厚生年金40年以上でどう変わる?加入期間と受給額の関係をわかりやすく整理

「厚生年金には40年以上加入した方が良い」

「厚生年金に40年以上加入すると年金の増え方が変わる」

という話を聞いたことがあるだろうか。

結論からいうと、厚生年金は40年を超えて加入しても、老齢厚生年金の報酬比例部分は加入期間や報酬に応じて増える。

ただし、老齢基礎年金は原則として20歳から60歳までの40年(480月)で満額となる。また、老齢厚生年金の経過的加算にも480月の上限が関係する。

そのため、40年を境に「増えなくなる部分」と「40年を超えても増える部分」が分かれると考えると理解しやすい。

この記事では、公的年金の仕組み、厚生年金が40年を境に増え方が変わる理由、加入期間が足りない場合の影響、60歳以降も働くときの注意点を解説する。

\ あなたの資産運用を任せるプロを診断 /

目次

厚生年金に40年以上加入するとどうなる?まず結論

厚生年金に40年以上加入した場合の年金額を考えるときは、年金を次の3つに分けて見ると分かりやすい。

スクロールできます
年金の部分40年との関係40年を超えた場合
老齢基礎年金原則20歳から60歳までの40年(480月)で満額480月を超えても老齢基礎年金そのものは増えない
老齢厚生年金
報酬比例部分
加入期間と報酬に応じて計算される40年を超えて加入しても増える
経過的加算定額部分に相当する額と老齢基礎年金相当額との差を調整する部分定額部分の月数上限480月が関係する

つまり、「厚生年金は40年以上加入しても意味がない」という理解は正確ではない。

40年を超えても、厚生年金の報酬比例部分は増える。一方で、老齢基礎年金は20歳から60歳までの40年で満額となるため、60歳以降に厚生年金へ加入しても、老齢基礎年金そのものが増えるわけではない。

ただし、60歳以降も働く場合は、年金額だけでなく、保険料負担、手取り収入、働く時間、健康状態、在職老齢年金による支給停止の可能性も含めて考える必要がある。

厚生年金40年以上を理解するための公的年金の仕組み

厚生年金に40年以上加入したときの年金額を理解するには、まず公的年金制度の基本を押さえておく必要がある。

公的年金は国民年金と厚生年金の2階建て

日本の公的年金制度は、1階部分の「国民年金」と、会社員・公務員などが加入する2階部分の「厚生年金」で構成されている。

国民年金と厚生年金で構成される公的年金制度の概要図
公的年金制度の概要

加入する公的年金は、働き方や立場によって以下のように異なる。

スクロールできます
職業・立場区分加入する制度保険料の納付方法
自営業者・フリーランス・学生・無職の方など第1号被保険者国民年金本人が納付書・口座振替などで納付
会社員・公務員など第2号被保険者国民年金・厚生年金厚生年金保険料として給与等から天引き
第2号被保険者に扶養されている配偶者第3号被保険者国民年金本人負担なし
働き方による公的年金の加入区分

ここからは、国民年金と厚生年金の仕組みをそれぞれ確認していく。

国民年金|老齢基礎年金は原則40年で満額

国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の人が原則加入する年金である。

自営業者やフリーランス、学生などの第1号被保険者は、自分で保険料を納付する。令和8年度の国民年金保険料は月額17,920円である。

会社員や公務員などの第2号被保険者は、厚生年金に加入することで国民年金にも加入している扱いになる。第2号被保険者に扶養されている配偶者は第3号被保険者となり、本人が国民年金保険料を直接納める必要はない。

老齢基礎年金を受け取るには、保険料納付済期間や免除期間などを合算した受給資格期間が原則10年以上必要で、支給開始は原則65歳である。

老齢基礎年金の金額は、20歳から60歳になるまでの40年間の納付月数などに応じて計算される。40年(480月)すべて納付した場合に満額となり、納付月数が少ない場合はその分だけ少なくなる。

令和8年度の老齢基礎年金の満額は、昭和31年4月2日以後生まれの方で年額847,300円(月額換算約70,608円)、昭和31年4月1日以前生まれの方で年額844,900円(月額換算約70,408円)である。

なお、学生納付特例や納付猶予の期間は、受給資格期間には算入されるが、追納していない場合は老齢基礎年金の年金額には反映されない。

将来の老齢基礎年金を満額に近づける方法としては、主に以下がある。

  • 免除・納付猶予・学生納付特例の承認期間について、前10年以内であれば追納する
  • 60歳以降に厚生年金へ加入していない場合、条件を満たせば国民年金の任意加入制度を利用する

ただし、任意加入制度は、厚生年金保険・共済組合等の加入者は利用できない。60歳以降も会社員として厚生年金に加入する場合は、任意加入ではなく厚生年金の加入期間として扱われる。

厚生年金|報酬比例部分は40年を超えても増える

続いて、厚生年金の仕組みを確認しよう。

厚生年金は、会社員や公務員などが加入する公的年金である。厚生年金保険に加入している会社や役所などに勤務する70歳未満の方は、原則として厚生年金に加入する。

厚生年金は、1階部分の国民年金に上乗せされる2階部分の年金である。厚生年金の保険料は給与や賞与から天引きされ、事業主と本人が折半して負担する。

厚生年金保険料率は18.3%で、本人負担分は原則その半分の9.15%である。たとえば標準報酬月額が30万円の場合、本人負担分は月27,450円が目安となる。

なお、標準報酬月額とは、給与を一定の幅で区分したものであり、保険料や年金額の計算に用いられる。

老齢厚生年金は、老齢基礎年金を受け取れる方に厚生年金の加入期間がある場合、原則65歳から老齢基礎年金に上乗せして受け取れる。

老齢厚生年金の金額は、主に厚生年金に加入していた期間と、その期間の報酬額によって決まる。老齢厚生年金には、報酬比例部分、経過的加算、条件を満たす場合の加給年金額などが含まれる。

厚生年金の報酬比例部分には、40年(480月)で打ち切られる上限はない。そのため、40年を超えて厚生年金に加入しても、加入期間や報酬に応じて報酬比例部分は増えていく。

65歳以降に厚生年金へ加入しながら老齢厚生年金を受け取る場合、65歳以上70歳未満であれば、毎年10月分から年金額が見直される在職定時改定の対象となる。

一方で、働きながら老齢厚生年金を受け取る場合は、在職老齢年金にも注意が必要だ。令和8年度は、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円を超えると、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止されることがある。なお、老齢基礎年金は在職老齢年金の調整対象ではない。

厚生年金の加入期間40年で年金の増え方が変わる理由

ここからは、厚生年金の加入期間が40年を超えると「何が変わるのか」を整理する。

40年で変わるのは「増える部分」

厚生年金の加入期間40年で年金の増え方が変わる理由は、主に以下の2つである。

  • 老齢基礎年金は、原則として20歳から60歳になるまでの40年(480月)が満額の基準になる
  • 老齢厚生年金の経過的加算のもとになる定額部分は、昭和21年4月2日以後生まれの方の場合、480月を上限として計算される

一方で、老齢厚生年金の報酬比例部分には、定額部分のような480月の上限はない。加入した被保険者期間と報酬に応じて計算される。

つまり、「厚生年金は40年以上加入しても意味がない」のではなく、「40年を境に増える部分が変わる」と考えるとわかりやすい。

20歳前や60歳以後の厚生年金期間も関係する

厚生年金には、20歳前に就職した期間や、60歳以降も働き続けた期間が含まれることがある。

ただし、老齢基礎年金の計算で中心となるのは、原則として20歳から60歳になるまでの国民年金の納付月数や厚生年金加入期間である。

そのため、20歳前や60歳以後の厚生年金加入期間は、老齢基礎年金そのものには直接反映されない。一方で、老齢厚生年金の報酬比例部分や、条件によっては経過的加算に反映される。

この違いを理解しておくと、「60歳以降も厚生年金に加入したら、どの年金が増えるのか」が整理しやすくなる。

厚生年金44年特例とは別の論点

厚生年金の加入期間について調べていると、「44年特例」という言葉を見かけることもある。

これは、一定の生年月日等の要件を満たす方が受け取れる「特別支給の老齢厚生年金」に関係する特例であり、この記事で解説している「40年を超えると報酬比例部分がどう増えるか」とは別の論点である。

自分が44年特例の対象になるかどうかは、生年月日、性別、退職状況、厚生年金の被保険者期間などで変わるため、ねんきん定期便や年金事務所で確認しよう。

\ あなたの資産運用を任せるプロを診断 /

ケース別|厚生年金40年と年金額の関係

ここでは、就職年齢や学生時代の国民年金の納付状況ごとに、年金の増え方を確認していく。

大卒・学生時代に国民年金を猶予していた場合

大卒で22歳から厚生年金に加入し、20歳から22歳まで学生納付特例を利用していたケース

このケースでは、60歳時点の厚生年金加入期間は38年である。20歳から22歳までの学生納付特例期間を追納していない場合、その2年分は老齢基礎年金の年金額には反映されない。

60歳で退職し、任意加入もしない場合、老齢基礎年金は満額に届かない。令和8年度の老齢基礎年金の満額を前提にすると、2年不足で年額約4.2万円少ない目安となる。

一方、60歳以降も厚生年金に加入して62歳まで働くと、厚生年金の加入期間は40年になる。この2年分は老齢基礎年金そのものには反映されないが、老齢厚生年金の報酬比例部分と、条件によっては経過的加算の増加に反映される。

学生納付特例の追納が10年以内で可能な場合は、追納により老齢基礎年金を増やせる。追納期限を過ぎている場合に老齢基礎年金を満額に近づけたいなら、60歳以降に厚生年金へ加入していない期間に、条件を満たして国民年金の任意加入制度を利用する方法を検討する。

大卒・学生時代に国民年金を納付していた場合

20歳から22歳まで国民年金を納め、大卒で22歳から厚生年金に加入したケース

このケースでは、60歳時点で20歳から60歳までの40年分を納めているため、老齢基礎年金は満額となる。一方、厚生年金の加入期間は38年である。

60歳以降も厚生年金に加入して働く場合、老齢基礎年金そのものはすでに満額のため増えない。ただし、厚生年金加入期間が40年に達するまでは、老齢厚生年金の報酬比例部分に加えて、経過的加算が増える場合がある。

厚生年金加入期間が40年(480月)を超えた後は、主に報酬比例部分が増えていく。ここが「40年を境に年金の増え方が変わる」といわれる理由である。

高卒で18歳から厚生年金に加入していた場合

高卒で18歳から厚生年金に加入しているケース

このケースでは、60歳時点で厚生年金の加入期間は42年になる。国民年金については、20歳から60歳までの40年分が老齢基礎年金の計算対象となる。

したがって、20歳から60歳まで厚生年金に加入していれば、老齢基礎年金は満額となる。18歳から20歳までの厚生年金期間は、老齢基礎年金そのものには直接反映されないが、老齢厚生年金の計算には関係する。

60歳時点ですでに厚生年金加入期間が40年を超えているため、60歳以降も厚生年金に加入して働く場合は、主に報酬比例部分が増えていく。

なお、58歳や59歳で退職した場合は、厚生年金の加入期間が40年に達していても、20歳から60歳までの国民年金の納付月数は40年に満たない。老齢基礎年金を満額に近づけるには、60歳まで国民年金保険料を納める必要がある。

加入期間が40年に満たないと年金受給額はいくら減る?

老齢基礎年金は、40年(480月)を満額の基準として計算される。

令和8年度の満額年額847,300円を前提にすると、1カ月分不足するごとに、将来の老齢基礎年金は年額約1,765円少なくなる目安である。

不足期間ごとの目安は以下のとおりだ。

不足期間老齢基礎年金が満額より少なくなる目安(年額)
1カ月約1,765円
1年約2.1万円
2年約4.2万円
5年約10.6万円

※令和8年度の昭和31年4月2日以後生まれの老齢基礎年金満額847,300円を480月で割った概算。実際の年金額は免除・納付猶予・学生納付特例・追納の有無などで変わります。

たとえば、大卒で学生時代に国民年金の学生納付特例を利用し、追納しないまま60歳で退職した場合、2年分が不足する。令和8年度の満額を前提にすると、老齢基礎年金は年額約4.2万円少なくなる目安だ。

ただし、保険料免除期間がある場合は、免除の種類に応じて一部が年金額に反映される。未納、納付猶予、学生納付特例、免除では年金額への反映が異なるため、自分の記録で確認することが重要である。

不足分を補う方法としては、以下が考えられる。

  • 学生納付特例・納付猶予・免除の承認期間が10年以内なら追納を検討する
  • 60歳以降に厚生年金へ加入しない場合、条件を満たせば任意加入制度を利用する
  • 60歳以降も厚生年金に加入して働く場合、老齢厚生年金の報酬比例部分や経過的加算が増える可能性を確認する

厚生年金に40年以上加入した方が良い人・慎重に考えたい人

厚生年金に40年以上加入すると、老齢厚生年金の報酬比例部分は増える可能性がある。しかし、年金額だけを見て「必ず長く働いた方が良い」と判断するのは早い。

40年以上加入するかどうかは、以下のように考えるとよい。

スクロールできます
区分主な考え方
40年以上加入するメリットが出やすい人60歳以降も無理なく働ける人
報酬比例部分を増やしたい人
厚生年金加入期間が480月未満で経過的加算の増加も見込める人
働くことで生活費の取り崩しを抑えたい人
慎重に考えたい人健康面や介護などで働く負担が大きい人
手取り収入より時間の自由を重視したい人
保険料・税金・社会保険料を差し引いた実質的なメリットが小さい人
在職老齢年金による支給停止の影響がある人

60歳以降に働くと、給与収入を得ながら老齢厚生年金を増やせる可能性がある。一方で、厚生年金保険料や健康保険料、所得税、住民税も考慮する必要がある。

そのため、年金額の増加だけでなく、「いつまで働くか」「どの程度の収入で働くか」「手取りはいくら残るか」「年金の支給停止があるか」をセットで確認しよう。

自分の加入期間を確認する方法

記事を読んだ後に確認すべきなのは、自分の「20歳以上60歳未満の国民年金の納付状況」と「厚生年金の加入月数」である。

確認には、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」や、インターネットで利用できる「ねんきんネット」が役立つ。

特に確認したい項目は以下の通りだ。

  • 年金加入期間
  • 国民年金の納付済期間、未納、免除、納付猶予、学生納付特例の有無
  • 厚生年金保険の加入期間
  • 老齢基礎年金と老齢厚生年金の見込額
  • 60歳以降も働いた場合の見込額

50歳未満のねんきん定期便では、これまでの加入実績に応じた年金額が表示される。50歳以上では、老齢年金の種類と見込額が表示されるため、60歳以降の働き方を考える材料になる。

また、ねんきんネットでは、今後の働き方や年金を受け取る年齢、未納分を今後納付した場合など、条件を設定して将来の年金見込額を試算できる。

「厚生年金に40年以上加入すべきか」を考える前に、まずは自分の加入記録に抜けや誤りがないかを確認しておこう。

厚生年金は40年以上加入しても報酬比例部分は増える

厚生年金40年以上加入した場合のまとめイメージ

老齢基礎年金を満額受給するには、原則として20歳から60歳になるまでの40年(480月)分の納付済期間が必要である。

一方で、厚生年金の報酬比例部分は40年で止まるわけではない。40年を超えて加入しても、加入期間や報酬に応じて老齢厚生年金は増えていく。

40年を境に変わるのは、老齢基礎年金の満額基準や、老齢厚生年金の経過的加算の影響である。特に、大卒で学生時代に国民年金を猶予していた人や、60歳以降も厚生年金に加入して働く人は、自分の加入期間を確認しておくことが大切だ。

ただし、60歳以降も働くかどうかは年金額だけで決めるものではない。保険料負担、税金、在職老齢年金、健康状態、働き方の希望を含めて総合的に考えよう。

本記事を参考に、ねんきん定期便やねんきんネットで、自身の加入期間と将来の年金見込額を確認してみてはいかがだろうか。

一方で、老後の悩みは多く、手続きやお金の問題など不安なケースは多いと思う。

そんな時は、アドバイザーに相談するのも一つの方法だ。第三者の視点を取り入れることで、年金だけでなく、老後資金全体の考え方を整理しやすくなる。

少しでも不安やお悩みがある方は、無料相談を申し込んでみてはいかがだろうか。

\ あなたの資産運用を任せるプロを診断 /

出典

日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」(更新日:2026年4月1日)
日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」(更新日:2023年4月3日)
日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」(更新日:2026年4月1日)
日本年金機構「老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額」(更新日:2026年4月1日)
日本年金機構「た行 定額部分」(更新日:2026年4月1日)
日本年金機構「国民年金保険料」(更新日:2026年4月1日)
日本年金機構「厚生年金保険料額表」
日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
日本年金機構「国民年金保険料の追納制度」(更新日:2026年4月1日)
日本年金機構「国民年金保険料の学生納付特例制度」
日本年金機構「任意加入制度」(更新日:2025年9月11日)
日本年金機構「60歳以降も引き続き勤めます。勤めていても年金は受けられますか。」(更新日:2026年4月1日)
日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」(更新日:2026年4月1日)
日本年金機構「大切なお知らせ、『ねんきん定期便』をお届けしています」(更新日:2026年4月1日)
日本年金機構「『ねんきんネット』による年金見込額試算」(更新日:2025年1月7日)

執筆者

資産運用ナビ編集部は、アドバイザーナビ株式会社が運営する金融専門ライターチーム。資産運用アドバイザーと投資家をマッチングするプラットフォーム「資産運用ナビ」を通じて、延べ10,000名を超える相談を支援。おすすめの資産運用おすすめのIFAなど、読者が自身に最適な資産運用の相談先を見つけることができるよう、適切な情報発信に努めている。