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お金を増やす前に詐欺からお金を守るべし

新NISAが始まった2024年、年始からのわずか2か月の間に日経平均株価は20%近く上昇し、史上最高値を更新しました。

本コラムを読んでいる方の多くは資産運用に強い関心を持っている方かと思いますが、これだけ株式市場が好調だと、投資熱も高まり、資産の増加に心躍らせていることでしょう。

しかし、景気が良い話とあわせて不穏な話題も増えています。それが投資詐欺です。せっかく備えた老後資産を一瞬にして失う人が多発しています。

今回は投資詐欺の最新手口などを学びましょう。

目次

SNSを使った投資詐欺の手口

 警察庁がSNSを用いた投資詐欺やロマンス詐欺の実態について初めて調査結果を発表しました。昨年の被害総額は約445.2億円となり、オレオレ詐欺などを含む特殊詐欺の約441.2億円を上回ることが判明しました。

金額の違いは僅かですが、特殊詐欺の件数が約1.9万件なのに対して、投資詐欺は2,271件、ロマンス詐欺は1,575件であることを勘案すれば、投資詐欺やロマンス詐欺における1件あたりの被害額が1,000万円を超えるということが分かります。

 昨今の投資詐欺の入り口はSNSに掲載されている広告です。その広告には著名人の写真が無断で使用されており、「絶対に儲かる株を教えます」などの文言が記載されています。

広告に記載されているQRコードやURLからLINEのグループチャットに参加すると、偽の著名人と100人を超える人が既に参加しています。

そして、著名人が銘柄を推奨すると、他の人々が一斉に成果報告をするのです。「先生のおかげで短期間で資産が倍増しました」などと、とにかく持ち上げます。

驚きの最新手口とは?

 さすがに著名人が偽物なのではないか、と考えてグループチャット内で疑いのコメントを投げかけると、他の人々が一斉に否定、非難してきます。

「先生は無償で有益な情報を教えてくれているのに失礼だ」などです。それでも疑問を投げかけていると、今度は偽の著名人が運転免許証やボイスメッセージを投稿してきます。

 私自身は意図的に詐欺師のチャットグループに潜入し、実際に運転免許証やボイスメッセージを確認しましたが、とにかく精巧に作り込まれており、なかなか嘘だと見抜くのが大変だという印象を受けました。

 そうこうしているうちに、偽の著名人、またはその著名人の秘書を名乗る人物との個別LINEに誘導されます。そこで「絶対に儲かるプロジェクト」を紹介され、振込先の口座情報を提示されます。そして、そこに振り込むように言われるのです。

 最初のうちは振り込んだ金額の一部に当たる金額が配当として戻ってくることもあるようですが、その配当金を見てホンモノだと信じ込んで追加入金をすると、徐々に配当が滞り、不安になって出金を打診すると、税金や手数料がかかると言われて更なる入金を求められ、最終的には音信不通になるのです。

お金配りアカウントの手口

 また、最近はお金配りアカウントの被害も増えています。SNS上で富裕層を騙るアカウントがお金を配りたいから連絡をしてくれというのです。

連絡をしてみると、「振込先を教えて欲しい」と言われます。振込先を教えるだけなら特に問題はないと考え、多くの方が教えてしまいます。

 同時に詐欺師は他の人に「親族が事故を起こしたが、示談が成立するから50万円を振り込んで欲しい」と嘘の連絡をします。そこで、示談金の振込先に先程取得した口座情報を伝えます。相手が詐欺に引っかかれば、提示された口座に50万円を振り込みます。

 お金配りに応募した人からすれば、本当に50万円が振り込まれ驚くのですが、即座にお金配りアカウントから連絡が来て、「振り込み過ぎてしまったので、45万円を手渡しで届けて欲しい」と言われます。

 そこで、45万円を手渡しすると、差額の5万円は本当にもらえるのですが、ここまで読んで気付いた方もいるでしょう。

この5万円をもらった人は知らないうちに詐欺の加害者になってしまっているのです。そして、実際の詐欺師は何も情報を残さないまま、45万円を手に入れたのです。

いくら手口が進化しても大丈夫

 このように、最近では詐欺の手口が進化しており、AIを利用して音声や動画までを生成するディープフェイクが横行しています。

グループチャットのなかで大量のサクラを使って騙されやすい雰囲気を醸成したり、実際に会うと演劇を始めたりと、詐欺師たちは最新の技術を使いこなすだけでなく、様々な工夫をして人のお金を奪おうとしています。

かなり注意深くないと金融の知識があったとしても、騙されてしまうかもしれません。

 しかし、いくら投資詐欺の手口が進化したとしても、最終的には「絶対に儲かる」とか「元本が保証されている」といった、昔ながらのセールストークを仕掛けてきます。

当たり前なのですが、リスクをとるからこそ、その見返りとしてリターンがあるわけで、ノーリスクでハイリターンが確約されている金融商品などこの世には存在しません。

 好調な株式市場や新NISAの盛り上がりを背景に投資詐欺の被害が増えていますが、読者の皆様には冷静に投資案件と向かい合って欲しいと思います。

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※本コラムは情報提供を目的としたものであり、個別銘柄の推奨や、金融商品の紹介、周旋を行うものではございません。

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執筆者

森永 康平のアバター 森永 康平 株式会社マネネCEO / 経済アナリスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。2018年6月に金融教育ベンチャーの株式会社マネネを設立。
現在は経済アナリストとして執筆や講演をしながら、国内外複数のベンチャー企業の経営にも参画。

著書は『スタグフレーションの時代』(宝島社新書)や父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など多数。

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