40代の資産運用|投資額・配分の決め方とNISAの始め方

「40代から資産運用を始めるのは、もう遅いのでは?」

遅いと一律にはいえません。仮に65歳を一つの区切りにすると、40歳なら25年、45歳でも20年あります。ただし、残り時間だけを見て投資額を決めるのは危険です。

40代は、教育費や住宅修繕、親の介護など、数年以内に使うお金と老後のお金が重なりやすい時期です。近く使う資金まで同じ方法で運用すると、相場が下がったときに必要なお金を取り崩せないおそれがあります。

最初にやることは、「増えそうな商品」を探すことではありません。手元のお金を使う時期で分け、投資から外す金額を先に決めることです。

40代の資産運用で先に決めること
  • 生活を守るお金と、近く使うお金を投資から外す
  • 家計から無理なく続けられる積立額を出す
  • 許容できる損失を円単位で決める
  • 目的に合う口座と商品を選ぶ

商品を選ぶのは最後です。

以下は、2026年7月24日時点の制度と統計に基づきます。iDeCoの掛金上限のように改正が決まっている項目もあるため、実行する時点の公式情報でも確認してください。

目次

40代の資産運用は「もう遅いか」より、お金を使う時期で4つに分ける

同じ45歳でも、10年後まで使わない500万円と、2年後の大学進学に必要な500万円では、取れるリスクが違います。まずは、手元のお金を使う時期で四つに分けましょう。

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お金の役割使う時期の目安主な置き場所の候補判断の要点
生活を守るお金急な失業・休業・修理など、時期を予測できない普通預金など、すぐ引き出せるもの値下がりする商品へ回さない
近く使うお金おおむね5年以内の教育費、住宅費、車、介護費など預金。時期と換金条件が合えば定期預金や個人向け国債も候補必要な直前に相場次第で売らない
境界にあるお金5〜10年先。使う年を動かせるかどうかで分ける時期を動かせない分は預金などを中心にし、動かせる分だけ運用を検討「まだ先」と考えて全額を値動きの大きい商品へ回さない
長く育てるお金おおむね10年以上先で、使う時期を調整できる低コストで広く分散された投資信託など一つの国・業種・銘柄へ集中しない
使う時期で分ける四つのお金
最初の線引き

値下がりからの回復を待てないお金は、投資へ回さない。

たとえば、7年後の大学進学に必要なお金は、「10年近く先だから」と長期運用へ混ぜません。使う年を動かしにくい分は預金などで先に確保し、進学先などで変わる余地がある分は金額に幅を持たせます。

補足:預金・個人向け国債の細かな条件

個人向け国債は、発行後1年を過ぎれば原則として中途換金できますが、直前2回分の各利子(税引前)相当額に0.79685を掛けた金額が差し引かれます。

預金保険制度の対象となる利息付き普通預金や定期預金などは、金融機関が破綻した場合、1金融機関につき預金者1人当たり元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されます。外貨預金など、制度の対象外となる商品もあります。安全性だけでなく、「いつ、いくら必要か」「いつ換金できるか」まで確認してください。

40代の金融資産の平均・中央値は、目標ではなく現在地の確認に使う

使う時期で分けたあとに残るのは、「その金額で足りているのか」という問いです。同年代の分布は、その答えそのものにはなりません。ただし、自分の位置を粗く測る材料にはなります。

J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」によると、40代の金融資産保有額は次のとおりです。金融資産を保有していない世帯も含む数値を使っています。

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世帯区分標本数平均値中央値金融資産非保有の割合
二人以上世帯
(世帯主が40代)
1,052世帯1,486万円500万円18.8%
単身世帯
(40代)
324世帯859万円100万円32.1%
40代の金融資産保有額(金融資産非保有世帯を含む)

平均値は、一部の資産額が大きい世帯に引き上げられます。実際、二人以上世帯では平均1,486万円に対して中央値は500万円、単身世帯では平均859万円に対して中央値は100万円です。中央値は金額順に並べた真ん中の値なので、おおよそ半数はこれを下回ります。

このデータを見るときのポイント

この調査の「金融資産」は、将来に備えて蓄えている預貯金、保険、有価証券などです。日常の支払い用預金や現金、住宅などの実物資産は含まず、借入額も差し引いていません。

調査は2025年6月20日〜7月2日のインターネットモニター調査で、全体の対象は二人以上世帯5,000世帯、単身世帯2,500世帯です。表には、そのうち40代の集計を載せています。

中央値に届かなくても、この数字だけで「不足」とは判断できません。将来受け取る公的年金の見込額や未受領の退職金は反映されず、住宅ローンなどの負債や今後の支出を差し引いた額でもないためです。個人年金保険など、すでに金融資産として計上されているものは重ねて足さないようにします。

つまり、平均や中央値は現在地を測る物差しであって、目標額ではありません。実際に比べるべきなのは、自分の「今後の支出」「将来の年金見込み」「手元資産」「借入」の組み合わせです。

40代が投資に回せる金額を、生活防衛資金と予定支出から4段階で計算する

計算といっても、手元のお金から守るお金と近く使うお金を順に引くだけです。ただし、まとまった預金から出せる上限と、毎月の家計から続けられる上限は別々に求めます。この二つは連動しません。預金には余裕があるのに毎月は積み立てられない家計も、その逆もあります。

1.教育費や住宅修繕など、10年程度までの予定支出を書き出す

教育費、住宅修繕、車の買い替え、転居、介護、独立資金などを、必要になる年と金額で並べます。5〜10年先でも、使う時期を動かせない分は長期運用から外します。金額が未確定なら、少なめに置かず、幅を持たせて仮置きします。

2.生活防衛資金を、1か月の最低生活費と必要月数から決める

生活防衛資金は、まず次の式で仮置きします。

生活防衛資金の計算式

生活防衛資金 = 1か月の最低生活費 × 確保する月数

最低生活費には、住居費、水道光熱費、基礎的な食費・医療費・交通費、保険料、税・社会保険料、借入の最低返済額など、収入が減っても止めにくい支出を入れます。娯楽費、投資・貯蓄、別に確保する予定支出は含めません。

必要な月数は、次の順で決めます。

  1. 失業・休業後も続く世帯収入や、受給条件を確認できた給付を見積もる
  2. 雇用形態や業種をもとに、再就職や売上回復までの期間を見積もる
  3. 扶養家族、医療、住まいの修理などで支出が増える余地を上乗せする

収入や給付の金額・開始時期が不確かな場合は、最初から当てにしません。給与の安定性、共働きかどうか、扶養家族、傷病時の保障、自営業収入の変動によって必要額は変わります。予定支出と生活防衛資金に、同じ預金を二重に数えないようにしましょう。

3.預貯金から差し引き、長期運用へ回せる上限額を出す

投資に回してよい「上限額」の引き算シート

手元のすぐ換金できる預貯金等:[   万円]

− 生活防衛資金:[   万円]

− 10年程度以内で、使う時期を動かしにくい予定支出:[   万円]

− この預貯金から借入返済に回すと決めた額:[   万円]


= 新たに長期運用へ回せる上限:[   万円]

ここで使うのは、新たな配分を決められる預貯金などです。既存の投資信託や株式は「すでに運用している資産」、iDeCoや企業年金は「原則として今は引き出せない年金資産」として分けて記録します。保険を解約したときに受け取れるお金(解約返戻金)は、解約に伴う保障の消失や税、受取条件を確認するまで、自由に使える預金と同じ扱いにしません。

式で残った金額は、投資額の「上限」です。株式などへ投じる金額は、さらに損失への耐性を確かめてから決めます。

計算結果が0円以下でも、計算に失敗したわけではありません。「今あるお金は投資へ回さない」という判断ができた状態です。とくに金利の高い借入がある場合は、投資の不確実な利益を期待する前に、返済条件と繰り上げ返済の効果を確認します。住宅ローンは、金利、住宅ローン控除、手元資金、団体信用生命保険(契約者に万一のことがあった場合などにローン残高を保障する保険)も関係するため、単純に「投資より返済」とは決められません。

4.手取りと固定費から、毎月の積立可能額を出す

単月の余りではなく、直近12か月の平均で考えると、税金や帰省、家電の買い替えといった不定期支出を見落としにくくなります。

毎月続けられる金額の引き算シート

直近12か月の通常月の平均手取り:[   万円]

− 毎月の生活費:[   万円]

− 年払い・臨時支出の月割額:[   万円]

− 近い支出の積立額:[   万円]

− 生活防衛資金の補充額・借入返済額・家計の予備費:[   万円]


= 毎月の積立可能額:[   万円]

同じ支出を二つの項目へ入れないことも大切です。たとえば、住宅ローン返済を毎月の生活費に含めたなら、借入返済額で再び引きません。ボーナスや臨時収入は継続するとは限らないため、通常月の平均手取りから外し、受け取った後に使い道を判断します。

42歳・預貯金800万円のモデルケースで計算する

同じ800万円でも、生活防衛資金と教育費を引いたあとに残る金額は家計ごとに変わります。まず、比較的余裕がある例で引き算を通してみます。

42歳のモデルケース(架空)

すぐ換金できる預貯金等が800万円、最低生活費35万円、生活防衛資金を6か月分、7年後の教育費を150万円と仮定します。この例では、世帯収入の安定性と利用できる保障を確認したうえで、収入回復までの期間を6か月と置いています。最低生活費35万円は娯楽費などを抑えた金額、通常の生活費47万円は現在の暮らしを続けた場合の金額です。

① まとまった預金から出せる上限

  • 手元の預貯金等:800万円
  • − 生活防衛資金:35万円 × 6か月 = 210万円
  • − 7年後の教育費:150万円
  • = 長期運用へ回せる上限:440万円

② 毎月の家計から続けられる上限

  • 平均手取り:65万円
  • − 毎月の生活費:47万円
  • − 年間の臨時支出:60万円 ÷ 12か月 = 5万円
  • − 予定支出の積立:7万円
  • − 家計の予備費:3万円
  • = 毎月の積立可能額:3万円

440万円は長期運用へ回せる上限であり、全額を値動きのある資産へ投じる金額ではありません。実際のリスク資産額は、後ほど行う下落テストで絞ります。

条件を変えると、結果は大きく動きます。すぐ換金できる預貯金等が同じ800万円でも、収入が不安定で、生活防衛資金480万円と近い予定支出250万円が必要なら、残るのは70万円です。毎月の家計にも余裕がなければ、定期積立を急がず、予定支出が終わった後に再計算する選択もあります。

40代の積立額は毎月いくら?家計の上限と、目標から逆算する必要額を分ける

「毎月いくらなら十分か」は、現在資産、将来の支出、公的年金、退職金、働く期間によって変わります。同じ月額でも、始める年齢と想定する年率で到達額は変わります。

次の表は、40歳・45歳・49歳から65歳まで、毎月1万円、3万円、5万円を積み立てた比較用シミュレーションです。

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開始年齢期間毎月の積立額年率0%年率3%年率5%
40歳25年1万円約300万円約443万円約586万円
40歳25年3万円約900万円約1,330万円約1,757万円
40歳25年5万円約1,500万円約2,217万円約2,929万円
45歳20年1万円約240万円約327万円約406万円
45歳20年3万円約720万円約981万円約1,217万円
45歳20年5万円約1,200万円約1,634万円約2,029万円
49歳16年1万円約192万円約245万円約290万円
49歳16年3万円約576万円約736万円約871万円
49歳16年5万円約960万円約1,226万円約1,452万円
65歳までの積立シミュレーション(比較用・税費用控除前)

年率0%の列は、毎月の積立額を足した払込総額です。年率3%・5%との差は運用による増加分ですが、その差が約束されているわけではありません。

計算条件を確認する
  • 元本0円から始め、毎月末に一定額を積み立てる
  • 年率は期間中ずっと一定とし、月利は「(1+年率)の12分の1乗−1」で求める
  • 税金、購入・保有・売却時の費用、物価上昇は反映しない
  • 積立の休止・増減、途中の値下がりは反映しない
  • 結果は1万円未満を四捨五入した名目額とする

年率3%・5%は結果を比べるための仮定で、予測や保証ではありません。65歳も、全員の退職年齢ではなく、比較するために置いた区切りです。

使う直前に30%下落したら、20年積み立てても元本割れするか

45歳から毎月3万円を20年間、年率3%で積み立てた試算は約981万円でした。ところが、使い始める直前に残高全体が同じ割合で30%下がれば約687万円となり、払込総額720万円を下回ります。

長く運用しても、必要な時点の相場によって元本割れは起こり得ます。そこで、使う時期が近づいた分から、預金や、換金条件を確認した個人向け国債などへ少しずつ移す「出口の準備」も考えます。

必要積立額は、年金見込額と退職金を引いた不足額から逆算する

家計から出せる「積立可能額」は、続けられる金額です。目標達成に「必要な積立額」は、必要性から逆算した金額です。二つは一致するとは限りません。

必要額は、次の順に整理すると混乱しにくくなります。

  1. 「ねんきんネット」で年金見込額を試算し、退職金、企業年金、老後用の既存資産を確認する
  2. 退職後の年ごとに支出と税引後収入を並べ、何年分を準備するか決める
  3. 目標時点の必要額から、同じ時点へ換算した既存資産を引き、不足額を出す

ここで間違えやすいのが、年金の扱いです。年金は毎月受け取る収入であり、65歳時点に一括で持つ資産ではありません。そのため、65歳時点の目標額から年金額をそのまま引くことはできません。また、将来必要になる金額(名目額)と、現在の購買力に置き直した金額を混ぜると、不足額を大きく誤ります。

単純な例として、「65歳時点で1,000万円を準備する」と金額と時点を固定します。45歳から65歳までの20年間で、現在の老後用資産を0円とした場合、毎月の必要額は年率0%で約4.17万円、年率3%で約3.06万円、年率5%で約2.46万円です。いずれも税・費用・物価上昇を考慮しない比較用の仮定です。

計算根拠:必要積立額の数式

月利とは、年率を1か月分に換算した率です。毎月末に同額を積み立てる場合、必要積立額は次の式で試算します。

必要積立額 = 目標不足額 × 月利 ÷ {(1+月利)の積立月数乗−1}

年率0%なら「目標不足額 ÷ 積立月数」です。実際の計算では、積立時期、税、費用、物価上昇の設定をそろえる必要があります。

積立可能額が3万円なのに、年率0%の必要額が4.17万円なら、「5%で運用すれば足りる」と決めるのは危険です。目標額、積立額、使う時期、働く期間、支出のうち、無理なく調整できるものを見直します。

なお、50歳未満の「ねんきん定期便」に記載される年金額は、それまでの加入実績に基づく金額です。今後も加入を続けた場合の最終的な見込額ではありません。40代のうちは、この点を取り違えると不足額を過大に見積もります。「ねんきんネット」で今後の働き方や受給開始年齢を設定して試算してください。

40代の資産配分(ポートフォリオ)は、年齢ではなく耐えられる損失額から決める

運用資産が30%下がったときの損失は、生活費に手を付けず、慌てて売らずに受け止められる金額でしょうか。割合だけでは判断しにくいため、先に損失を円額へ直します。

資産配分(ポートフォリオ)のうち、株式など値動きの大きい資産の割合は、年齢だけでは決まりません。値下がりしても生活資金を取り崩さず、保有を続けられる金額から逆算します。

耐えられる損失額から、リスク資産の上限額を逆算する

損失額から配分を考える式

想定される損失額 = リスク資産額 × 想定下落率

想定下落率ごとのリスク資産額の目安 = 耐えられる損失額 ÷ 想定下落率

「耐えられる損失額」は、損失が出ても家計や目標を変えずに済む金額と、不安で売ってしまわずに保有できる金額を別々に考え、小さいほうを使います。

たとえば、下落時に受け入れられる損失が90万円で、リスク資産が30%下落する場面を試すなら、目安は「90万円 ÷ 30% = 300万円」です。ただし、これは30%下落を仮定した場合だけの答えです。同じ300万円でも50%下落なら損失は150万円になるため、実際の上限を保証しません。

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リスク資産額20%下落時
損失/残高
30%下落時
損失/残高
50%下落時
損失/残高
100万円20万円/80万円30万円/70万円50万円/50万円
300万円60万円/240万円90万円/210万円150万円/150万円
500万円100万円/400万円150万円/350万円250万円/250万円
1,000万円200万円/800万円300万円/700万円500万円/500万円
リスク資産が20%・30%・50%下落した場合の損失と残高

20%・30%・50%はストレステストの例で、最大損失ではありません。集中投資やレバレッジ商品では、さらに大きな損失もあり得ます。また、20%下落した資産が元の金額に戻るには25%、30%下落後なら約42.9%、50%下落後なら100%の上昇が必要です。下がった率と、戻るのに必要な率は一致しません。

リスク資産の比率を変えると、長期運用枠全体の下落率はどう動くか

配分を考えるときは、次の簡易テストも使えます。預金など値動きがないと仮定した部分と、株式などのリスク資産だけで組む単純な例です。計算の分母は、生活防衛資金と予定支出を除いた「長期運用へ回す枠」です。

30%下落を長期運用枠全体へ換算する
  • リスク資産0%・値動きの小さい資産100%:全体の下落率0%
  • リスク資産30%・値動きの小さい資産70%:全体の下落率約9%
  • リスク資産60%・値動きの小さい資産40%:全体の下落率約18%
  • リスク資産90%・値動きの小さい資産10%:全体の下落率約27%

これは40代向けの推奨配分ではなく、無理な候補を除くためのテストです。約18%の下落で積立を止めたり売ったりしそうなら、リスク資産60%は高すぎます。反対に、生活防衛資金と予定支出を確保し、そのお金を使うまで十分な年数があり、下落を受け入れられるなら、リスク資産の割合を検討できます。

架空例を配分までつなげる

先ほどの架空例で、30%下落時の損失90万円を一つの基準にするなら、440万円のうち300万円をリスク資産、残る140万円を預金や換金条件を確認した個人向け国債などへ置く案を試せます。

毎月3万円も同じ比率に近づけるなら、たとえば2万円をリスク資産、1万円を値動きの小さい資産へ回します。これは推奨配分ではなく、計算を最後までつなげる架空例です。50%下落時や、使う時期が早まった場合にも耐えられるかを確認してから決めます。

企業型確定拠出年金や自社株まで含めて、資産全体の偏りを確かめる

ここまでの配分は、新しく買う商品だけを見ても決まりません。すでに企業型確定拠出年金、勤務先の株式、不動産などを持っている人は、資産全体で偏りを確認してください。

たとえば、企業型確定拠出年金の中身が元本確保型のままなら、資産全体の株式比率は思ったより低くなります。反対に、そこで株式型を選んでいるなら、新しく買う分と合わせた比率で見る必要があります。勤務先の株式へ偏る場合はさらに注意が必要で、収入と資産が同じ会社の業績に左右されます。

40代のNISA・iDeCo・課税口座は、引き出す時期と目的で使い分ける

投資へ回す金額と配分を決めてから、口座を選びます。税制優遇があっても、家計から出せる金額が増えたり、値下がりが小さくなったりするわけではありません。

NISAとiDeCoは、商品名ではなく税制優遇のある口座です。口座を開くだけでは分散投資になりません。中で何を買うかまで分けて考えます。

迷ったときの口座選び
  1. 勤務先の企業年金・企業型確定拠出年金・マッチング拠出の有無を確認する
  2. 途中で使う可能性がある長期資金は、売却できるNISAを候補にする
  3. 老後まで引き出せず、所得控除も活かせる金額は、iDeCoの併用を候補にする
  4. 非課税枠を超える分は、課税口座を検討する
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口座主な強み注意点合いやすい目的
NISA対象商品の売却益・配当等が非課税。保有期間は無期限で、売却も可能拠出時の所得控除はない。値下がりはあり、損失は損益通算(別口座の利益との相殺)も繰越控除(損失を翌年以降へ繰り越して控除)もできない老後を含む長期資金。必要時期が変わる可能性がある資金
iDeCo掛金が全額所得控除、運用益も非課税。受取時は控除の対象になり得る原則として受給可能年齢まで引き出せない。手数料がかかり、受取時に常に非課税とは限らない老後まで使わないと決められる資金
課税口座対象商品が広く、売却・引き出しの自由度が高い上場株式等の譲渡益・配当等には、一般に20.315%の税率がかかる非課税枠を超える運用や、非課税口座の対象外商品
NISA・iDeCo・課税口座の主な違い

表の「掛金が全額所得控除」は、掛金と同額の税金が戻るという意味ではありません。実際の負担軽減額は課税所得と税率で変わり、所得税・住民税の負担がない人は、掛金控除による負担軽減効果を得られません。

NISAの年間投資枠360万円・非課税保有限度額1,800万円をどう使うか

現行NISAは、年間投資枠がつみたて投資枠120万円と成長投資枠240万円の合計360万円、非課税保有限度額が取得価額(買った金額)ベースで1,800万円です。このうち成長投資枠は1,200万円までです。売却した商品の取得価額分は翌年以降に総枠を再利用できますが、その年の年間360万円の枠へ上乗せされるわけではありません。

上場株式、ETF、REITの配当等をNISAで非課税にするには、原則として証券会社を通じて受け取る「株式数比例配分方式」が必要です。投資信託の分配金とは扱いが異なります。

NISA枠を埋めること自体は目的ではありません。毎月の積立可能額が3万円なら、年間36万円の範囲で始められます。目標達成に足りるかは、必要積立額と別に照合します。生活防衛資金まで投じて360万円を使い切る必要はありません。

iDeCoの掛金上限と、2026年12月からの月6.2万円への拡大予定

iDeCoの掛金は月5,000円から1,000円単位です。企業年金もiDeCo+もない会社員の上限は、2026年7月24日時点では月2.3万円です。2026年12月1日から月6.2万円へ拡大予定ですが、右列は現在使える枠ではありません。自分に当てはまる行だけを確認してください。

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働き方・加入状況2026年7月24日時点の月額上限2026年12月1日以降の予定
自営業者等、国民年金へ任意加入する一定の人国民年金基金等と合計6.8万円国民年金基金等と合計7.5万円
企業年金のない会社員2.3万円6.2万円
企業年金のある会社員・公務員等原則最大2万円。勤務先の掛金等により下がる企業年金等と合計6.2万円
会社員等に扶養される配偶者2.3万円2.3万円
iDeCoの月額上限(現行制度と2026年12月1日以降の予定)

企業年金のない会社員でも、勤務先が「iDeCo+」を導入している場合は注意が必要です。iDeCo+とは、中小企業の事業主が従業員のiDeCo掛金へ上乗せする制度です。現行は本人掛金と事業主掛金の合計が月2.3万円以内、2026年12月1日以降は合計月6.2万円以内となる予定です。

補足:iDeCoの手数料と受取時の税

国民年金基金連合会へ支払う手数料は、新規加入・移換時2,829円、掛金納付の都度105円です。信託銀行の管理手数料は別途かかり、運営管理機関の手数料と商品の運用費用は選択先によって異なります。

掛金納付時の手数料は、2027年1月の引き落としから月120円へ改定予定です。受取時の公的年金等控除・退職所得控除は、受取方法や他の年金・退職金との関係で変わります。

2026年12月1日以降の金額は施行予定であり、2026年7月24日時点の上限ではありません。加入時には、勤務先の制度と最新の公式情報を再確認してください。

もう一つ、勤務先の制度で結論が変わる分岐があります。企業型確定拠出年金で、本人も掛金を上乗せする「マッチング拠出」を選択している人は、iDeCoへ同時加入できません。勤務先がマッチング拠出を用意している場合は、現在利用しているかを確認し、マッチング拠出とiDeCoのどちらを使うか、掛金上限、商品、手数料、変更手続を比べて選びます。

最初に選ぶ投資信託は、低コスト・広い分散・自分で説明できるかで絞る

NISAやiDeCoの口座を開いても、商品の費用や投資先の偏りは変わりません。非課税になるのは利益であり、費用はその利益より前に差し引かれます。

長く育てるお金の中核には、一つの商品で多くの国・業種・銘柄へ分散できる、低コストの投資信託が候補になります。自分で株式と値動きの小さい資産の比率を管理したくない人は、複数資産を組み合わせたバランス型投資信託も選択肢です。

商品名だけでは、投資先も費用も分かりません。少なくとも次を確認します。

  • 何に、どの国・通貨へ投資しているか
  • 一つの業種や銘柄へ偏っていないか
  • 購入時、保有中、売却時にどの費用がかかるか
  • 分配金を出すために元本を取り崩す場合がないか
  • どの程度の値下がりがあり得るか
  • 自分の言葉で仕組みを説明できるか

「低コスト」は、同じ資産へ投資する候補同士で、購入時手数料、信託報酬などの保有中費用、売却・解約時の費用を比べて判断します。商品の説明書である交付目論見書の「投資目的・特色」「投資リスク」「運用実績」「手続・手数料等」を確認し、過去の成績だけで選ばないようにします。

老後資金の中核に置かないもの
  • 自分で仕組みを説明できない高コスト商品
  • レバレッジを使う商品
  • 特定テーマだけの商品
  • 勤務先株への集中

暗号資産やFXなど値動きが大きい取引も、生活防衛資金や必要時期の決まったお金には向きません。

商品数を増やせば分散になるとは限りません。似た指数に連動する投資信託を複数持っても、中身は重複します。最初は、決めた資産配分を実現できる少数の商品から始めるほうが管理しやすくなります。

年金見込額の確認から自動積立の設定まで、40代が始める6つの手順

ここまでの計算は、口座を開いて積立を設定するまで残高に反映されません。次の六つを順に完了させます。

STEP
年金見込額・退職金・企業年金を確認する

「ねんきんネット」で将来の年金見込額を試算し、勤務先の退職金、企業年金、企業型確定拠出年金も確認します。50歳未満のねんきん定期便は、今後の加入分を含む最終見込額ではありません。分からない項目はゼロと決めつけず、勤務先や制度の窓口で確認します。

STEP
資産・借入・10年程度までの支出を一枚にまとめる

預金、投資、保険の解約返戻金、住宅ローン、カードローンなどを一覧にします。次に、教育費や住宅修繕などを、使う年ごとに書き出します。

STEP
長期運用へ回せる金額と毎月の積立可能額を計算する

生活防衛資金と予定支出を先に除きます。計算結果が0円なら、投資しないことがこの段階の結論です。

STEP
耐えられる損失を円で決める

「何%下がるか」ではなく、「何万円減っても生活を変えず、売らずにいられるか」を考えます。20%・30%・50%下落の表に当てはめ、複数のストレスケースから配分候補を絞ります。

STEP
口座と中身を別々に選び、自動積立を設定する

ここまで決まったら、次の順に設定します。

  • 引き出し時期から、NISA・iDeCo・課税口座のどれを使うか決める
  • 取扱商品、手数料、入出金方法、問い合わせ方法、セキュリティを比べて金融機関を選ぶ
  • 本人確認書類とマイナンバー確認書類を用意して申し込む
  • 口座開設後、つみたて投資枠の対象商品などから候補を絞る
  • 交付目論見書で、投資対象、リスク、信託報酬、分配方針を確認する
  • 家計から求めた月額、積立日、支払方法を設定し、注文内容と初回買付日を確認する

金融機関ごとに画面や必要書類は異なります。

STEP
年1回と、生活が変わったときに見直す

年1回、資産配分、費用、積立額、予定支出を確認します。転職、休職、独立、結婚・離婚、進学、住宅購入、介護などがあれば、その時点でも見直します。

生活防衛資金を使った、収入が減った、近い予定支出が増えた、高金利の借入が生じた場合は、相場に関係なく積立の減額・停止を検討します。反対に、相場が下がったことだけを理由に積立計画を変更せず、あらかじめ決めた損失額と、そのお金を使う時期から判断します。

40代の資産運用でよくある質問

住宅ローンの繰り上げ返済と投資は、どちらを優先しますか?

ローン金利、残りの返済期間、住宅ローン控除、手元資金、団体信用生命保険、投資で取れるリスクを並べて判断します。繰り上げ返済の利息軽減は確定しますが、返したお金は原則として手元へ戻せません。投資の利益は不確実です。二者択一にせず、生活防衛資金を残したうえで両方へ配分する方法もあります。

まとまった余裕資金は、一括投資と積立のどちらにしますか?

一括投資なら、余裕資金を早く全額投資できます。一方、直後に下がれば、投じた分すべてが値下がりの影響を受けます。分けて投じると買う時期を分散できますが、上昇が続けば、まだ投資していない分は利益を得られません。期待できる利益だけで決めず、50%下落のストレステストを一括額に当て、下落後も計画を続けられる方法を選びます。毎月の収入から投資する分は、定期積立にすると家計管理を続けやすくなります。

40代の資産運用は、どんな場合に専門家へ相談しますか?

自営業で収入変動が大きい、企業年金が複数ある、相続・贈与・不動産・保険が絡む、退職前後の税や社会保険まで含めたい場合は、個別相談が役立つことがあります。相談先を選ぶときは、保有資格だけでなく、報酬を誰から受け取るか、特定商品の販売が前提か、相談範囲、継続費用を確認してください。税務・法律の個別判断は、それぞれの資格を持つ専門家へ確認します。

まとめ:40代の資産運用は「余ったお金」ではなく「役割を分けたお金」で始める

「40代からでは遅いのか」の答えは、残り年数だけでは決まりません。近く使うお金を守り、残りを長期運用へ分けられるかどうかが分かれ目です。年齢だけで急がず、使う時期と家計から順番を決めます。

  1. 生活防衛資金と、10年程度以内で時期を動かしにくい支出を投資から外す
  2. 家計の積立可能額と、目標から逆算した必要積立額を分ける
  3. 複数の下落率で、リスク資産の配分候補を試す
  4. 引き出し時期に合う口座を選び、費用と中身を確認して積み立てる
  5. 年1回と生活が変わったときに見直す

投資へ回せる金額が0円なら、今は投資を見送るのが適切です。金額が小さくても、生活を守るお金を分けたうえで無理なく自動積立を続けられるなら、それが現実的な一歩です。平均額や高い利回りではなく、そのお金を使う時期と家計に合う設計を基準にしてください。

参考文献・出典

この記事を書いた人

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