現在、米国経済最大の懸念事項であるインフレ問題によって、マーケットは先行きが不透明な状況が続いています。
今後もFRB(連邦準備制度)の0.50%という高い利上げ政策(通常0.25%)が継続されることは既定路線です。
その過程で本当にインフレが改善するのか、現状では出口戦略の目処は経っていません。
またFRBが利上げを推し進めることでハードランディング(景気の急激な失速)が発生することが懸念されており、今後の行方について世界中の投資家が注目しています。
実際、金融関係者の意見も様々であり、まだまだ不安定なマーケットが続くことが予想されます。
今回はこの「インフレ」を軸に経済学を絡めながら、経済成長と景気対策の両立が可能なのか?について解説していきます。
そもそもインフレとは何か
そもそもインフレ(インフレーション)とは、お金が余り商品が不足している条件が揃ったときに、物価が全体的に上昇している状態のことを指します。
仮にガソリンの値段のみ上がったとしても、これをインフレとは呼びません。
インフレを算出するには、全体的な物価上昇を測るために沢山の商品やサービスの価格を調べて、物価の変化率の平均を割り出し、総額の変化率の経過を見ていくことが必要です。
よくあるアプローチが「バスケット」と呼ばれる方法で、これはある家族が一定期間で消費するモノやサービスの値段の合計金額を追いかける調査方法があります。
そしてインフレ指標として用いられるのが消費者物価指数(CPI)とGDPデフレーターの2つの指標です。
消費者物価指数とは消費者が購入する際のモノの値段を表す代表的な物価指数です。
労働統計局が毎月13日頃に前月分を発表しています。
次にGDPデフレーターですが、これは実質GDPの算出に使われる物価指数です。
つまり消費だけでなく、輸出入から政府支出などを幅広くカバーしています。
とはいえインフレ指標には完璧な指標は存在していません。
なぜならガソリン価格が上昇すると車を控えて公共交通機関を利用する人がいるように、消費とは時間と共に変化し続けるものだからです。
インフレが続くと経済が行き詰まる
FRBがなぜ米国のインフレ問題の改善に躍起になっているのかというと、インフレが急速に進んでいくと市場が機能しなくなることが懸念されるからです。
歴史上、短期間でインフレが急速に進みハイパーインフレに陥った国としては、1980年代のアルゼンチン、2000年代のジンバブエなどが有名です。
ハイパーインフレになると、お金の価値が急速に下がるため、物価が一気に上昇します。
なぜなら少しでもインフレの損失を最小限に抑えようとする動きが加速するからです。
そうなると物価が安定していないため、いつが買い時なのか分からなくなり、家計を管理することが困難になります。
これが国家予算にも同じような原理が働くため、国の政策が機能しにくい状況になります。
このようにインフレによる不安定な状況が続くと、やがて経済が行き詰まるのです。
こうした事態を避けるためにFRBはインフレを改善することを目的とした利上げを推し進めているのです。
マクロ経済学ではケインズ派と新古典主義派に分かれる
インフレによる失業率の関係はこれまでに様々な説がありましたが、失業率に関しては一時的な失業率の上昇などはあるものの、失業はやがて自然失業率へと落ち着くことを経済学者ミルトン・フリードマン(1912-2006)が証明しています。
では失業率が落ち着くまでの期間、インフレ率はどうなるのか?というと、失業率が同じ場合でもインフレ率はその都度異なっています。
つまり長期で見ると自然失業率に回帰するのですが、この回帰するまでの期間について、何か経済政策をするべきなのか、それとも時間をかけて待つべきなのか、マクロ経済学ではケインズ派と新古典主義派で意見が分かれます。
ケインズ派の基本的なスタンスは「需要が供給を生む」という考え方です。
そのため経済政策によって失業率をできるだけ抑え、景気後退や不況から短期的に回復させることを重視します。
新古典主義派の基本的なスタンスは「供給が需要を生む」という考え方です。
経済が自然失業率に回復することを重視しており、政府が積極的な経済政策を行うことでかえって事態が悪化することを懸念しています。
実際、短期的な混乱はあれど過去50年以上のデータを見ると自然失業率は5~6%程度に戻っています。
つまり短期で見ればケインズ派が有効であり、長期で見れば新古典主義派が有効であるので、どちらかが間違っているということ言えません。
実際、マクロ経済学では両方の政策にも配慮しているのは、このような背景があるためです。
そもそも長期的な経済成長と短期的な景気対策は両立できるものなのか?
ケインズ派と新古典主義派の特徴を踏まえた上で議論されるのが、長期的な経済成長と短期的な景気対策は両立できるものなのか?という問いです。
例えば5年~10年ぐらいの中期サイクルではどちらが有効なのか?というと、今日までケインズ派と新古典主義派の両方の良い部分をつなげた新たなモデルが研究されているところであり、決定打はまだありません。
そのため経済政策には短期と長期のバランスを考えた手綱捌きがFRBに求められており、出口戦略を実現するのがいかに難しいのかが分かるのではないでしょうか。
それからFRBの金利決定は即効性があるため、株価にもリアルタイムで効果が反映されます。
そのためFRBの金利政策や発言に世界中の注目が集まると同時にFRBに逆らわない投資戦略を選択する投資家が多いのは、このような理由があるからです。
おわりに
経済学を知るメリットは、どのような選択肢があるのかを知ることで論理的に社会を測るモノサシを得られることです。仮に2つの金融政策があり、経済学者同士がそれぞれの意見を主張していたとします。
どちらか一方が正しいとはいえないときに、どのような政治的立場の上で発言しているのか、その違いがハッキリと理解出来るようになるはずです。
また景気対策と政治の相性の悪さも難しい課題の一つです。
例えば今後米国がリセッション(景気後退)入りしたとします。景気が悪化すると税収が減ることになりますが、経済学者であればそのときに政府がお金をどんどん使うべきだと主張するはずですが、実際に景気が悪化しているときに政府がお金を使うためには政治的に世論(支持率)に気を使うことになるので、ジレンマが生まれやすい状況があるのです。
つまり様々な要因の着地点は、トレードオフの関係からいかに歩み寄るのかがポイントとも言えるでしょう。
最後にマクロな視点で見れば、米国経済の力強さは今後も続くはずです。
なぜなら米国はZ世代が最も人口が多く、また他国と比較した場合の次世代技術も世界をリードしています。
このことから、中長期的には米国は今後も魅力的な経済大国であり続けることは間違いないでしょう。
今回は経済学を取り入れながら、投資とはまた異なる視点で経済を見つめる面白さについて解説させて頂きました。
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