- 仮想通貨に関する法律を理解する
- 仮想通貨の取引所やカストディ業者がどのように規制されるか
- 今後の法整備に対する見通し
仮想通貨は2009年のビットコインの誕生により生まれた、新しい投資対象だ。
そのため、かつては取引の実態に法整備が追いついておらず、投機的な取引やハッキングによる流出、詐欺事件などが相次いでいた。
そんな中、2017年、2020年と法整備が進められ、現在では一定の投資家保護が図られている。
本記事では、仮想通貨を取り巻く法律について、これまでの法整備の流れと、法律の内容を初心者にも分かりやすく解説する。
仮想通貨に関する法整備の流れ
日本の仮想通貨に関する法律は、大きく2度の法改正によって整備されてきた。
- 2017年:資金決済法に仮想通貨追加(いわゆる仮想通貨法)
- 2020年:資金決済法・金融商品取引法等の改正
それぞれの概要は次のとおり。
2017年:資金決済法に仮想通貨追加
我が国では、2017年4月1日、資金決済法に仮想通貨に関する箇所が追加・施行された。
これは、世界でも初めての仮想通貨の法律といわれている。
資金決済法では、仮想通貨を法定通貨ではない支払い手段のひとつと定義し、仮想通貨の取引所(仮想通貨交換業者)を登録制とした。
また、顧客資産の分別管理や、顧客への情報提供など、投資家保護の枠組みも整備された。
2020年:資金決済法・金融商品取引法等の改正
その後、仮想通貨の流出事案や、仮想通貨バブルによる投機対象化、ICO詐欺事件など、仮想通貨を取り巻く環境の変化を受けて制度的な対応を検討。
2019年5月に、資金決済法・金融商品取引法等が改正・施行され、投資家保護を強化するとともに、ICO・STOやデリバティブ取引などに関する規制を整備した。
仮想通貨を取り巻く法律の内容
現在、仮想通貨は次の3つの法律で規制されている。
- 資金決済法
- 金融商品取引法
- 金融商品販売法
資金決済法
資金決済法では、急速に浸透する仮想通貨取引や関連サービスに対応して、投資家保護を図るためのルール整備がなされている。
資金決済法の主なポイントは次の7点。
- 仮想通貨取引所は登録制
- カストディ業者も登録制
- 仮想通貨から暗号資産に
- 顧客資産の保護強化
- 取り扱い仮想通貨の事前届出
- 広告・勧誘に関する規制
- ICOの規制
それぞれ内容を簡単に見てみよう。
仮想通貨取引所は登録制
2017年の資金決済法への仮想通貨追加で、仮想通貨取引所(仮想通貨交換業者)に登録制が導入された。
また、口座開設時の本人確認等も義務付けられた。これにより、投資家保護の一定の枠組みが整備されたといえる。
カストディ業者も登録制
2020年の法改正では、マネーロンダリング対策として、カストディ業者も登録対象となった。
カストディ業者とは、取引所以外で、他人の仮想通貨の管理を行う業者を指す。カストディ業者にも、取引所と同様に本人確認や分別管理の義務が課されるようになった。
仮想通貨から暗号資産に
2020年の法改正で、仮想通貨の法令上の呼称が「暗号資産」と定められた。
これは、仮想通貨が国際的に「Crypto Asset」と呼ばれていることに対応するものだ。
また、仮想通貨という呼び方は法定通貨との誤解を生みやすいことも、呼称変更の理由といわれている。
なお、本記事では「仮想通貨」と呼ぶ。
顧客資産の保護強化
2017年の資金決済法で、顧客からの預かり金銭は別の銀行口座、または金銭信託で管理とされていたが、2020年の法改正で、信託銀行や信託会社への信託が義務となった。
また、顧客の仮想通貨はコールドウォレットなど信頼性の高い方法で管理し、ホットウォレットで管理する場合は、同規模の弁済原資を保持することが義務付けられた。
ウォレットとは仮想通貨を保管する場所のことで、コールドウォレットはインターネットに接続されていないウォレット、ホットウォレットはインターネットに接続されているウォレットのことである。
取り扱い仮想通貨の事前届出
2020年の法改正で、取引所が取り扱う仮想通貨を届出制として、事前チェックする仕組みが導入された。
匿名性が高くマネーロンダリングの温床となる仮想通貨が登場し、その取り扱いを防止するためだ。
広告・勧誘に関する規制
2017年の資金決済法では、仮想通貨交換業者に広告・勧誘の規制はなかったが、2020年の法改正で規制が追加された。
具体的には、虚偽の表示や誇大広告、投機を助長する広告や勧誘が禁止されている。
ICOの規制
2017年の資金決済法ではICOは想定されていなかったが、2020年の法改正で、ICOは資金決済法のもとで実施することが規定された。
ICOとは、企業などがトークンを発行して投資家から資金調達することだ。
法規制により、投資家保護とイノベーションの促進の両立を目指している。
金融商品取引法
2020年の金融商品取引法改正では、それまで法規制のなかった暗号資産のデリバティブ取引やSTOについての規制が整備された。
金融商品取引法の主なポイントは次の3点。
- 仮想通貨デリバティブ取引の規制
- STOに関する規制の整備
- 風説の流布・相場操縦禁止
内容を解説する。
仮想通貨デリバティブ取引の規制
仮想通貨を原資産とするデリバティブ取引が金融商品に追加された。
デリバティブ取引を取り扱うには、第一種金融商品取引業者の登録が必要となっている。
また、証拠金取引のレバレッジ倍率の上限が個人の場合2倍までと規定された。
STOに関する規制の整備
金融商品取引法では、電子記録移転権利の概念を設け、STOのルールを明確化した。
STOとは有価証券的な性格を持つトークンを発行して資金調達を行うことである。
STOを取り扱う業者は金融商品取引法にもとづいて登録が必要となる。
風説の流布・相場操縦禁止
仮想通貨の取引では、不透明な価格操作が横行しているとの指摘を受けて、不公正な行為が禁止された。
具体的には、風説の流布や相場操縦などの行為が禁止行為とされている。
金融商品販売法
金融商品販売法では、仮想通貨取引、およびデリバティブ取引が対象になった。
投資家保護の観点で、販売業者から顧客に対する金融商品販売法に基づく説明義務が課されている。
今後の法整備
仮想通貨を含め、金融のデジタル化は日々、ものすごいスピードで進んでいる。
今後の法整備のポイントを紹介する。
ステーブルコイン規制
まずは、ステーブルコイン規制があげられる。
ステーブルコインとは、安定した価格を実現するよう設計された仮想通貨のことだ。
ステーブルコインには法定通貨や別の仮想通貨などを担保にした「担保型」と、アルゴリズムによって価格を安定させる「無担保型」がある。
本年5月には無担保型のステーブルコイン「テラ」で米ドルとの連動が外れ、99%以上暴落する事案があった。
これを受け、世界的にステーブルコインに対する規制の声が高まっている。
NFTやブロックチェーンゲーム
仮想通貨の基盤技術であるブロックチェーンは決済手段だけでなく、NFTやブロックチェーンゲーム、メタバース(仮想空間)など、その活用範囲が広がっている。
NFTとは「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」の略称で、ブロックチェーン技術を使ってデジタルデータの所有権を明確にできる技術だ。
NFTを用いたブロックチェーンゲームやメタバースなどの開発・活用も急速に広がっている。
新たな技術であるNFTに対しては、法規制が追いついておらず、今後整備が進むものとみられる。
まとめ
本記事では、仮想通貨を取り巻く法律について解説した。
仮想通貨は「資金決済法」「金融商品取引法」「金融商品販売法」の3つの法律によって投資家保護が図られている。
今後も、急速なビジネスの発展に合わせて、適宜法改正が行われていくだろう。
仮想通貨投資やNFT・ブロックチェーンゲームなどを利用する方は、仮想通貨を取り巻く法律の情報にもアンテナを張って情報をアップデートすることを心がけよう。
また、具体的にどのような投資を行ったら良いか悩んでいる人も多いだろう。
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