- FXと外貨預金の違いがわからない
- 外貨預金とFXのそれぞれの活用法が知りたい
- どちらを選ぶべきか迷っている
FXと外貨預金は、どちらも外貨に投資を行う金融商品だ。
為替の動きによって利益が得られるという点は同じだが、取引の仕組みやリスク・リターンの大きさ、取引コストなどは異なる。
FXと外貨預金のどちらを始めるべきか迷っている方は、両者の違いをしっかりと把握した上で、投資目的や投資経験、投資スタンスなどから自分に適した方を選ぶと良いだろう。
本記事では、FXの仕組みと外貨預金の仕組みの基本的な違いに加えて、活用方法の違いや注意点などを詳しく解説する。
これから外貨投資を始めたいと考えている方や、FXと外貨預金の違いを詳しく知りたいと考えている方は、ぜひ参考にしてほしい。
FXと外貨預金の基本的な違い
FXは「外国為替証拠金取引」とも呼ばれる外貨を利用した資産運用だ。FX会社に証拠金を預けた上で、これを担保として為替取引を行う。
一方、外貨預金は、海外の通貨建てで金融機関に預金を行うことだ。「外貨」でということ以外は、基本的に日本円を預金するのと同じ仕組みとなる。
FXと外貨預金は、似ている部分も多いが、異なるポイントもいくつかある。
まずは、FXと外貨預金の基本的な違いを確認していこう。
FX | 外貨預金 | |
---|---|---|
リスク・リターン | 比較的大きい | 比較的小さい |
取引時間 | 平日ほぼ24時間 | 金融機関によって異なる |
投資期間 | 数秒〜長期まで投資スタイルに応じて異なる | 1ヶ月〜数年程度が一般的 |
取引コスト | 安い(スプレッド) | 高い(為替手数料) |
レバレッジ | 最大25倍 | 不可(1倍) |
金利の受け取り | 毎日 | 毎月/半年ごと/満期時など |
リスク・リターン
まず、FXと外貨預金とでは利益を得る仕組みやリスクの大きさが異なる。
外貨預金では、今後円安になると思ったタイミングで外貨を購入し、実際に円安になったところで外貨を日本円に戻すと、為替差益を受け取れる。
また、外貨預金では、預金としてお金を預けている間は金利が得られる。
一方、FXでは「買い」と「売り」の両方から取引を始められるという特徴がある。
これから円安になると思ったら「米ドル/円」の通貨ペアを「買い」、実際に円安になったタイミングで売却すると利益を受け取れる。
これから円高になると思ったら「米ドル/円」の通貨ペアを「売り」、実際に円高になって価格が下がったところで買い戻すことで利益を受け取れる。
外貨預金では、原則として為替が円安に進む局面で利益を受け取れるが、FXの場合は円安・円高どちらの局面でも利益を狙って取引できる。
もちろん、どちらの場合においても想定と異なる方向に為替が進んだ場合は為替差損が生じてしまう点がリスクとなる。
取引コスト・必要資金
取引を始めるのにかかるコストも、FXと外貨預金とでは異なってくる。
外貨預金の場合、円から外貨に交換する際に「為替手数料」が必要となる。
為替手数料の水準は、金融機関や取引通貨によって異なる。
参考までに、三菱UFJ銀行の為替手数料は下記のとおりだ。
インターネットバンキング(片道) | 窓口(片道) | |
---|---|---|
米ドル | 25銭 | 1円 |
ユーロ | 25銭 | 1円50銭 |
英ポンド | 50銭 | 4円 |
豪ドル | 50銭 | 2円 |
トルコリラ | 80銭 | 2円50銭 |
一方で、日本のFX業者のスプレッド水準は主に下記のとおりだ。
米ドル/円 | 0.2銭程度 |
---|---|
ユーロ/円 | 0.4銭程度 |
ポンド/円 | 0.9銭程度 |
豪ドル/円 | 0.5銭程度 |
FX業者によって多少差はあるものの、上記の水準であるケースがほとんどだ。
仮に、米ドルで10,000米ドル分の外貨預金を行う場合、インターネットバンキングで手続きした際の為替手数料は往復で50銭×10,000=5,000円となる。
また、窓口で取引した場合は、往復で為替手数料のみで20,000円だ。
一方で、FXでの米ドル/円におけるスプレッドが0.2銭だとして、同じく10,000米ドル分の取引を行う場合、スプレッドとして負担するコストは0.2銭×10,000=20円となる。
当然、取引金額が大きくなるほどコスト負担の差も大きくなるため、取引コストを気にする方の場合は、FXの方が適しているかもしれない。
さらに、取引を始めるのに必要な資金額もFXの方が少額で済むケースがある。
外貨預金では、取引しようと思う金額の全額を用意しなければならないが、FXではレバレッジをかけることで、少額の証拠金で大きな金額の取引ができる。
FXのレバレッジは最大25倍となっており、最大で元手資金の25倍の金額の取引が可能となっている。
取引時間
FXの取引時間は、為替市場が空いている平日であれば、ほぼ24時間取引が可能だ。
世界の主要都市で為替市場が開かれているため、日本が祝日であっても海外市場が開いている場合は取引が可能だ。
一方、外貨預金の取引時間は取り扱っている金融機関によって異なる。
ネット銀行などで自分で手続きを行う場合は、24時間いつでも利用できるとしている金融機関が多いが、店舗や電話などの窓口で手続きする場合は、窓口が開いている時間帯に限られるため注意しよう。
また、金融機関によっては取引停止時間が個別に設けられているケースもあるため、あらかじめ確認するのをおすすめする。
FXと外貨預金の活用法の違い
ここまで解説した通り、FXと外貨預金にはいくつか異なる点がある。
これらの違いを踏まえて、どのように活用していけばよいかそれぞれ確認していこう。
FXの活用法
FXは、少額から始められて取引コストを抑えやすいというメリットがある。
レバレッジをかけて取引できるため、少ない元手資金であっても大きな金額での取引が可能だ。
レバレッジの高さは自分で設定できるため、リスク・リターンの大きさも自分で設定しやすいのが特徴だ。
「積極的にリターンを狙いたい」という人は高いレバレッジでリスクを取ることもできるし、「そこまでリスクは取りたくない」という人は低いレバレッジでリスクを下げて取引できる。
自分の許容できるリスクや求めるリターンに合わせて柔軟に取引スタイルを変えやすいという点もメリットと言えるだろう。
また、FXは外貨預金に比べて取引コストが安いため、頻繁に売り買いしたいという人にも活用しやすい。
何度も売り買いしながらコツコツと利益を積み重ねていきたいというスタンスの人に適した投資方法だと言えそうだ。
外貨預金の活用法
外貨預金は、長期的な資産運用の手段として活用するのがおすすめだ。
基本的に数ヶ月〜長期の運用となるのが一般的で、預けてある期間中は安定した金利収入を得られる。
円での預金よりも高い利回りを安定して確保したい人などに適した資産運用方法と言える。
また、将来の為替レート上昇を見越して預金することで為替差益を狙う活用方法も考えられる。
数日など短いスパンでの為替の動向は読みにくくても、数年単位での為替の方向感は予測しやすいと感じる方もいるだろう。
そのような方は、FXで短期的に為替の取引をするよりも、長い目で見た時の為替の動きを予測して外貨預金に預ける方が向いている。
目的に合わせて併用することも可能
FXと外貨預金を資金の目的に合わせて使い分けるのも良いだろう。
数年単位の長いスパンでは円安に進むと予想されるものの、数日〜数週間程度の短いスパンでは円高に振れそうだと予測できる場合、長期資金は外貨預金に預けつつ、短期資金はFXで運用することで、効率よく資産を運用できる。
また、すでに外貨預金を預けている人が、あえてFXで同じ通貨の売りポジションを保有することで、為替リスクのヘッジが可能になる。
大きな利益を狙うよりも、為替リスクをなるべく抑えたいという方は、FXと外貨預金を組み合わせて為替ヘッジを行うのも一つの手だ。
どちらを選ぶべき?FXと外貨預金の違いから考えよう
ここまでFXと外貨預金の違いについて解説したが、自分にとってどちらの方が適しているか判断に迷う人がいるかもしれない。
ここでは、「投資目的」「リスク許容度」「投資経験」という3つの判断基準を使って、どのように選べば良いか解説していく。
投資目的
まずは、投資目的からどちらの方が適しているか考えよう。
短期的にリターンを得たいのであればFXの方が適しているかもしれないし、数年後に使う予定のあるお金であれば外貨預金に預けておくのも良いだろう。
また、主に為替差益を狙うことが目的なのであれば、外貨預金よりもFXの方が適している。
FXの方が取引コストが低く、為替差益を狙って何度も取引しやすいためだ。
逆に、為替差益よりも金利の方を重視する場合や、仕組みのわかりやすさなどを重視する場合は、FXよりも外貨預金の方が良い。
どのような目的で投資を始めるかによって、選ぶべき投資方法が変わってくるため、まずは「何のために」「どのくらいの期間」運用するお金なのかを考えてみよう。
リスク許容度
どの程度リスクを取れるお金で運用するかによっても、選ぶべき投資方法が変わってくる。
FXも外貨預金もどちらも為替の変動によって資産価格が増減する金融商品だ。
外貨預金は手元資金から運用を行うが、FXは手元資金を証拠金として預けて、さらに大きな金額で取引が行える商品でもある。
そのためレバレッジを生かしてリスク度合いを調整しつつ、ニーズに応じてハイリスク・ハイリターンな取引も可能だ。
ただし、FXの場合は大きな為替変動があるとロスカットで損切りされるケースがあり、適切にリスクを管理するためには頻繁に相場の状況をチェックする必要がある。
そのため、なるべくリスクを抑えて投資したい人や、中長期目線で投資をしたい人は、外貨預金の方が適しているだろう。
一方、手元資金よりも大きな金額でハイリスク・ハイリターンな投資をしたいという人や、頻繁に相場を確認しながら短・中期で取引したいという人は、FXの方が適している。
投資経験
投資経験がどれくらいあるかも重要だ。
外貨預金は、一度預けたら基本的に満期までそのまま置いておけば良いため、投資初心者や初めて外貨投資を行う人にも利用しやすい。
一方、FXの場合は、利益を上げられそうな通貨ペアを選んで、レバレッジを活用しつつ大きなリターンを狙って取引する場合が多い。
正確な情報収集能力や、取引機会を逃さずに売買する判断力、相場の下落にも落ち着いて対応できる強い精神力などが求められるため、投資初心者にはハードルが高い可能性もある。
レバレッジを利かせて効率よく取引を行うということは、想定と異なる方向に相場が動いた場合、大きな損失が生じるリスクもあるという点をしっかり抑えておこう。
投資初心者でFXを始める場合は、低いレバレッジから取引を始め、勉強しながら経験を積み重ねていくことが重要だ。
違いを理解したら始めよう!FXと外貨預金を始める際の注意点
FXおよび外貨預金を始める際は、いくつか注意したいポイントがある。
それぞれの注意点について具体的に確認していこう。
FXの注意点
FXでは、レバレッジを利用して元手資金以上の金額での取引が可能だ。
効率よく利益を狙えるというメリットはあるものの、想定と異なる方向に相場が進んだ場合は、手持ち資金以上の損失が出る可能性もある点に注意が必要だ。
急な相場変動によって証拠金以上の損失が発生した場合、追加で証拠金を入金したり、ロスカット(強制決済)がかかったりする可能性もある。
投資スタイルによってはハイリスク・ハイリターンな取引になりやすい点に注意が必要だ。
外貨預金の注意点
外貨預金の注意点としては、ペイオフ(預金保険制度)の対象外となることが挙げられる。
ペイオフとは、預金保険機構が破綻した金融機関に代わって、預金者の元本1,000万円までとその利息分を支払う制度のことだ。
外貨預金はペイオフの対象外となるため、預けている金融機関が破綻した場合、金融機関の残余財産の状況に応じて預金元本が払い戻される。
財産の状況によっては、元本や利息の支払いが遅れたり、元本が毀損したりするリスクもある点に注意しよう。
一方、FXの場合は金融商品取引法の規定によって分別保管が義務付けられているため、万が一FX会社が破綻したとしても、投資家の資金は信託銀行によって上限なく保全される。
税制面で注意すべきポイント
FXと外貨預金は、税金のかかり方が変わってくる点にも注意が必要だ。
外貨預金の税金は、利子に対してと為替差益に対してそれぞれ税率が異なる。
- 利子の税率
- 20.315%(源泉分離課税)
- 為替差益の税率
- 最大55.945%(総合課税)
為替差益の税率については雑所得として総合課税の対象となり、その他の所得と合算して計算する。
税率は人によって異なるが、最大55.945%の税率で確定申告が必要となる。
一方、FXによって得られる利益については、為替差益もスワップ収益も申告分離課税となり、「先物取引に係る雑所得等」として他の所得と区別して計算される。
税率は一律20.315%で、同じ先物取引に係る雑所得等に当てはまる所得との損益通算は可能だが、それ以外の所得との損益通算はできない。
FXと外貨預金の違いを知って上手に活用しよう
FXは、元手資金となる証拠金をFX会社に預けて、為替の動きを読みながら為替差益を狙う取引だ。
レバレッジをかけることで元手資金以上の金額での取引が可能となるため、効率よくリターンを狙えるというメリットがある。
一方、外貨預金は異なる国の通貨建てで預金を行うことだ。日本円での預金に比べて高い利回りが狙えたり、満期時の為替レートによっては為替差益が期待できたりといったメリットがある。
本記事では、FXと外貨預金との基本的な違いに加えて、それぞれをどのように使い分けるべきか、始める際の注意点などについて詳しく解説した。
FXと外貨預金にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、始める際はどちらが自分に適しているかをしっかりと考える必要がある。
自分の性格や投資目的、投資経験などを考慮した上で、どちらから始めるかを検討すると良いだろう。
「為替の状況を見ながら攻めの運用を行いたい」「短期間でリターンを狙いたい」「レバレッジをかけて効率的に取引したい」などというニーズのある方は、FXを始めてみてはいかがだろうか。