勤め先企業で「厚生年金基金」に加入していた場合、国の老齢厚生年金の一部を代行する給付や、基金独自の上乗せ給付(プラスアルファ)を受け取れる場合がある。
ただし、厚生年金基金は現在では大半が解散・移行している。そのため、過去の加入履歴を知らなかったり、住所変更・改姓などで案内が届かなかったりして、請求漏れが起きるケースもある。
結論からいうと、厚生年金基金で受け取れる金額は一律ではない。加入期間、当時の報酬、基金の規約、解散・移行後の扱いによって異なるため、まずは加入記録や移換先を確認することが大切だ。
この記事では、厚生年金基金の仕組み、いくらもらえるかを確認する方法、受給開始時期、問い合わせ先をわかりやすく解説する。
- 日本の年金制度の全体像
- 厚生年金基金と厚生年金保険の違い
- 厚生年金基金の支給額の考え方
- 加入記録や見込額の確認方法
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厚生年金基金はいくらもらえる?金額は通知書・照会で確認する
厚生年金基金でいくらもらえるかは、人によって異なる。
加入期間、当時の標準報酬、基金ごとの給付設計、退職時期、解散・移行後の扱いによって支給額が変わるためだ。
そのため、「厚生年金基金に加入していたら一律でいくらもらえる」とは考えない方がよい。まずは、自分の加入記録や移換先を確認しよう。
企業年金連合会へ年金原資と記録が移換されている場合は、過去に送付された「移換完了通知書」や「年金の引き継ぎのお知らせ」におおよその見込額が記載されている。
書類が届いていない、または紛失している場合は、企業年金連合会へ年金見込額の確認を依頼できる。
| 確認したいこと | 主な確認方法 |
|---|---|
| 企業年金連合会に記録があるか | 企業年金連合会の年金記録確認サービス、コールセンター |
| 年金見込額 | 移換完了通知書、年金の引き継ぎのお知らせ、年金見込額の確認依頼 |
| 基金が存続・移行しているか | 勤務先、加入していた基金、移行後の企業年金基金 |
| 老齢厚生年金に含まれているか | 日本年金機構の年金記録、ねんきん定期便、年金事務所 |
なお、退職時に脱退一時金を受け取っている場合でも、厚生年金基金の基本年金部分が企業年金連合会に引き継がれているケースがある。
一方で、確定給付企業年金の脱退一時金を受け取った場合は、原則として企業年金連合会に年金原資や記録が引き継がれていないことがある。手元の書類に「厚生年金基金」「確定給付企業年金」「企業年金連合会」などの記載がないか確認しておこう。
年金制度をおさらい|厚生年金基金は3階部分の企業年金
厚生年金基金を理解する前提として、日本の年金制度の全体像を確認しておこう。
日本の年金制度は、全国民に共通する国民年金を土台に、会社員や公務員などが加入する厚生年金保険、さらに企業年金やiDeCoなどの私的年金が上乗せされる構造になっている。
- 1階:国民年金(基礎年金)
- 2階:厚生年金保険
- 3階:企業年金・iDeCoなどの私的年金
1階部分の国民年金は、日本国内に住所がある20歳以上60歳未満の人が対象となる年金である。
2階部分の厚生年金保険は、会社員や公務員などが加入する年金だ。国民年金と厚生年金保険は、国が運営する公的年金にあたる。
3階部分には、公的年金に上乗せする企業年金や個人年金がある。主な制度は以下のとおりだ。
- 確定給付企業年金(DB)
- 企業型確定拠出年金(企業型DC・日本版401k)
- 厚生年金基金
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)
本記事で取り上げる厚生年金基金は、企業年金の一形態である。厚生年金保険と名前が似ているが、厚生年金保険そのものではない点に注意したい。
厚生年金基金とは?厚生年金の一部を代行し上乗せ給付を行う制度

厚生年金基金とは、企業や業界団体などが厚生労働大臣の認可を受けて設立する法人「厚生年金基金」が運営していた企業年金制度である。
国の老齢厚生年金の一部を代行して支給するとともに、基金独自の上乗せ給付を行う仕組みになっている。
企業年金連合会が公表する「連合会年金」の裁定請求書未提出者数は、2025年3月末現在で106.1万人である。内訳は、請求書不達者68.5万人、請求保留者37.6万人となっている。
つまり、受け取れる可能性がある企業年金について、請求書が届いていない人や、請求手続きを保留している人が少なくない。過去に厚生年金基金のある会社で働いていた可能性がある人は、加入記録を確認しておきたい。
厚生年金基金は企業年金のひとつ
厚生年金基金は、企業が従業員の老後所得をより手厚くするために実施していた企業年金の一つである。
国の老齢厚生年金の一部を基金が代わりに給付する「代行部分」と、基金が独自に上乗せする「プラスアルファ部分」がある。
厚生年金基金の設立形態には、主に以下の3種類がある。
| 形態 | 概要 |
|---|---|
| 単独型 | 1つの企業が単独で設立する形態 |
| 連合型 | 親会社と子会社など、企業グループで設立する形態 |
| 総合型 | 同業種の複数企業などが共同で設立する形態 |
ただし、2014年4月1日以降、厚生年金基金の新規設立は認められていない。そのため、現在新たに厚生年金基金へ加入するケースは限られている。
厚生年金基金の仕組み|代行部分とプラスアルファ部分
厚生年金基金の給付は、大きく分けると「代行部分」と「プラスアルファ部分」で構成される。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 代行部分 | 国の老齢厚生年金の報酬比例部分のうち、基金加入期間にかかる部分を基金などが代行して給付する部分 |
| プラスアルファ部分 | 基金が独自に上乗せする給付。基金の規約や加入期間などによって内容が異なる |
代行部分は、国の老齢厚生年金の報酬比例部分のうち、基金加入期間にかかる部分を国に代わって給付する部分である。
一方、プラスアルファ部分は、企業や基金が独自に上乗せする給付である。給付内容や金額は、基金の規約や加入期間などによって異なる。
なお、厚生年金基金が解散・代行返上した場合、代行部分や上乗せ部分の扱いは、解散時期や移換の有無によって変わる。すべてが企業年金連合会に移るわけではないため、確認先を間違えないことが重要だ。
大半の厚生年金基金は解散・移行している
厚生年金基金は、2014年4月1日以降、新規設立が認められなくなった。また、解散や他の企業年金制度への移行が進められてきた。
2025年3月末現在、厚生年金基金資産運用業務報告書の対象となっている基金数は4基金である。
現在は、過去に加入していた厚生年金基金の記録や、解散・移行後の取り扱いを確認することが、受け取り漏れを防ぐうえで重要になっている。
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厚生年金基金の支給額の考え方
厚生年金基金の支給額は、主に「代行部分」と「プラスアルファ部分」に分けて考えると理解しやすい。
| 区分 | 支給額の考え方 |
|---|---|
| 代行部分 | 国の老齢厚生年金の報酬比例部分のうち、基金加入期間にかかる部分。加入期間や当時の報酬などに応じて決まる。 |
| プラスアルファ部分 | 基金独自の上乗せ給付。基金の規約、加入期間、移換された原資などによって異なる。 |
企業年金連合会へ年金原資と記録が移換されている場合は、「移換完了通知書」や「年金の引き継ぎのお知らせ」におおよその見込額が記載されている。
これらの書類が届いていない、または紛失した場合は、企業年金連合会へ年金見込額の確認を依頼できる。
見込額はあくまで見込みであり、法律改正等により改定される場合がある。最終的な受取額は、裁定請求や支給開始時点の条件によって決まる。
受給開始時期|原則は老齢厚生年金と同じだが種類で異なる
厚生年金基金の代行部分や企業年金連合会の老齢年金は、原則として国の老齢厚生年金と同じ支給開始年齢で受け取る。
国の老齢厚生年金は原則として65歳から受給できる。ただし、生年月日など一定の要件を満たす人は、65歳になるまでの間に特別支給の老齢厚生年金を受け取れる場合がある。
また、通算企業年金、加算部分、繰上げ請求、繰下げ請求の扱いは、年金の種類や移換状況によって異なる場合がある。
受給開始時期を確認したい場合は、企業年金連合会、加入していた基金、勤務先の年金担当窓口、日本年金機構の年金事務所などに確認しよう。
厚生年金基金の確認先|解散時期と移換先で変わる
厚生年金基金の確認先は、現在の制度の状態や解散時期によって変わる。以下を目安に確認しよう。
| 状況 | 主な確認先 |
|---|---|
| 加入していた厚生年金基金が現在も存続している | 加入していた厚生年金基金、勤務先の年金担当窓口 |
| 厚生年金基金が確定給付企業年金などへ移行している可能性がある | 勤務先、移行後の企業年金基金・年金担当窓口 |
| 2014年3月31日までに厚生年金基金を短期間で脱退した | 企業年金連合会 |
| 2014年3月31日までに解散した厚生年金基金に加入していた | 企業年金連合会 |
| 2014年4月1日以降に解散した厚生年金基金に加入していた | 代行部分は国の老齢厚生年金に含まれる場合がある。残余財産分配金を企業年金連合会へ移換した場合は、企業年金連合会も確認先になる。 |
| 過去に加入していたかどうかわからない | 企業年金連合会の記録確認サービスやコールセンター、勤務先の退職時書類、年金関係の通知を確認する |
企業年金連合会の年金記録確認サービスでは、厚生年金基金または確定給付企業年金のある企業を中途退職した人などの記録を企業年金連合会が預かっているかを、インターネットで確認依頼できる。
通常はメールで翌営業日に記録の有無が回答されるが、利用が集中する場合は3営業日程度かかることもある。
企業年金連合会に問い合わせる際は、以下の情報を用意しておくと確認がスムーズだ。
- 氏名(結婚などで氏名が変わった人は旧姓も)
- 生年月日
- 住所
- 基礎年金番号
- 厚生年金基金の名称や加入員番号(わかる場合)
厚生年金基金加入員証、移換完了通知書、年金の引き継ぎのお知らせ、退職時の書類などが手元にあれば、あわせて確認しておこう。
転職している人は特に注意
特に注意したいのは、複数回転職している人や、短期間だけ勤めた会社がある人だ。
厚生年金基金は、本人が意識して加入を選ぶ制度ではなく、勤め先が制度を実施していた場合に加入していた可能性がある。そのため、「短期間しか働いていないから関係ない」と自己判断しない方がよい。
また、勤めていた会社がすでに存在しない場合や、基金が解散・移行している場合もある。過去の加入有無がわからない人は、企業年金連合会の記録確認サービスやコールセンターを活用し、あわせて退職時の書類や年金関係の通知を確認しよう。
受け取り漏れを防ぐために今すぐ確認したいこと
厚生年金基金に加入していた可能性がある人は、以下の順番で確認するとよい。
- 退職時の書類、厚生年金基金加入員証、企業年金連合会からの通知を探す
- 勤務先または元勤務先の年金担当窓口へ確認する
- 企業年金連合会の年金記録確認サービスを利用する
- 必要に応じて年金見込額の確認を依頼する
- 支給開始年齢に近づいたら、裁定請求書や住所変更の有無を確認する
住所変更や改姓をしている場合、登録情報が古いままだと請求書が届かない可能性がある。転居や結婚・離婚による氏名変更があった人は、特に注意したい。
年金記録や支給手続きに関する確認は、企業年金連合会、加入していた基金、勤務先、日本年金機構などの公的・制度上の窓口で行うのが基本である。
一方で、年金を受け取った後の資金管理や老後の資産運用に不安がある場合は、年金手続きとは別に、資産運用の専門家へ相談することも選択肢になる。
厚生年金基金は「受け取れるか・いくらか」をまず確認しよう

厚生年金基金は、企業年金の一形態である。国の老齢厚生年金の一部を代行して支給するとともに、基金独自の上乗せ給付を行う仕組みだった。
ただし、2014年4月1日以降は新規設立が認められておらず、多くの基金は解散または他の企業年金制度へ移行している。2025年3月末現在、厚生年金基金資産運用業務報告書の対象基金数は4基金である。
厚生年金基金で受け取れる金額は一律ではない。加入期間、当時の報酬、基金の規約、解散・移行後の扱いによって異なるため、見込額を知りたい場合は通知書や企業年金連合会への照会で確認する必要がある。
企業年金連合会が公表する「連合会年金」の裁定請求書未提出者数は、2025年3月末現在で106.1万人となっている。転職経験がある人、短期間だけ勤めた会社がある人、住所や氏名が変わった人は、受け取り漏れがないか一度確認しておくとよいだろう。
年金記録や請求手続きは、企業年金連合会、加入していた基金、勤務先、日本年金機構などに確認するのが基本だ。受け取った年金や退職金をどう管理・運用するかに不安がある場合は、資産運用の相談先を活用する選択肢もある。
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出典
企業年金連合会「企業年金制度」
企業年金連合会「連合会年金の未請求者の状況について」
企業年金連合会「企業年金連合会の年金記録の確認」
企業年金連合会「企業年金連合会の年金記録を確認したいとき」
企業年金連合会「年金見込額を知りたい」
企業年金連合会「いつから老齢年金が受給できるのか」
企業年金連合会「厚生年金基金から企業年金連合会への移転・移換」
日本年金機構「厚生年金基金加入期間がある方の年金」(更新日:2026年4月30日)
日本年金機構「老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額」(更新日:2026年4月1日)
厚生労働省「厚生年金基金制度」
厚生労働省「厚生年金基金資産運用業務報告書(2024(令和6)年度)」
厚生労働省「年金制度のポイント」


