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個人投資家の資産形成には専門的金融リテラシーが必要か?

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ここ数年、あまり投資に関心がなかった現役世代の投資に対するスタンスが変わりつつあります。「年金では老後生活費が2000万円足りない」問題など話題もあり、積み立てNISAの口座開設数も2018年末時点では53万口座でしたが2022年3月末時点で396万口座と4年で6倍になっています。

また、個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)においても、2019年3月時点の121万口座から2022年6月末時点では251万口座と3年間で2倍以上に増加しております。

しかしながら日本全体では金融資産に占める預金の割合が53.4%、米国では13.3%(日銀資金循環統計より)とまだまだ資産運用には消極的です。「専門知識がない、よくわからない」という方も多いと思います。

そこで資産運用大国、米国を参考に考えてみたいと思います。

目次

日米の株式市場のパフォーマンスと経済成長

米国株の代表的な株価指数であるS&P500と日本の代表的な株価指数である日経平均との比較です。日経平均が史上最高値を付けた1989年末より比べてみました。

グラフ①

 

参考:investing.comをもとに作成

そもそも1989年の日本はバブル経済であり株価が上がりすぎたこともありますが、日経平均は1989年末時点を上回っておらず、それに対してS&P500は32年間で13.5倍になっており全く違う運用成績になっております。

ではなぜこのような差が出てしまったのでしょうか?

株価は長期的には企業業績の成長が反映されますのでアメリカ企業は成長し日本の企業は成長しなかったということですが、その背景にはアメリカと日本では経済成長率に大きな格差があるからです。

グラフ②

参考:世界経済のネタ帳「日本のGDPの推移」「世界の名目GDP(USドル)ランキング」をもとに作成

もちろん米国にも日本にもグローバル企業は多数ありますので自国経済以外で業績を伸ばす企業や、競争力があり不景気でも業績を伸ばした企業など個々の企業では様々ですが全体としては自国経済の成長が大きく影響を受けたことがわかります。

経済成長とはGDP(国内総生産)であり主に個人消費と設備投資、政府支出、(輸出と輸入の差)で構成されております。また、1人当たりの成長と人口の増加率でもあります。

その面から日本は人口が2000年よりほぼ増加せず2010年からはむしろ減少しております。米国は人口増加が続いており、今後も日本は減少、米国は増加の傾向は変わりません。

つまりこの32年でついた格差は今後より一層大きくなると思われます。

企業業績を反映する株価においては成長する国としない国で差が出てしまいます。

米国の資産形成の制度と環境

ではこの米国株の上昇の恩恵を米国民は受けられたか?についてですが、全体的には受けられたと思われます。

金融庁が作成したデータでは1998年から20年間で米国の個人資産は2.7倍(そのうち運用によるものが2倍)に増え、それに対して日本では1.4倍(運用によるもの1.2倍)となっています。

米国では80年代に個人年金などの法整備が進みその結果、大学卒で80%以上、高卒・その他でも60%以上が個人年金に加入している状況の様です。

ではアメリカ人は金融教育を受けたのか?についてですが、

たしかに学校でも金融教育が行われ、日本より学ぶ機会が多いことはありますが、

むしろ自助努力というより加入制度が充実していることに加え銀行、証券会社、保険の代理店、独立系FP、会計事務所などアドバイスを受けることができる環境が幅広くあったことと、①の表からも解る通り長期的にリターンが出ていることにより、投資による資産増を経験している人が多いということが、加入を促進しているものと考察されます。

やはり身近に経験者がいることは始めるには良い環境となります。

日本の資産運用の環境の変化

私が20年前に大手証券会社で営業をやっていたときはまだインターネットの利用もごく一部で、特にバブル崩壊により下落した株価のマイナスのイメージが強い時代でしたので、「投資は危ない!」「株は危険!」と一般的に認識されていました。情報も今ほどはなく、取り扱いの出来る金融商品もかなり限定的で今のほうが質、量ともに充実しております。

しかしながら2013年以降は日本株も上昇トレンドに入り、日本でも積み立てNISAやiDeCo制度の拡充、ネット証券を中心に商品ラインアップも増え、初心者向けの情報から専門的な情報もネットで見られる様になり、また、100円から投資信託が買えるなど環境が整いつつあります。

日本の優遇制度では投資益が非課税になるNISA・積み立てNISAと、拠出金が所得控除になり、かつ運用期間中非課税となるiDeCoではインデックス型(指数に連動しコストが安い)商品が中心ですが、各社工夫を凝らし投資初心者でも始めやすい様になっています。

つまり、特別な専門知識がなく学生時代に金融教育を受けていなくても資産運用による長期的資産形成は十分可能です。

資産形成を阻む問題

そんな資産運用にも注意点があります。

一つ目はネットがいくら発達しても投資詐欺はまったくなくなりません。

まず資産運用においては「安全で高いリターン」という商品はありません。

必ずリスク(元本が棄損する)はあります。大前提として、証券会社や銀行の口座を通さずに金融商品を買う、外国の知らない銀行に口座を作るなどはお勧めできません。

ご自身で勉強し投資商品を選択し、より高いリターンを求めることも可能ですが、「口コミで話題」や「著名な投資家~さんのお勧め」などと 、金融機関が出す新商品で大々的にアピールしているものと時々の流行りのテーマを謳っている商品は要注意です。

その場の雰囲気に流されて手を出すことはおすすめできません。なお、一般的な金融商品にはクーリングオフ制がありません。

また、①の表の通り、大きく下がるときもあります。下がっているときは悪いニュースが飛び交います。特に~恐慌だとか、バブル崩壊だとか下落に乗じた記事はこぞって危機をあおります。

まとめ

  • ご自身の負担にならない程度から徐々にはじめる。
  • 長期的な資産形成を成功させるには、長期的な視点でじっくりやる。時間を味方につけるためなるべく早い時期に始める
  • 突発的に飛びつかない、危機をあおる記事に踊らされない。短期的に欲張らない。
  • 長期的に成長が期待出来る市場を主に選択する。

じっくりと時間をかけて資産形成を行いましょう。

執筆者

坂上 直樹のアバター 坂上 直樹 FPパートナーズ株式会社 代表取締役

野村證券にて10年営業を経験しその後、2011年に独立しSMBC日興証券のIFAに2014年にIFA法人FPパートナーズ株式会社を設立。
自分が本当に良いと思っている商品を良いと思ったタイミングで提案し、長期的な視点、お客様個々人のニーズにあったアドバイスを行いながら、お客様から感謝される様な仕事をしたいと思い独立。お客様の一生涯のパートナーになりたいという思いで社名をFPパートナーズ株式会社にしている。

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