0円としたため、追加購入の参考上限も400万円になります。この400万円も、安全が保証された金額ではありません。実際の商品を決めたら、購入後の予定保有額を使って再計算します。残りは、近い支出を賄う「使うお金」と、値動きを抑える「守るお金」に分けます。

なお、これは簡易的な判定です。将来の年ごとの収支に加え、物価、医療・介護費、住まいの状況も織り込み、少なくとも年1回は計算し直します。

例2 金融資産1,200万円の78歳単身は運用候補額0円

  • 金融資産:1,200万円
  • 年間不足額:100万円
  • 当面資金:5年分の500万円
  • 住み替え・介護の予定額:400万円
  • 緊急予備費:300万円
  • 現在保有する値動きのある資産:0円

当面の運用候補額 = 1,200万円−500万円−400万円−300万円 = 0円

この場合は、値動きのある資産に回さないのが妥当です。預金保険の範囲や換金のしやすさを確かめ、口座を管理しやすい形に整えることを優先します。預金には物価上昇の影響が残りますが、生活資金に価格変動リスクを加えることが解決になるとは限りません。

例1の400万円と、例2の0円は、どちらも計算から導いた結論です。この計算は投資額を作るためではなく、暮らしを守れないところで止まるために使います。

70代の資産配分は「100−年齢」ではなく使う時期で3つに分ける

「100から年齢を引いた割合を株式にする」という目安では、年金額、資産額、支出、健康状態、家族の支援を反映できません。資金は、使う時期に応じて3つの役割に分けます。

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資金の役割使う時期の目安例置き場所の候補主な注意点
使うお金いつでも〜2年程度普通預金、定期預金など預金保険の範囲、物価上昇
守るお金3〜10年程度預金、条件を理解した個人向け国債など中途換金条件、金利、物価上昇
育てるお金10年以上使わない低コストで広く分散された投資信託など元本割れ、価格・為替変動、手数料

年数は分類のための例であり、元本を保証する境界ではありません。境目で迷うお金は、より早く使う区分に置きます。5年や10年持っても、投資信託が元本割れすることはあります。

役割が先、商品は後です。先に商品を選ぶと、近く使うお金まで利回りで比べてしまいます。

使うお金(2年以内)は預金保険の範囲まで確認する

日常の生活費や急な支出は、普通預金など換金しやすい場所に置きます。

同じ人が同じ金融機関に持つ普通預金や定期預金などは、支店や口座を合計します。保護されるのは、元本1,000万円までと破綻日までの利息です。支店ごとに1,000万円ではありません。一定条件を満たす決済用預金は全額保護されますが、外貨預金は預金保険の対象外です。

資金が多い場合は、金融機関ごとの残高と預金の種類を確認します。

守るお金(3〜10年)は個人向け国債の中途換金条件まで確認する

個人向け国債は、国が発行し、1万円から購入できます。変動10年、固定5年、固定3年があり、原則として発行から1年後に中途換金できます。ただし、直前2回分の各利子相当額を基にした調整額が差し引かれます。1年以内に使う可能性があるお金には向きません。

個人向け国債と債券型の投資信託は別の商品です。債券型投資信託は、金利や為替、組み入れ先の信用状況などで価格が下がることがあります。「債券」という名前だけで元本が守られると判断しないでください。

育てるお金(10年以上)は低コストと分散で投資信託を絞り込む

長く使わない資金で値動きを受け入れられるなら、国内外の株式や債券などに幅広く分散投資する投資信託が候補になります。

同じ「分散型」でも、投資先と費用は商品ごとに違います。確認するのは次の6点です。

  • 何に投資し、どの国・通貨に資金を配分する商品か
  • 1つの国、業種、銘柄に偏っていないか
  • 購入時、保有中、売却時にかかる費用はいくらか
  • どの程度の値下がりがあり得るか
  • いつ現金化でき、入金まで何営業日かかるか
  • 自分や家族が仕組みを説明できるか

商品名より、費用、分散、換金性、管理のしやすさを優先します。

毎月分配型や外貨預金など、70代が慎重に確認したい金融商品

次の商品が一律に悪いわけではありません。ただし、預金に近い感覚で購入すると、想定外の損失が出たり、必要なときに換金できなかったりすることがあります。

  • 毎月分配型の投資信託:分配金は預金の利息とは違います。ファンドの資産から支払われるため、分配後はその分だけ投資信託の値段である基準価額が下がります。元本の一部が戻っている場合もあります。
  • 外貨預金:為替が円高になると円換算で損失が出ます。為替手数料がかかり、預金保険の対象外です。
  • 仕組みが複雑な債券や保険:高い利率だけでなく、元本割れの条件、途中解約で差し引かれる金額、満期、換金制限を確認します。
  • 一部の銘柄やテーマに偏った商品:値動きが大きくなりやすく、必要な時期の下落に対応しにくくなります。
  • 借入やレバレッジを使う取引:借入などで投資額を大きくする仕組みでは、投じた金額を超える損失が生じる商品もあり、生活資金を守る目的には合いません。
契約を見送る条件

最大損失、すべての費用、現金化までの日数、解約条件を説明できない商品は、少なくとも内容を理解できるまでは契約を見送ってください。

70代でもNISAは使えるが、非課税枠を埋める必要はない

NISAを使うかどうかは、運用額と使う時期が決まったあとの判断です。NISAは運用額を増やす理由ではなく、条件に合う資金を入れるための制度です。

NISAには上限年齢がありません。原則として、NISA口座を開設する年の1月1日時点で18歳以上の国内居住者などが利用できます。

NISAではない通常の証券口座(課税口座)では、上場株式などの売却益・配当や、公募株式投資信託の普通分配金に原則20.315%の税金がかかります。NISA口座内の対象商品から得た利益は非課税です。

ただし、NISA口座で保有する上場株式の配当を非課税にするには、配当を証券口座で受け取る「株式数比例配分方式」を選ぶ必要があります。発行会社から直接受け取る方式では課税されます。証券会社の設定画面や窓口で、受取方法を確認してください。

現行NISAの主な枠は次のとおりです。

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項目内容
つみたて投資枠年120万円
成長投資枠年240万円
年間の合計最大360万円
非課税保有限度額取得価額で合計1,800万円(成長投資枠はうち1,200万円)
非課税保有期間無期限
NISAで誤解しないこと

年間360万円は「使い切るべき金額」ではありません。生活費を取り崩してまで枠を埋める必要はありません。

NISAは税金の制度であり、元本保証の商品ではありません。NISAの損失を通常口座の利益から差し引くことも、翌年以降へ持ち越すこともできません。売却した商品の買付額(取得価額)分は翌年以降に再利用できますが、その年の年間投資枠が増えるわけではありません。

NISAが選択肢になりやすいのは、10年以上使わない「育てるお金」があり、値下がりしても生活に影響せず、商品を継続して管理できる人です。

一方、次に当てはまる場合は、NISAの利用を急ぐ必要はありません。

  • 数年以内に使うお金しか残っていない
  • 元本割れを受け入れられない
  • NISAを預金のような安全な制度だと思っている
  • 非課税枠を埋めることが目的になっている
  • 購入する商品の費用やリスクを理解していない

70代の取り崩しは、商品を買う前にルールを決める

70代の運用では、買う商品と同じくらい「いつ、どこから使うか」が重要です。

買ったところで設計を終えると、相場が下がったときに生活費のための売却を迫られます。出口を先に決めるのは、その場の判断を減らすためです。

下落が先に来ると残高が減る「順序リスク」

取り崩しながら運用すると、同じ値動きを経験しても、その順番によって残高が変わります。これを「順序リスク」といいます。

たとえば、500万円を運用しながら、年金で足りない生活費として毎年の初めに60万円、月平均にすると5万円を引き出す例で考えます。手数料と税金は考えません。

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2年間の値動き1年目末2年目末
1年目−20%、2年目+20%352万円350.4万円
1年目+20%、2年目−20%528万円374.4万円

どちらも「−20%と+20%」を1回ずつ経験し、合計120万円を引き出しています。それでも、下落が先に来たケースは、2年後の残高が24万円少なくなります。

下落が先に来た場合は、1年目が(500万円−60万円)×0.8=352万円、2年目が(352万円−60万円)×1.2=350.4万円です。これは2年間で順番の影響を確かめるための例であり、毎年60万円の取り崩しを長く続けられることを示すものではありません。

生活用口座の下限残高と、現金を補充するルールを決める

取り崩しの手順をあらかじめ決めておくと、その都度の判断に迷いにくくなります。運用前に、次の設定も書き出してください。

毎月の振替額は、年間不足額÷12を出発点にします。生活用口座の目標残高は、毎月の不足額×口座に置く月数+その期間中の予定支出です。下限残高は、少なくとも次の見直しまでの不足額+それまでの予定支出を下回らないようにします。

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取り崩しの設定自分の金額・時期
生活用口座から毎月使う金額    万円
生活用口座の目標残高    万円
計算をやり直す下限残高    万円
残高と配分を確認する月    月
生活用口座を補充する金額    万円
補充元として検討する資産        

生活用口座と、定期預金など別に確保した「使うお金」の合計が、ステップ2で採用した当面資金を下回らないようにします。補充額は、目標残高−現在残高で計算します。

  1. 年金などの定期収入を、日常の生活費に充てる
  2. 足りない分は、生活用の預金口座から毎月一定額を移す
  3. 年1回など時期を決め、残高と資産配分を確認する
  4. 値動きのある資産の残高が、あらかじめ決めた上限を超えた年は、超過分の売却を検討し、生活用口座を補充する
  5. 相場が下落したときは、当面の生活資金で賄える間は値下がりした資産を無理に売らず、延期できる支出がないかも見直す
  6. 売却前に、税金、手数料、資産配分への影響を確認する

「毎年4%なら安全」「NISAから先に売る」「課税口座から先に売る」といった一律の正解はありません。必要額、まだ売っていない利益(含み益)、税金、非課税で持てる期間、相続の予定によって変わります。

生活用口座が決めた下限を割ったら、売却前にステップ1〜4を計算し直します。設定表に空欄が残る間は、値動きのある資産での運用を始めません。

見直しは年1回に加え、退職や年金額の変更、配偶者との死別、入院・介護の開始、住み替え、大きな贈与、本人が商品を管理しにくくなったときにも行います。前提が変わったら、以前の配分に戻すのではなく、家計の計算からやり直します。

すでに投資している70代は、買い足す前に保有商品を棚卸しする

70代では、保有商品が増えすぎたり、値上がりによって株式などの割合が想定以上に膨らんだりすることがあります。新しい商品を足す前に、現在の資産を一覧にします。

新しく何を買うかより、いま何を持っているか。足し算の前に確かめるのは、商品の重複と、値上がりで膨らんだ偏りです。

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確認項目書き出す内容
金融機関・口座銀行、証券会社、保険会社、口座の種類
商品預金、株式、投資信託、債券、保険など
金額現在の評価額、取得額、満期時の受取見込額
費用購入、保有、売却、解約、為替にかかる費用
リスク値下がり、為替、信用、換金制限
使い道生活、医療・介護、余裕資金、承継など
管理本人が説明できるか、家族が保有状況を把握しているか

毎月分配型の投資信託がある場合は、分配金の多さだけで判断せず、購入後の損益と分配金の内訳を確認します。保険は、いま解約した場合に受け取れる金額と、途中解約で差し引かれる金額、保障が必要な期間を確認します。

含み損があることだけを理由に、すべての商品を一律に慌てて売る必要はありません。ただし、生活費として使う時期が近い、仕組みや損失上限を理解できない、換金が難しい、借入・レバレッジを使っている、発行体の信用が悪化した、詐欺や無登録業者の疑いがある場合は別です。追加送金や追加取引を止め、利用中の正規の金融機関や専門家など第三者へ速やかに確認してください。それ以外の場合も、「いま同じ金額を出して買いたいか」「生活に必要な時期まで持ち続けられるか」を基準に、税金、手数料、解約費用を含めて見直します。

医療・介護費は、高額療養費や介護保険があっても別枠で備える

医療費には高額療養費制度があり、保険診療の自己負担が一定の上限を超えた場合に負担が軽減されます。ただし、上限は年齢や所得で異なります。2026年8月1日から上限額などの改定も予定されています。

また、差額ベッド代、入院時の食費、先進医療などの保険外費用は、高額療養費の対象外です。

介護保険サービスの自己負担は所得に応じて原則1〜3割ですが、施設の居住費、食費、日常生活費、支給限度額を超えたサービスなどは別にかかります。高額介護サービス費などの軽減制度にも、対象になる費用と対象外の費用があります。

制度は負担を軽くしますが、支出を0円にはしません。だからこそ、制度を調べることと、予備費を持つことの両方が必要です。

予備費を決めるときは、全国平均だけでなく、次を個別に確認します。

  • 加入している医療保険の所得区分と自己負担上限
  • 民間保険から受け取れる給付金
  • 希望する入院環境や治療にかかる保険外費用
  • 在宅介護か施設介護かという希望
  • 住まいの改修、移動、見守りにかかる費用
  • 家族が支援できる範囲

加入している保険者、市区町村の介護保険窓口、地域包括支援センターなどに確認すると、利用できる制度を織り込んだ費用を見積もりやすくなります。

70代のうちに口座を整理し、代理人・任意後見の仕組みを確認する

70代の資産管理では、運用成績だけでなく「本人が管理を続けられるか」も重要です。判断能力を年齢だけで決めつけるべきではありません。ただ、元気なうちに備えておくと、本人の希望に沿った管理を続けやすくなります。

相場の回復を待てることはあっても、管理の負担が軽くなるとは限りません。口座や商品を少なく保つこと自体に意味があります。

家族と先に共有するのは、暗証番号ではなく、口座一覧の保管場所と連絡先です。

  1. 金融機関、口座、保険、連絡先を1枚の一覧にする
  2. 使っていない口座や、役割が重なる商品を整理する
  3. 家族へ、それぞれの資産の使い道と一覧の保管場所を伝える
  4. 年1回、家族と一緒に残高、商品、受取人、緊急連絡先を確認する
  5. 金融機関へ「本人が手続きできなくなった場合に、家族が使える正式な制度はありますか」と確認する
  6. 必要に応じて、任意後見や遺言などを専門家へ相談する
家族に任せるときの注意

暗証番号やパスワードを家族と共有し、本人名義の口座を非公式に操作してもらうことは避けてください。金融機関の規約に反する可能性があり、事故や相続時のトラブルにもつながります。

金融機関によっては、日常の入出金を補助する代理人カードや、代理人を届け出る手続きを用意しています。ただし、こうした通常時の手続きと、本人の判断能力が低下した後の利用を想定した制度は同じではありません。

  • 銀行など:代理人カードや届出代理人について、利用条件、できる手続き、利用開始・終了の条件、本人の判断能力が低下した後も利用できるかを確認する
  • 証券会社:家族の連絡先登録と取引の代理は同じではないため、何ができる制度かを確認する。日本証券業協会の「家族サポート証券口座」は参加証券会社に限られ、公正証書による任意代理契約など所定の条件を満たして利用する仕組み
家族から話を切り出す例

「最近、投資詐欺の話をよく聞くから、暗証番号ではなく、口座一覧の保管場所と、困ったときの連絡先だけ一緒に確認しない?」

資産額を問いただすのではなく、本人の希望を聞き、安全な連絡方法を一緒に決めるところから始めます。

任意後見は、本人に判断能力があるうちに、代理を任せる人と、その人に与える権限を、公正証書による契約であらかじめ定める制度です。判断能力が低下した後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると、契約の効力が生じます。家族であっても、自動的に本人の口座を操作できるわけではありません。

これは2026年7月24日時点の現行制度です。成年後見制度を見直す法律は2026年6月24日に公布され、成年後見制度に関する改正は、公布から2年6か月以内の政令で定める日に施行されます。任意後見の監督方法を含む仕組みが変わるため、実際に利用するときは法務省や家庭裁判所の最新案内を確認してください。

認知症の診断があっても、直ちにすべての意思決定ができなくなるわけではありません。本人が理解しやすい形で説明し、意思を確認しながら支援することが大切です。

70代の資産をSNS型投資詐欺から守る「その場で送金しない」仕組み

警察庁の確定値では、2025年のSNS型投資詐欺は9,523件、被害額は1,288.0億円でした。年代・性別にみると、70代男性816件、70代女性454件です。被害は年齢だけで説明できるものではなく、誰でも著名人や公的機関、実在する金融機関を装った勧誘に接する可能性があります。

市場の値下がりだけが、資産を失う原因ではありません。たった一度の送金を防ぐルールも、資産配分と同じくらい重要です。

当てはまったら送金・契約を止める

次のどれかに当てはまったら、その場で決めず、追加送金や契約を止めてください。

  • 「必ずもうかる」「元本保証」「あなただけ」と言われた
  • SNSの広告やDMから、投資グループへ招待された
  • 個人名義の口座へ振り込むよう指示された
  • 出金するために、税金や保証金などの追加送金を求められた
  • 警察、金融庁、証券会社などを名乗り、急いで資産を移すよう求められた

相手から届いたリンクや、検索結果に表示された広告は使わず、金融庁の「金融事業者一括検索機能」で登録情報を確認します。そのうえで、通帳や契約書、カードなど、手元にある正規の資料に記載された電話番号から金融機関へ連絡してください。以前から利用している公式アプリから連絡する方法もあります。登録業者名が一致しても、なりすましの可能性があるため、登録確認だけで安全とは判断しません。

送金前に作っておく4つのブレーキ
  1. 振込限度額を見直す:設定できる場合は、日常生活に支障がない範囲まで引き下げる
  2. 通知を受け取る:設定できる場合は本人が出金・振込通知を受け取り、必要に応じて家族と確認する手順を決める
  3. 自分の確認基準を決める:新しい振込先、普段より大きな送金、急かされている送金は、金額を問わず一度止める。翌日まで待ち、家族など信頼できる人にも確認する
  4. 使っていない機能を見直す:不要な口座や送金機能があれば、金融機関へ利用停止や限度額変更の方法を確認する

まだ送金していない場合は、送らずに画面を保存し、手元にある正規の資料に記載された電話番号から金融機関へ確認します。

すでに送金した場合は、追加送金を止め、画面、契約書、送金履歴、やり取りを保存します。翌日を待たずに、送金元の金融機関と警察へ連絡してください。必要に応じて金融庁や消費生活センターにも相談します。

70代の資産運用の相談先は、役割と「誰が報酬を払うか」で選ぶ

家計、運用、税金、相続のすべてを、一人の専門家に任せられるとは限りません。

自分で決められない箇所が見つかったら、その分野を扱う人へ相談します。その際は、肩書だけでなく、役割と報酬の流れを確かめることが欠かせません。

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相談したいこと相談先の候補確認する点
老後の家計、取り崩し計画ファイナンシャル・プランナーなど相談料、商品販売の有無、前提条件
金融商品の提案・取引登録を受けた金融機関や金融商品仲介業者など金融庁の検索機能で登録を確認できるか、取扱商品の範囲、手数料、紹介料
税金、確定申告、相続税税理士個別税務を扱えるか、報酬
任意後見、遺言、相続手続弁護士、司法書士など業務範囲、権限、費用、継続支援

相談の場で確かめる質問は、次の6つです。

  • あなたは、相談料、販売手数料、紹介料のどれを受け取りますか
  • 提案できる商品の範囲に制限はありますか
  • 購入から売却までの総費用はいくらですか
  • どのような場合に、いくら損をする可能性がありますか
  • この商品を買わない場合の選択肢は何ですか
  • 家族が同席し、説明を書面で持ち帰れますか

その場で契約する必要はありません。複数の選択肢を比べ、家族と確認してから決めます。

70代の資産運用でよくある質問

70歳から投資を始めるのは遅いですか

70歳だから遅い、とは限りません。ただし、運用期間を確保できることと、実際に投資できることは別です。10年以上使う予定がなく、値下がりしても生活に影響しない資金があるかで判断します。

70代は資産の何%を投資に回せばよいですか

全員に共通する比率はありません。まず生活費、予定支出、医療・介護費を運用対象から外します。そのうえで、耐えられる損失額から、現在の保有分と追加購入分を合わせた上限を逆算します。新しく買える参考額は、その上限から現在の保有評価額を引いて確認します。

70代がNISAを使えば元本割れしませんか

元本割れする可能性があります。NISAは投資の利益を非課税にする制度であり、商品の値下がりを防ぐ制度ではありません。生活費に必要なお金を投資に回してまで、非課税枠を埋めることは避けてください。

70代は預金だけで持ち続けてもよいですか

近く使うお金や、値下がりを受け入れられないお金は、預金が適しています。一方で、長期では物価上昇によって購買力が下がる可能性があります。すべてのお金を預金か投資のどちらか一方に寄せず、使う時期ごとに分けるのが現実的です。

暗証番号を子どもに渡して口座管理を任せてもよいですか

暗証番号やパスワードを渡し、本人の代わりに操作してもらう方法は避けます。まず金融機関の正式な代理人・家族支援制度を確認してください。通常の代理人カードなどが、本人の判断能力が低下した後も同じように使えるとは限りません。将来に備えるなら、本人の意思を確認できるうちに、利用条件を金融機関へ確認し、任意後見なども含めて専門家へ相談します。

まとめ|70代の資産運用は「守る順番」を決めれば迷いにくい

70代の資産運用で最初にすることは、商品を選ぶことではありません。

  1. 直近12か月の収支から、年間不足額を出す
  2. 生活費、予定支出、医療・介護の予備費を運用対象から外す
  3. 10年以上使わない金額と耐えられる損失額から、値動きのある資産の総額を決め、現在の保有分を差し引く
  4. 「使う・守る・育てる」の3つに分ける
  5. 取り崩し、見直し、家族への引き継ぎを先に決める

計算の結果、追加購入の参考上限が0円なら、無理に買い足す必要はありません。預金などで暮らしを守ることも、資産管理の大切な選択です。余裕資金がある場合も、NISAの枠や同年代の平均ではなく、自分の生活に影響しない金額から始めます。

70代の資産運用では、大きく増やすことよりも、必要なときに安心して使え、本人と家族が無理なく管理できることを優先します。

今日できることを1つ選ぶ

すべてを一度に終える必要はありません。次のうち、取り組みやすいものを1つ選んでください。

  • 口座の一覧を作る:金融機関名、口座の役割、連絡先を書く。暗証番号やパスワードは書かない
  • 1年間の不足額を出す:直近12か月の通帳や明細から、手取り収入と支出を比べる
  • 使っていない口座を1つ確認する:残高、今後の用途、引き落としの有無、手数料、整理できるかを金融機関へ確認する

金融商品のパンフレットを開く前に、手元のお金と今後の支出を見える形にすることが、迷いを減らす第一歩です。

参考文献・出典

  1. 厚生労働省「令和6年簡易生命表」|公表資料:2024年結果|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:70歳・75歳の平均余命
  2. 総務省統計局「家計調査報告 2025年平均結果の概要」|公表資料:2025年平均|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:65歳以上の夫婦・単身無職世帯の収支、表章上の丸め
  3. 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年平均結果の概要」|公表資料:2025年平均|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:世帯主70歳以上の二人以上世帯の平均貯蓄現在高
  4. 金融庁「NISAを利用する皆さまへ」|改訂:2025年9月|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:利用年齢、年間投資枠、非課税保有限度額、売却後の枠の再利用
  5. 国税庁「No.1535 NISA制度」|法令等基準:2025年4月1日|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:非課税対象、配当の受取方式、損益通算・繰越控除不可
  6. 金融庁「預金保険制度」|公開・更新日:ページ上に明記なし|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:一般預金と決済用預金の保護範囲
  7. 財務省「個人向け国債 よくある質問」|公開・更新日:ページ上に明記なし|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:商品種類、購入単位、中途換金条件
  8. 日本証券業協会「リスク許容度」(J-FLECサイト掲載)|公開・更新日:ページ上に明記なし|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:年齢だけでなく収入・資産・経験・予定を踏まえる考え方
  9. 日本証券業協会「毎月分配型投資信託について」|公開・更新日:ページ上に明記なし|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:分配金と基準価額、元本払戻金
  10. 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」|更新:2026年6月25日|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:所得区分ごとの上限、対象外費用、2026年8月改定
  11. 厚生労働省「令和8年8月からの高額療養費制度の見直し」|公表:2026年|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:2026年8月1日以降の上限変更
  12. 厚生労働省「介護サービスにかかる利用料」|公開・更新日:ページ上に明記なし|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:自己負担割合、施設費、支給限度額、高額介護サービス費
  13. 法務省「成年後見制度・成年後見登記制度Q&A」|公開・更新日:ページ上に明記なし|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:現行の法定後見・任意後見制度
  14. 法務省「『民法等の一部を改正する法律』(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」|公表:2026年6月30日|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:2026年6月24日公布、成年後見制度改正の施行時期
  15. 厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン 第2版」|公表:2025年3月|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:本人の意思の尊重、意思決定支援の基本原則(8〜10頁)
  16. 金融庁「金融事業者一括検索機能の運用開始」|公表:2026年1月30日|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:登録情報の確認方法と登録確認の限界
  17. 金融庁「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!」|公表:2025年12月23日|更新:2026年3月5日|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:なりすまし、偽サイト、追加送金などの手口
  18. 金融庁「振り込め詐欺等の被害にあわれた方へ」|公開・更新日:ページ上に明記なし|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:その場で振り込まず、家族、警察、金融機関などへ確認・相談する注意喚起
  19. 警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について」|確定値・2026年7月2日訂正版を確認|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:SNS型投資詐欺の件数、被害額、年代別・性別件数(8〜10頁)
  20. 全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方について」|公表:2021年2月18日|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:認知判断能力が低下した本人との取引や代理取引に関する考え方、銀行ごと・個別事情による取扱いの違い
  21. 日本証券業協会「家族サポート証券口座」|掲載内容:2026年5月20日までの開始会社を確認|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:制度の概要、参加証券会社、利用の問い合わせ先
  22. 日本証券業協会「家族サポート証券口座制度要綱」|改正:2026年1月22日|確認日:2026年7月24日|主な確認内容:公正証書による任意代理契約、代理権の範囲、代理取引の開始条件

この記事を書いた人

資産運用メディア編集部は、初心者から上級者までが「将来に備える確かな運用判断」を得られるよう、公的統計や最新市場データに加え、自社アンケートを基に中立的な情報を発信しています。記事は資産運用アドバイザーと投資家を結ぶプラットフォーム「資産運用ナビ」を運営するアドバイザーナビ株式会社が監修。おすすめの資産運用やおすすめのIFAなど、読者が自身に最適な資産運用の相談先を見つけることができるよう、適切な情報発信に努めている。