生命保険や医療保険などを提案する生命保険会社の担当者・代理人にとって、金融商品を扱う証券業界の業務も巻き取りたいと考える人もいるのではないだろうか。
顧客の資産を運用・管理するという意味において、保険と金融商品は性質が似ているため、保険業界からIFAを目指す人が増えている状況だ。
この記事では、保険会社からIFAへの転職を検討している人に向けて、転職者の割合や転職時の課題などを解説している。
転職する際の方法やおすすめの相談先もまとめたので、保険会社の担当者はもちろん、IFAへの転職を視野に入れている人はぜひ参考にしてほしい。
保険会社からIFAに転職している人の割合
そもそもIFAとは「Independent Financial Advisor:独立系ファイナンシャルアドバイザー」の略称で、特定の金融機関に所属せず、顧客である個人投資家と証券会社の橋渡し役として仲介する役割を担う。
IFAとして活動するには、金融商品仲介業者として登録を受けているIFA法人に所属する必要があり、法人が提携する金融機関や証券会社の金融商品であれば、顧客に自由に提案できる。
保険会社や証券会社に所属する場合、取り扱う商品は当然自社の保険・金融商品だ。
一方、IFAであれば顧客が本当に必要な金融商品を提案できるため、ニーズをより満たして高い付加価値を提供できる点にやりがいを感じる人も多いようである。
IFAの概要は上記のとおりだが、アドバイザーナビ株式会社が現役IFA218名に行ったアンケート調査では、前職が保険系であると回答した割合は16%だった。
16%の内訳は、10%が保険代理店、6%が保険会社という結果である。
なお、全体の回答結果は以下のとおりであった。
- 証券会社:69%(大手45%、外資2%、その他22%)
- 銀行系:7%(メガバンク4%、その他3%)
- その他:8%(不動産会社1%、税理士1%、その他6%)
結論として、転職者の6人に1人ほどが保険業界出身であり、比較的多いことがわかる。
回答結果からもわかるように、最も多いのが証券会社で全体の70%を占めており、業務の同質性からも理解できるだろう。
保険業界からIFAに転職した割合は証券会社に次いで多いため、異業種からの転職としては最も一般的であることがわかる。
IFAの年齢層
先述のアンケート調査結果によると、IFAとして活動する人の年齢構成は以下のとおりであった。
- 30歳以下:9%
- 31〜40歳:45%
- 41〜50歳:14%
- 51〜60歳:18%
- 61〜70歳:12%
- 71歳〜:1%
かなり特徴的な結果となったが、IFAとして活動している年齢層のボリュームゾーンは30代で、全体のおよそ半分にのぼるようだ。
前職で10年近い経験を積み、次なるキャリア構築としてIFAを選択した背景が推察できる結果である。
この点、保険業界も同様のニーズ・動機は考えられるだろう。
業界で培った経験の横展開や新しいキャリアを歩む人も含めて、30代で行動に移す人が多いのは納得できる結果だ。
さらに、30代を除くと年齢構成に大きな差はなく、50代のIFAが次に多いというのも特徴的である。
専門的な知識を十分蓄積し、定年後を見据えた働き方の選択肢としてIFAを捉えている人がいてもおかしくないだろう。
IFAの外務員としての活動歴
さらにIFAのバックボーンを見ていくと、アドバイザーナビ株式会社が行った先述とは異なるアンケート調査によると、現在IFAとして活躍する人の外務員歴は以下のとおりであった。
- 3年未満:10%
- 3年以上5年未満:10%
- 5年以上7年未満:10%
- 7年以上10年未満:10%
- 10年以上15年未満:21%
- 15年以上20年未満:13%
- 20年以上:26%
最も多いのが20年以上の26%で、IFAのなかには、証券業界の第一線で長きにわたって働いてきた人が多数派であることがわかる。
前職で証券会社に勤めていた人が約70%という結果からも、外務員歴の長い人が多いのは納得できる結果だ。
一方、外務員歴が10年に満たない人は40%存在する。
もちろん、外務員として活動してきた経験はIFAにおいても役立つ部分が多いと推測されるが、必ずしも外務員経験がIFAとしての成果に直結するものではない。
外務員経験が少ないなかでもIFAとして活躍する人もいるため、現職の経験をどのように活かすか考えることが最も重要である。
IFAと保険業界は相性がよい
保険業界からIFAに転職する人は証券会社の次に多く、転職後も業務にとりかかりやすい側面があると考えている人がいるからこその結果といえるだろう。
実際、保険代理店の場合、扱う商品が保険商品か金融商品かの違いであって、顧客に提供する価値や本質は同じである。
資産運用や管理に対して、どのようなアプローチで携わるかが異なるだけで、保険業界の経験をそのまま活かせるケースが多いのだ。
むしろ、証券会社からIFAに転職するよりも、保険会社からIFAに転職すれば、顧客に対して保険と証券の2つの側面から提案できる。
保険会社で培った経験をIFA業界で横展開すれば、むしろさらなる成長や、年収アップにつながる可能性もあるだろう。
また、どのような人がIFAになっているのか、詳しく知りたい方は下記の記事を参考にして欲しい。
保険会社からIFAになる際の課題は?
保険会社からIFAになる人が一定数いるのは事実だが、注意すべき点がいくつかある。
ここでは、特に押さえておきたい課題を3つの観点で紹介しよう。
- 顧客基盤の構築に苦労しやすい
- 収入が不安定になりやすい
- 信頼獲得に時間がかかることも
これらは保険会社からIFAに転職する場合だけでなく、あらゆる転職者にも該当し得るため、それぞれについて必ず理解しておいてほしい。以下で順番に解説していこう。
顧客基盤の構築に苦労しやすい
保険会社に限らず、どのような業界からIFAに転職したとしてもネックになるのが、顧客基盤の構築である。
IFAの場合、企業と雇用契約または業務委託契約を締結して働くことになるが、後者の業務委託契約の場合、フリーランスとして顧客獲得に向けたアクションをすべて自分で考えなければならない。
保険会社である程度の実績を積んだとしても、当時の顧客をそのまま引き継げるわけではない。
基本的に新規で顧客開拓していく必要があり、ゼロイチを達成するまでは特に苦労するだろう。
逆に、一度でも契約が取れれば感覚を掴めるため、自信を持って提案できるようになり、顧客の数も増やしていけるはずだ。
保険会社からIFAに転職する際は、転職前に顧客になり得る人のピックアップや、集客のための施策・対策を検討しておくとよいだろう。
ある程度の顧客候補があるだけでも、安心して業務に取り組めるはずだ。
収入が不安定になりやすい
顧客基盤の構築に苦労することに関連して、収入が不安定になりやすい点も大きな課題になるだろう。
特に、フリーランス型のIFAを選択した場合は注意が必要で、報酬は完全成果型になるため、契約が取れなければ収入はゼロだ。
言い換えると、次から次へと契約を獲得し、大きな資産額を扱えるようになると、年収1,000万円を超えるのも比較的容易な世界である。
逆に、正社員型のIFAを選べば、転職時の条件交渉次第で年収を維持できる。
この点で言えば、転職前後で年収が下がるリスクは回避できるだろう。
アドバイザーナビ株式会社が行ったアンケート調査では、フリーランス型IFAとして働く人の割合が56%、正社員型が44%という結果であった。
どちらかに偏っているわけではないため、自身のリスク許容度に合わせて働き方は慎重に検討しよう。
信頼獲得に時間がかかることも
そもそも、世間一般にIFAという仕事があまり認知されていないため、顧客との信頼獲得に時間がかかる場合もある点には注意が必要だ。
これはIFA業界全体の課題とも言えるのだが、IFAが国内に普及したのは2004年頃とされており、2023年6月時点のIFAの数は約6,500名である。
業界自体がまだまだ未熟で、IFAの数自体も限られている背景もあり、商談・提案の機会を得たとしても、現職のように企業名で権威性を出せるわけではないのが実情だ。
また、IFAのなかには自己利益を追求するあまり、手数料の高い商品ばかりを提案する事例も出てきており、業界全体のイメージが下がっている側面もある。
コンプライアンスの順守を含めたIFA業界全体の意識改革も必要な状況も相まって、顧客との信頼獲得に時間がかかる場合もあることは覚えておこう。
IFAになるには
IFAを取り巻く外部環境や課題感を踏まえ、ここでは、保険会社からIFAに転職するための方法を4つのステップで解説しよう。
- IFA法人との契約形態を検討する
- IFAに必要な資格を取得する
- 金融に関する幅広い知識をつける
- 転職エージェントを利用する
IFAへの転職を効率よくスムーズに進めたい人は、以下で解説する内容を参考に準備を進めていってほしい。
IFA法人との契約形態を検討する
IFAへの転職を目指すにあたって、まずは契約形態を検討しておくことをおすすめしたい。
IFA法人で働く際は、雇用契約または業務委託契約を締結することになるのは先ほど解説したとおりだ。
全体的な傾向として、業務委託契約の社員を募集するIFA法人が多い一方、雇用契約を結ぶ正社員の募集は比較的少ない印象である。
業務委託契約の場合は企業において社会保険料を負担する必要がないこともあり、採用コストがかからず、積極的に募集しているケースが多いようだ。
雇用契約の場合は固定給の支払いはもちろん、福利厚生にかかる諸費用も負担しなければならない。
このような背景を踏まえて、先に契約形態を決めておくと、転職先の絞り込みがしやすくなるはずだ。
フリーランス型と正社員型の働き方にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、それぞれを客観的に評価してあらかじめ契約形態を検討しておこう。
IFAに必要な資格を取得する
契約形態を検討できたら、IFAに必要な資格を取得しよう。
IFAの場合、顧客に具体的な金融商品を提案するため、証券外務員資格が必須だ。
証券外務員には一種と二種があり、二種の場合は取り扱い可能な金融商品が限られる。
そのため、IFAに転職するなら一種資格の取得を目指そう。
ほかに取得したほうがよい資格は生命保険募集人であるが、保険会社に勤めているのであれば取得していない人のほうが稀だろう。
なお、IFAとして金融商品の提案だけをするのであれば、生命保険募集人資格は必要ない。
金融商品だけでなく、生命保険などを含むトータルな提案を視野に入れている場合には生命保険募集人資格も必須だ。
金融に関する幅広い知識をつける
顧客から信頼を獲得するため、顧客からニーズを引き出して適切な提案をするためには、金融に関する幅広い知識も欠かせないだろう。
顧客にとって、IFAは自分の大切な資産を託すパートナーのような存在である。
人によっては数億円規模の資産を保有しており、信頼に足る人物であることを示すには幅広い知識が当然求められる。
IFAは資産運用・管理にかかわるアドバイザーであるが、時にはより複雑で、込み入った相談を受ける場合もあるだろう。
ときには、不動産の活用や相続・節税対策、事業承継など、資産運用の枠をこえた相談を受ける場合もある。
むしろこのような相談をされた時には厚い信頼関係を構築できている証であるが、状況に応じて適切な解決策を提示するには金融だけでなく、さまざまな領域の知識が欠かせないのだ。
転職エージェントを利用する
IFAへの転職を本気で検討している場合は、転職エージェントを利用しよう。
IFA業界に関する情報はあまり体系的にまとめられておらず、企業から積極的に情報を発信しているわけでもないのが現状だ。
自ら情報を取りに行くにしてもアクセスできる情報源が限られているため、転職活動のプロの力を借りたほうが効率的である。
ただし、IFA業界に強い転職エージェントにも限りがあるため、利用する際には注意が必要だ。
次の章では、IFAへの転職の際に利用したい相談先として、3つのサービスを紹介している。
以下で紹介する内容も踏まえて効率よく転職活動を進めれば、条件を満たすIFA法人と出会える可能性も高まるだろう。
IFAになる際の相談先
最後に、IFAになる際に利用したいおすすめの相談先を3つ紹介しよう。
- 金融転職
- ビズリーチ
- IFA転職
それぞれ特徴が異なるため、できればすべて利用したほうがよいだろう。
もちろん登録・利用は無料で、経済的な負担はないから安心だ。
状況に応じて使い分けることで、より効率的に情報収集しながら転職活動を進められるだろう。
金融転職
「金融転職」は、金融業界への転職に特化した転職エージェントである。
キャリアコンサルタントとのカウンセリングを踏まえた求人情報の紹介はもちろん、企業との面接日程の調整、条件交渉もすべて対応している。
金融業界の求人に特化しているため、IFA法人も多数扱っているのが大きな特徴だ。
ただし、IFA業界に特化しているわけではないため、最後に紹介する「IFA転職」と併用がおすすめである。
これら2つを使えば、より多くの求人にアクセスできるため、理想的なIFA法人に出会える可能性も上がるだろう。
ビズリーチ
「ビズリーチ」は、スカウト制が特徴の総合型転職エージェントである。
登録時に経歴を細かく入力しておけば、プロフィールを見た企業の採用担当者から直接連絡が届くため、思いがけない企業との出会いも期待できるだろう。
一度登録してスカウトを待ちながら、金融転職や「IFA転職」を使って情報収集するのがおすすめな使い方である。
現職で忙しい場合はビズリーチだけでも登録しておき、スカウトのあった企業とやり取りする流れでもよいだろう。
IFA転職
「IFA転職」は、IFA業界の転職に特化した転職エージェントである。
キャリアコンサルタントはIFAを経験しており、カウンセリング中にさまざまな疑問を解消できるのが大きな特徴といえるだろう。
もちろん、おすすめのIFA法人の紹介や面接日程の調整、条件交渉もサポートしているため、転職活動中の手間を省ける点は安心だ。
さらに、「IFA転職」では転職成功後もサポート対象になっているため、業務中の不安や悩みなども相談できるのは助かるだろう。
IFA業界に特化しているため、転職を確実に成功させたい人はIFA転職のキャリアコンサルタントに相談することから始めてみてほしい。
まとめ
保険会社からIFAに転職する人は一定割合存在しており、決して珍しい選択ではない。
むしろ、保険業界で培った知識や経験をIFA業界で横展開できれば、顧客のさまざまな悩み・ニーズに答えられるため、活躍のチャンスも大きいだろう。
保険会社からIFAに転職する際は、顧客基盤をどのように構築するかあらかじめ検討するだけでなく、企業との契約形態も決めておくと、スムーズに転職活動を進められるはずだ。
IFA法人への転職を確実に成功させたいのであれば、転職エージェントを利用して効率よく情報収集しよう。
「IFA転職」なら、転職前後を含む幅広いサポートを受けられる。
IFAを経験しているキャリアコンサルタントに相談できる機会にもなるため、IFAへの転職を検討している人は、「IFA転職」を利用するのがおすすめだ。