「炭鉱のカナリア」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
カナリアは異変を感じると鳴き止む習性を持っており、炭鉱で働く人は3羽のカナリアを持っていくことで危機を事前に察知したという。投資の世界にも「炭鉱のカナリア」は存在している。
それは景気の変調をいち早く教えてくれる「金利」の大きな特徴である。
つまり金利の理解を深めることで投資家として市場の捉え方が向上していくことが期待できる。実際、金利への理解や注意力が低かったことで失敗した経験のある投資家は多い。
そこで今回は金利の何に注目し、どのような変化をするのか、それが景気にどんな影響を与えているのかを考察していく。
金利は景気の現在地を示している
金利を考える上で最も注目されるのは米国の利上げである。
その理由は米国が資本主義社会における覇権国であるため、米国の動向が世界中の国々へと影響を与えているからだ。
実際、米ドルはほとんどの金融機関で扱っており、他の通貨よりも両替手数料が安い。
その理由は米ドルが世界中で通用するからであり、米国が実質的に世界の中心国である何よりの証だろう。
そのため現在のような「米国の利上げ」は、世界中の政府や中央銀行、金融関係者が動向に注目しているといえる。
また米国の景気動向は多くのグローバル企業にも影響を及ぼしている。
たとえば自動車メーカーなどは北米市場の影響が売上にダイレクトに反映されるため、米国の金利動向によっては経営戦略を変更することもあるはずだ。
このように金利は景気サイクルにかかわらず、景気の変化に対していち早く察知するアラートとしての役割を担っており、金利はまさに現在地を示してくれる「炭鉱のカナリア」と呼べる頼もしい存在なのである。
政策金利、長期金利、社債利回りの特徴
景気動向を察知するためには政策金利、長期金利、社債利回りの3つの金利が用いられる。
政策金利
政策金利とは、FRBや日本銀行など各国の中央銀行が一般の銀行に対して融資を行う際に受け取る金利のことを指している。
つまり金融政策とは、中央銀行が景気を安定させるためにお金の出回る量を調整することであり、景気が良いときは政策金利を上げて通貨供給量を減らし、景気が悪いときは政策金利を下げて通貨供給量を増やす政策金利の変更のことを意味する。
普段の生活のなかでいえば、預金やローンなどの利率で期間の短いものは、政策金利が基準となっており、利率が上下する要因となる。つまり、意識せずとも日常生活のなかでも金融政策の影響を受けているといえる。
長期金利
長期金利とは、期間が1年以上の金融資産の金利のことであり、長期金利で最も重要な指標が10年国債利回りである。
そもそも債券とは国や企業が期間や利率を決めて投資家から資金調達をするために発行している。つまり10年国債とは国が10年間の利率を決めて発行している債券である。
では10年国債利回りがなにかといえば流通利回りのことである。この流通利回りは債券市場で債券を購入し、満期まで保有し続けた場合の1年当たりの利回りだ。
10年国債利回りでいえば、国が10年間資金調達する場合のコストであり、言い換えれば10年間の市中金利の基準でもあり、お金を借りるときに支払う金利でもある。
政策金利が金融政策に影響を受けるのに対して、10年国債利回りは景気の影響を大きく受けることになる。
社債
そもそも社債とは、国債同様に債券のひとつだ。
国債は国が発行しているのに対して、社債は企業が発行する債券である。
社債利回りがなにかといえば流通利回りのことで、企業が資金調達する場合のコストといえる。
つまり国とは異なり、企業ごとに社債が存在することになる。
社債利回りの差は企業の信用力の差として表れる。
ここでいう「信用」を具体的に説明すると、借りたお金を返済できるのか、定期的に利息を支払えるのか、という返済能力が問われることになります。
つまり、社債利回りは企業の信用力のバロメーターといえる。
では社債と国債のどちらに信用力があるのかといえば、一般的には国である。そのため利回りを比較すると国債利回りは社債利回りよりも低くなる。
実は私たちが生きる資本主義社会では「信用力」が経済の原動力となっており、たとえば銀行に預けて利子が付くと考えるのも、常に100%ではないにしても銀行であれば利子が付くと多くの人が銀行の信用力を評価していると言い換えることができる。
こちらは株式市場についても同じことが言える。
例えば、格付け会社が政府や企業が発行する債務の返済能力を分析して信用の格付けを行っている。
つまり格付けが高ければ低金利で資金調達が可能となり、格付けが低ければ高金利でないと資金調達することが難しくなる。
こうしたリスクを把握した上で、資産運用を行う投資家はそもそも債券を購入するのか、購入するとすればどの債券を購入するのかを判断すべきだろう。
米国から景気サイクルが始まる理由
米国が資本主義のリーダーであるからこそ、世界の基軸通貨は「米ドル」ということになる。
つまり米国の動向を知らなければ世界経済が見えてこない。
米国は景気の発信源であるので、他の国の景気動向を判断するためには、まず米国の景気動向が手がかりとなる。これこそ米国から景気サイクルが始まるといわれる理由である。
そして景気サイクルを把握するモノサシとなるのが政策金利(短期金利)と長期金利(10年国債利回り)である。
この2つを用いることで米国の景気の現在地を考える材料となる。
そして最初に動き始める金利が長期金利である。長期金利には景気の変化を確認するまでほとんど動きのない短期金利と比べて、先行して動く性質がある。
景気に敏感な長期金利を見ることで景気をある程度正確に表すバロメーターになっているのだ。
長短金利差に注目
また長短金利差という景気の先行指標があり、長期金利から短期金利をマイナスして求める方法がある。
通常であれば長期金利は短期金利よりも高くなる。
そして長短金利差がマイナスになった場合、今後の景気動向に悪い予感を感じる「炭鉱のカナリア」のシグナルとなる。
実際、利上げ局面が終了する頃に長短金利差がマイナスになることが多く、その後、景気後退局面が訪れる可能性が高くなる。
つまり長短金利差が景気の先行指標となり、この長短金利差の動向が景気の行方を占う「先行指標」となっている。
それから特に注意が必要なのが長短金利差1%を割った場合と0%を割った場合である。
長短金利差1%割れが発生した場合、ISM製造業景況指数が50割れしたときにマーケットに警戒すべきであり、長短金利差0%割れが発生した場合、景気後退局面入りの可能性が高くなるため、その日を基準に1年後のマーケットに注意を払うべきと考える金融関係者は多い。
このように景気サイクルを予想する上で長短金利差は有効な手段といえるだろう。
資産運用で活用してみよう
株式投資をしていれば、株をいつ買うべきなのか、またはいつ売るべきなのかを知りたくなるはずだ。
それから現在の景気がいつまで続くのかも気になる方も多いだろう。
しかし難しいのは、景気の転換点は景気サイクルが移り変わってからようやく分かるものである。
たとえば、梅雨明けのニュースも梅雨が明けたことを過去形で振り返っている構図とよく似ており、転換点をリアルタイムで予測することはとても困難だ。
こうした不確定要素の多い経済市況において、金利は冒頭で述べたように炭鉱のカナリアとして今後の投資戦略や方向性に大いに役立つはずである。
そうであれば、金利の特徴を投資に活かさない手はないだろう。
金利を味方につけることができれば、生涯にわたって資産運用で活用することができるからだ。
しかし、資産運用をやってみたいが、どの様にして運用して良いか悩んでいないだろうか。
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