新NISAが始まり、老後資金の一部を運用に回す人が増えている。一方で、「60代から始めても遅いのではないか」「退職金を投資して大丈夫なのか」と悩み、第一歩を踏み出せない人も多い。
結論から言えば、60代からの新NISAは十分に有効である。ただし、20代・30代と同じやり方をしてはいけない。
60代は、まだ20年前後の運用期間を見込める人が多い一方で、収入源が年金中心に移り、損失を取り戻す時間は現役世代より短くなる。そのため、生活防衛資金の確保、退職金の時間分散、相続発生時の取扱い、認知症への備え、取り崩し戦略、iDeCoとの使い分けを先に確認しておくことが重要だ。
本記事では、新NISAが60代からでも有効な理由、注意すべき5つの落とし穴、つみたて投資枠と成長投資枠の使い分け、毎月の積立額の目安、退職後を見据えた取り崩し設計までを解説する。
新NISAが60代からでも遅くない理由

「新NISAは若い人向けの制度で、60代から始めても意味がない」と考える人は少なくない。しかし、60歳時点の平均余命は男性で約24年、女性で約29年あり、60代からでも20年前後の運用期間を見込める人は多い。
もちろん、すべての資金を投資に回すべきではない。生活費、医療費、介護費、住宅修繕費など、近い将来使う資金を確保したうえで、余剰資金の一部を非課税で運用する制度として活用するのが基本だ。
新NISAの概要
NISAは、株式や投資信託などの運用益を非課税にできる少額投資非課税制度である。2014年に始まり、2024年からは制度が大きく見直され、「新NISA」として非課税期間の無期限化や投資枠の拡大が行われた。
通常、株式や投資信託の売却益・配当金・分配金には20.315%の税金がかかる。内訳は所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%だ。NISA口座内で得た対象商品の利益は、一定の範囲内で非課税となる。
たとえば100万円の利益が出た場合、課税口座では203,150円の税金がかかる。NISA口座であれば、その利益を非課税で受け取れるため、老後資金の効率を高めやすい。
2つの非課税投資枠
新NISAには、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2種類がある。どちらも非課税で運用できるが、年間投資枠や対象商品、投資方法が異なる。
つみたて投資枠は、年間120万円までの積立投資に使える枠だ。対象商品は、金融庁が定める基準を満たした投資信託・ETFに限られる。長期・積立・分散投資に向いた商品が中心で、個別株式は購入できない。
成長投資枠は、年間240万円まで利用できる枠だ。一定の上場株式や投資信託などが対象となり、積立投資だけでなく、任意のタイミングで購入するスポット投資にも対応している。
2つの枠を合わせると、年間360万円まで投資できる。生涯で利用できる非課税保有限度額は1,800万円で、そのうち成長投資枠は1,200万円までとなっている。
旧NISAからの主な変更点
2024年からの新NISAでは、旧NISAと比べて非課税期間や投資枠が大きく拡充された。
| 旧NISA | 新NISA | |||
|---|---|---|---|---|
| 投資枠の 名称 | つみたてNISA | 一般NISA | つみたて投資枠 | 成長投資枠 |
| 新規買付 可能期間 | 2018年〜2023年 | 2014年〜2023年 | 期限なし | |
| 年間投資枠 | 40万円 | 120万円 | 120万円 | 240万円 |
| 非課税期間 | 最大20年 | 最大5年 | 無期限 | |
| 非課税保有 限度額 | 800万円 | 600万円 | 1,800万円 (成長投資枠は1,200万円まで) | |
| 投資枠の 併用 | 不可 | 可能 | ||
新NISAでは非課税期間が無期限になったため、60代から始めても、70代・80代まで保有しながら運用を続けられる。売却した場合は、売却した商品の取得価額分の枠が翌年以降に再利用できる点も特徴だ。
60代が新NISAを活用する3つのメリット
- 子の独立・住宅ローン完済などで投資原資を確保しやすい
- 非課税期間が無期限で、長期保有しやすい
- 退職金・預貯金の一部をインフレ対策に活用できる
60代になると、子どもの独立や住宅ローン完済により、現役時代より家計に余裕が生まれる人もいる。また、退職金や長年の預貯金を保有している一方で、資産の多くを現金・預金で持っているケースも少なくない。
現金・預金は安全性が高い反面、物価上昇が続くと実質的な購買力が下がる。新NISAは、生活に必要な資金を守りながら、余剰資金の一部を非課税で運用する手段として活用できる。
重要なのは、「増やす」だけを目的にしないことだ。60代以降の新NISAは、老後資金の寿命を延ばし、インフレへの備えを作る制度として考えると判断しやすい。
野村證券時代に60代のお客様からよく頂いたご相談は、「いまさら投資を始めて意味があるのか」というものだった。結論から言えば、運用期間が20年以上残っていれば、十分にメリットがある。ただし、大事なのは「リスク資産の比率」と「取り崩しのタイミング」を最初に決めておくこと。次の章で、60代だからこそ知っておきたい注意点を整理する。
60代がNISAで必ず知っておくべき5つの落とし穴
新NISAの非課税メリットは年代を問わず共通だが、60代には20〜40代と異なる固有のリスクがある。特に、相続・認知症・退職金・取り崩し・iDeCoとの使い分けは、始める前に確認しておきたい。
①NISA口座としては相続できない
NISA口座は名義人本人の口座であり、相続人がNISA口座のまま引き継ぐことはできない。名義人が亡くなると、NISA口座内の商品は相続開始時の時価で払い出され、相続人の課税口座へ移管される。
このとき、死亡時までに生じていた含み益には所得税等がかからない。一方で、相続後に値上がりした分は、相続人の課税口座で課税対象となる。
つまり、NISAは「自分の老後資金を非課税で運用する制度」であり、「家族へ非課税口座ごと資産を引き継ぐ制度」ではない。家族に資産を残す目的が強い場合は、NISAだけでなく、次のような制度もあわせて検討したい。
- 暦年贈与(年間110万円の基礎控除)
- 相続時精算課税制度(年間110万円の基礎控除と累計2,500万円の特別控除)
- 生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人数)
- 結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税制度(期限つき制度のため最新情報を確認)
なお、教育資金の一括贈与に係る非課税措置は、令和8年3月31日までで終了している。既存契約を除き、新規での適用はできないため注意したい。
相続対策は、税制改正や家族構成によって最適解が変わる。相続税がかかる可能性がある場合は、税理士やファイナンシャル・プランナーに相談しながら設計するとよい。
②認知症などで意思確認ができないと売買が難しくなる
60代以降の資産運用では、認知症への備えも重要だ。厚生労働省の資料では、2022年時点で認知症高齢者は約443万人、軽度認知障害(MCI)は約559万人と推計されている。2040年には、認知症高齢者が約584万人、MCIが約613万人になると見込まれている。
証券口座の売買や出金では、原則として本人の意思確認が必要になる。認知症などにより本人の判断能力が低下し、金融機関が意思確認できない場合、家族であっても自由に売却・出金できない可能性がある。
必要なときに資産を取り崩せない事態を避けるため、判断能力があるうちに次のような備えを検討しておきたい。
- 任意後見契約:判断能力が低下した後に備え、あらかじめ後見人を決めておく公正証書契約
- 家族信託:財産管理を家族に任せる仕組み。NISA口座自体への対応可否は金融機関・専門家への確認が必要
- 金融機関の代理人サービス:一部の金融機関が提供する代理手続き制度。対応範囲は各社で異なる
認知症対策は、判断能力が十分にあるうちでなければ選択肢が限られる。NISAを始めるタイミングで、家族と資産管理の方針を話しておくことが大切だ。
③退職金の一括投資は「高値掴み」のリスクが大きい
退職金としてまとまったお金を受け取ると、「早く運用に回したほうがよい」と考えがちだ。しかし、退職金の大半を一度に投資すると、購入直後に相場が大きく下落した場合、老後資金に大きなダメージを受ける可能性がある。
60代の退職金運用では、まず生活防衛資金や近い将来使う資金を除く。そのうえで、投資に回す部分を12〜36か月、または3〜5年程度に分けて新NISAへ移していくと、購入タイミングを分散できる。
新NISAは年間最大360万円まで投資できるため、退職金の一部を数年かけて非課税枠に入れていく設計が現実的だ。大切なのは、「退職金をすべて投資する」のではなく、「老後生活に必要な現金を残したうえで、余剰資金を段階的に投資する」ことである。
④「いつ・いくら取り崩すか」を最初に決めておく
60代以降は、資産を増やす時期と取り崩す時期が重なりやすい。「とりあえず積み立てる」だけで始めると、市場下落時に必要資金を売却せざるを得なくなり、損失を固定してしまうことがある。
新NISAを始める前に、少なくとも次の3点は決めておきたい。
- 公的年金だけでは毎月いくら不足するか
- 何歳からNISAを取り崩すか
- 年間で資産残高の何%まで取り崩すか
具体的な取り崩し方法は、後半の60代からの出口戦略で解説する。
⑤iDeCoとの使い分けを理解する
NISAだけが老後資金づくりの選択肢ではない。iDeCoは掛金が全額所得控除の対象となるため、60代でも就労収入がある人には税制メリットがある。
ただし、iDeCoは加入区分によって加入できる年齢や掛金上限が異なる。また、原則として60歳以降でなければ受け取れず、口座管理手数料も発生する。流動性を重視するならNISA、所得控除を重視するならiDeCoという考え方で使い分けたい。
| 新NISA | iDeCo | |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 18歳以上 | 加入区分により異なる 会社員・公務員等は原則65歳未満 |
| 所得控除 | なし | 掛金全額が所得控除 |
| 運用益 | 非課税 | 非課税 |
| 受取時 | 非課税 | 一時金は退職所得控除、年金は公的年金等控除の対象 |
| 引き出し | いつでも可能 | 原則60歳以降 |
| 手数料 | 口座管理料なし | 口座管理手数料等あり 金融機関・拠出状況で異なる |
iDeCoは、運営管理機関の手数料が無料でも、国民年金基金連合会や事務委託先金融機関に支払う手数料がかかる。さらに、2027年1月引落分から加入者に係る手数料の見直しが予定されているため、最新の費用を確認しておきたい。
60代で働き続けている人は、iDeCoの所得控除メリットを受けられる可能性がある。一方、退職後の生活費としていつでも引き出せる柔軟性を重視するなら、NISAのほうが使いやすい。
両制度は性質が異なるため、どちらか一方に絞るのではなく、収入・年齢・資金の使い道に応じて併用を検討するとよい。
5つの落とし穴のうち、相続と認知症は「家族と話しておく」だけでもリスクを大きく減らせる。退職金・出口戦略・iDeCoは試算が必要なので、迷ったら早い段階で資産運用アドバイザーに相談してほしい。とくに相続税のかかる水準(おおむね基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人数を超える資産)であれば、税理士・FPとの連携が必須になる。
60代の新NISAはつみたて投資枠から始めるのがおすすめ

新NISAには2つの投資枠があるが、60代から始めるなら、まずはつみたて投資枠から検討するのが基本となる。対象商品が一定の基準を満たした投資信託・ETFに絞られており、積立投資によって購入タイミングを分散しやすいからだ。
つみたて投資枠を推奨する理由
- 金融庁の基準を満たした商品に絞り込まれている
- 積立投資のみのため、購入タイミングを分散しやすい
- 低コストのインデックスファンドが中心で、長期保有に向く
つみたて投資枠で購入できるのは、金融庁が定める条件を満たした投資信託・ETFに限られる。販売手数料、信託報酬、分配頻度などについて一定の基準があり、長期・積立・分散投資を前提に商品を選びやすい。
ただし、「つみたて投資枠の対象商品=低リスク」という意味ではない。株式型の商品は、世界株式に分散されていても価格が大きく下がる可能性がある。元本保証ではない点は必ず理解しておきたい。
成長投資枠は対象商品が幅広く、個別株式やETF、REITなどにも投資できるため、自由度が高い。一方で、商品選定の難易度も上がる。投資経験が少ない60代は、まずつみたて投資枠で運用に慣れ、必要に応じて成長投資枠を併用する流れが現実的だ。
投資すべき商品の特徴
- 投資対象が複数の国・地域に分散されている
- 信託報酬などの運用コストが低い
- 分配金を再投資できるタイプである
長期保有を前提にする以上、運用コストの影響は無視できない。同じ投資対象であれば、信託報酬などのコストが低い商品を比較することが大切だ。
地域分散も欠かせない。日本株だけ、米国株だけといった集中投資は、特定地域の景気後退や為替変動の影響を受けやすい。全世界株式型、先進国株式型、バランス型など、自分のリスク許容度に合った分散商品を中心に考えたい。
分配金は、受け取るよりも再投資に回すほうが複利効果を得やすい。特に毎月分配型の商品は、長期的な資産形成に向かない場合があるため注意が必要だ。
おすすめのネット証券
つみたて投資枠を利用するには、金融機関でNISA口座を開設する必要がある。金融機関を選ぶときは、商品ラインナップ、手数料、ポイント制度、サポート体制を確認したい。
- SBI証券
- 楽天証券
SBI証券
SBI証券は、主要ネット証券の一つで、投資信託の取扱いが豊富だ。三井住友カードを利用したクレカ積立にも対応しており、条件に応じてVポイントを貯められる。
国内株式の売買手数料は、所定の条件を満たすことで無料となる。ただし、米国株、信用取引、先物、外貨両替、投資信託の信託報酬など、無料化の対象外となるコストもある。利用予定の取引ごとに、最新の手数料体系を公式サイトで確認したい。
商品ラインナップを重視したい人、Vポイントや三井住友カードを日常的に使っている人は、SBI証券を検討しやすい。
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楽天証券
楽天証券は、楽天カードや楽天キャッシュを使った投信積立に対応しており、条件に応じて楽天ポイントを貯められる。楽天市場や楽天カードなどを日常的に使っている人にとっては、使い勝手のよい選択肢だ。
貯めた楽天ポイントは、投資信託や株式の購入に使える。ポイント還元率は楽天カードの種類、対象ファンド、積立方法などによって変わるため、最新の付与条件を確認してから利用したい。
楽天グループのサービスをよく利用している人、ポイントを投資に回したい人は、楽天証券を検討するとよい。
60代は新NISAで毎月いくら積み立てるべき?将来いくらになる?

60代で新NISAを始める場合、毎月の積立額に絶対的な正解はない。大切なのは、生活に必要な資金を確保したうえで、無理のない金額を継続することだ。
余剰資金での運用が鉄則
投資に回してよいのは、当面使う予定のない余剰資金である。生活費、医療費、介護費、住宅修繕費、車の買い替え費用など、近い将来使う可能性が高い資金まで投資してはいけない。
一般的には、生活費の半年〜1年分を生活防衛資金として残す考え方がある。ただし、60代以降は収入が年金中心になりやすく、医療・介護費の不確実性もあるため、生活費の2〜3年分を確保しておくと安心だ。
65歳以上夫婦のみ無職世帯の平均消費支出は月26万円台であり、税金や社会保険料なども含めると月30万円前後の支出になる。夫婦世帯なら、生活防衛資金は600万〜1,000万円程度を一つの目安にし、家計状況に応じて調整したい。
60代の3つの典型モデルケース
金融資産、年金見込額、家族構成、住居費の有無によって、適切な投資額は変わる。以下は、60代の代表的なケースをイメージするための目安である。
| ケースA 退職金あり夫婦 | ケースB 共働き継続中 | ケースC 自営業引退 | |
|---|---|---|---|
| 金融資産 | 2,500万円 (退職金を含む) | 1,200万円 | 800万円 |
| 主な収入 | 年金月22万円程度 | 就労収入+年金 | 年金月10万円程度 |
| 生活防衛資金 | 700万〜900万円 | 500万〜700万円 | 500万円前後 |
| NISA投資原資 | 最大1,500万〜1,800万円 | 最大500万〜700万円 | 最大300万円程度 |
| 毎月の積立目安 | 月10万〜30万円 (数年で分散) | 月5万〜10万円 | 月3万〜5万円 |
| 配分の考え方 | 株式と現金・債券を併用 | 就労収入がある間はやや積極的 | 安全資産を厚めにする |
上記はあくまで一例である。実際には、健康状態、配偶者の年齢、住宅ローン残高、相続方針、年金受給開始時期によって適切な金額は変わる。迷う場合は、家計全体を見ながら専門家に相談するとよい。
少額からでも始めることが重要
「月3万円では意味がない」と感じる人もいるかもしれない。しかし、少額でも早く始める意味はある。非課税期間が無期限になった新NISAでは、始めた月から非課税運用を始められるからだ。
- 非課税期間を早期に活用できる
- 積立投資により購入タイミングを分散できる
- 運用に慣れながら金額を調整できる
たとえば月3万円を年率3%で20年間積み立てた場合、積立元本720万円に対して、資産額は約983万円になる計算だ。運用益部分を非課税にできる点は、新NISAの大きなメリットである。
積立投資シミュレーション
- 月1万円・月3万円・月5万円・月10万円・月30万円の5パターン
- 運用期間は5年・10年・20年
- 年率3%固定、月複利、期首払いで計算
上記条件で計算した積立元本と運用益の合計額は以下の通りだ。なお、月10万円を20年、月30万円を10年以上積み立てる場合は、元本が新NISAの生涯投資枠1,800万円を超える。超過分は課税口座で運用する前提として見る必要がある。
| 5年 | 10年 | 20年 | |
|---|---|---|---|
| 月1万円 | 647,402円 (積立元本:60万円) | 1,397,919円 (積立元本:120万円) | 3,276,606円 (積立元本:240万円) |
| 月3万円 | 1,942,206円 (積立元本:180万円) | 4,193,757円 (積立元本:360万円) | 9,829,818円 (積立元本:720万円) |
| 月5万円 | 3,237,012円 (積立元本:300万円) | 6,989,595円 (積立元本:600万円) | 16,383,028円 (積立元本:1,200万円) |
| 月10万円 | 6,474,024円 (積立元本:600万円) | 13,979,191円 (積立元本:1,200万円) | 32,766,056円 (積立元本:2,400万円) |
| 月30万円 | 19,422,071円 (積立元本:1,800万円) | 41,937,574円 (積立元本:3,600万円) | 98,298,167円 (積立元本:7,200万円) |
※上記は年率3%・月複利を前提とした試算であり、将来の運用成果を保証するものではありません。税金・購入時手数料・信託報酬等のコストは考慮していません。投資信託や株式は元本保証ではなく、価格変動・為替変動等により損失が生じる可能性があります。
運用期間が長くなるほど、複利の効果は大きくなりやすい。同じ月3万円でも、5年では約194万円、20年では約983万円となる。
ただし、60代では「長く運用すれば必ず安心」とは言えない。運用期間だけでなく、途中で取り崩す時期や、暴落時に売らずに済む現金の確保も同じくらい重要だ。
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成長投資枠との併用は必要?60代が新NISAを上手に活用するコツ

つみたて投資枠での運用に慣れ、さらに余剰資金がある場合は、成長投資枠との併用を検討できる。成長投資枠は自由度が高い一方で、リスクの高い商品も選べるため、60代では慎重な商品選びが必要だ。
成長投資枠と併用すべきケース
- つみたて投資枠の年120万円を使っても余剰資金がある
- 個別株式・ETF・REITなどで配当収入を得たい
- 退職金などのまとまった資金を数年かけて非課税枠に入れたい
つみたて投資枠は年間120万円、月10万円が上限だ。月10万円を積み立ててもなお余剰資金がある場合、成長投資枠を併用することで、非課税枠をより計画的に活用できる。
また、配当収入で生活費を補いたい人にとって、成長投資枠は日本株やETFを活用できる点が魅力だ。ただし、上場株式やETF、REITの配当金・分配金をNISAで非課税にするには、受取方法を「株式数比例配分方式」にしておく必要がある。
「子や孫に資産を残したい」場合、成長投資枠で増やすこと自体は否定しないが、前述のとおりNISA口座は相続時に課税口座へ移管される。相続時の節税を狙うなら、生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人数)、暦年贈与(年110万円)、相続時精算課税制度(2024年から年110万円基礎控除)といったNISA以外の枠組みを優先的に併用するほうが、税効率は高くなる。NISAは「自分の老後の生活を守る」、贈与・保険は「家族に渡す」と用途を分けるのが基本だ。
成長投資枠に適した商品の特徴
- 地域・資産クラスが分散されている
- 値動きが自分のリスク許容度に合っている
- 運用コストが低い
60代が成長投資枠で運用する場合は、つみたて投資枠と同様に「分散・低コスト・長期保有」の原則を維持したい。短期的な値上がりを狙ったテーマ型ファンドや、特定銘柄への集中投資は、老後資金の運用としてはリスクが高くなりやすい。
成長投資枠では、つみたて投資枠と同じ投資信託を購入することもできる。無理に個別株や高配当商品を選ばず、全世界株式型やバランス型を成長投資枠でも買い増す方法も有効だ。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は、日本を含む全世界の株式に分散投資するインデックス型投資信託だ。低コストで世界株式に幅広く投資できる商品として、長期運用の代表的な選択肢の一つである。
ただし、株式100%の商品であるため、短期的には大きく値下がりする可能性がある。リスク許容度が高めの人や、現金・債券・バランス型商品と組み合わせて保有する人に向く。
〈購入・換金手数料なし〉ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)
〈購入・換金手数料なし〉ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)は、国内株式、先進国株式、国内債券、先進国債券の4資産に均等に分散投資する投資信託だ。
株式と債券を組み合わせることで、株式100%の商品より値動きを抑えやすい。価格変動が不安な60代や、リスクを抑えながら長期保有したい人にとって検討しやすい選択肢である。
※上記の銘柄紹介は情報提供を目的としたものであり、特定商品の購入を推奨するものではありません。投資信託は元本保証ではなく、価格変動・為替変動等により損失を被る可能性があります。最新の信託報酬・運用方針は、各運用会社の交付目論見書をご確認ください。
NISAを効果的に活用するコツ
- 「増やす」より「大きく減らさない」運用を意識する
- NISA以外の安全資産も組み合わせる
- 取り崩しのルールを最初に決めておく
- 家族と資産管理の方針を共有しておく
60代以降は、運用で大きく増やすことよりも、老後生活を壊さないことが重要だ。株式や投資信託だけでなく、現金、預金、個人向け国債、保険、iDeCoなどを組み合わせ、資産全体でバランスを取る必要がある。
個人向け国債は安全性の高い資産として活用しやすいが、株式や投資信託のような大きな値上がりは期待しにくい。REITや不動産投資は分配金・家賃収入を期待できる一方、価格変動、空室、修繕、流動性などのリスクがある。商品ごとの特徴を理解し、NISAだけに偏らない設計を心掛けたい。
60代からの出口戦略:取り崩しの設計方法
60代の新NISAで最も重要なのは、買う商品だけではない。いつから、いくらずつ取り崩すかを決める「出口戦略」が欠かせない。
出口戦略がないまま運用を始めると、相場下落時に生活費のために売却し、損失を確定してしまう可能性がある。公的年金、退職金、預貯金、NISAをどう組み合わせるかを先に考えておきたい。
取り崩しの3つの代表的な方法
| 方式 | 仕組み | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 定額 取り崩し | 毎月・毎年、一定額を引き出す | 家計管理がしやすい | 下落相場では資産が早く減りやすい |
| 定率 取り崩し | 毎年、資産残高の一定割合を引き出す | 資産残高に応じて売却額を調整できる | 引き出し額が変動し、家計が読みにくい |
| 4% ルール | 初年度に資産残高の4%を引き出し、翌年以降は物価上昇に応じて調整する | 米国の過去データに基づく考え方 | 日本の家計・税制・運用環境にそのまま当てはめにくい |
定額取り崩しは、毎月の家計管理がしやすい。一方で、相場が下落しているときも同じ金額を売るため、資産の減少が早まることがある。
定率取り崩しは、資産残高に応じて引き出し額が変わる。資産が減ったときは取り崩し額も少なくなるため、資産寿命を延ばしやすい。ただし、毎年の生活費が変動しやすくなる点には注意が必要だ。
4%ルールは、米国で広く知られる退職資産の取り崩し方法である。ただし、日本の年金制度、税制、物価、資産配分にそのまま当てはめるのは難しい。60代では、資産残高の3%前後を目安にしつつ、相場や生活費に応じて調整する保守的な方法も検討したい。
実務上は、「生活費として必ず必要な分は現金・年金で確保し、NISAは不足分を補う」という考え方が分かりやすい。相場が大きく下がった年は取り崩し額を減らすなど、柔軟に調整できるルールを作っておくと安心だ。
公的年金との組み合わせ方
取り崩しを設計する前に、公的年金の受給額と受給開始時期を確認しておく必要がある。老齢年金は原則65歳から受け取れるが、受給開始を繰り下げると、1か月あたり0.7%増額される。75歳まで繰り下げた場合、増額率は最大84%となる。
たとえば、65歳から70歳までは退職金やNISAの一部を取り崩し、70歳から公的年金を受け取る設計にすると、年金額を増やした状態で受給できる。ただし、年金額が増えると税金や社会保険料、医療費の自己負担に影響する場合もある。
年金の繰下げは、健康状態、配偶者の年齢、手元資金、就労収入、税・社会保険料の影響を踏まえて判断したい。NISAの取り崩しも、年金だけでは足りない金額を補う位置づけで設計すると分かりやすい。
「いくら持っていれば安心か」を絶対的に答えることは難しいが、「公的年金で月25万円、不足額月5万円をNISAから定率3%で取り崩す」と仮置きすれば、必要なNISA残高は約2,000万円という逆算ができる。逆算ができれば、毎月の積立額もブレない。出口から逆算するのがプロの作法だ。
60代が新NISAを始めるなら専門家に相談しよう
60代の資産運用は、現役世代より「失敗の取り戻しが効きにくい」という特性がある。商品選びだけでなく、退職金、年金、生活費、相続、認知症対策まで含めて考える必要がある。
60代から始める新NISAの難しさ
- 商品選定の選択肢が多く、自分に合うものが分かりにくい
- 退職金・年金・想定寿命を踏まえた適正な投資額が見極めにくい
- 「いつから・いくら取り崩すか」の出口戦略が立てにくい
- 相続・認知症対策まで含めた総合的な設計が難しい
これらは個別の知識を集めるだけでは解決しにくく、家族構成・健康状態・税務・相続までを統合的に見渡す視点が求められる。インターネットの情報は「一般論」であり、個別最適解とは限らないことに留意したい。
相談する場合は、事前に以下の情報を整理しておくと話が進みやすい。
- 預貯金・退職金・投資資産の金額
- 毎月の生活費と年金見込額
- 住宅ローンや借入の有無
- 配偶者・子どもなど家族構成
- 相続や介護に関する希望
専門家に相談すべき理由
資産運用アドバイザーやファイナンシャル・プランナーに相談するメリットは、資産状況、家族構成、運用目標、リスク許容度を踏まえた設計を考えられる点にある。
特に60代では、運用だけでなく、税理士、司法書士、弁護士、社会保険労務士などとの連携が必要になることもある。必要に応じて専門家へつないでもらえる窓口を持っておくと、相続や認知症対策まで含めて準備しやすい。
60代から新NISAを効果的に活用しよう
60代からでも、新NISAを始めるのは遅くない。60歳時点でも20年前後の運用期間を見込める人は多く、非課税で運用できるメリットは大きい。
ただし、60代の新NISAでは、現役世代と同じ考え方で投資してはいけない。生活防衛資金を確保し、退職金は一括ではなく時間分散し、相続・認知症・iDeCoとの使い分けまで確認しておく必要がある。
まずはつみたて投資枠から始め、分散性が高く、低コストで、自分のリスク許容度に合った商品を選ぶ。余剰資金がある場合は、成長投資枠を併用してもよい。ただし、個別株式や高配当商品に偏りすぎず、資産全体のバランスを意識したい。
最後に、いつから・いくら取り崩すかを最初に決めておくことが重要だ。出口戦略まで考えて新NISAを活用すれば、老後資金の安心感を高めやすくなる。
60代の新NISAに関するQ&A
出典
国税庁「No.1535 NISA制度」(更新日:2025年4月1日)
国税庁「No.1464 譲渡した株式等の取得費」(更新日:2025年4月1日)
金融庁「つみたて投資枠対象商品」(更新日:2026年4月30日)
資産運用業協会「NISA成長投資枠の対象商品」
日本証券業協会「2024年以降のNISAに関するQ&A」(公開日:2025年9月30日)
厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」
厚生労働省「認知症施策推進基本計画」
総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要」
政府広報オンライン「iDeCoがより活用しやすく!2024年12月法改正のポイントをわかりやすく解説」(公開日:2024年12月16日)
iDeCo公式サイト「制度改正について」
国民年金基金連合会「iDeCo加入者に係る手数料を見直します」
日本年金機構「年金の繰下げ受給」
厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方:老齢年金の繰下げ受給と年金額」
国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」(更新日:2025年4月1日)
国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」(更新日:2025年4月1日)
国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」(更新日:2025年4月1日)
国税庁「No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」(更新日:2026年4月1日)
国税庁「No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」(更新日:2025年4月1日)
SBI証券「ゼロ革命」
三井住友カード「三井住友カードつみたて投資」
楽天証券「クレカ積立(楽天カードクレジット決済)」
楽天証券「ポイント投資」
三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」
ニッセイアセットマネジメント「ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)」
Journal of Financial Planning「Determining Withdrawal Rates Using Historical Data」
Stanford University「The 4% Rule—At What Price?」

