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新NISAをやるなら投資対象を十分に理解しよう

今年から新NISAが始まった。年始から日本株の調子がいいことや、日本でもインフレが定着しそうなことから、日本人の投資意欲が高まっており、新NISAの口座開設数は順調に伸びている。

現在は投資情報をSNSやYouTubeで手軽に収集できることも、投資のハードルを下げている一因かもしれない。

しかし、投資対象に対する十分な理解がないままに投資をすることは危険な行為だ。

しっかりと投資対象を理解することを心がけたい。

目次

新NISAへの熱狂

 新NISAの勢いがすごいことになっている。日本証券業協会が3月に公表した2024年1~2月のNISAの利用状況をみてみると、証券会社10社(大手、ネット各5社)の2024年2月末時点のNISA口座数は約1,400万口座となっている。

2024年2月におけるNISA口座の新規開設件数は53万件であり、2023年1~3月におけるNISA口座増加数の1か月平均である18万件と比較すると約2.9倍に増加していることが分かる。

 2024年1~2月における買付額の1か月平均額は成長投資枠が1.5兆円、つみたて投資枠が2,700億円となっており、2023年1~3月における買付額の1か月平均額と比較すると、成長投資枠で約3.3倍、つみたて投資枠で約3.0倍に増加している。

 冒頭で述べた通り、新NISAへの熱狂が数字でも確認できた。

しかし、これだけ数字が伸びるということは、投資未経験者や投資初学者が数多く投資の世界に足を踏み入れたことを意味しており、知識不足によって必要以上に大きなリスクを取ってしまう可能性もある。

分散と低コストが重要

 いざ身銭を投じて投資を始めると、日々の株価変動に一喜一憂してしまうものである。

これは投資の経験が長くても同じかもしれない。しかし、新NISAは基本的には長期投資が前提となっている。新社会人が始めれば、定年退職まで40年以上も投資をすることになる。

 長期で投資をするためには、株価変動に一喜一憂してはいけない。毎日の株価変動を気にしていたら、精神的に何十年も投資を続けられないからだ。また、株価変動を気にしないとしても、それ以外の点にも注意しないと長期投資は難しい。

 1つはリスクを取り過ぎないことだ。たとえば、1つの会社の株式に投資資産を全額突っ込んでしまった場合、その会社が倒産すれば、投資資産を全て失うことになる。そこで重要なのが、投資資産を複数の金融商品に分散することだ。

 また、長期投資をする場合に注意しなくてはいけないことは、投資する金融商品のコストはとにかく抑えるということだ。

よく長期投資をするメリットの1つに複利が効くことが挙げられるが、これはコストにも同じことが言える。コストの差が1%の商品をそれぞれ投資すると、コストがリターンに与える負の影響も増大していく。

 手軽に分散をして、かつ低コストを実現しようとしたときに、多くの個人投資家に最適解となる投資対象が投資信託となる。

S&P500と世界株式

 ネット証券では新NISAでどの投資信託が買われているか、というランキングが公表されているが、圧倒的な支持を集めているのが米国の株価指数であるS&P500に連動するものと、オールカントリーという言葉でお馴染みの世界株式に投資するものである。

 いわゆるインフルエンサーがS&P500とオールカントリーを勧めていることが多いため、新NISAを契機に投資を始めた人の多くがどちらかに投資をしている。これはランキングの結果とも整合性がとれている。

 なかにはS&P500とオールカントリーを半分ずつ投資しているという方もいるが、それ自体を否定する気はないものの、投資している本人がこれによって地域分散がうまく図れていると考えているのを見ると、やはり投資対象の理解が不十分だな、と感じてしまう。

 S&P500は指数に連動する投資信託なので、投資対象は100%米国株となるが、オールカントリーの方は世界中に資産を分散できていると思っているようだが、月報を見てみるとオールカントリーの投資先の60%超は米国となっている。

つまり、S&P500とオールカントリーに半分ずつ投資した場合、投資資産の8割は米国に投資されていることを理解しよう。

インド株とNEXT FANG+

 ランキングをみていくと、上位に出てくるのがインド株式とNEXT FANG+というものだ。

インドは世界最大の人口大国となり、これから働く世代がその他の世代の2倍以上になる「人口ボーナス」期がこれから数年間続くということから、株式市場が堅調に推移していくことが期待される。

かつては中国株に投資をする投資信託が同様のシナリオのもとに多くの投資資金を集めたが、まさにそれに続くものであろう。

しかし、単一国に投資をするのはリスク分散の観点からはあまり勧められることではないので、投資資産の一部をインド株に投じる、くらいのスタンスの方がよいだろう。

 NEXT FANG+は米国のテクノロジー株に投資をする投資信託だ。

Google、アップル、Facebook(運営元はMeta社)、Amazon、マイクロソフトの5社をGAFAMと呼び、これらを米国のテクノロジー株を代表する銘柄としていた時期があったが、ここに生成AIブームを背景に伸びているエヌビディアと、電気自動車に吹く追い風に乗ったテスラを加えた7社を「マグニフィセント・セブン」と呼ぶが、更にここにいくつかのテクノロジー株を加えた株に投資をするのがNEXT FANG+だ。

 ただ、これは米国株だけに投資するだけでなく、業種もテクノロジーに絞るため、リスクはそれなりに高くなる。たとえば、2022年に記録した下落期間を見てみると、S&P500は25%の下落を経験したが、FANG+指数は48%も下落している。

こちらもインド株同様に、資産の一部として投資するスタンスがよいだろう。

 このように、SNSやYouTubeでよく目にする投資対象も、しっかりと何にどれくらい投資をしているかなどはしっかりと理解してから投資をすべきである。

執筆者

森永 康平のアバター 森永 康平 株式会社マネネCEO / 経済アナリスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。2018年6月に金融教育ベンチャーの株式会社マネネを設立。
現在は経済アナリストとして執筆や講演をしながら、国内外複数のベンチャー企業の経営にも参画。

著書は『スタグフレーションの時代』(宝島社新書)や父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など多数。

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