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景気後退局面におけるFRBの金融政策のシナリオ

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年初から続く下落相場によって米国株投資家には厳しい相場展開が続いている。実際、5月20日にはS&P500が年初の高値から−20%下落したことで、米国株式市場は弱気相場入りのサインであるベアマーケットに突入している。そしてベアマーケット入りするとリセッション(景気後退)のリスクが大きくなる。

特に現在の株価はリセッションをどれだけ織り込んでいるのか、投資家や市場関係者も探っているところであり、マーケットがいつ底打ちするかは現段階では分からない。また景気後退が正式に宣言されるのは、実際のリセッションの時期から半年~2年後と時間差がある。

そこで今回は米国経済が景気後退した場合のFRBの金融政策のシナリオをあらかじめ想定して、今後の投資戦略の検討材料にして頂けたらと思う。

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景気後退局面におけるFRBの示す方向は何か

景気後退局面におけるFRBの示す方向は何か わたしのIFAコラム

現在の米国経済は深刻なインフレを抑制するためにFRBが「利上げ」をしているが、景気後退局面では「利下げ」が積極的に行われている。なぜならFRBの景気後退局面での役割とは金融緩和政策として「利下げ」を実行することでGDPを押し上げるように働きかけることだからだ。

実際、2001年に起こった米国の景気後退局面においてFRBは11回もの利下げを実施している。

そもそもなぜ利下げをする必要があるのかというと、弱気になっている株式市場へのテコ入れとして金融機関が融資を決断しやすい環境を整えるためだ。その他にも国債の買い支えによって金融市場を正常に保つ動きも度々起こりますが、FRBは低金利と量的緩和という両方の政策によって失業率を抑える役割を常に求められている。

もちろん政策を実施しても失業率が高いままの場合もありますが、むしろFRBが介入しなければもっと失業率が高くなっていても不思議ではありません。FRBは米国経済に対して大きな決定権を持ち、世界経済にも影響を与えるため、各国の中央銀行もその動向を注視している。

量的緩和策の種類

量的緩和策の種類 わたしのIFAコラム

金融理論としての量的緩和策は以前から知られているが、実際に米国で実行されたのは2008年が初めてだった。当時はサブプライム・ローン問題に起因した金融危機へ対応するために実施されたが、この量的緩和政策には下記の通り2種類の役割がある。

  1. FRBが積極的に市場にお金を貸し出す
  2. FRBが長期の証券を購入する

まず①のケースですが、あくまでも短期的なカンフル剤の役割が期待される。直近では2020年3月に新型コロナによる世界的な金融危機が発生した後、FRBは大量のお金を刷って市場に流通させることで金融機関を支えた。

次に②のケースですが、FRBが米国債や不動産担保証券を大量に購入することで資金を供給し、金融市場を安定させる方法だ。しかし②のような方法が長期的にどのような影響を及ぼすのか、またFRBが買い支えることをやめたときの株価への影響は実例が少ないため、まだハッキリとした答えが分からないのが現状だ。

金融政策の効かない局面

金融政策の効かない局面 わたしのIFA

FRBの金融政策にも効果が期待できない局面がいくつかある。その典型的な例が自然失業率だ。FRBがどんな政策をしても景気動向やインフレに左右されない自然失業率に対しては金融政策は効き目がない。

なぜなら自然失業率に影響を与えるのは企業の採用意欲と就職希望者との需要と供給の関係だからだ。つまり好景気の場合で潜在的GDPがほぼ100%発揮されているような状況では、失業率と自然失業率の差がほぼなくなるということだ。

こうした状況では金融政策に効果はない。

もうひとつ金融政策に効果がない局面がある。それはデフレが発生している場合だ。

デフレとは物価がどんどん下がり続け経済全体が縮小していく現象を指すが、日本の場合、バブルの崩壊以後の90年代から長期的なデフレが続いている。通常であれば物価が次第に上昇していくことでお金の価値が下がるが、デフレの場合は物価のみが下がるのでお金の価値が上がっていく。こうした状況が続くと金利の問題が発生する。

例えば金利には物価の影響を考慮しない「名目金利」と名目金利からインフレ率を引いた「実質金利」がある。仮に名目金利が6%、インフレ率が2%だったとする。この場合、インフレでお金の価値が下がるので実質金利は4%となるが、問題はデフレの場合だ。

仮に名目金利が6%、インフレ率が−2%だったとする。この場合、実質金利が8%となり、名目金利よりも高い金利となってしまう。つまりお金を借りている人は予期しないデフレによって、見かけの金利よりも高い金利を払わなければならない。

こうした状況になると金利負担に耐えることができなくなり、返済不能になる人が増加する。返済が出来なくなれば貸し手である銀行が損失を受けるので、銀行は新規での貸し出しに慎重になる。そうなると市中に出回るお金の総量が減少するため景気後退へとつながるのだ。

そして景気後退によるデフレが最もFRBの金融政策を悩ますことになる。なぜならFRBは景気後退局面において名目金利を下げてお金の流れを良くするように働きかける。やがて名目金利が0%になったとしてもデフレによってインフレ率がマイナスであれば、実質金利はそこまでしか下がらずFRBの金融政策にも効果がなくなる局面がやってくるからだ。

このようにデフレには悪循環のスパイラルに陥ることが起こり得るのだ。

とはいえ1998年以降の日本経済のように、−1%のデフレの状況が続いても+1%程度の緩やかな経済成長が続いた事例もあるため、必ずしも「デフレ=大恐慌」になるわけではない。

またこうした事態を極力避けるためにFRBは毎年2%程度のインフレを目標としており、日々デフレが発生しないように注意を払っている。

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FRBの金融引き締め策と円安

FRBの金融引き締め策と円安 わたしのIFAコラム

現在、円相場は24年ぶりといわれる円安の状況が続いていますが、なぜ円安が止まらないかというと、そこには日本と米国の中央銀行の金融政策が異なっていることが大きな要因だ。

米国は記録的なインフレを抑えるために金融引き締め策をしているのに対して、日本は金融緩和策をしている。この日米の長短金利差によってドル高円安の流れが加速しているのだ。

通常、金融引き締め策と金融緩和策を実施している国がそれぞれあった場合、資金は金融引き締め策をしている方に引っ張られていく。また日本は新型コロナ前のGDPの水準まで株価が戻っていないことから、日銀は当面の間、金融緩和策を継続する方針を示している。なぜなら日本で現段階で金融引き締め策をするとさらなる経済的混乱が発生するリスクが伴うからだ。

こうした状況が重なり、現在のような「ドル高円安」の流れが生まれている。

では円安がいつ止まるのか?といえば、明確にはわからない。とはいえ円安の流れが止まるとすればFRBが「利下げ」を始めたタイミングであることはハッキリしている。なぜならFRBが「利下げ」をするということは、米国のインフレ問題に改善の兆しが見られた時だからだ。

また今年の秋にはバイデン大統領の中間選挙を控えていることもあり、FRBとしては秋までにインフレの抑制を成功させようと強い姿勢で今後も利上げが進んでいくはずだ。

つまり円安が改善される展開があるとすれば、インフレ問題の改善の兆しがあった秋以降になると考えられる。また米国のインフレ問題に見通しがつけば、当然、マーケットにも資金が集まり米国マーケットの株価も上昇してくるはずだ。

投資家としては、もうしばらく忍耐する時期が続くことが予想される。今回は景気後退局面におけるFRBの金融政策のシナリオについて考察した。

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※本コラムは情報提供を目的としたものであり、個別銘柄の推奨や、金融商品の紹介、周旋を行うものではございません。

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執筆者

法政大学卒業後、野村證券株式会社に入社。リテール部門に配属し、中小・中堅企業、公益財団法人、社会福祉法人などの資産運用・防衛業務に従事。過去役員表彰経験。
2020年にIFA(独立系金融アドバイザー)として独立し、事業法人、事業法人オーナー、バイアウト経験元事業オーナーのお客様を中心とした金融資産運用業務に従事。

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