新NISAについて調べると、「デメリットしかない」「やらないほうがいい」という意見も見かけます。
結論:新NISAには注意点がありますが、「デメリットしかない」と決めつける必要はありません。利益を非課税にする制度であって、値下がりを防ぐ制度ではないからです。余裕資金を中長期で運用する人には向きますが、生活費まで投資したり、短期で大きな利益を狙ったりする使い方には合いません。
新NISAは、株式や投資信託の商品名ではなく、投資で得た利益を非課税にする口座の仕組みです。利用するかどうかは、お金の目的や使う時期、値下がりしても持ち続けられるかで判断します。
注意点は、制度上の制約・投資そのもののリスク・商品やコスト・使い方の4つに分けると整理しやすくなります。
新NISAはデメリットしかない?利益と損失の扱いを比較
新NISAの大きなメリットは、対象商品から得た売却益や配当・分配金に、日本国内の税金が原則かからないことです。課税口座(特定口座や一般口座)では、上場株式や投資信託などの利益に通常20.315%の税金がかかります。
ただし、値下がりすれば新NISAでも損は出ます。しかも、NISA口座の損失を、課税口座の利益から差し引くことはできません。
| ケース | 課税口座 | NISA口座 |
|---|---|---|
| 20万円の利益 | 税額は約4万630円 税引後は約15万9,370円 | 税額は0円 利益20万円が残る |
| 20万円の損失 | 一定の要件を満たせば、ほかの上場株式等の利益との相殺や翌年以降への繰り越しが可能 | 利益との相殺も、翌年以降への繰り越しもできない |
※上表は、上場株式などの譲渡益に20.315%の税金がかかる前提で単純化した例です。手数料は含めていません。
新NISAは、利益にかかる税金を抑える制度です。値下がりによる損失までは防げません。
新NISAのデメリット7つ【制度・投資・コスト・使い方別】
7つの注意点は、投資リスク・制度・商品やコスト・使い方の4種類に分かれます。
【投資リスク】1.元本保証ではなく、値下がりすれば損をする
新NISAで買う株式や投資信託は、預金のように元本が保証されていません。景気や企業業績、金利、為替などの影響で価格が動き、買った金額を下回ることがあります。
たとえば、100万円を投資したあとに価格が20%下がると、評価額は80万円です。評価額は、その時点で売った場合の金額を指します。売らずに持ち続けても、価格が戻るとは限りません。
長期・積立・分散を組み合わせると、買う時期や投資先の偏りを抑えやすくなります。ただし、損をしない方法ではありません。
【制度】2.損益通算も損失の繰越控除もできない
NISA口座で出た損失は、税金の計算上「なかったもの」として扱われます。そのため、課税口座の利益と差し引く「損益通算」はできません。
たとえば、NISA口座で20万円の損失が出て、課税口座で20万円の利益が出ても、差し引いて0円にはできません。課税口座の利益20万円には、通常どおり税金がかかります。
課税口座では、確定申告をすると、差し引ききれなかった損失を翌年以降3年間へ繰り越せる場合があります。NISA口座の損失は、この「繰越控除」も対象外です。
【制度】3.投資した金額は所得控除にならない
新NISAには所得控除がないため、投資しただけではその年の所得税や住民税は下がりません。非課税になるのは、新NISAで得た売却益や配当・分配金です。
iDeCoは掛金が所得控除の対象になるため、この点が新NISAとの大きな違いです。
【商品・コスト】4.非課税でも手数料はかかる
運用益は非課税でも、商品や取引にかかる費用は別です。主なコストは次のとおりです。
- 投資信託:保有中は信託報酬が差し引かれ、商品によっては売却時にも費用(信託財産留保額)がかかります。
- 株式・ETF(上場投資信託):金融機関や取引方法によって、売買手数料や為替手数料などがかかります。
つみたて投資枠の対象となる投資信託は、購入時手数料が原則かからず、信託報酬も一定水準以下に抑えられています。それでも保有中の費用はかかり、長く持つほど小さな差が積み重なります。過去の成績だけでなく、コストも比べましょう。
【制度】5.商品・金融機関・配当の受け取り方に制約がある
新NISAで買える商品は限られます。預金や国債は対象外で、つみたて投資枠では購入できる投資信託も絞られています。
- 金融機関:その年に新たに買い付けできる金融機関は1社だけです。つみたて投資枠と成長投資枠を別々の金融機関では使えません。
- 既存の商品:特定口座や一般口座で持っている商品は、そのままNISA口座へ移せません。
- 国内上場株式等の配当:非課税で受け取るには、配当を証券口座で受け取る「株式数比例配分方式」を選ぶ必要があります。
- 外国株式等の配当:投資先の国で税金が引かれる場合があります。NISA口座の配当は日本で非課税となるため、「外国税額控除」は原則使えません。
個別株やETFを買う予定があるなら、口座を開く前に希望の商品を扱っているか確認しましょう。課税口座の商品を売ってNISA口座で買い直すと、利益に税金がかかる場合があり、買い直した分だけ年間投資枠も使います。
【制度】6.売却しても、その年の年間投資枠は戻らない
新NISAには、1年間に買える「年間投資枠」と、非課税で保有できる商品の購入額の合計を示す「非課税保有限度額」があります。上限は、それぞれ年間360万円、合計1,800万円です。
商品を売ると、購入時の金額分だけ非課税保有限度額が空き、翌年以降に再利用できます。ただし、その年に使った年間投資枠は戻りません。
たとえば、100万円で買った商品を130万円で売っても、翌年以降に再利用できる総枠は100万円分だけです。翌年の年間投資枠が100万円増えることもありません。
【使い方】7.投資枠を埋めようとすると家計を崩しやすい
年間360万円は上限であり、目標額ではありません。「枠を余らせるともったいない」と考えて、生活費や数年以内に使うお金まで投資すると、値下がり中に売らざるを得なくなるおそれがあります。
少額でも、得られた利益は非課税です。周りの投資額ではなく、家計が苦しくならず、値下がりしても続けられる金額を基準にしましょう。
新NISAを今はやらないほうがいい人
新NISAは、「一生使わないか、今すぐ始めるか」の二択ではありません。次の状態なら、まず家計を整えるほうが先です。
| 今は見送ったほうがよい状態 | 先に整えること |
|---|---|
| 生活費や急な出費に備える現金が足りない | 当面の生活費と、急な出費に備える現金を確保する |
| 数年以内に使うお金を投資しようとしている | 住宅資金・教育費などは預貯金で分ける |
| リボ払いやカードローンなどの負担が大きい | 返済計画と家計改善を優先する |
| 値下がりすると不安で売ってしまいそう | 投資額を小さくするか、開始を待つ |
| 短期間で大きく増やしたい | 目的・期間・受け入れられる損失額を見直す |
新NISAは、制度の終了時期が決められておらず、口座開設にも締切がありません。今の家計に余裕がなければ、まず家計を整え、無理なく始められる時期を待ちましょう。
新NISAをやるべきか判断する3つの基準
商品ランキングより先に確認したいのは、「お金・使う時期・値下がり」の3点です。
- お金:生活費や近い将来の支出を除いても、投資に回せるお金があります。
- 使う時期:必要になるまで時間があり、使う時期をある程度調整できます。
- 値下がり:資産が一時的に減っても、生活や予定を変えずに持ち続けられます。
3つがそろっているなら、新NISAは中長期の資産形成に使いやすい制度です。どれかに不安があれば、投資額を小さくするか、預貯金を増やしてから考えましょう。
お金は使う時期ごとに分ける
- 急な支出や数年以内に使うお金:預貯金で確保する
- 使う時期を調整できる中長期資金:新NISAを検討する
- 老後まで使わず、所得控除も重視するお金:iDeCoも比較する
新NISAは預貯金の代わりではありません。使う時期ごとにお金の置き場所を分けると、投資に回せる金額が見えやすくなります。
新NISAで後悔を減らす始め方5ステップ
新NISAを使うと決めても、すぐに商品を買う必要はありません。次の順番で準備すると、勢いだけで商品を選びにくくなります。
老後資金など、お金の目的と必要になる時期を決めます。使う時期が近いお金は、投資に向きません。
生活費や税金、数年以内の大きな支出、急な出費に備える現金を先に分けます。
年間投資枠から逆算せず、値下がりしても積立を続けられる金額にします。
その商品が何に投資し、どんなときに値下がりしやすいのか、費用はいくらかを比べます。人気ランキングや直近の成績だけで選ばないことも大切です。
積立額を見直す時期と、お金を使う前に現金化を始める時期を決めます。
- どの金融機関で口座を開くか
- どの商品を選ぶか
- 毎月いくら積み立てるか
借りたお金や生活費を投資に回す、仕組みを理解しないまま商品を買う、値下がりのたびに売買する――こうした始め方は避けましょう。
新NISAのデメリットに関するよくある質問
- 新NISAはやらないほうがいいですか?
-
全員がやる必要はありません。生活に必要な現金が足りない人や、数年以内に使うお金しかない人は、今は見送るほうが安全です。余裕資金を中長期で運用できるなら、新NISAを選択肢に入れられます。
- 新NISAをやらないと損ですか?
-
新NISAを使わなかったこと自体で、実際の損失が出ることはありません。非課税の効果は、投資をして利益が出たときに働きます。枠を余らせることより、無理な投資で損失を出すほうが問題です。
- 年間360万円は使い切るべきですか?
-
年間360万円はあくまで上限で、使い切る必要はありません。家計と目的に合わせて、無理なく続けられる金額にしましょう。
- 新NISAは元本保証ですか?
-
元本は保証されません。NISA口座で買った株式や投資信託が値下がりすれば、損失が出ます。
- 暴落で借金になることはありますか?
-
新NISAでは信用取引ができません。手元のお金だけで買う通常の取引(現物取引)なら、値下がりによる損失は基本的に投資した金額の範囲内です。ただし、元本が大きく減る可能性はあります。
- 積立を止めたり、商品を売ったりできますか?
-
積立額は減らしたり止めたりでき、持っている商品も一部または全部を売れます。売った商品の購入額分だけ、翌年以降に非課税保有限度額(総枠)を再利用できますが、その年の年間投資枠は戻りません。
- つみたて投資枠だけでも使えますか?
-
つみたて投資枠だけでも利用できます。成長投資枠を一緒に使う必要はありません。個別株などを買わないなら、つみたて投資枠だけを使う方法もあります。
まとめ:新NISAはデメリットだけで決めない
新NISAには、元本割れの可能性があるほか、損益通算や繰越控除が使えず、所得控除もありません。商品やコストにも制約があります。一方、利益にかかる日本国内の税金を原則ゼロにできる点は、大きなメリットです。
判断の基準は、生活に必要なお金を分けられるか、使う時期まで余裕があるか、値下がりしても家計に支障が出ないかの3点です。
余裕資金がなければ、今は見送って家計を整えるのが先です。余裕資金を中長期で運用できるなら、無理のない金額から検討できます。これが、新NISAで後悔を減らす基本です。
本記事は一般的な情報をまとめたもので、特定の商品や投資方法を勧めるものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。制度や税制は変わる可能性があるため、判断する際は最新の公式情報を確認してください。必要に応じて、金融機関や税務署、税理士などへ相談しましょう。
出典・参考資料
情報基準日:2026年8月5日

