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マクロの観点から投資対象を考える

よく個人投資家の方から、どのように株式市場や為替相場の先読みをしているかと聞かれるが、占い師ではないので、その手の予想はあまりしていない。しかし、当然ながら様々なデータ解析、現地調査、これまでの歴史なども踏まえて、常にいくつかのシナリオは準備している。

もちろん、シナリオ毎に自分の中の確度はバラバラだ。本命のシナリオもあれば、大穴のシナリオもある。今回はマクロの観点から俯瞰して投資シナリオを立てる実例を共有したい。

目次

詐欺師の常套手段

昨年末からYouTube番組「森永康平のリアル経済学」のなかで、詐欺師の手口を紹介している。詐欺師が扱う商材は様々で、不動産もあれば、仮想通貨もある。しかし、どのような商材を使っていても、常套手段は共通である。それは「必ず儲かる」とアピールすることだ。この世に絶対などない。ましてや不確実性が高い投資の世界なら尚更だ。

こんなに簡単なことを理解できずに詐欺に引っかかる人が相当数いるのは何故なのか。やはり、多くの投資家がリスクを抑え、確実に利益を出したいからなのだろう。欲が知性や理性を超越してしまうのだ。投資家は不確実性が高ければ高いほど、一定数が精神的な安心を求めて美味しい言葉に誘導されてしまう。

年末年始にマネー誌などで証券会社のアナリスト達が1年後の日経平均ドル円相場の予想する企画があり、個人投資家から一定の支持を集めているが、おそらくこれもまた専門家の予想を参考にすることで、リスクを抑えたり、利益が出そうな気持ちになれるのだろう。大手証券会社のアナリストがこう言っているのだから間違いないんだ、と思い込むことで精神的な安心を手に入れているのだ。

子どもに学ぶ戦略立案

残念ながら専門家の予想などロクに当たらないし、詐欺師が言うように絶対に儲かる金融商品など存在しない。仮にあったとしても、そんなものは限られたコミュニティー内でしか流通しないだろう。少なくとも自分にそのような話は回ってこないと最初から諦めておくべきだ。

それでは先読みをして投資戦略を立てることは無駄なのか。私はその行為自体を否定する気はない。しかし、「いつまでにいくらになる」といった、数字遊びのような予想を立てるのは好ましくないと考える。やるのであれば、ザックリとした相場展開を想像するほうがいいだろう。

難しく思うかもしれないが、実はこれは小学生でも出来ることだ。実例を共有しよう。

私が自社のサービスの一環として小学生に金融教育の授業をしていたときのことだ。時期はちょうどコロナ禍がはじまった2020年の夏前ぐらい。

子ども達に「コロナ禍が長引くとしたら、どんな業種の株を買いたい?または買いたくない?」と尋ねたところ、家にいる時間が増えるからゲーム会社やデリバリーをやっている会社の株を買いたい。

一方で、百貨店や航空、宿泊、観光業界の株は買いたくないと答えた。その後の該当する各社の株価の動きを見ると、子ども達の投資戦略はバッチリだったことは言うまでもない。

シンプルな投資戦略の立て方

このように、世の中の大きな流れを俯瞰して投資戦略を立てることは非常に重要である。そして、意外とこのような大きな流れが読めてくると、大きなミスはしづらくなる。

たとえば、昨年は為替市場で円安が急速に進行し、2022年10月には一時1ドル=151円台まで円は売られていた。当時は多くの専門家も投資家もこのまま円安が続いていくと考えていただろう。少なくとも当時のニュースを見返してみると、貿易赤字や財政赤字、少子高齢化、人口減少など、様々な理由をつけて円安が進んでいくとの予想が多かった。

しかし、そのような一種の熱狂に近い空気に惑わされることなく、冷静に状況を俯瞰する習慣を身につけるべきだ。

たとえば、ドル円相場は日米両国間の金利差の動きと似たような動きをすることが知られている。金利差が拡大すれば円安、金利差が縮小すれば円高になる。

昨年は米国の中央銀行にあたるFRBがインフレを退治すべく、異例のペースで利上げを繰り返した。一方で日本銀行は金融緩和を維持していた。そうなれば、両国間の金利差は拡大するのだから円安は進行するだろう。

しかし、利上げのペースが行き過ぎれば、景気は間違いなく減速していく。そう考えれば米国がいつまでもこのペースで利上げを続けられるはずもなく、どこかで利上げペースは鈍化し、いずれは利上げをやめて、更には利下げサイクルへ向かっていくだろう。

一方で日本銀行は金融緩和を維持するか、インフレを受けて金融緩和を解除するかの二択がメインシナリオである。このようにザックリと考えると、いつまでも円安が進行するはずはなく、どこかのタイミングでは円高方向に相場が転換することは予想できる話であり、大半の人が今後も円安を予想していたタイミングで外貨預金に資産の大半を変えるなど、リスクの高い行為は避けられただろう。

当たり前のことからはじめてみる

まず事実から思考を始めていく。今年の4月、日銀総裁が代わる。これは事実だ。ここからは思考実験となる。仮に黒田総裁の後任がアベノミクスでも1本の矢として称された金融緩和から脱却することを決めた場合、何が起こるだろうか。

一番簡単に思い浮かぶのは金利が上昇するということだ。金利が上昇すると、これまで低金利で収益性の低さに悩んでいた銀行業はその恩恵を受ける可能性が高い。実際に既に銀行セクターは昨年末から大きく上昇している。

このように、まず事実を起点として、そこから連想ゲームをしていくことで、大きな流れを見出すことが出来る。しかし、世の中には「まさか」と思うようなことが何度も生じてしまう。

そこで、メインシナリオを持ちつつ、いくつも他のシナリオも用意しておくことで、仮に想定外のことが起きてしまった場合にも、混乱してしまったり、思考停止に陥ることなく、すぐにプランBへと移行して対応することが出来るのだ。

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※本コラムは情報提供を目的としたものであり、個別銘柄の推奨や、金融商品の紹介、周旋を行うものではございません。

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執筆者

森永 康平のアバター 森永 康平 株式会社マネネCEO / 経済アナリスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。2018年6月に金融教育ベンチャーの株式会社マネネを設立。
現在は経済アナリストとして執筆や講演をしながら、国内外複数のベンチャー企業の経営にも参画。

著書は『スタグフレーションの時代』(宝島社新書)や父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など多数。

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