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日本国内で取引できるプライベートバンクの特徴とは?口座開設におすすめの先も解説

プライベートバンクの本場は、世界最大の経済大国であるアメリカ、中世以来の伝統を有するスイス、あるいは世界各地に存在するタックスヘイブン(租税回避地)である。

しかしながら、日本人富裕層にとっては、日本国内のプライベートバンクの方が使い勝手が良い場合が多い。

今回は、日本におけるプライベートバンク事情について紹介する。

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目次

日本のプライベートバンク

国内でプライベートバンキングサービスを提供する金融機関

日本国内においては、証券会社系、銀行系、外資系の日本拠点などがプライベートバンキングサービスを提供している。具体的には、以下のような機関が該当する。

証券会社系プライベートバンク
  • 野村證券
  • 大和証券
  • SMBC日興証券
  • みずほ証券
  • 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
  • 香川証券 など
銀行系プライベートバンク
  • 三菱UFJ銀行
  • 三井住友銀行
  • みずほ銀行
  • 三井住友信託銀行
  • りそな銀行
  • 千葉銀行
  • 静岡銀行
  • 琉球銀行
  • 十六銀行
  • 横浜銀行 など
外資系プライベートバンク
  • UBS(スイス)
  • クレディスイス(スイス)
  • ジュリアス・ベア(スイス)
  • ロンバー・オディエ(スイス)

日本国内には、プライベートバンク専業の金融機関はほとんど存在しない。大手証券会社やメガバンクでは、富裕層専用の支店や部署という形で、プライベートバンキングサービスを提供している。

メガバンクグループにおいては、グループ内の銀行と証券会社が連携してサービスを提供するケースも多い。

例えば、野村證券における富裕層対応専門部署は「ウェルスマネジメント」として、全国の営業店とは異なる指揮系統のもとで運営されている。メガバンクや大手証券会社でも同様の体制が採られている。

香川証券、千葉銀行、静岡銀行などの地方金融機関においては、実際の資産運用についてスイスのロンバー・オディエと提携し、代理店として顧客を紹介する形をとっている。

日本国内のプライベートバンクの特徴

日系のプライベートバンクは、銀行系と証券系に限られており、保険会社を母体とするものやプライベートバンク専業の金融機関は存在していない。そのため、日系プライベートバンクのサービスには、預金と融資を軸に安定運用を志向する銀行色、あるいは有価証券による積極的な運用を志向する証券色が強く現れる傾向にある。

ちなみに、海外においても銀行系および証券系が中心ではあるが、オランダのINGグループのように保険会社を源流とするプライベートバンク、スイスのジュリアス・ベアのようにプライベートバンク専業として発展してきた金融機関も存在する。

マスリテール向けのサービスを提供しないプライベートバンク専業の金融機関としては、スイス系の4社が知られており、その中でも投資銀行部門を持たないジュリアス・ベアおよびロンバー・オディエの2社が典型例である。

プライベートバンク専業を標榜する日系業者も存在するが、実態としてはIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)であり、本来の意味におけるプライベートバンクとは異なることが多い。多くの場合、IFAは他の金融機関の代理店に過ぎず、顧客の資産を自社の銀行口座や証券口座の形で直接預かる機能を持たない。

もっとも、伝統的なスイスのプライベートバンクも、かつては無限責任を負う小規模な銀行として出発しているため、日系の小規模業者が将来的に本格的なプライベートバンクとしての地位を確立する可能性も否定できない。

2022年時点において、日本に営業拠点を構える主な外資系プライベートバンクは、すべてスイス系である。かつてはシティ(米国)、メリルリンチ(米国)、HSBC(英国)なども日本国内で富裕層向けサービスを展開していたが、すでに日本市場からは撤退している。

モルガン・スタンレー(米国)については、日本に拠点を有しているといえるが、日本国内における実際の運営は、親会社である三菱UFJフィナンシャル・グループが主導している。

外資系金融機関から見れば、日本の商慣習、文化、言語といった面が、日本の富裕層市場への参入における大きな障壁となっていると考えられる。

原則としては日系大手金融機関のプライベートバンキング部門がおすすめ

日本国内に居住する日本人富裕層を前提とした場合、原則として日系のメガバンクや大手証券会社のプライベートバンキング部門(会社によっては「ウェルスマネジメント部門」等、呼称に違いがある)を利用することが推奨される。

日系大手金融機関のプライベートバンキング部門を選ぶことによる主なメリットは以下の通りである。

日本語での対応が可能

第一に、日本語での対応が可能であるという点が挙げられる。

金融商品の仕組みやリスク・リターン、税制等に関する説明はしばしば複雑かつ繊細である。ネイティブレベルで外国語(主に英語)を理解できる場合を除き、こうした内容を母語以外で正確に理解することは難しいと言える。

また、日系大手金融機関であれば、日本の法制度および税制度について熟知しており、適切な助言が可能である。

これに対し、日本国内に拠点を持たない外資系プライベートバンクの場合、日本の法制度や税制に対する理解が不十分であることも多く、「節税のつもりが脱税と判断された」「本来得られるはずの節税効果を逃してしまった」といったリスクを伴う可能性が高い。

日本市場から撤退するリスクが低い

さらに、日系の大手金融機関であれば、日本市場から撤退するリスクが極めて低く、長期的・安定的に取引を継続できる点も魅力である。

一方で、外資系のプライベートバンクは、これまでに日本市場への参入を試みたものの、撤退に至った例が複数存在する。具体的には、シティ(米国)、メリルリンチ(米国)、HSBC(英国)といった世界的な大手金融機関であっても、日本市場で十分な顧客を獲得できず、撤退した過去がある。

外資系と日系で金融商品のリターンには大きな差はない

資産運用という観点から見ても、外資系と日系で提供される金融商品のリターンには大きな差はない。

確かに、外資系プライベートバンクの一部では、ヘッジファンドやプライベートエクイティなどの高利回りなオルタナティブ投資商品を豊富に取り揃えていたり、有価証券担保ローンを活用した高レバレッジ投資が可能であったりすることから、相対的に高いリターンを期待できる場面もある。

しかし、こうした高リターンの源泉は、流動性の低さやレバレッジの使用といった「高リスク」に起因するものであり、必ずしも商品そのもののリスク・リターン特性が優れていることを意味するわけではない。日系金融機関では、一部のオルタナティブ商品について購入が難しい場合もある。

もっとも、資産ポートフォリオ全体への影響という点では、オルタナティブ商品の有無による差は限定的である。

それよりも、株式、債券、不動産、現金といった基本的な資産の配分割合(アセットアロケーション)のほうが、リターンに与える影響は大きい。

レバレッジに関しても、有価証券担保ローン以外に、信用取引や先物取引を活用することで、同様の効果を得ることは十分に可能である。

なお、英金融誌ユーロマネーが実施した「プライベート・バンキング・サーベイ2022」において、「日本のプライベートバンキング部門」では三菱UFJモルガン・スタンレー証券が総合ランキング1位に選出されている。

日系プライベートバンクのメリット

日本の法制度・税制度・商慣習に精通している

当然のことであるが、日系プライベートバンクは日本語での対応が可能であり、日本の法制度・税制度・商慣習に精通している点は大きな強みである。

プライベートバンクの主たる顧客である富裕層にとって、節税(相続税対策を含む)は非常に重要な関心事である。

節税の計画において、合法と違法の境界線を誤って越えてしまえば、多額の追徴課税が課されるのみならず、場合によっては脱税とみなされ、刑事罰の対象となる可能性もある。

こうしたリスクに対し、日本国内の制度に精通していない外資系プライベートバンクと比較すれば、日系金融機関の方が「レッドライン(越えてはならない一線)」を踏み越えてしまうリスクは相当に低いと言える。

大手日系金融機関の安心感

また、大手日系金融機関が撤退・破綻するリスクが極めて低いという点も、大きなメリットである。

外資系プライベートバンクの場合、日本国内に拠点を構えていたとしても、顧客数の不足や収益性の低さなどを理由に撤退する事例は少なくない。

同様に、地方金融機関においても経営基盤の問題から、将来的に富裕層向けビジネスから撤退する可能性は否定できない。

その点、メガバンクや大手証券会社のプライベートバンキング部門であれば、安定的かつ継続的に国内でサービスを受けられる可能性が高い。

日系プライベートバンクのデメリット

節税スキームの選択肢が少ない

一方で、日系金融機関にはデメリットも存在する。

米系、英系、スイス系などの外資系金融機関と比べると、国際的な金融ネットワークが相対的に弱く、海外のオルタナティブ資産への投資や、タックスヘイブン(租税回避地)を活用した節税スキームに関して、選択肢が限定される傾向がある。

語学力が物足りないことも

また、所属するプライベートバンカーが外国語(特に英語)に堪能でない場合も少なくない。

とはいえ、外資系プライベートバンクであっても、一般的な金融商品を超えて特別なオルタナティブ投資の紹介を受けたり、タックスヘイブンを活用した節税スキームが有効に機能したりするのは、資産規模が数十億円以上の超富裕層が対象となるケースである。

資産規模が数億円程度の、いわゆる一般的な富裕層にとっては、国内に拠点を構える日系金融機関との取引の方が、実務的かつ安全性の面でも無難であると言える。

外資系プライベートバンクを選ぶ場合

外資系プライベートバンクを選択する際であっても、日本語対応の可否や、日本の法制度・税制度への理解度といった観点から、日本国内に拠点を持つプライベートバンクを選ぶことが望ましい。

2022年現在、日本国内に拠点を構える外資系プライベートバンクは、UBS、クレディ・スイス、ロンバー・オディエ、ジュリアス・ベアのスイス系4社である。

これらのスイス系プライベートバンクは、英米系のプライベートバンクが日本市場から撤退した後も営業を継続しており、比較的高い安定性を備えていると評価できる。

英金融誌『ユーロマネー』が発表した「プライベート・バンキング・サーベイ2022」における「日本のプライベートバンキング部門」においては、UBSが総合ランキング第2位、クレディ・スイスが第3位に選出されている。

また、UBSは『GLOBAL FINANCE』による「日本のベストプライベートバンク」にも選ばれている。

日本に拠点を持たない外資系プライベートバンクの場合

『ユーロマネー』の「プライベート・バンキング・サーベイ2022」における「グローバル・プライベートバンキング部門」では、J.P.モルガンが総合ランキング第1位となっている。

また、『GLOBAL FINANCE』による「世界のベスト・プライベートバンク」においても、J.P.モルガンがトップに選出されている。

J.P.モルガンは日本法人を有しているが、日本における事業の中心は、企業の資金調達やM&Aを担う投資銀行部門、および機関投資家向けのマーケット部門であり、個人富裕層向けのプライベートバンキング業務は展開していない点には注意が必要である。

ちなみに、同ランキングにおいては、UBSが総合第2位、クレディ・スイスが第3位となっている。

世界的にも高い評価を受けるUBSおよびクレディ・スイスが、日本国内にも拠点を構えている現状において、あえて日本に拠点を持たない外資系プライベートバンクを選ぶ合理的な理由は乏しいといえる。

もっとも、合法と違法の境界を意識的に攻め、場合によっては日本の法令では違法となる可能性すらあるような、極めて積極的な資産運用や節税を志向するのであれば、タックスヘイブン(租税回避地)に拠点を持つ小規模なプライベートバンクを利用する意義はあるのかもしれない。

実際、そのような手法を実行している富裕層は世界中に数多く存在している。

しかしながら、日本に居住する富裕層がこのような“攻めた”運用を行った場合、日本の税務当局によって脱税と判断される可能性は否定できず、極めて慎重な対応が求められる。

この記事をまとめると・・・
  • 日本には、プライベートバンク専業の金融機関はほとんど存在せず、主に大手金融機関の富裕層向けサービス専用部門として営業している。
  • プライベートバンク口座を開設したいのであれば、日本語対応が可能であり、日本の法制度・税制度に精通しており、かつ経営の安定性が高いという観点から、日系大手金融機関のプライベートバンキング部門を選ぶのが望ましい。
  • 日系プライベートバンクを利用することのメリットは、日本語による対応が可能であることに加え、日本の法制度、税制度、商習慣に精通していることである。
  • 日系プライベートバンクのデメリットとしては、外資系プライベートバンクと比較して、海外案件に関するオルタナティブ投資や、タックスヘイブン(租税回避地)を活用した節税スキームへの対応力が劣る点が挙げられる。
  • 外資系プライベートバンクで口座を開設する場合には、日本国内に拠点を有する金融機関を選ぶのが望ましい。特に、UBSおよびクレディ・スイスの2社は、世界的にも高い評価を受けており、信頼性が高いとされている。
  • 日本に拠点を持たないプライベートバンクであれば、J.P.モルガンが国際的に極めて高い評価を受けている。ただし、合法と違法の境界線を意図的に攻めるような積極的な資産運用を望まない限り、日本に拠点を持たないプライベートバンクを利用するメリットは限定的であると言える。

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