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プライベートバンクに運用を依頼した場合の利回りはどのくらい?

プライベートバンクは富裕層に対してオーダーメイドの金融サービスを提供している。では、そのオーダーメイドサービスによってもたらされる利回りは、一般的な金融機関のサービスと比べて高いのだろうか、低いのだろうか。

イメージとしては、富裕層向けの特別なサービスである以上、一般的な金融サービスよりも良い利回りが期待できるように思える。実際のところはどうなのだろうか。

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目次

原則として期待リターンは一般的な金融商品と変わらない

プライベートバンクが提供する金融商品の期待リターンは、原則として一般的な金融機関で投資可能な金融商品と変わらない。2022年現在の市場環境においては、株式であれば年率5~8%、債券であれば1~5%、不動産であれば3~5%程度の利回りが目安となっている。

プライベートバンクの金融商品の期待リターンが一般的な金融商品と変わらない理由は、資産の期待リターンが基本的にアセットクラスによって決定されるためである。資産運用の世界では、運用成果に対する寄与度の約90%が資産配分(アセットアロケーション)に起因しており、売買のタイミングや個別銘柄の選定による寄与は10%程度にすぎないという研究結果が存在する。

すなわち、現金・株式・債券・不動産をどのような比率で保有するかによって、ポートフォリオ全体の期待リターンはほぼ決定されるのである。

もちろん、1年で株価が10倍になる企業や、ウォーレン・バフェットのように卓越した運用成績を誇るファンドマネージャーが運用するファンドも存在する。

しかしながら、担当となったプライベートバンカーがそのような「儲かる株」や「優良ファンド」を的確に見極める能力を備えている可能性は、残念ながら高くない。確率論的に見れば、プライベートバンカーが提案するポートフォリオの期待リターンは「人並み」である可能性が高い。

プライベートバンカーは、職業人としては優秀であり、人間性にも優れている場合が多いかもしれない。しかし、数ある能力の中でも、特に投資に関する才能に秀でた人物であれば、他人の資産を運用するプライベートバンカーという職を選ぶよりも、自らファンドマネージャーや個人投資家として独立する道を選ぶ可能性が高い。

その方が、より高い報酬を得られるからである。ゆえに、「投資の上手いプライベートバンカー」という存在は、非常に見つけにくいと言える。

富裕層に限定された高利回り商品

それでも、プライベートバンクを経由することで投資可能な高利回り商品は存在する。

それは主に「私募ファンド」や「私募債券」と呼ばれる商品である。私募とは、限られた投資家を対象に募集を行う形式を意味する。

具体的には、非上場企業に投資するプライベートエクイティ、信用力の低い企業の金融債権に投資するプライベートデット、物件の開発から手掛ける私募不動産ファンド、農地・森林ファンド、自然災害に備えた火災保険・地震保険に投資するファンド、企業の社債、オーダーメイドの仕組債などが挙げられる。

商品によっては、プライベートエクイティファンドで年率20%超の運用成果を達成しているものもある。

これに対し、公募商品とは「公」すなわち不特定多数に対して募集するものである。具体的には、上場株式、公募投資信託、ETF(上場投資信託)、個人向け国債などが該当する。

私募とされる金融商品には

  1. 公募の金融商品よりも利回りが高い
  2. 流動性が低い
  3. 最低投資金額が大きい

といった特徴がある。

私募商品の発行背景としては、発行体側が長期的かつ安定した資金を低コストで調達したいというニーズがある。

株式ファンドの例でいえば、公募投信の場合、最低でも数百人、場合によっては数十万〜数百万人規模の投資家に販売する必要がある。投資家の中には金融リテラシーの乏しい者も含まれ、影響を受ける人数も多いため、金融庁などの行政当局による規制や監視も厳しくなり、管理・コンプライアンス対応のコストが増大する。

一方、私募ファンドは少人数のプロあるいはセミプロの投資家を対象とするため、公募商品に比べて規制や監視が緩やかであり、対応すべき投資家の人数も少ないことから、営業や顧客管理のコストを抑えることが可能である。

ただし、私募ファンドには満期まで解約できなかったり、情報開示が不透明であったりと、公募ファンドと比べて流動性や信頼性の面で劣る側面がある。

言い換えれば、私募ファンドは公募ファンドよりもリスクが高いということになる。そのため、投資家はリスクの高さに見合うリターンを要求する傾向がある。

また、私募商品の投資対象は非公開企業やデリバティブなど、リスクの高いアセットクラスであることが多い。高リスクの資産に投資するためには、それに見合うリスク許容度を持った資金を集める必要がある。

このような事情から、私募商品は豊富な資金力と高い金融リテラシーを持つ投資家に向けて販売されるべき商品であり、マスリテール向けの銀行や証券会社では、ハイリスク商品を安易に販売することはできない。

一方、富裕層は多額の資産を保有しているためリスク許容度が高く、金融リテラシーも一般投資家と比べて高い傾向にある。そのため、富裕層と強い関係を持つプライベートバンクを経由して、ハイリスク・ハイリターンな私募商品が案内されることになる。

プライベートバンクが提供する高利回り商品は、商品自体が「特別に」優れているわけではない。ハイリスク・ハイリターンの原則に基づき、高いリスクを取っているからこそ高いリターンが期待できるという認識が必要である。富裕層は経済的余裕が大きいため、一般投資家と比べて高いリスクを取ることができる。その結果、より高いリターンを得られているというのが本質である。

レバレッジの提供

プライベートバンクを利用することで、レバレッジをかけた資産運用を行うことが可能な場合がある。具体的には、保有している株式や有価証券を担保に資金を借り入れ、それをもとにさらに投資を行うことでレバレッジを活用するのである。

たとえば、利回り4%の米国債を100万ドル分保有し、それを担保に50万ドル(評価額の50%)を年利1%で借り入れる。この50万ドルでさらに利回り4%の米国債を購入すれば、借入金利を差し引いて3%の利回りを得られる。

さらに、追加で購入した50万ドルの米国債を担保に再度借り入れを行えば、さらに25万ドルを借り入れることが可能になる。これを限界まで繰り返すと、最終的には元本100万ドルに対して、約200万ドル弱の米国債を保有することができる。

この場合、元本100万ドルに対する実質的な利回りは7%(最初の投資分で4%、借入資金分で3%)にまで高まる。

一般的な証券会社でも類似の「有価証券担保ローン」は提供されているが、プライベートバンクにおいては、借入上限、金利、担保対象となる有価証券の種類などの条件が、より柔軟に設定されている傾向がある。

もちろん、レバレッジをかけることでリスクも高まる。また、すべてのプライベートバンクが有価証券担保ローンを提供しているわけではない点にも注意が必要である。

この記事をまとめると・・・
  • 原則として、プライベートバンクで提供される金融商品の利回りは一般的な金融機関の提供する商品と変わらない。
  • オルタナティブ投資を中心とした、プライベートバンク経由でしか投資できない高利回り商品は存在するが、それらは公募投信や上場株式と比べてハイリスクである。
  • プライベートバンクでは、有価証券担保ローンを活用したレバレッジによる資産運用が可能である場合がある。

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