- 保険金とその限度額について役割や仕組みを知りたい
- 限度額がなぜ必要なのか理解したい
- 保険金の限度額に関連する契約上の注意点を把握したい
保険は、万が一の事態に備えるための重要なツールだ。
しかし、契約をする際に「限度額」という言葉を目にすることがあるかもしれない。
では、この限度額というのは具体的にどういうものなのか?
その意味と契約時に覚えておくべき点を解説していく。また、保険金についても理解を深めていく。
限度額について知る前に!保険金とは?
保険金とは保険会社と契約で定めた事態が生じたとき、保険会社から受け取るお金だ。
また保険金と似た言葉に保険料があるが、保険料とは契約者が保険会社に支払うお金だ。
ここでは、保険金の基礎情報を理解するため以下の2つを解説する。
- 保険金の具体的な役割
- 保険金が支払われる条件
保険金の具体的な役割
保険金には主に以下の役割がある。
- 大病やけがを負った方の治療費
- 遺族の生活費
- 子供の教育費
人生では突然の事件や事故に巻き込まれ、死亡・病気・けがを負うリスクがある。
一家の大黒柱に万が一の事態が発生してしまうと、世帯収入が大幅に減ってしまい、公的保障やこれまでの貯蓄、残された家族の収入で生活しなければならない。
生活費に対して貯蓄が少なく、収入が十分ではない場合は、経済的に苦しい生活を送ることになってしまう。
保険に加入しておくと、いざという事態が起こっても保険金で経済的なリスクに備えられる。
保険金は人生の突発的なリスクに備えるための方法であり、自分や家族を守るための手段とも言える。
保険金が支払われる条件
保険金が支払われる条件は、契約前に定めた約款の支払事由に該当したときだ。
支払事由には以下のようなものが該当する。
- 被保険者が死亡したとき
- 被保険者が所定の病気の診断を受けたとき
- 被保険者が公的介護保険の要介護認定を受けたとき
ただし支払事由に該当していても、支払事由の発生した日が責任開始日以前だったり、免責事項に当たる場合は、保険金が支払われないケースがある。
責任開始日とは保険契約を結んでから、保険会社が保険金の支払い責任を負う日のことだ。
例えばがん保険は一般的に契約日から90日間または3ヶ月の免責期間が設けられている。
つまり契約日から91日目以降にがんに罹患しないと保険金の支払い対象とはならない。
また免責事項にあたる場合とは以下のような場合が該当する。
- 責任開始日から被保険者が1年〜3年以内に自殺したとき
- 保険会社に虚偽の事実を伝えて保険契約を結んでいたとき
- 保険金目的で受取人が被保険者を殺害したとき
免責事由は保険会社や保険商品によって異なるため、詳しくは保険会社や営業担当者に確認してほしい。
保険金の限度額とは?
保険金には限度額が設けられている。保険金の限度額とは年齢や収入によって定められる保険金の上限金額のことだ。
保険金の設定は限度額内で行わなければならない。
ここでは保険金の限度額について以下の3つを解説する。
- 限度額の基本的な概念
- なぜ限度額が必要なのか
- 限度額の設定基準
限度額の基本的な概念
保険金は高ければいいというわけではない。
保険金が高いほど安心できるという方もいるだろうが、保障が手厚くなるほど毎月の保険料が高額となり普段の生活が苦しくなる恐れがある。
基本的に保険金は遺族の生活費や教育費、万が一働けなくなった場合の生活費や老後の備えとして準備するものだ。
保険金の限度額は、保険が持つ万が一のリスクに備えるという目的を果たすために必要な処置といえる。
なぜ限度額が必要なのか
保険金に限度額が設けられている理由を以下2つ解説する。
- 相互扶助の仕組みを維持するため
- 保険料が生活の負担にならないようにする
相互扶助の仕組みを維持するため
保険は加入者がお金を出し合い、万が一の事態が起こった方に集まったお金の一部を支給する「相互扶助」の仕組みだ。
相互扶助の仕組みを維持し、一部の方にだけお金が集中することを防ぐため、限度額が設けられている。
職業による業務中の事故に遭うリスク、年齢による病気・けがのリスクは変わってくるため、保険加入者ごとに保険金支払いが発生する可能性は異なる。
そのため加入者全員が同じ保険料・保険金を設定できると、保険金が支払われる可能性の低い方が不利になってしまう。
このような不公平感があると、保険金が支払われる確率の低い方が保険に加入しなくなり「相互扶助」の仕組みを維持できなくなる。
保険金を受け取る可能性の高い方の限度額を低くし、受け取る可能性の低い方は限度額を高くすることにより、加入者同士の不公平感をなくし、相互扶助の仕組みを維持している。
保険料が生活の負担にならないようにする
保険は長期契約が前提だ。そのため収入に対して毎月支払う保険料の割合が大きいと、生活の負担になってしまい、長期で支払い続けることが難しくなる。
保険金が高くなると比例して保険料も高くなる。保険料の支払いが生活の負担になることを避けるため、収入による保険金の限度額が設けられている。
限度額の設定基準
限度額は以下の3つを基準に決められている。
- 職業
- 年収
- 年齢
職業
職業によって、死亡やけがなど万が一の事態が発生する確率は異なるという考え方が一般的だ。
例えば建設作業者と内勤の方とでは、前者の方が業務中に死亡やけがを負うリスクが高いことがわかるだろう。
職業の危険度によって保険金の限度額を変更しないと、危険度の高い職業の方に集中して保険金が支払われてしまう確率が高くなる。
危険度の高い方ばかりに保険金が支払われると、危険度の低い職業の方に保険金を支払えなくなりかねない。
このような職業間の公平性を保つために、職業による保険金の限度額が決められている。
年収
継続的に保険料を支払ってもらうため、保険会社は加入者の年収に対してあまりに高い保険料を設定できないようにしている。
収入の大半が保険料の支払いになってしまうと、保険加入者の生活が破綻し長期での保険契約が難しくなるためだ。
極端な例だが、月の手取り20万円の方が毎月保険料を15万円支払っていたら、生活が苦しいことは想像できるだろう。
保険料の支払いが生活の負担になることを避けるため、保険会社は申告された年収をもとに、加入者ごとの限度額を決定している。
ただ保険料が低いと高額な保険金の設定ができないからといって、保険会社に対して虚偽の申告をしてはいけない。
嘘の年収を申告すると「告知違反義務」となり、保険金の支払事由に該当してもお金を受け取れなくなるケースがあるため、自身の年収は正しく申告しよう。
年齢
年齢も保険金の限度額を決める重要な要素だ。
一般的に高齢になるほど死亡や病気、けがのリスクが上昇し、保険金が支払われる確率は高くなる。
高齢の方と若年の方が同じ条件の保険に加入すると、高齢の方に保険金の支払いが集中してしまい、保険加入者間で不公平感が生じてしまう。
年齢による加入者間の不公平感を防止するためにも、保険金の限度額が設定されている。
また金融庁は平成20年「未成年者・成年者の死亡保険について」内で、15歳未満の死亡保険の保険金は1,000万円を限度にすると公表している。
1,000万円の限度額は保険会社ごとではなく、15歳未満の被保険者ごとに設定される。
つまり複数の保険会社と契約したからといって15歳未満の被保険者は、合計1,000万円を超える死亡保険に加入はできない。
15歳以上の未成年者には限度額の厳しい制限はない。
ただし15歳以上の未成年者を被保険者とする保険に加入する場合は、被保険者本人の同意が必要となる。
例えば親が契約者となり被保険者を子供とする場合が該当するケースでは、子供本人の同意を取らなければならない。
限度額を踏まえた保険契約時の注意点
保険契約時の注意点について以下の3つを解説する。
- 限度額に着目した契約のポイント
- 保険金額を適切に設定するために
- 保険会社を選ぶ際の指標
限度額に着目した契約のポイント
保険会社によっては死亡・病気・けがのリスクが高い職業に対して、下記のように保険金に限度額を設けている。
職業 | 死亡保険金 | 日額の入院給付金 |
建設作業者 | 5,000万円 | 1万円 |
林業作業者 | 3,000万円 | 1万円 |
潜水漁業師 | 3,000万円 | 付加できない |
危険度の高い仕事の中でも保険金の限度額は異なる。
また保険会社によっては職業によって、入院給付金を付加できないなどの制限を設けているケースもある。
特に死亡・病気・けがのリスクの高い仕事に従事している方は、加入を検討している限度額は必ず確認してほしい。
保険商品や保険会社によっては、必要な保険金額に届かない場合がある。
1社で必要な保険金額を満たさない場合は、他の保険会社を探す、複数社と契約するといった対策を講じる必要がある。
保険金額を適切に設定するために
適切な保険金額を設定するためには、以下3つの数字を算出する必要がある。
- 遺族の生活費・教育費
- 公的保障・遺族の収入
- これまでの貯蓄
3つの数字を下記の式に当てはめると、理論上、必要な保険金額を求められる。
つまり「将来の支出」から「将来の収入とこれまでの貯蓄」を差し引いて求めた金額が、保険で備えるべき金額だ。
この計算式を用いると、理論上、過不足ない保険金額を算出できる。
保険金額は高くても低くても問題がある。保険金額が高ければ安心できるかもしれないが、月々の保険料が高くなり生活を圧迫する原因となる。
また保険料が低いと家計への負担は少なく済むが、万が一の事態が起こったときの備えとなる保険金が不十分になってしまう。
そのため保険を検討する前にまずは前述の式を用いて、必要な保険金額を試算してほしい。
しかし「生活費」や「公的保障で受け取れる金額」を正しく計算できる自信がない方もいるだろう。
そのような方は保険のプロに相談するのがおすすめだ。
マッチングサービス「生命保険ナビ」では、さまざまな条件をもとにあなたに合った保険の専門家を見つけられる。
興味のある方は下記のリンクから無料相談を申し込んでほしい。
保険会社を選ぶ際の指標
保険会社を選ぶ際は多くの方が、保険商品の内容や種類にだけ着目するだろう。
ただ保険は長期契約が一般的のため、良い保険に加入したとしても満期前に保険会社が倒産する可能性がある。
過去には1997年4月〜2001年3月の4年間で中堅生保7社が経営破綻している。破綻した保険会社の終身保険に加入していた方は、保険金額が58%も削減された。
今後同じように保険会社が破綻する可能性は0ではないため、これから保険に加入する方は経営状態の良好な会社を選ぶことをおすすめする。
保険会社の経営状況を判断するための指標となるのが「ソルベンシーマージン比率」だ。
ソルベンシーマージン比率とは、保険会社の保険金などの支払い余力を示す指標だ。
比率が高いほど経営状況が良好な保険会社と言え、ソルベンシーマージン比率が200%を下回ると金融庁の早期是正措置の対象となる。
参考までに生命保険会社大手4社のソルベンシーマージン比率を記載する。
保険会社 | ソルベンシーマージン比率 |
日本生命 | 単体:1,031.5%連結:1,073.8% |
第一生命 | 単体:879.1%連結:705.9% |
明治安田生命 | 単体:999.0%連結:1,030.0% |
住友生命 | 単体:812.8%連結:679.0% |
表を確認するとわかるように大手4社は200%を大幅に上回っており、経営破綻に陥る可能性は低いといえる。
保険会社が破綻してしまい、契約していた保険金額を大幅に削減されるケースが過去にはあった。
そのような事態を避けるためには、ソルベンシーマージン比率の高い保険会社を選ぶことが重要だ。
保険金の限度額は職業・年収・年齢の3つを基準に決められる
本記事では、保険金の限度額とその必要性、また保険契約時に注意すべきポイントもお伝えした。
それぞれの理解を深めたうえで、保険会社を選ぶ際の指標なども活用して、より納得のいく保険選びを行おう。
しかし、個人にとって最適な保険商品は一人ひとり異なるため、自分で判断するには難しいこともあるだろう。
そのような不安を抱えている方には、積極的に専門家の力を活用することをおすすめする。
また、自分に合った保険のプロを見つけることもまた難しいポイントである。
マッチングサービス「生命保険ナビ」では、全国の保険のプロの中からあなたの条件に合った担当者を簡単に探すことができる。
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