「厚生年金には40年以上加入した方が良い」
「厚生年金に40年以上加入すると年金の増え方が変わる」
という話を聞いたことがあるだろうか。
結論からいうと、厚生年金は40年を超えて加入しても、報酬比例部分は加入期間や報酬に応じて増える。
ただし、老齢基礎年金は原則40年(480月)で満額となり、老齢厚生年金の経過的加算にも480月の上限が関係する。そのため、40年を境に「増える部分」が変わることがある。
この記事では、公的年金の仕組みと、厚生年金が40年を境に増え方が変わる理由を解説する。
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公的年金の仕組み
厚生年金に40年以上加入したときの年金額を理解するには、まず公的年金制度の基本を押さえておく必要がある。
公的年金は国民年金と厚生年金の2階建て
日本の公的年金制度は、1階部分の「国民年金」と、会社員・公務員などが加入する2階部分の「厚生年金」で構成されている。
加入する公的年金は、働き方や立場によって以下のように異なる。
| 職業・立場 | 区分 | 加入する制度 | 保険料の納付方法 |
|---|---|---|---|
| 自営業者・フリーランス・学生・無職の方など | 第1号被保険者 | 国民年金 | 納付書・口座振替などで本人が納付 |
| 会社員・公務員など | 第2号被保険者 | 国民年金・厚生年金 | 厚生年金保険料として給与等から天引き |
| 第2号被保険者に扶養されている配偶者 | 第3号被保険者 | 国民年金 | 本人負担なし |
ここからは、国民年金と厚生年金の仕組みをそれぞれ確認していく。
国民年金
国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の人が原則加入する年金である。
自営業者やフリーランス、学生などの第1号被保険者は、自分で保険料を納付する。令和8年度の国民年金保険料は月額17,920円である。
会社員や公務員などの第2号被保険者は、厚生年金に加入することで国民年金にも加入している扱いになる。第2号被保険者に扶養されている配偶者は第3号被保険者となり、本人が国民年金保険料を直接納める必要はない。
老齢基礎年金を受け取るには、保険料納付済期間や免除期間などを合算した受給資格期間が原則10年以上必要で、支給開始は原則65歳である。
老齢基礎年金の金額は、20歳から60歳になるまでの40年間の納付月数などに応じて計算される。40年(480月)すべて納付した場合に満額となり、納付月数が少ない場合はその分だけ少なくなる。
令和8年度の老齢基礎年金の満額は、昭和31年4月2日以後生まれの方で年額847,300円(月額換算約70,608円)、昭和31年4月1日以前生まれの方で年額844,900円(月額換算約70,408円)である。
なお、学生納付特例や納付猶予の期間は、受給資格期間には算入されるが、追納していない場合は老齢基礎年金の年金額には反映されない。
将来の老齢基礎年金を増やす方法としては、主に以下がある。
- 免除・納付猶予・学生納付特例の承認期間について、前10年以内であれば追納する
- 60歳以降に厚生年金へ加入していない場合、条件を満たせば国民年金の任意加入制度を利用する
ただし、任意加入制度は、厚生年金保険・共済組合等の加入者は利用できない。60歳以降も会社員として厚生年金に加入する場合は、任意加入ではなく厚生年金の加入期間として扱われる。
厚生年金
続いて、厚生年金の仕組みを確認しよう。
厚生年金は、会社員や公務員などが加入する公的年金である。70歳未満の方が厚生年金保険に加入している会社や役所などに勤務する場合、原則として厚生年金に加入する。
厚生年金は、1階部分の国民年金に上乗せされる2階部分の年金である。厚生年金の保険料は給与や賞与から天引きされ、事業主と本人が折半して負担する。
厚生年金保険料率は18.3%で、本人負担分はその半分の9.15%である。たとえば標準報酬月額が30万円の場合、本人負担分は月27,450円が目安となる。
老齢厚生年金は、老齢基礎年金を受け取れる方に厚生年金の加入期間がある場合、原則65歳から老齢基礎年金に上乗せして受け取れる。
老齢厚生年金の金額は、主に厚生年金に加入していた期間と、その期間の報酬額によって決まる。老齢厚生年金には、報酬比例部分、経過的加算、条件を満たす場合の加給年金額などが含まれる。
厚生年金の報酬比例部分には、40年(480月)で打ち切られる上限はない。そのため、40年を超えて厚生年金に加入しても、加入期間や報酬に応じて報酬比例部分は増えていく。
なお、65歳以降に厚生年金へ加入しながら老齢厚生年金を受け取る場合、給与等と年金の合計額により、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止されることがある。令和8年度の支給停止調整額は月65万円である。
厚生年金の加入期間40年で年金の増え方が変わる理由

ここからは、厚生年金の加入期間が40年を超えると「何が変わるのか」を整理する。
40年で変わるのは「増える部分」
厚生年金の加入期間40年で年金の増え方が変わる理由は、主に以下の2つである。
- 老齢基礎年金は、原則として20歳から60歳になるまでの40年(480月)が満額の基準になる
- 老齢厚生年金の経過的加算のもとになる定額部分は、昭和21年4月2日以後生まれの方の場合、480月を上限として計算される
一方で、老齢厚生年金の報酬比例部分には、定額部分のような480月の上限はない。加入した被保険者期間と報酬に応じて計算される。
つまり、「厚生年金は40年以上加入しても意味がない」のではなく、「40年を境に増える部分が変わる」と考えるとわかりやすい。
20歳前や60歳以後の厚生年金期間も関係する
厚生年金には、20歳前に就職した期間や、60歳以降も働き続けた期間が含まれることがある。
ただし、老齢基礎年金の計算で中心となるのは、原則として20歳から60歳になるまでの国民年金の納付月数や厚生年金加入期間である。
そのため、20歳前や60歳以後の厚生年金加入期間は、老齢基礎年金そのものには直接反映されない。一方で、老齢厚生年金の報酬比例部分や、条件によっては経過的加算に反映される。
この違いを理解しておくと、「60歳以降も厚生年金に加入したら、どの年金が増えるのか」が整理しやすくなる。
ケース別:厚生年金40年と年金額の関係
ここでは、就職年齢や学生時代の国民年金の納付状況ごとに、年金の増え方を確認していく。
大卒(学生時代に国民年金を猶予)
大卒で22歳から厚生年金に加入し、20歳から22歳まで学生納付特例を利用していたケース
このケースでは、60歳時点の厚生年金加入期間は38年である。20歳から22歳までの学生納付特例期間を追納していない場合、その2年分は老齢基礎年金の年金額には反映されない。
60歳で退職し、任意加入もしない場合、老齢基礎年金は満額に届かない。令和8年度の老齢基礎年金の満額を前提にすると、2年不足で年額約4.2万円少ない目安となる。
一方、60歳以降も厚生年金に加入して62歳まで働くと、厚生年金の加入期間は40年になる。この2年分は老齢基礎年金そのものには反映されないが、老齢厚生年金の報酬比例部分と、条件によっては経過的加算の増加に反映される。
したがって、60歳以降の厚生年金加入によって、老齢基礎年金の不足分に近い額が経過的加算で調整される場合がある。ただし、学生納付特例の追納期限を過ぎている場合、老齢基礎年金そのものを満額に近づけるには、厚生年金に加入していない期間に任意加入制度を利用する必要がある。
大卒(学生時代に国民年金を納付)
20歳から22歳まで国民年金を納め、大卒で22歳から厚生年金に加入したケース
このケースでは、60歳時点で20歳から60歳までの40年分を納めているため、老齢基礎年金は満額となる。一方、厚生年金の加入期間は38年である。
60歳以降も厚生年金に加入して働く場合、老齢基礎年金そのものはすでに満額のため増えない。ただし、厚生年金加入期間が40年に達するまでは、老齢厚生年金の報酬比例部分に加えて、経過的加算が増える場合がある。
厚生年金加入期間が40年(480月)を超えた後は、主に報酬比例部分が増えていく。ここが「40年を境に年金の増え方が変わる」といわれる理由である。
高卒
高卒で18歳から厚生年金に加入しているケース
このケースでは、60歳時点で厚生年金の加入期間は42年になる。国民年金については、20歳から60歳までの40年分が老齢基礎年金の計算対象となる。
したがって、20歳から60歳まで厚生年金に加入していれば、老齢基礎年金は満額となる。18歳から20歳までの厚生年金期間は、老齢基礎年金そのものには直接反映されないが、老齢厚生年金の計算には関係する。
60歳時点ですでに厚生年金加入期間が40年を超えているため、60歳以降も厚生年金に加入して働く場合は、主に報酬比例部分が増えていく。
なお、58歳や59歳で退職した場合は、厚生年金の加入期間が40年に達していても、20歳から60歳までの国民年金の納付月数は40年に満たない。老齢基礎年金を満額に近づけるには、60歳まで国民年金保険料を納める必要がある。
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加入期間が40年に満たないと年金受給額はいくら減る?
老齢基礎年金は、40年(480月)を満額の基準として計算される。令和8年度の満額年額847,300円を前提にすると、1カ月分不足するごとに、将来の老齢基礎年金は年額約1,765円少なくなる目安である。
不足期間ごとの目安は以下のとおりだ。
| 不足期間 | 老齢基礎年金が満額より少なくなる目安(年額) |
|---|---|
| 1カ月 | 約1,765円 |
| 1年 | 約2.1万円 |
| 2年 | 約4.2万円 |
| 5年 | 約10.6万円 |
たとえば、大卒で学生時代に国民年金の学生納付特例を利用し、追納しないまま60歳で退職した場合、2年分が不足する。令和8年度の満額を前提にすると、老齢基礎年金は年額約4.2万円少なくなる目安だ。
ただし、保険料免除期間がある場合は、免除の種類に応じて一部が年金額に反映される。未納、納付猶予、学生納付特例、免除では年金額への反映が異なるため、自分の記録で確認することが重要である。
不足分を補う方法としては、以下が考えられる。
- 学生納付特例・納付猶予・免除の承認期間が10年以内なら追納を検討する
- 60歳以降に厚生年金へ加入しない場合、条件を満たせば任意加入制度を利用する
- 60歳以降も厚生年金に加入して働く場合、老齢厚生年金の報酬比例部分や経過的加算が増える可能性を確認する
自分の加入期間を確認する方法
記事を読んだ後に確認すべきなのは、自分の「20歳以上60歳未満の国民年金の納付状況」と「厚生年金の加入月数」である。
確認には、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」や、インターネットで利用できる「ねんきんネット」が役立つ。
- 年金加入期間
- 国民年金の納付状況、未納、免除、納付猶予、学生納付特例の有無
- 厚生年金保険の加入期間
- 老齢年金の見込額
50歳未満のねんきん定期便では、これまでの加入実績に応じた年金額が表示される。50歳以上では、老齢年金の種類と見込額が表示されるため、60歳以降の働き方を考える材料になる。
「厚生年金に40年以上加入すべきか」を考える前に、まずは自分の加入記録に抜けや誤りがないかを確認しておこう。
まとめ

老齢基礎年金を満額受給するには、原則として20歳から60歳になるまでの40年(480月)分の納付済期間が必要である。
一方で、厚生年金の報酬比例部分は40年で止まるわけではない。40年を超えて加入しても、加入期間や報酬に応じて老齢厚生年金は増えていく。
40年を境に変わるのは、老齢基礎年金の満額基準や、老齢厚生年金の経過的加算の影響である。特に、大卒で学生時代に国民年金を猶予していた人や、60歳以降も厚生年金に加入して働く人は、自分の加入期間を確認しておくことが大切だ。
本記事を参考に、ねんきん定期便やねんきんネットで、自身の加入期間を確認してみてはいかがだろうか。
一方で、老後の悩みは多く、手続きやお金の問題など不安なケースは多いと思う。
そんな時は、アドバイザーに相談するのがおすすめだ。プロの視点からお金の疑問を解決してくれるだろう。
少しでも不安やお悩みがある方は、無料相談を申し込んでみてはいかがだろうか。
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出典
厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方 第3 公的年金制度の体系(被保険者、保険料)」
日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」(更新日:2023年4月3日)
日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」(更新日:2026年4月1日)
日本年金機構「老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額」(更新日:2026年4月1日)
日本年金機構「た行 定額部分」(更新日:2026年4月1日)
日本年金機構「国民年金保険料」(更新日:2026年4月1日)
日本年金機構「厚生年金保険の保険料」(更新日:2024年8月9日)
日本年金機構「厚生年金保険料額表」
日本年金機構「任意加入制度」(更新日:2025年9月11日)
日本年金機構「国民年金保険料の追納制度」(更新日:2026年4月1日)
日本年金機構「大切なお知らせ、『ねんきん定期便』をお届けしています」(更新日:2026年4月1日)
日本年金機構「60歳以降も引き続き勤めます。勤めていても年金は受けられますか。」(更新日:2026年4月1日)


