「貴方様だけの専任担当者がおります」といった案内を受け取れば、決して悪い気はしないはずである。これは「貴方は特別で大切なお客様である」というメッセージを伝えているからである。
プライベートバンクのサービスを受ける際には、「プライベートバンカー」と呼ばれる専任の担当者がつくことになる。
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外資系プライベートバンクや、野村證券、三菱UFJモルガン・スタンレーPB証券のウェルスマネジメント部門の出身者等に資産運用の相談ができるサービス。アドバイザーナビ株式会社が運営するサービス。同社は日経新聞や東洋経済で度々取り上げられている。
プライベートバンカーとは?
プライベートバンカーとは、プライベートバンクにおいて顧客ごとに専属でサービスを提供する担当者である。所属する金融機関によっては、「ウェルス・マネジャー」や「ファイナンシャル・コンサルタント」と呼ばれることもある。
プライベートバンクと一般的な銀行との大きな違いは、専任の担当者が付くかどうかという点である。プライベートバンクでは、すべての顧客に対して専任の担当者が付き、顧客ごとのニーズに応じたオーダーメイドのサービスを提供する。
一方、一般的な銀行、証券会社、保険会社では、1人の営業担当者が数百人単位の顧客を受け持つのが通例である。
プライベートバンカーが担当する顧客数は、少ない場合で数人、多くても20~30人程度に限定されている。これは、プライベートバンクを利用する富裕層のサービスに対する要求水準が高いため、その水準に応えるには、顧客数を絞る必要があるからである。
ここで言う要求水準の高さとは、単に高い投資利回りを求めるというだけでなく、多額かつ複雑な資産ポートフォリオの円滑な管理、洗練された節税スキームの提案、迅速な対応など、総合的かつ高度なサービスを意味する。
プライベートバンカーの仕事
プライベートバンカーは、たとえて言うなら「お金の執事」のような存在である。顧客の資産状況を把握し、顧客のニーズに応じた多様なサービスを仲介・調整することが役割である。
主な業務内容としては、資産ポートフォリオの提案、顧客の要望に適したファンド等のプロダクトの選定、税理士や弁護士との連携による節税対策・相続対策のプランニングなどが挙げられる。
その仕事の本質は、資産を「増やす」ことよりも「守る」ことに重点が置かれている傾向にある。
資産を守るとは、単にリスクの高い投資で損失を避けるというだけでなく、所得に対する節税、相続税の圧縮、事業失敗や訴訟による資産の毀損リスクからの保全、さらには金遣いの荒い家族など好ましくない相続人への資産移転を回避することまで含まれる。
プライベートバンカー自身がすべての実務を行うわけではなく、顧客と各分野の専門家との間に立つ仲介・調整役としての側面が強い。
たとえば、資産運用であればファンドマネージャー、融資であれば融資担当者、不動産関連であれば不動産会社、税務申告であれば税理士、相続に関しては弁護士など、それぞれの専門家と連携して対応する。
プライベートバンカーになるために必須の資格は、証券外務員程度である。もちろん、ファイナンシャル・プランナーや証券アナリスト、その他の金融関連資格、さらには税理士や弁護士資格があれば望ましいが、実務の多くは各専門家が担うため、必須ではない。
海外では、高卒の銀行事務員やヨットクラブのスタッフからプライベートバンカーになった事例も存在する。
また、資産運用という中核業務に加え、顧客との関係を維持するためのサービスも幅広く行われる。たとえば、海外旅行への同行、子女の留学先の斡旋、親の介護施設の手配、さらには友人のような話し相手になることさえある。
プライベートバンカーに求められているもの
プライベートバンカーに求められる第一の資質は、顧客に対する献身である。あるいは、顧客からの揺るぎない信頼と言い換えることもできる。
富裕層は多額の資産を有しているがゆえに、信頼に足る人間を見極める必要がある。富のあるところには人が集まりやすく、古今東西、お金持ちは常に誰かに狙われるリスクを抱えている。そのため、他人への警戒心が強くなる傾向がある。
税務や相続の相談となると、家庭の極めて個人的な事情にも踏み込まざるを得ない場面がある。
たとえば、三人兄弟のうち長男にだけ会社を継がせたい、家族に内緒の子供にも財産を残したい、離婚を控えており財産分与を最小限に抑えたい、など、非常にデリケートな問題についても、プライベートバンカーは相談相手となり、解決のための支援を行う必要がある。
経済、金融、税務、法律に関する専門的知識や経験が重要であることは言うまでもないが、それ以前に、命と同等、あるいはそれ以上に大切とされる「お金」や「家族」のことを安心して任せられる誠実な人物であると思われることが大前提である。
日本のメガバンクや証券会社のプライベートバンキング部門では、担当者が数年で異動してしまうことが多い。しかし、海外ではプライベートバンキング業務の性質上、顧客とプライベートバンカーの関係が生涯にわたって続くこともあり、さらには親から子へと世代を超えて継承されることさえある。
あるプライベートバンカーは、長年担当していた顧客の訃報を耳にしたとき、自然と涙がこぼれたという。それは、彼らの間に単なる担当者と顧客以上の絆があった証である。
このような人間的魅力に加え、当然ながら職務遂行能力の高さも求められる。富裕層の資産ポートフォリオは一般のそれと比べてはるかに複雑であり、その全体像を的確に把握し、的確かつ円滑に業務を遂行する能力が必要とされる。
- プライベートバンカーとは、富裕層の専任担当者である。
- プライベートバンカーは「お金の執事」とも呼ばれ、顧客と各専門家との仲介・調整役を担う。
- プライベートバンカーに求められる最も重要な資質は、顧客に対する献身であり、あわせて高い職務遂行能力も不可欠である。
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