新NISAは60代からでも遅くない?60歳からの金額・商品・取り崩し方

「60歳から新NISAを始めても、もう遅いのでは」「退職金を投資するなら、積立より一括のほうがよいのか」と迷っていませんか。

結論からいうと、60代から新NISAを始めても遅くありません。新NISAに年齢の上限はなく、非課税で保有できる期間も無期限です。ただし、60代では「何歳か」よりも、そのお金をいつ使うかが重要になります。

数年以内に使う生活費や医療費、住宅修繕費まで投資に回すと、必要な時期に値下がりしているかもしれません。反対に、10年以上使う予定がなく、値下がりしても保有を続けられる資金なら、60歳からでも新NISAを活用する余地があります。

この記事では、60代が新NISAを始めるときの判断順序を、毎月の金額、一括投資と積立、ポートフォリオ、商品選び、取り崩しまで順番に解説します。なお、この記事では2024年からのNISAを、一般的な呼び方に合わせて「新NISA」と表記します。

この記事でわかること
  • 60代・60歳から新NISAを始めても遅くない理由と、注意すべき条件
  • 毎月いくら積み立てるかを、平均ではなく家計から決める方法
  • 退職金などを一括投資する場合と、時間を分けて投資する場合の違い
  • 60代のポートフォリオと、初心者向けの商品選びの考え方
  • 運用を始める前に決めておきたい取り崩し方と、やらないほうがよいケース

60代の新NISAで最初に決めるのは、商品ではなく「使う時期」です

新NISAの年間投資枠は大きいものの、上限まで使う必要はありません。生活・緊急予備資金と近い将来の支出を現金で残し、長く使わないお金だけを投資候補にします。以下の年数は制度上のルールではなく、必要な時期の値下がり売却を避けるための安全寄りの目安です。年金・給与の安定性や予定支出に合わせて調整してください。

  • 2年以内に使うお金:原則として投資に回さない
  • 2年超〜10年未満に使うお金:値下がりしても予定を変えられる範囲だけ検討する
  • 10年以上使わないお金:新NISAでの長期・分散投資を検討しやすい
目次

60代から新NISAを始めても遅くない

新NISAは60代からでも利用でき、制度上の年齢上限はありません。利用する年の1月1日時点で18歳以上の日本国内居住者が対象で、60歳、65歳、70歳からでも口座を開設できます。

また、2024年からの新NISAは非課税保有期間が無期限です。「60歳から始めたら数年で非課税期間が終わる」という制度ではありません。必要になれば途中で売却できます。年金のように、一定年齢まで引き出せない仕組みではありません。

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制度項目新NISAの内容60代が確認したい点
対象者利用する年の1月1日時点で18歳以上の日本国内居住者年齢上限はなく、60代からでも開設できる
つみたて投資枠年間120万円毎月均等なら月10万円が上限。上限まで使う義務はない
成長投資枠年間240万円一括購入もできるが、退職金を急いで入れる必要はない
年間投資枠の合計最大360万円つみたて投資枠と成長投資枠を併用できる
非課税保有限度額合計1,800万円
うち成長投資枠は1,200万円まで
1,800万円は達成目標ではなく、非課税で保有できる制度上の上限
非課税保有期間無期限使う時期まで保有できるが、元本保証ではない
売却後の枠売却した商品の取得金額(買ったときの金額)分が翌年以降に再利用可能売却代金や利益額ではなく、購入時の金額を基準に復活する

60代で大切なのは年齢より「運用できる期間」

同じ60歳でも、5年後に住宅のリフォームへ使う300万円と、15年以上使う予定のない300万円では、取れるリスクが異なります。前者は値下がりすると予定に影響しますが、後者は相場の回復を待てる可能性があります。

そのため、「60代だから株式は何%」「60歳なら毎月いくら」と、年齢だけで決めるのは避けましょう。使う時期、年金を含む毎月の収支、預貯金、既に保有する投資商品、値下がりへの耐性をまとめて判断します。

新NISAは税制優遇であり、元本保証の商品ではない

新NISAは、投資で得た売却益や配当・分配金を非課税にする制度です。通常は利益に約20%の税金がかかりますが、新NISA口座内の対象商品から得た利益は非課税になります。

※上場株式の配当を非課税で受け取るには、証券会社の口座で受け取る「株式数比例配分方式」を選ぶ必要があります。銀行口座などで受け取る方式では課税されることがあります。

一方で、新NISAを使っても商品の価格変動はなくなりません。100万円で買った投資信託が80万円になることもあります。「新NISAだから安全」ではなく、「投資の利益に税金がかからない」と理解することが大切です。

60代の新NISAは「使う時期」で資金を3つに分ける

新NISAへ回す金額は、金融資産の総額ではなく、近い将来に使うお金を差し引いて決めます。まず、預貯金や投資商品を含む金融資産を、次の3つに分けてください。

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使う時期主な例基本の置き場所新NISAでの考え方
2年以内年金・給与で賄えない生活費の不足分、税金、医療費、車検、近い時期の旅行や修繕普通預金など、すぐに使えて値動きのない資金原則として投資しない
2年超〜10年未満住宅リフォーム、車の買い替え、家族への援助、まとまった医療・介護費預貯金を中心に、時期をずらせる部分だけ慎重に運用値下がり時に支出を延期できる範囲に限る
10年以上当面使う予定のない余裕資金、将来の生活補助資金目的とリスク許容度に応じて分散投資新NISAの候補にしやすい

この分け方が、すべての人に当てはまるわけではありません。また、「2年以内の生活費」は生活費の総額ではなく、年金や給与で賄えない不足分を指します。生活・緊急予備資金と同じ支出を二重に差し引かないようにしてください。60代は運用と取り崩しが近い時期に始まることがあるため、「必要な時期に売らなくて済むか」を厳しく確認することが大切です。なお、10年以上使わない資金でも、元本割れしないわけではありません。

新NISAに回せる上限を計算する

簡易的には、次の式で投資に回せる総額の上限を確認できます。

投資に回せる総額の簡易式

金融資産 − 2年以内の予定支出・家計不足分 − 2年超〜10年未満に使うお金のうち値下がりを避けたい部分 − 生活・緊急予備資金

同じ支出を二重に差し引かないようにします。既に保有する株式や投資信託など、値動きのある資産を今後も持つなら、現在の評価額を投資総額に含めてください。投資候補総額から既存の値動き資産を差し引くと、新たに新NISAへ入れる金額の上限が見えます。

たとえば金融資産が2,000万円あり、重複しない支出として2年以内に300万円、2年超〜10年未満に600万円、生活・緊急予備資金として300万円を確保する場合、投資に回せる総額の上限は800万円です。既に株式や投資信託を250万円保有しているなら、新たな投資額は最大550万円程度から、さらに値下がりへの耐性を踏まえて抑えます。

ここで出した金額は、「必ず投資すべき額」ではありません。相場が大きく下がると不安で眠れない、生活設計まで変えたくなると思うなら、さらに金額を小さくしてください。

生活・緊急予備資金は、投資資金と別に置く

生活・緊急予備資金は、病気や家電の故障、家族への急な支援などに備えるお金です。必要額は、毎月の生活費、年金や給与の安定性、保険の保障内容、住宅の状態によって変わります。

新NISAの商品は原則としていつでも売却できます。ただし、必要になったときに値下がりしているかもしれません。急な支出に備えるお金は投資せず、現金で確保しておくほうが、結果として運用を長く続けやすくなります。

60代の新NISAは毎月いくらがよい?

毎月の積立額に一律の正解はありません。平均額や非課税枠から逆算するのではなく、年金や給与から毎月確実に残る金額を基準にします。

毎月の積立上限は家計の黒字から求める

まず、次の式で「毎月続けられる上限」を確認します。

毎月の積立上限の簡易式

毎月の手取り収入(年金・給与など) − 毎月の生活費 − 年間の特別支出÷12 − 現金で増やしたい貯蓄額

年間の特別支出には、固定資産税、旅行、車検、家電の買い替え、冠婚葬祭などを含めます。毎月の支出だけで計算すると、積立額を大きく見積もりやすいためです。

計算結果が月5万円でも、最初から5万円を積み立てる必要はありません。投資が初めてなら、たとえば月1万円以下の小さな金額から始め、半年ほど続けて家計と値動きに慣れてから増額する方法もあります。月1万円は推奨額ではなく、家計に合わせて下げても構いません。反対に、毎月の収支が赤字なら、積立を始める前に支出や保有資産の取り崩し方を見直すほうが先です。

月1万円・3万円・5万円・10万円の積立イメージ

次の表は、毎月同額を積み立てた場合の元本と、年率3%で運用できたと仮定した参考値です。将来の運用成果を示すものではなく、実際には値下がりする年もあります。

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毎月の積立額5年の元本5年後の参考値
年率3%
10年の元本10年後の参考値
年率3%
1万円60万円約65万円120万円約140万円
3万円180万円約194万円360万円約419万円
5万円300万円約323万円600万円約699万円
10万円600万円約646万円1,200万円約1,397万円

※毎月末に積み立て、年率3%を12分割した利率で複利運用した単純計算です。手数料、商品の値動き、売買時期は考慮していません。利益や元本は保証されません。

毎月10万円を積み立てると、つみたて投資枠の年間120万円に達します。とはいえ、優先すべきなのは枠を使い切ることではありません。必要な現金を残し、相場が下がっても無理なく続けられる金額にすることです。

退職金は一括投資と積立、どちらがよい?

一括投資と積立のどちらが常に有利とはいえません。一括投資なら、資金を早く市場に置けます。ただし、直後に大きく値下がりすれば、損失も一度に受けます。時間を分けると高値づかみの不安は和らぎますが、待機中の資金は相場上昇の恩恵を受けません。

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方法特徴向きやすい人主な注意点
一括投資まとまった資金を早い時期に投資する10年以上使わず、大幅な値下がりでも売らずに保有できる人投資直後の下落を全額で受ける。退職金を勢いで入れない
時間を分ける投資6か月〜2年などに分けて購入する投資時期を一度に決めるのが不安な人、投資経験が少ない人相場が上昇し続けると、一括投資より購入価格が高くなることがある
毎月の積立給与や年金の黒字から定額で購入する生活資金を守りながら少額で始めたい人投資できる金額が小さいと、まとまった余裕資金を長く現金で置くことになる

退職金は受け取った直後に「枠ありき」で投資しない

退職金を受け取ると、新NISAの年間投資枠を早く使いたくなるかもしれません。しかし、退職後は手取り収入、税金、社会保険料、住宅費、医療費などが変わることがあります。まず、退職後の年間収支とまとまった支出を一覧にし、使わないと確認できた部分だけを投資候補にします。数か月分の実績が必要な家庭もあれば、退職前から見通せる家庭もあるため、「必ず1年待つ」と一律に決める必要はありません。

投資する場合も、「今年の成長投資枠240万円を埋める」という制度起点ではなく、「この資金は何年使わないか」という目的起点で決めます。枠が余っても不利益はありません。未使用の年間投資枠は翌年へ繰り越せませんが、無理に使う必要もありません。

迷う場合は「少額の積立+余裕資金の分割」が現実的

投資経験が少ない人は、まず毎月の積立で値動きに慣れ、まとまった余裕資金は複数回に分ける方法を検討できます。たとえば毎月3万円の積立を続けながら、10年以上使わないと確認できた資金を半年ごとに追加する形です。

分ける期間を長くしすぎると、いつまでも投資を始められないことがあります。投資額、回数、終了時期を先に決め、相場のニュースだけで計画を変えないようにします。

60代の新NISAポートフォリオは家計全体で決める

ポートフォリオは、新NISA口座の中だけでなく、預貯金や既存の株式、投資信託、保険の解約返戻金と保障目的を含む家計全体で考えます。新NISAだけを見て「株式50%・債券50%」と決めると、家計全体では株式に偏っていることがあります。

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考え方の例家計の状態金融資産全体のイメージ新NISAの使い方
守りを優先数年以内の支出が多い、年金だけでは毎月赤字、値下がりへの不安が強い預貯金など値動きのない資産を厚くし、成長資産は全体の一部にする少額の積立から始めるか、家計が整うまで見送る
バランスを重視近い将来の支出を確保済みで、10年以上使わない資金がある預貯金と分散投資を組み合わせ、既存資産を含めて偏りを抑えるつみたて投資枠を中心に、広く分散された商品を保有する
成長も重視年金やその他収入で生活費を賄え、長期間使わない余裕資金が多い必要資金を現金で確保したうえで、成長資産の比率を高める値下がり時にも保有を続けられる範囲で投資額を増やす

※上表は判断の方向性を示す例であり、特定の資産配分を推奨するものではありません。必要資金、年金額、家族構成、既存資産によって適切な配分は変わります。

配分は「値下がり額」から逆算する

資産配分を数値で考えるときは、近い将来の必要資金を確保したうえで、金融資産全体を「値動きのない資産」と「値動きのある資産」に分けます。ここでいう値動きのない資産は、普通預金や定期預金などを想定しています。債券や債券型投資信託も価格が動くため、この簡易計算では値動きのある資産側に含めます。

たとえば、値動きのない資産と値動きのある資産の比率を80:20、60:40、40:60の3案で比べます。次の表は、金融資産2,000万円のうち値動きのある資産だけが30%下落し、値動きのない資産は変わらないと仮定した単純なストレステストです。

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値動きなし:値動きあり値動きのある資産の金額30%下落した場合の損失額金融資産全体の下落率
80:20400万円120万円6%
60:40800万円240万円12%
40:601,200万円360万円18%

※値動きの理解を助けるための仮定であり、相場や各商品の実際の下落率を予測するものではありません。実際には30%を超えて下落することもあります。手数料や利息、為替変動も考慮していません。

この比率は、60代の標準配分や推奨配分ではありません。大切なのは、想定した損失が出ても、生活費や予定支出を値動きのない資産で賄い、慌てて売らずに済むかです。既に株式や投資信託を多く保有している人は、新NISAでさらに値動き資産を増やす前に、家計全体の偏りを整えます。

債券やバランス型投資信託も値下がりする

株式より値動きを抑えたいときは、株式と債券を組み合わせたバランス型投資信託を検討できます。ただし、債券を含む投資信託も金利や為替の影響で値下がりします。預金のような元本保証はありません。

「低リスク」という言葉だけで選ばず、最大でどの程度値下がりしたことがあるか、為替の影響を受けるか、保有コストはいくらかを確認します。

60代が新NISAで選ぶ商品の考え方

投資が初めてなら、つみたて投資枠で、低コストかつ広く分散された投資信託を1本から検討すると管理しやすくなります。ただし、商品数を増やせば分散が進むとは限りません。似た投資先の商品を何本も持つと、管理だけが複雑になります。

商品は5つの基準で絞る

  1. 投資先が分散されているか:一つの国、一つの業種、数社の株だけに偏っていないかを確認する
  2. 保有コストが低いか:信託報酬(保有中に差し引かれる費用)などを比較する
  3. 値動きを理解できるか:何が上がると利益になり、何が起きると下がるのか説明できる商品にする
  4. 分配金に頼りすぎていないか:分配金が出ても、資産全体が増えるとは限らない
  5. 取り崩しやすいか:必要なときに売却でき、残高や損益を確認しやすい商品にする
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商品タイプ特徴60代での使い方注意点
全世界などに分散する株式インデックス型市場全体の値動きへの連動を目指し、多くの国・企業へまとめて投資する10年以上使わない成長資金の中心候補株式100%のため、大きく値下がりする局面がある
株式と債券のバランス型複数資産へ自動的に分散する株式だけでは値動きが大きいと感じる場合の候補元本保証ではなく、株式型より費用が高い商品もある
個別株・高配当株企業を選び、配当や値上がりを狙う十分に調べられる人が、資産の一部で利用する企業集中、減配、業績悪化のリスクがある
テーマ型・レバレッジ型特定分野や値動きを増幅する仕組みに投資する老後資金の中心にはしない値動きが大きく、仕組みやコストも複雑になりやすい

初心者はつみたて投資枠を先に考える

つみたて投資枠の商品は、長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託に限られています。商品選びの範囲が絞られているため、投資が初めての人は判断しやすいでしょう。

成長投資枠では上場株式や幅広い投資信託を購入できますが、使わなくても問題ありません。つみたて投資枠と同じ投資信託を成長投資枠で追加購入する方法もあります。枠ごとに別の商品を買う必要はありません。

60代は新NISAを始める前に取り崩し方を決める

60代の運用では、買い方と同じくらい、いつ・どのように売るかが重要です。取り崩し計画がないと、相場が下がったときに不安になり、生活費のためにまとめて売却する可能性があります。

取り崩しには3つの方法がある

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方法仕組みメリット注意点
定額で取り崩す毎月3万円など、一定額を売却する生活費へ組み込みやすい相場下落時は多くの口数を売ることになり、資産が減りやすい
定率で取り崩す残高の年3%など、一定割合を売却する相場下落時の売却額が自動的に小さくなる受け取れる金額が毎年変わる
必要なときだけ取り崩す不足額や大きな支出に合わせて売却する無駄な売却を避けやすい判断が場当たり的にならないよう基準が必要

方法が違っても、当面使うお金を現金で持つ点は共通します。相場が下がった年に生活費のための売却を避けられれば、回復を待つ余地が生まれるからです。

実務上は「当面の現金+年1回の見直し」がわかりやすい

ここでいう「2年」は、必要な時期の売却を避けるための安全寄りの目安です。年金や給与で生活費の大半を賄える家庭は、生活費総額ではなく不足分と予定支出を確保します。反対に、収入が不安定な場合や大きな支出が近い場合は、より厚い現金が必要です。

  • 今後2年以内の家計不足分と予定支出を現金で確保する
  • 半年または1年に一度、必要額だけ売却して現金を補充する
  • 相場が大きく下がった年は、現金の範囲で支出を賄えるか確認する
  • 年1回、資産配分、家計、医療・介護予定、家族の状況を見直す

売却した商品の取得金額分は、翌年以降に非課税保有限度額(生涯の総枠)として再利用できます。ただし、その年の年間投資枠が上乗せされるわけではありません。また、売却時に損失が出ても、特定口座などの利益から差し引く「損益通算」や、損失を翌年以降へ持ち越す「繰越控除」はできません。

配当金だけで生活費を賄おうとしない

高配当株は、定期収入を生む商品のように見えます。けれども、配当は企業の業績や方針によって減ることがあります。株価が下がれば、受け取った配当以上に資産価値が減るかもしれません。

配当利回りの高さだけで選ぶのではなく、預貯金、年金、投資資産の売却を組み合わせ、家計全体で取り崩しを設計します。

60代から新NISAを始めるメリットとデメリット

新NISAは60代にも役立つ制度ですが、万能ではありません。税金のメリットと、投資そのもののリスクを分けて見ていきましょう。

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区分内容60代での確認点
メリット売却益や配当・分配金が非課税利益が出た場合の手取りを増やせる
メリット非課税保有期間が無期限運用期間を年齢だけで区切らずに済む
メリット必要なときに売却できる生活設計の変化に対応しやすい
デメリット元本割れがある必要な時期に値下がりしている可能性がある
デメリット損益通算・繰越控除ができないNISA口座の損失を課税口座の利益から差し引けない
デメリット商品ごとに費用やリスクが異なる非課税でも高コスト商品なら手取りが減る
デメリット大きな枠が過剰投資を誘いやすい1,800万円を埋めることを目的にしない

新NISAを急いで始めないほうがよい人

  • 年金や給与だけでは毎月の生活費が足りず、預貯金を継続的に取り崩している
  • 2年以内に使う予定の資金や生活・緊急予備資金が十分にない
  • リボ払いやカードローンなど、高金利の借入れがある
  • 退職後の税金、社会保険料、住宅費、医療費をまだ整理していない
  • 少しの値下がりでもすぐ売りたくなる、または家族に隠して投資しようとしている
  • 金融機関や知人から期限を区切って契約を急かされている

これらに当てはまる場合は、「新NISAを使わないと損」と焦らず、まず家計を整えましょう。新NISAの非課税枠は大きいものの、生活を不安定にしてまで使う制度ではありません。

60歳から新NISAを始める6つの手順

商品検索から始めると、人気ランキングや短期の値上がりに判断が引っ張られます。次の順序なら、生活資金を守りながら始めやすくなります。

  1. 金融資産と借入れを一覧にする:預貯金、株式、投資信託、保険の解約返戻金・保障内容、ローン残高を一枚にまとめる
  2. 資金を使う時期で分ける:2年以内、2年超〜10年未満、10年以上の3区分にする
  3. 投資総額と毎月額の上限を決める:年間投資枠ではなく、家計と予定支出から逆算する
  4. 金融機関を選ぶ:商品数だけでなく、手数料、画面の見やすさ、相談窓口、セキュリティ、出金のしやすさを確認する
  5. 中心商品を1本決める:つみたて投資枠の低コストで広く分散された商品から検討する
  6. 見直し日と取り崩しルールを決める:毎日の値動きではなく、半年または1年ごとに確認する。家計を共有する家族がいる場合は、保有先と取り崩し方も共有する。ただし、ID・パスワード・暗証番号は共有しない

金融機関は「自分で管理できるか」で選ぶ

ネット証券は商品や手数料の面で選択肢が多い一方、操作を自分で行う必要があります。対面の金融機関は相談しやすい一方、取扱商品や手数料が異なります。どちらが優れているかではなく、自分で長く管理し、必要なときに売却や出金を行えるかで選びます。操作に不安がある場合は、電話・店頭サポートの範囲に加え、本人が管理できなくなった場合や相続時の連絡・手続き方法も確認しておくと安心です。

相談する場合は、提案商品の費用、どの程度の値下がりを想定しているか、提案者が受け取る報酬、より低コストな代替案、投資しない選択肢も確認してください。「今月中に枠を使うべき」と急かす提案には慎重になりましょう。

始めた後は、毎日残高を確認する必要はない

長期投資を前提にしても、毎日残高を見ると短期の値動きに反応しやすくなります。積立設定後は家計に無理がないかを毎月確認し、資産配分や取り崩し計画は半年または1年ごとに見直す方法が基本にしやすいでしょう。

ただし、生活状況が変わった、まとまった支出が決まった、保有商品を理解できなくなったといった場合は、予定日を待たずに見直します。

60代の新NISAでよくある質問

60代のポートフォリオは株式を何%にすべきですか?

年齢だけで決まる標準比率はありません。まず、2年以内の家計不足分と予定支出、生活・緊急予備資金を現金で確保します。そのうえで、株式などの成長資産が30%程度下がったと仮定し、損失額を家計が受け止められる比率まで下げます。新NISA口座だけでなく、預貯金や既存の投資商品を含む金融資産全体で判断してください。

60歳から新NISAを始めるのは遅いですか?

遅いとは限りません。新NISAに年齢上限はなく、非課税保有期間も無期限です。年齢ではなく、その資金を何年使わないか、値下がりしても保有を続けられるかで判断します。

65歳や70歳からでも新NISAを始められますか?

始められます。利用する年の1月1日時点で18歳以上の日本国内居住者が対象で、制度上の上限年齢はありません。ただし、数年以内に使う生活費や医療・介護費を投資に回さないことが重要です。

60代は新NISAで毎月いくら積み立てるべきですか?

一律の適正額はありません。年金や給与から、毎月の生活費、年間の特別支出、現金で増やしたい貯蓄額を差し引き、継続して残る金額の範囲で決めます。初めてなら少額で始め、家計と値動きに慣れてから増額する方法があります。

新NISAの1,800万円は使い切るべきですか?

使い切る必要はありません。1,800万円は非課税で保有できる制度上の上限であり、目標額ではありません。生活・緊急予備資金と近い将来の支出を優先し、余裕資金の範囲で利用します。

退職金を成長投資枠で一括投資してもよいですか?

退職金のうち、10年以上使わず、大きく値下がりしても売らずに保有できる部分なら検討できます。ただし、退職後の収支や税金、住宅・医療費が固まる前に全額を投資するのは避けます。不安がある場合は、少額積立と複数回への分割を組み合わせます。

つみたて投資枠と成長投資枠はどちらを使うべきですか?

投資が初めてなら、対象商品が絞られているつみたて投資枠から考えると管理しやすいでしょう。成長投資枠は、まとまった余裕資金の追加投資や個別株などに使えますが、必ず使う必要はありません。両方の枠で同じ投資信託を買うこともできます。

新NISAの商品はいつでも売却できますか?

原則としていつでも売却できます。利益が出ている場合、その利益はNISAの要件を満たす範囲で非課税です。ただし、売却時の価格は保証されず、損失が出ても他口座の利益との損益通算はできません。売却した商品の取得金額分は翌年以降に非課税保有限度額として再利用できますが、その年の年間投資枠が増えるわけではありません。

まとめ|60代の新NISAは「守るお金」を決めてから始める

60代から新NISAを始めても、制度上は遅くありません。ただし、若い世代と同じように「長く積み立てればよい」と考えるのではなく、運用と取り崩しを一体で設計する必要があります。

  • 新NISAには年齢上限がなく、60歳・65歳からでも始められる
  • 2年以内の家計不足分・予定支出と、生活・緊急予備資金は投資に回さない
  • 毎月の積立額は非課税枠ではなく、家計の黒字から決める
  • 退職金は全額一括ではなく、使う時期を確認して必要なら時間を分ける
  • ポートフォリオは新NISA口座だけでなく、預貯金と既存資産を含めて考える
  • 商品を買う前に、取り崩し方法と見直し日を決める

最初にすることは、金融商品を探すことではありません。手元のお金を「2年以内」「2年超〜10年未満」「10年以上」に分け、投資に回しても生活へ影響しない金額を見える化することです。ここまで整理できれば、毎月いくらにするか、一括か積立か、どの種類の商品を選ぶかが見えやすくなります。

年金、退職金、預貯金、保険、既存の投資商品が複数あると、自分だけで投資上限や取り崩し方を決めるのは難しくなります。その場合は、特定の商品を売ることから始めず、家計全体を比較して説明できる専門家へ相談する方法もあります。相談時は、費用、報酬、提案しない選択肢も含めて確認してください。

出典

  • 金融庁「NISAを知る」
    https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/know/
  • 金融庁「NISAを利用する皆さまへ」
    https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa2024/slide_202406.pdf
  • 国税庁「No.1535 NISA制度」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1535.htm

※制度・税務上の取扱いは2026年8月5日時点で確認しています。金融商品には価格変動等のリスクがあり、運用成果は保証されません。税務・社会保険・相続の扱いは個別事情で異なるため、必要に応じて税理士等の専門家へ確認してください。

この記事を書いた人

NISAメディア編集部は、新NISA制度を「最大限に活かす」ための実践知をお届けしています。野村證券出身者・金融機関出身者を中心としたメンバーが、統計データと市場データを読み解きながら、新NISAのおすすめ口座新NISAのおすすめ銘柄新NISAの相談先などの情報を提供。運営元であるアドバイザーナビ株式会社は、資産運用アドバイザーを紹介するプラットフォーム「資産運用ナビ」を展開しており、読者が信頼できる専門家にスムーズに相談できるプラットフォームづくりをしている。