「金融機関=安定」というイメージが少しずつ崩れ始め、地方銀行は統廃合が進み、メガバンクも生き残りを賭けた熾烈な争いを繰り広げている。銀行に勤めておけば生涯安泰ではなく、フェーズに合わせて転職する人も増えている状況だ。
銀行出身者のなかには、転職先としてIFAを視野に入れている人も増え始めており、現に、メガバンク出身者がIFAとして活動する事例も出てきている。
この記事では、銀行業界からIFAへの転職を目指す人に向けて、アンケート調査の結果をもとにした前職の割合や、銀行からIFAになる際の課題をまとめた。
IFAになる方法とおすすめの相談先も解説しているので、転職を検討している人はぜひ参考にしてほしい。
銀行からIFAに転職している人の割合
そもそもIFAとは「Independent Financial Advisor:独立系ファイナンシャルアドバイザー」の略で、特定の金融機関に所属せず、金融商品仲介業者の登録を受けたIFA法人の一員として業務にあたるのが特徴だ。
IFAはあくまで証券会社と個人投資家・顧客の橋渡し役であり、直接やりとりするものではない。
IFA法人が提携する証券会社が扱う金融商品であれば自由に提案できるため、証券会社や金融機関に勤めている場合に比べて、商品のラインナップは増えることになる。この点、顧客に対して真に必要な金融商品を提案できるため、前職からIFAになる人が増えているようだ。
アドバイザーナビ株式会社が現役IFA218名に対して行ったアンケート調査によると、前職が銀行系と回答したのは7%だった。うち、4%がメガバンクで3%はその他という結果であり、ほかの割合は以下のとおりである。
前職が証券会社と回答した割合が全体のおよそ70%で、大半を占めていることがわかる。銀行系は少数と言えるが、転職者がいることは事実である。
IFAとして活動する人の年齢層
IFAのバックボーンをさらに詳しく見ていこう。先述のアンケート調査によると、IFAとして活動する人の年齢層は以下のとおりであった。
IFAとして活動する人のほぼ半数が30代という結果である。この結果から、新卒の企業に10年ほど勤め、次のキャリアとしてIFAを選択した背景が推測できそうだ。
次に多いのが50代で、この年代になると定年後を見据え、長期的に働き続けられる仕事としてIFAを選んでいる人もいるだろう。ほかにも、社内で早期退職の募集があり、新しいキャリア形成の一つとしてIFAへの転職を決意したケースも考えられる。
30代を除くと年齢層に大きな差はなく、各世代において、IFAに対する一定の需要・ニーズがあるものと推測できそうだ。
IFAとして活動する人の外務員歴
アドバイザーナビ株式会社が行った先述とは異なるアンケート調査によると、現在IFAで活躍する人の外務員としての活動年数は以下の結果であった。
- 3年未満:10%
- 3年以上5年未満:10%
- 5年以上7年未満:10%
- 7年以上10年未満:10%
- 10年以上15年未満:21%
- 15年以上20年未満:13%
- 20年以上:26%
外務員として10年以上活動している人の割合は60%に及び、顧客と関わりながら現場で仕事をしてきた人が多いことがわかる。
外務員歴が10年未満の場合、期間には目立ったばらつきはなく、前職で現場経験を積んだ人がIFAになっているとは限らないと言えるだろう。
広義で見ると業務の本質は同じ
金融業界であれIFA業界であれ、顧客の資産を預かるという点で見れば同じであり、資産運用や管理など、お金に関する悩みごとに寄り添うアドバイザー業という本質は共通している。
もちろん、IFAに転職した際は専門的な知識を身につける必要はあるが、広義の金融に関する知識は前職で十分習得できており、活躍する素養が備わっているはずだ。
ミクロ的な視点で見ると銀行とIFAは異業界であるのは事実だが、マクロ的に見れば、顧客に提供する価値は似ていることがわかる。
「顧客の悩みやニーズを引き出し、解決するためのベストな提案をする」という点は銀行もIFAも同じであるため、転職者は少ない状況だが、活躍するチャンスは十分あるはずだ。
また、どのような人がIFAになっているのか、詳しく知りたい方は下記の記事を参考にして欲しい。
銀行からIFAになる際の課題は?
銀行からIFAに転職した人の割合は全体の7%であり、証券会社・保険会社に次ぐ割合で、決して多いとはいえない結果であった。
IFAと銀行業務の本質に大きな違いはないものの、転職に対してネックに感じる点があるため、銀行系からIFAに転職した者の割合が多くないものと推測される。
ここでは、銀行からIFAになる際に考えられる課題について、3つの観点で解説する。
- 顧客基盤の醸成が難しい
- 収入減少の可能性
- 社会的信用の低下
必ずしも上記3つが課題になるわけではないが、IFAを取り巻く環境への理解として読み進めてほしい。
顧客基盤の醸成
銀行系からIFAへの転職に際して、特にネックになるのが顧客基盤の醸成に関してだろう。
そもそもIFAになる際、企業と雇用契約または業務委託契約を締結することになり、転職時はどちらの契約を結ぶか決めなければならない。
雇用契約を締結して正社員型のIFAとして活動する場合、企業からサポートを受けながら駆け出し期を乗り越えていけるメリットがある。
業務委託契約を締結して業務委託型のIFAになった場合、個人事業主としてすべて一から顧客開拓していく必要があり、この点にハードルの高さを感じる人が多いかもしれない。
さらに、業務委託型の場合は完全成果報酬型になるため、顧客を獲得して契約が取れなければ収入はゼロだ。後述する収入減少への備えという点も含めて、IFAへの転職に対してネガティブに考えている人が多いものと推測される。
IFAに転職する際は、顧客をいかにして獲得していくか、戦略を事前に考えておくことが重要である。
収入減少への備え
IFAへの転職に際して懸念されるのが、収入が減少する可能性がある点だ。
特に、メガバンクで一定程度の成果を残している場合はもちろん、銀行・金融業界は総じて年収が高い傾向にあり、IFAになることで大幅な収入ダウンを恐れている人もいるだろう。
確かに、業務委託型のIFAを選択した場合は収入がゼロになるリスクがある一方で、収入は青天井と言える。年収数千万を稼ぐことも不可能ではなく、自身の努力や行動次第で現職よりもさらなる年収アップを狙えるだろう。
また、先ほど解説したように、IFAには正社員採用の枠も用意されている。
実際、アドバイザーナビ株式会社が行ったアンケート調査では、正社員型のIFAとして働いているのが44%、業務委託型が56%という結果だった。雇用形態の別はほぼ半々という内訳で、転職先の待遇次第では収入が下がることはないだろう。
業務委託型のIFAとして活動するのであれば、数ヶ月間無収入になっても生活できるような資金の備えがあったほうが安心だ。ほかにも、今以上に生活水準を上げず、生活費を抑えるなどの基本的な節約思考も重要といえる。
社会的信用が下がる場合も
銀行系からIFAに転職する際に懸念される点として、社会的信用が下がる場合もあるのは注意が必要かもしれない。
IFAが国内に普及したのは2004年のことで、2023年6月時点におけるIFAの数は約6,500名とされている。
直近5年ほどでIFAの数は倍近く増えているものの、世間一般における認知度はまだまだ低いのが実情だ。また、IFA法人自体の知名度も金融機関に劣ると言わざるを得ない。
さらに、一部のIFAにおいて、自身の報酬目当てで高額な手数料が発生する金融商品ばかりを提案するなどしており、IFAの業界全体のイメージを悪化させている側面もある。
現職がメガバンクではないにしても、金融機関に勤めているという点で社会的な信用度は相当高く、転職によって信用度が下がる可能性もある点には注意が必要だ。
IFAになるには
ここでは、銀行系の職種からIFAになるにあたって、どのような手順を踏むべきか4つのステップで解説しよう。
- IFAとしての契約形態を決める
- IFAに必要な資格を取得する
- 業界の知識を深める
- 転職エージェントを頼る
IFA業界は市場がまだまだ未成熟であり、転職に関する体系だったノウハウも確立されていない。以下で紹介する内容のとおりに実践・検討していけば、IFAへの転職をスムーズに進められるだろう。
IFAとしての契約形態を決める
IFAへの転職を検討する際は、初めに希望する契約形態を決めておいたほうがスムーズだ。
IFAの求人としては、業務委託契約の人材を募集する法人のほうが多い印象である。転職先を探すにあたって、契約形態の種別で絞り込んだほうが条件もマッチしやすいため、先に希望を決めておこう。
正社員型と業務委託型の双方におけるメリット・デメリットは以下のとおりである。
メリット | デメリット | |
正社員型 | 給料が安定する 社会保険に加入できる | 収入に上限がある 働き方の自由度は少ない |
業務委託型 | 収入は青天井になる 好きな時間や場所で働ける | 収入は不安定になる 社会保険に加入できない |
何を重視するかは人によって異なるため、優先順位をつけて契約形態を最初に決めておこう。なお、IFA法人によっては、募集していない契約形態についても交渉次第で形態を変えられる場合もある。
ケースバイケースではあるが、働き方の方向性を先に固めておいたほうが転職活動を進めやすくなるはずだ。
IFAに必要な資格を取得する
IFAとして活動するにあたって必要な資格としては、証券外務員資格が挙げられる。
顧客に対して具体的な金融商品を提案するために必要であるため、取得していない人は転職活動中に学習を進めよう。
なお、証券外務員資格には一種と二種がある。二種資格は扱える金融商品が限定的であるため、IFAとして活動するなら難易度の高い一種資格取得を目指そう。
なお、顧客に対して金融商品だけでなく生命保険なども提案したい場合は、生命保険募集人資格も必要だ。これは、具体的な生命保険の提案の際に必要となり、状況としては証券外務員資格と同じである。
これら2つの資格を取得しておけば、IFAとしていつでも活動できるだろう。
業界の知識を深める
IFAとして活躍し続けるためには、業界特有の知識を深める努力も欠かせない。IFAは顧客の資産運用や管理に留まらず、広範囲な悩みに対する最適な解決策を提案する必要がある。
- 不動産の有効活用
- 相続対策
- 事業承継
顧客と信頼関係を構築できると上記のような相談をされるケースもあり、いわゆる資産運用だけでなく、広く金融やビジネス全般にまつわる知識も求められるのだ。
「困ったことがあればあの人に相談しよう」という存在になれたら、世代を超えて資産管理を任せてもらえるようになるだけでなく、顧客から新たな顧客を紹介してもらいやすくなる。
顧客から紹介をもらう好循環をつくるためにも、業界に関する知識は常にアップデートし続ける必要があるだろう。
転職エージェントを頼る
IFA法人への転職を本気で成功させたいのであれば、転職エージェントの利用は必須だ。
現時点において、IFAに関する情報はあまり出回っておらず、企業も自社の情報について積極的に開示しているわけでもない。本メディアではIFAへの転職に関する専門的な情報を発信しているが、このような媒体の数も限られている。
IFA業界に限らず、転職を成功させるには情報の量と質が重要である。IFAに関する情報を効率よくキャッチするためにも、転職エージェントの利用が欠かせないのだ。
転職エージェントを利用することで、ニーズに合わせた求人情報の紹介はもちろん、面接日程の調整や条件交渉も代行してくれるため、転職活動の手間も省けるだろう。
次の見出しでは、おすすめの転職エージェントを紹介しているので、IFAへの転職を検討している人は参考にしてほしい。
IFAになる際の相談先
最後に、IFAへの転職を目指す人におすすめしたい相談先を3つ紹介しよう。
- 金融転職
- ビズリーチ
- IFA転職
いずれも無料で利用でき、サービスの特徴も異なるため、すべて併用してもよいだろう。情報収集源を一つにしておきたい場合は、最後に紹介するIFA転職が最もおすすめだ。
それぞれの特徴を解説するので、使いやすそうなサービスを利用してIFAへの転職を成功させよう。
金融転職
「金融転職」は、金融業界への転職に特化した転職エージェントである。キャリアコンサルタントは業界に精通しており、丁寧なヒアリングを踏まえた求人情報の紹介はもちろん、面接日程の調整や条件交渉も対応してくれる。
IFA業界に特化しているわけではないが、金融転職が扱う求人には多数のIFA法人があるため、さまざまな企業の情報にアクセスできるだろう。
IFA業界はもちろん、銀行から他の金融系業界への転職を検討している人は、金融転職の利用がおすすめだ。
ビズリーチ
「ビズリーチ」は、総合型転職エージェントとして認知している人も多いだろう。ビズリーチの場合、登録時に経歴を細かく入力しておくことで、プロフィールを閲覧した企業の採用担当者から直接連絡が届くスカウト制を採用している点が特徴的である。
また、ビズリーチはハイクラスな求人や高年収を実現できる求人を多数扱っているため、年収アップを狙っている人にはぴったりだ。IFAとして年収をアップさせたい人は、ビズリーチを利用してみるとよいだろう。
現職が多忙で転職活動に時間を割けない人は、ビズリーチに登録だけでもしておき、届いたスカウトから転職先を検討する形の利用もおすすめだ。
IFA転職
「IFA転職」は、IFAへの転職に特化した転職エージェントである。キャリアコンサルタントはIFA経験者であり、転職活動中の疑問点はもちろん、転職後の不安点についても都度解消できるだろう。
ヒアリングを踏まえたIFA法人の紹介だけでなく、面接日程の調整や条件交渉も当然行ってくれる。さらに、IFA転職なら、転職成功後の業務サポートも提供している。
IFAとして活動し始めてから生じた疑問点なども解消できるため、軌道に乗るまでの駆け出し期も乗り越えやすいだろう。
IFA業界に特化した転職エージェントはまだまだ少ないため、IFAへの転職を確実に成功させたい人は、「IFA転職」を利用するのがおすすめだ。
銀行での経歴を活かしてIFAへの転職を目指そう
前職が銀行系であるIFAの割合は全体の7%であり、決して高くはないのが現状だ。しかし、マクロ的な視点で見ると、「顧客の資産を適切に管理・運用する」という意味で銀行とIFAの業務における本質は同じである。
銀行系からIFAへの転職に際しては、顧客基盤の醸成や収入減少への備え、社会的信用が下がる可能性がある点には注意が必要だが、働き方や転職先の選び方次第で対応できるだろう。
IFAへの転職を成功させたい人は、転職エージェントを有効活用して、手間を省きつつ効率よく情報収集していくとよいだろう。「IFA転職」なら、転職前後を含む幅広いサポートを提供しているため、安心してIFAに転職できるはずだ。
IFAへの転職を検討している人は、本記事の内容を踏まえて適切な準備と対策をしていこう。