- 新NISA口座で相続が発生した場合、資産がどのように扱われるのか知りたい
- 相続発生時に必要な手続きを把握したい
- 高齢者が新NISAを活用する際のポイントを理解したい
複雑な相続手続きに新NISAに関することがあるとなると、家族にかかる負担は大きくなってしまうのではないかと考えている方がいるのではないだろうか。
新NISAで運用を始めようとしているが、相続時のことを考えてなかなか一歩を踏み出せていない方もいるはずだ。
そこで本記事では、新NISA口座の名義人に相続が発生した場合の取り扱いについて紹介しよう。
高齢者が新NISAを利用する際のポイントやおすすめの運用例についても解説する。
新NISAの相続に関する知識を付けて、家族に伝えておきたいという方はぜひ確認してほしい。
新NISA口座の名義人に相続が発生したらどうなる?
名義人が亡くなったら金融機関に報告し、相続の手続きがスタートする。
ただその後の非課税枠の取り扱いについて把握していない方が多いのではないだろうか。
ここでは相続発生時の非課税枠の投資商品の取り扱い、必要な書類と手続きのステップなどを解説する。
相続発生時の非課税枠の投資商品の取り扱い
名義人が亡くなったことを金融機関に報告すると相続の手続きがスタートし、完了すると新NISA口座の資産はそのまま相続人の口座に移管される。
基本的に同一の証券会社での口座でしか相続に対応していないため、ない場合は新たに作成する必要があるのだ。
また亡くなった方の名義の新NISA口座にある資産を、相続人の新NISA口座へ移管することはできない。
同一証券会社の課税口座へと移管される。
そして相続財産が一定の金額を超えると相続税がかかるようになるが、価格が変動する上場株式や投資信託は以下の4つから最も低い金額が相続税の評価額として採用される。
- 相続発生日の終値
- 相続発生日の属する月の毎日の終値の月平均額
- 相続発生日の属する月の前月の毎日の終値の月平均額
- 相続発生日の属する月の全然月の毎日の終値の月平均額
例えば、2024年7月8日に亡くなった方の上場株式や投資信託を相続するケースを想定してみよう。
- 2024年7月8日の終値
- 2024年7月の毎日の終値の月平均額
- 2024年6月の毎日の終値の月平均額
- 2024年5月の毎日の終値の月平均額
これらの金額から最も低い金額を評価額として採用できるため、相続財産を実際の相続分よりも低く見積もることが可能だ。
相続発生時に必要な書類と手続きのステップ
相続時に必要な書類と具体的な手続きについて、NISA口座の開設先として人気の楽天証券を例に挙げて解説しよう。
- 公的書類の取得
- 相続Web受付から申し込み
- 楽天証券の口座開設
- 楽天証券へ手続依頼を返送
- 楽天証券によって資産が相続人口座に移管
まずは、手続きに必要な書類を用意する必要がある。
遺言書や遺産分割協議書の有無などにもよるが、一般的に必要な書類は以下の通りだ。
- 戸籍(全部事項証明)または法定相続情報一覧の写し
- 印鑑登録証明書(法定相続人全員分)
印鑑証明書は、発行日から6ヶ月以内のものでないと受理されない点に注意しておこう。
上記の2種類の用意は必須で、遺言書や遺産分割協議書がある場合は合わせて提出が必要になる。
自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言といった遺言書がある場合は、それぞれの書類を提出しよう。
公正証書遺言以外の場合は、検認調書も必要になる。
遺産分割協議書がある場合は、法定相続人全員の署名・捺印があるものを提出しなければならない。
相続手続きの受付が完了すると、書類提出画面に遷移する。
用意した書類を撮影し、インターネットから提出しよう。
提出が完了すると、楽天証券から相続手続き依頼書が発送される仕組みだ。
そして楽天証券の口座がない方は、依頼書の到着を待っているこのタイミングで新規口座開設を行うことになる。
相続手続き依頼書が届いたら署名・捺印のうえ返送すると手続きは完了だ。
相続発生時の注意点
相続発生時の注意点として、所得税が別にかかることが挙げられる。
相続時に相続税を納税しているが、相続によって入手した金融資産を売却すると利益に対して税金がかかるのだ。
この際、NISA口座と一般的な課税口座とでは、取得日と取得価額に対する考え方が違う。
一般的な資産運用では、購入価格と売却価格の差に対して税金がかかるだろう。
相続においても変わらず、Aさんが1998年7月8日に100万円で購入した株式を相続人のBさんが200万円で売却すると利益の100万円に対して課税されるのだ。
つまり取得日はAさんが購入した1998年7月8日、取得価額はAさんが購入した100万円になる。
しかしNISA口座では、取得日が相続発生日で取得価額が相続発生日の終値で計算されるのだ。
Aさんが2024年2月27日に100万円で株式を購入し、2035年3月5日に資産額200万円の状態で亡くなった場合を考えてみよう。
一般的な証券口座の場合は取得日が2024年2月27日、取得価額が100万円になるのに対し、NISA口座では取得日が2035年3月5日、取得価額が200万円になる。
相続後も運用を継続して400万円になったタイミングで売却すると、利益の200万円に対して所得税がかかるわけだ。
相続を見据えて新NISAを利用する際のポイント
ここでは、相続を見据えた投資家が新NISAを利用する際のポイントを解説しよう。
長期的な資産計画と出口戦略の重要性
高齢者が新NISAを活用して資産運用を行う場合でも、長期的な運用は欠かせない。
なぜなら、価格が上げ下げを繰り返す短期市場では、投資初心者が利益を出すのは難しいからだ。
そのため、長期的に運用に回しても問題ないお金だけを資産運用に回す必要がある。
また長期投資をしていても若い世代と比べると運用期間が短い高齢者は、出口戦略も考えておく必要がある。
一般的には、定額もしくは定率で資産を取り崩すのが基本だ。
「月に15万円ずつ引き出す」というのが定額法、「資産の5%を毎月引き出す」というのが定率法である。
亡くなる直前に最も資産が多いという状況を避けたいのであれば、引き出し始める時期について考えておこう。
相続対策における新NISAの役割
夫婦の非課税枠をともに活用することで、新NISAが相続対策として利用できるケースがある。
相続税は被相続人の財産に対してかかるため夫に資産が集中していると、相続人には相続税の納税義務が生じるかもしれない。
しかし妻のNISA口座でも運用をしていると夫婦間で資産が分散し、相続時の評価額を抑えられるのだ。
ただ夫の収入を妻のNISA口座に入金するのは生活費と違い、贈与税の対象になってしまう。
そのため、妻が専業主婦で運用に回す資金が夫の収入に依存している場合は、贈与税の控除額である年間110万円までに留めておく必要がある。
課税口座と新NISA口座での総合的な資産管理の重要性
課税口座と新NISA口座の両方で資産を保有している高齢者がいるのではないだろうか。
その際、課税口座と新NISA口座は別々に考えず、総合的に管理してほしい。
なぜなら、それぞれの口座にある資産の値動きによって、ポートフォリオのバランスが崩れている可能性があるからだ。
なお、新NISAの活用法についてはこちらの記事でも詳しく解説したので、あわせてチェックしていただくとさらに理解を深めることができるはずだ。
相続を見据えた投資家におすすめしたい新NISAの運用例
ここでは相続を見据えた投資家におすすめしたい新NISAの運用例を紹介しよう。
投資経験のあまりない高齢者には、基本的につみたて投資枠を活用したつみたて投資がおすすめだ。
そのため、ここでは年齢と目的に合わせてつみたて投資枠を活用した運用例を取り上げる。
80代以上まで長生きした時に備えて資産を用意したい60代
20年以上を運用期間として確保できるため、安定したリターンを期待しやすい。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)やeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)といったインデックスファンドを購入し、長期的に運用しよう。
リターンを4%と仮定すると、つみたて金額に応じた資産総額は以下の通りになる。
運用年数 | 月1万円 | 月3万円 | 月5万円 |
---|---|---|---|
1年目 | 122,225円 | 366,674円 | 611,123円 |
5年目 | 662,990円 | 1,988,969円 | 3,314,949円 |
10年目 | 1,472,498円 | 4,417,494円 | 7,362,490円 |
15年目 | 2,460,905円 | 7,382,715円 | 12,304,524円 |
20年目 | 3,667,746円 | 11,003,239円 | 18,338,731円 |
80代まで年金と預貯金で対応できるのであれば、約20年は運用できるだろう。
そのため、コツコツとつみたてを継続すると、一定の資産を形成できる。
この際、確実に必要になるお金は預貯金に残しておき、途中で売却することがないようにしておこう。
自身の老後資金は確保できているので子どもや孫に向けてお金を残したい70代
子どもや孫に向けて資産を残すことが目的なので、亡くなった後も運用を継続して投資期間を長く確保できる。
先ほどのケースと同様にeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)やeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)といったインデックスファンドを購入することがおすすめだ。
リターン4%で運用すると仮定すると、月3万ずつのつみたてで20年後には1,000万円を突破している。
運用に回せる資金と相談しながら、つみたて金額を設定してほしい。
分散投資の重要性
新NISAで運用を開始するにあたっては、分散投資が非常に重要になる。
特定の銘柄に偏った購入をしていると、企業の業績不振や不祥事によって資産が大幅に目減りしてしまうからだ。
もし成長投資枠で個別株式の購入を考えているのであれば、最低でも10銘柄以上に分散させるようにしておこう。
業績や数値を調べて投資先を決定する必要があるため、運用にかかる手間や時間は大きくなるはずだ。
そこで1本購入するだけで100銘柄以上を含んだ投資信託をおすすめしている。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)だと約3,000銘柄、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)だと500銘柄を購入可能だ。
新NISAの相続に関する相談は誰にするべき?
定年退職後に新NISAを始めることに関して不安を抱えている方がいるのではないだろうか。
ここでは高齢者が新NISA制度を活用する際、おすすめの相談先を紹介する。
新NISAの活用における専門家の重要性
新NISAで投資を始める際、どちらの非課税枠を使用するか、どのような商品を購入するか、毎月のつみたて金額はいくらにするかなどを全て決める必要がある。
しかし疑問点や不明点を抱えたままの状態で判断すると、資産が大幅に目減りして老後に対する不安が大きくなってしまうかもしれない。
- 取引手数料が高い金融機関でNISA口座を開設する
- 構成銘柄があまり良くない投資信託を購入する
- 資産の大半を投資信託や上場株式に変えてしまって暴落に耐えられない
初動で失敗して大事な資産を失わないためにも、新NISAの活用にあたってはお金の専門家への相談を推奨している。
IFAの役割と利用するメリット
新NISAを活用した資産形成でおすすめの相談相手は、制度を熟知している運用経験豊富なIFAだ。
IFAとは独立系ファイナンシャルアドバイザーの略で、おすすめの銘柄から目的に合ったつみたて金額、相続時の節税対策まで幅広くアドバイスしてくれる存在である。
金融機関から独立した中立的な立場から提案しているため、窓口でおすすめされる手数料が高い商品を避けられるのだ。
また、家計状況や投資目標に合わせた提案をしてくれる点も魅力的だ。
運用目的やライフスタイルを考慮してくれるため、定年退職後から運用を開始する投資初心者の方でもリスクとリターンのバランスが丁度良いポートフォリオを作成できるだろう。
さらに金融機関のように3年程度で担当が変わらないため、アフターフォローも充実している。
最初に伝えた項目通りに運用を継続してくれるため、時が経過してあなたが忘れてしまったとしてもIFAがサポートしてくれる。
IFA検索サービス「資産運用ナビ」の活用法とその効果
ここまで読み進めたうえで、自身に合ったIFAの探し方がわからなくて困っている方はいないだろうか。
そんな方におすすめなのが、IFA検索サービスである「資産運用ナビ」だ。
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中立的な立場に立った信頼できる存在と長期的な関係性を築けるため、資産形成を効率的に進めやすくなるだろう。
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新NISAの相続に関する疑問はIFAに相談しよう
新NISAにおける相続について解説してきた。
口座の名義人が亡くなった際の手続きは以下の通りだ。
- 公的書類の取得
- 相続手続きの申し込み
- 同一証券の口座開設
- 証券へ手続依頼を返送
- 手続きが完了すると資産が相続人口座に移管
戸籍(全部事項証明)または法定相続情報一覧の写し、印鑑登録証明書(法定相続人全員分)は、基本的に必要になる。
相続手続きを行う際は、どのような書類が必要か必ず証券会社に確認しておこう。
また高齢者が新NISAを利用する際、長期的な資産計画を立てながら出口戦略についても考えておく必要がある。
なお、新NISAと課税口座を別々で考えるのではなく、総合的に管理するようにしておこう。
また高齢者ににおすすめのポートフォリオを紹介したが、個人によりその最適解は異なる。
新NISAを活用した資産運用に関する疑問や不安があれば、専門家からアドバイスを受けることを推奨する。
特にIFAは、中立的な立場からあなたに最適なアドバイスを長期にわたって提供してくれる存在だ。
IFA検索サービス「資産運用ナビ」を活用し、あなたに合ったIFAを見つけてみてはどうだろうか。