「老後資金が足りるか不安」「預貯金だけでよいのか迷っている」と感じている70代の方、あるいは70代のご両親をお持ちの方へ。
物価上昇が続く局面では、預貯金だけで資産を保有していると、実質的な購買力が目減りする可能性がある。総務省統計局の「2020年基準 消費者物価指数」によると、2026年3月分の全国総合指数は前年同月比1.5%の上昇、生鮮食品を除く総合は1.8%の上昇だった。
また、厚生労働省の「令和6(2024)年簡易生命表」では、70歳時点の平均余命は男性15.60年、女性19.97年とされている。70代からでも、その後の生活期間が10年以上続く可能性は十分にある。
こうしたインフレや長生きリスクへの備えとして、新NISAを活用した資産運用は選択肢の一つになる。
ただし、70代は現役世代と比べて運用期間が短く、相場下落からの回復余地も限られる。新NISAは便利な制度だが、誰にでも無条件でおすすめできるものではない。
この記事では、70代の方が新NISAを始める前に押さえたい制度の基本、判断基準、運用例、認知症・相続への備えを整理する。「自分、または親が70代から新NISAを始めて大丈夫か」を見極める材料として活用してほしい。
70代から新NISAを始めるかどうかは、「やる/やらない」の二択ではなく、次の3条件が整っているかで判断するのが現実的だ。
- 条件① 生活費2〜3年分を目安に、生活防衛資金を預貯金で別建て確保できている
- 条件② 認知機能が低下した場合に備え、家族と口座の所在・運用方針・連絡先を共有できている
- 条件③ 元本割れの可能性や、相続時のNISA口座の取り扱いについて、相続人と認識を合わせている
3条件を満たすなら、新NISAは老後資産を長持ちさせるための有力な選択肢になり得る。1つでも欠ける場合は、投資を急がず、まず不足している条件を整えることを優先したい。
70代から始める新NISA制度の基本

まずは、新NISAの仕組みを確認しよう。70代の新NISA活用では、制度のメリットだけでなく、損失が出た場合の扱いも理解しておくことが大切だ。
- 新NISAの概要
- 70代でも新NISAを検討する価値がある理由
- 新NISAと旧NISAの主な違い
新NISAの概要
新NISAは、一定の要件のもと、非課税口座で取得した上場株式や投資信託などの配当等・譲渡益が非課税になる制度だ。
通常、上場株式等の譲渡益には、所得税15%・住民税5%の合計20%が課税される。さらに2037年までは復興特別所得税が加わるため、合計税率は20.315%となる。
たとえば10万円で購入した株式を30万円で売却し、20万円の利益が出たとする。特定口座などの課税口座では、原則として利益20万円に対して40,630円の税金がかかるため、税引後の利益は159,370円となる(手数料等は考慮しない)。
一方、NISA口座で非課税対象となる取引であれば、この20万円の運用益は非課税となる。税負担を抑えられる点が、新NISAの大きなメリットだ。
新NISAの主な内容は、次のとおりである。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 利用できる人 | 18歳以上(口座開設の年の1月1日時点)の日本国内居住者等 |
| 年間投資枠 | つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円。合計で年間360万円 |
| 非課税保有限度額 | 総枠1,800万円。うち成長投資枠は1,200万円まで |
| 非課税保有期間 | 無期限 |
| 対象商品 | つみたて投資枠は長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託。成長投資枠は上場株式・投資信託など |
| 売却後の枠 | 売却した商品の取得価額(簿価)分は、翌年以降に再利用できる |
注意点として、NISA口座で損失が出ても、特定口座や一般口座の利益と損益通算することはできない。損失の繰越控除もできないため、「非課税だから必ず有利」と単純に考えないことが重要だ。
また、上場株式の配当等をNISAで非課税にするには、証券会社等を経由して受け取る方式が必要になる。個別株の配当を重視する場合は、口座開設時や配当受取方式の設定も確認しておきたい。
なぜ70代でも新NISAを検討する価値があるのか
70代で新NISAを検討する意義は、主に次の2つだ。ただし、どちらもメリットだけでなく注意点とセットで考える必要がある。
- インフレによる資産価値の目減りに備えられる
- 老後資産を取り崩しながら長持ちさせる選択肢になる
インフレによる資産価値の目減りに備えられる
物価が上がると、同じ金額の預貯金で買えるものは少なくなる。つまり、預貯金の額面は変わらなくても、実質的な価値は目減りする可能性がある。
新NISAを活用して投資信託や株式などで運用すれば、物価上昇を上回る運用収益を目指せる可能性がある。インフレへの備えとして、資産運用を取り入れる意義はある。
ただし、運用商品は元本保証ではない。インフレ対策を目的にする場合でも、生活費や医療・介護費など、近い将来に使うお金は預貯金で確保し、余剰資金の範囲で取り組むことが前提となる。
老後資産を長持ちさせる選択肢になる
老後資産は、ただ取り崩すだけでなく、一定の範囲で運用しながら取り崩すことで長持ちしやすくなる場合がある。
たとえば2,000万円を毎月10万円ずつ取り崩すと、運用しない場合は約16年8か月で資金が尽きる計算になる。
一方、2,000万円を年2%で運用しながら毎月10万円ずつ取り崩せた場合は、約20年3か月で資金が尽きる概算になる(税金・手数料・価格変動は考慮しない)。
ただし、これは前提どおりの利回りで運用できた場合の試算にすぎない。運用初期に大きな下落が起こり、その間も取り崩しを続けると、同じ平均利回りでも資産寿命が短くなることがある。これを「シーケンス・オブ・リターンズ・リスク(収益率の順序リスク)」という。
70代の運用では、資産を増やすことよりも「必要な時に使えるお金を守ること」が優先される。生活防衛資金を確保したうえで、無理のない範囲で運用する設計が欠かせない。
新NISAと旧NISAの主な違い
NISAは2024年1月に新しい制度へ移行した。旧NISAと比べると、非課税保有期間の無期限化、制度の恒久化、投資枠の拡大、つみたて投資枠と成長投資枠の併用が大きな変更点である。
| 項目 | 新NISA | 旧NISA(2023年まで) |
|---|---|---|
| 年間投資枠 | つみたて投資枠120万円 成長投資枠240万円 | つみたてNISA40万円 一般NISA120万円 |
| 非課税保有期間 | 無期限 | つみたてNISA20年 一般NISA5年 |
| 非課税保有限度額 | 1,800万円 成長投資枠は内数1,200万円まで | つみたてNISA800万円 一般NISA600万円 |
| 制度の期間 | 恒久化 | 2023年まで |
| 枠の併用 | つみたて投資枠と成長投資枠の併用可 | つみたてNISAと一般NISAはいずれか一方 |
旧NISAで2023年までに投資した商品は、新NISAの1,800万円の総枠とは別枠で、旧制度の非課税期間が続く。ただし、旧NISAの商品を新NISAへそのまま移管(ロールオーバー)することはできない。
70代にとって特に大きいのは、非課税保有期間が無期限になったことだ。旧NISAのように「5年後・20年後にどうするか」を強く意識しなくてよくなり、資産状況に合わせて保有・売却を判断しやすくなった。
70代で新NISAを「始めない方がよい」ケース
70代の新NISA活用は、誰にでも向いているわけではない。次のいずれかに当てはまる場合は、投資を始める前に環境整備を優先したほうがよい。
- ①生活防衛資金が確保できていない
生活費2〜3年分を目安に、預貯金で残せていない場合は、まず現金クッションを厚くしたい。 - ②近い将来に大きな支出予定がある
住宅リフォーム、医療・介護費用、子や孫への支援など、数年以内に使う予定があるお金は投資に回さない。 - ③値動きへの心理的耐性が低い
1割下がるだけで強い不安を感じる場合は、無理に始めると生活の質を下げる可能性がある。 - ④判断能力低下時の管理体制が決まっていない
認知機能が低下したときに、誰が金融機関へ連絡し、どのように対応するかを家族と確認しておきたい。 - ⑤相続人と運用方針を共有できていない
家族が運用状況を知らないまま相続が発生すると、手続きや資産分割で混乱しやすい。
これらに該当するからといって、新NISAそのものが悪い制度というわけではない。問題は「順序」だ。先に生活資金・家族共有・相続対策を整えれば、その後で始めても遅くはない。
逆に、これらの条件をクリアできているなら、70代であっても新NISAは老後資産を長持ちさせる選択肢になり得る。次章から具体的な使い方を見ていこう。
70代におすすめの新NISA利用法

70代の新NISA活用で大切なのは、「大きく増やす」よりも「大きく減らさない」ことだ。ここでは、リスク管理、投資手法、運用例を順に整理する。
- 70代の新NISAにおけるリスク管理と資産分散の重要性
- 70代の新NISAに適した投資手法
- 70代におすすめな運用例
70代の新NISAにおけるリスク管理と資産分散の重要性
70代は現役世代と比べ、損失を勤労収入で補うのが難しい年代だ。そのため、新NISAでは「どの商品を買うか」以上に「どこまでリスクを取るか」を先に決める必要がある。
NISAは制度であり、元本保証の商品ではない。NISA口座で買った投資信託や株式も、相場によって評価額が下がる。
さらに、NISA口座で損失が出ても、課税口座の利益と損益通算できない。税制上のメリットは利益が出たときに大きいが、損失が出たときの救済があるわけではない点に注意したい。
運用を続けるためには、資産分散が重要だ。資産分散とは、株式・債券型ファンド・REIT・預貯金など、値動きや性質の異なる資産を組み合わせることをいう。
1つの資産に集中すると、その資産が大きく下落したときに家計全体へ与える影響も大きくなる。複数の資産に分けておけば、特定資産の下落によるダメージを和らげやすくなる。
- まとまった資金を一括投資する
退職金や保険満期金を一度に投資し、直後の下落に耐えられず売却してしまうケース。 - 高コスト・テーマ型商品に集中する
話題性だけで商品を選ぶと、長期保有時のコストや値動きの大きさが負担になりやすい。 - 家族に運用状況を伝えていない
本人だけが口座や運用方針を把握していると、認知機能低下時や相続時に家族が対応しにくい。
70代の運用では、利益の大きさよりも、下落時にも生活が崩れない設計が優先される。
70代の新NISAに適した投資手法とは
70代の投資手法を選ぶ際は、次の3点を確認したい。
- 金融資産の総額
- 年金以外の定期収入の有無
- 投資経験と値動きへの耐性
資産額に余裕があり、年金以外の収入もあり、投資経験もある方であれば、株式やREITを一部組み入れる選択肢もある。
一方で、資産額が限られ、収入が年金中心で、投資経験も少ない方は、低リスクの設計を優先すべきだ。老後資金を増やしたい気持ちがあっても、生活防衛資金まで投資に回すのは避けたい。
70代では、配当金や分配金などのインカムゲインを意識した運用も候補になる。ただし、NISA口座で購入できる商品には制限がある。個人向け国債などの一般的な債券はNISA対象外のため、安全性を重視する資金はNISA外で管理する選択肢もある。
NISA口座内で安定性を重視するなら、債券を組み入れたバランス型投資信託や、株式比率を抑えた投資信託を中心に検討するとよい。
始める前にチェックしたい3条件フロー
新NISAを始める前に、以下のフローで自分の状況を点検しておこう。1つでも「No」がある場合は、その条件を整えてから始めるのが望ましい。
- STEP1|生活防衛資金
生活費2〜3年分を目安に、預貯金で別建て確保できているか?
→ YesならSTEP2へ/Noなら預貯金の確保を優先 - STEP2|判断能力低下時の備え
家族と口座の所在・運用方針・金融機関の連絡先を共有できているか?
→ YesならSTEP3へ/Noなら家族会議や専門家相談を優先 - STEP3|相続人との認識共有
元本割れの可能性や相続時の扱いについて、相続人と認識を合わせられているか?
→ Yesなら運用設計へ/Noなら家族での話し合いを優先
3つすべてが「Yes」になってから運用設計に入ることで、本人の安心と家族の納得を両立しやすくなる。
70代の新NISAにおすすめな運用例
これまで預貯金中心で運用経験が少ない70代の方が、いきなり資産の大半を投資に振り向けるのは避けたい。
まずは「慣らし運用」として、生活防衛資金と数年以内に使う予定の資金を除いたうえで、余剰資金の一部から始めるのが現実的だ。
たとえば余剰資金が2,000万円ある場合でも、最初から全額を投資する必要はない。まずは一部をバランス型投資信託などに振り向け、残りは生活費・医療費・介護費・予備費として預貯金で確保しておく方法が考えられる。
1〜2年運用して値動きに慣れてきたら、目的に応じて株式・REIT・債券型ファンドなどの比率を見直す。大切なのは、相場が下がったときにも生活資金を取り崩さずに済む余裕を残しておくことだ。
資産規模別の運用例の目安
70代といっても、金融資産の規模や家族構成によって適した運用方針は異なる。あくまで考え方の目安として、次のように整理できる。
| 金融資産規模 | 優先したいこと | 新NISAの使い方 |
|---|---|---|
| 〜1,000万円程度 | 生活費・医療費・介護費の現金確保 | 無理に使い切らない。始める場合は少額積立で値動きに慣れる |
| 2,000万〜5,000万円程度 | 生活防衛資金と運用資金の分離 | バランス型投資信託などを中心に、余剰資金の一部で運用する |
| 5,000万円超 | 運用・取り崩し・相続の一体設計 | NISAだけでなく、特定口座・贈与・相続対策も含めて専門家と設計する |
共通して大切なのは、株式型投資信託などのリスク資産が一時的に大きく下がっても、生活設計が崩れない範囲に投資額を抑えることだ。
「月3万円の年金不足を補いたい」「相続資産を少しでも増やしたい」「インフレに備えたい」など、目的が明確であれば、必要な投資元本・利回り・リスクから逆算して設計しやすくなる。
70代が新NISAで始める積立投資のコツ

70代で初めて運用に取り組む場合、まとまった資金を一括投資するよりも、少額から積み立てる方法のほうが始めやすい。
- 積立投資の基本とメリット
- 70代における積立投資の意義
- 70代が新NISAで検討したい投資商品
積立投資の基本とそのメリット
積立投資とは、事前に決めた商品を一定の頻度で一定額ずつ買い付けていく投資手法だ。
たとえば「毎月3万円ずつ同じ投資信託を買い続ける」といったイメージである。
積立投資のメリットは、大きく2つある。
- 少額から始められる
- 投資タイミングを自分で判断しなくてよい
一定金額を定期的に買い付けると、価格が高いときは少なく、価格が低いときは多く購入することになる。これにより購入価格が平均化されやすい。この考え方はドルコスト平均法とも呼ばれる。
ただし、ドルコスト平均法は損失を防ぐ方法ではない。相場が下がり続ければ損失が出るし、相場が一貫して上昇する場合は一括投資のほうが有利になることもある。
70代では「利益を最大化する」より、「無理なく続けられる」ことを重視したい。その意味で、少額から始められる積立投資は検討しやすい方法だ。
70代における積立投資の意義
70代で積立投資を行う意義は、値動きに慣れながら運用できる点にある。
いきなり大きな金額を投資すると、相場が下がったときの心理的負担も大きくなる。少額積立なら、日々の生活を大きく変えずに投資経験を積みやすい。
- 少額から始められる
- 相場のタイミングを読む必要がない
- 一度設定すれば自動で買付を続けられる
老後は、投資だけでなく、趣味・旅行・家族との時間も大切にしたい時期だ。積立投資は、毎日相場を見続けなくても運用を続けられる点で、70代との相性がよい。
ただし、70代では運用期間が限られる。短期間で使う予定のある資金は積立に回さず、少なくとも数年以上は使わない余剰資金の範囲で行うことが前提となる。
70代が新NISAで始める積立投資に適した投資商品
70代の積立投資先としては、まず投資信託が候補になる。特に、1本で複数の資産に分散できるバランス型投資信託は、管理の手間を抑えたい方に向いている。
バランス型投資信託では、次のような資産に分散投資できる商品がある。
- 国内株式
- 先進国株式
- 新興国株式
- 国内債券
- 先進国債券
- 新興国債券
- 国内REIT(不動産投資信託)
- 先進国REIT(不動産投資信託)
複数の資産に分散している商品なら、特定の資産クラスの値動きに偏りにくい。また、ファンド内で資産配分が調整されるタイプであれば、自分でリバランスする負担も小さくなる。
商品を選ぶ際は、次の点を確認したい。
- 株式比率が高すぎないか
- 信託報酬などのコストが高すぎないか
- 投資対象が十分に分散されているか
- 自分のリスク許容度に合っているか
「どの商品を選べばよいかわからない」「複数の商品を管理するのが不安」と感じる場合は、まず低コストのバランス型投資信託を中心に検討するとよい。
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認知症・相続まで見据えた70代のNISA口座管理
70代で新NISAを活用する際は、運用商品だけでなく「自分以外の人が必要なときに対応できる体制」を整えることも重要だ。
特に確認したいのは、認知機能が低下した場合の口座管理と、相続が発生した場合の取り扱いである。
認知症・MCIに備えた口座管理体制
70代以降は、軽度認知障害(MCI)を含む認知機能低下のリスクが高まりやすい。判断能力が低下すると、本人確認や売買・解約の意思表示が難しくなり、必要なタイミングで口座を動かせない可能性がある。
まず家族と共有しておきたいのは、パスワードそのものではなく、次のような情報だ。
- 利用している金融機関名
- NISA口座の有無
- 保有商品の概要
- 運用方針と売却ルール
- 金融機関の問い合わせ先
- 重要書類の保管場所
ログインIDやパスワードの共有は、金融機関の規約やセキュリティ上の問題につながる可能性がある。具体的な管理方法は、利用している金融機関のルールに従うことが前提だ。
認知機能低下に備える制度としては、任意後見制度、成年後見制度、家族信託(民事信託)などがある。ただし、これらを利用すればNISA口座を自由に運用できるとは限らない。金融機関ごとの対応や制度上の制約があるため、弁護士・司法書士・税理士などの専門家と金融機関の双方に確認したい。
| 備え | 主な役割 | 注意点 |
|---|---|---|
| 家族との情報共有 | 口座の所在や方針を家族が把握できる | パスワード共有ではなく、連絡先・書類保管場所の共有を基本にする |
| 任意後見制度 | 判断能力があるうちに、将来の支援者を契約で決める | 効力発生には手続きが必要。投資判断の自由度は事前確認が必要 |
| 成年後見制度 | 判断能力が低下した後に、家庭裁判所が支援者を選任する | 本人保護が重視され、新たなリスク投資は制約を受けやすい |
| 家族信託(民事信託) | 財産管理や承継を家族に託す仕組み | NISA口座との関係は金融機関・専門家への確認が必要 |
70代で新NISAを始めるなら、口座開設や商品選びと同時に、判断能力低下時の対応も整理しておくと安心だ。
NISA口座と相続:名義人死亡時の取り扱い
NISA口座の名義人が亡くなった場合、相続人は金融機関に所定の届出を行う必要がある。
重要なのは、亡くなった人のNISA口座内の商品を、相続人のNISA口座へそのまま移すことはできない点だ。相続により取得した上場株式等は、相続人の特定口座または一般口座で受け入れる扱いになる。
主なポイントは次のとおり。
- 相続人は、死亡を知った後、遅滞なく「非課税口座開設者死亡届出書」を提出する必要がある
- 相続人のNISA口座へ直接移管することはできない
- 相続した商品は、特定口座または一般口座で受け入れる
- 取得日は相続発生日、取得価額は相続発生日の時価となる
- 死亡後に支払われた配当金等は課税対象となる場合がある
- NISA口座内の商品も、相続税の評価対象となる
このため、70代で新NISAを使う場合は、保有商品・運用方針・想定する相続人を事前に家族と共有しておくことが、相続時の混乱防止につながる。
具体的な相続税評価や分割方法は、資産状況や相続人の数によって変わる。必要に応じて税理士・司法書士・弁護士などに相談したい。
70代から始める新NISAは専門家への相談も選択肢
70代が新NISAを納得して活用するためには、信頼できる専門家に相談するのも有効だ。
特に、商品選定だけでなく、取り崩し・生活資金・相続・認知機能低下時の備えまで一体で整理してもらうことが重要になる。
なぜ新NISAを活用した資産運用に専門家が必要なのか
新NISAの最適な使い方は、投資家一人ひとりで異なる。
同じ70代でも、資産額、年金収入、健康状態、家族構成、相続人の状況、投資経験によって、適した運用方針は大きく変わる。
専門家に相談する際は、次のような内容まで確認しておくとよい。
- 年金・預貯金・運用資産を含めた長期キャッシュフロー
- 生活防衛資金と運用資金の分け方
- 相場下落時の対応ルール
- 認知機能低下時の口座管理体制
- NISA口座・特定口座・相続対策の組み合わせ
70代は、現役世代よりも運用期間が短く、損失からのリカバリーが難しい。商品選びだけでなく、家計全体の設計まで踏み込んで相談できる相手を選ぶことが大切だ。
70代の新NISAは条件を整えて慎重に活用しよう
本記事では、70代が新NISAを活用する際の制度の基本、始めない方がよいケース、運用例、積立投資のコツ、認知症・相続まで見据えた口座管理を解説した。
重要なのは、70代の新NISAを「やるべきか/やめるべきか」の二択で考えないことだ。
判断基準は、次の3つである。
- 生活費2〜3年分を目安に、生活防衛資金を預貯金で確保できている
- 認知機能が低下した場合の口座管理体制を家族と共有できている
- 元本割れや相続時の取り扱いについて、相続人と認識を合わせている
これらを満たしたうえで、余剰資金の範囲で少額から始めるなら、新NISAは老後資産を長持ちさせるための選択肢になり得る。
不安がある場合は、家計表、保有口座一覧、今後の支出予定を整理したうえで、金融・税務・相続に詳しい専門家へ相談すると判断しやすくなる。
70代の新NISAに関するQ&A
出典
金融庁「資産形成の基本:NISA特設ウェブサイト」
国税庁「No.1535 NISA制度」(更新日:2025年4月1日)
国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」(更新日:2025年4月1日)
国税庁「No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」(更新日:2025年4月1日)
日本証券業協会「NISAのよくある質問」
総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)3月分」(公表日:2026年4月24日)
厚生労働省「令和6(2024)年簡易生命表の概況」(公表日:2025年7月25日)
法務省「成年後見制度について」
法務省「信託制度のパンフレットの公表について」(公開日:2026年3月31日)

